ビゼー没後150 周年。舞踊で紡ぐ音楽劇「アルルの女」
ラヴェル生誕150 周年。Noism 版「ボレロ」生の讃歌

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の専属舞踊団であるNoism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ)。設立から20年以上を経た今も、日本で唯一の公共劇場専属舞踊団として、国内はもちろん世界各地からオーディションで選ばれた舞踊家が新潟に移住し、年間を通して活動しています。
2025年夏の公演は、金森穣演出振付による最新作『アルルの女』と、『ボレロ』を上演します。
アルフォンス・ドーデの短編小説を原作とする戯曲に着想を得て、独自の切り口から創る新作『アルルの女』。音楽はビゼーが戯曲上演のために作曲した劇付随音楽及び組曲版を用います。
この世に生きる誰もが属する「枠組み」。その中で生き続けるのか、その外へと手を伸ばすのか。『アルルの女』を通して、普遍的な人間の姿を描き出します。
同時上演するのは、「りゅーとぴあジルベスター・コンサート2023」、「SaLaD 音楽祭2024」と、これまで生のオーケストラとの共演で上演を重ねてきた『ボレロ』。本公演では劇場版としての新たな形で、『ボレロ』が持つ高揚感と躍動感を、舞台上で体現します。
力強く反復する音楽とともに、確かな身体が生み出す情熱。生演奏とは異なる形の劇場版『ボレロ』が劇場空間にどのような熱を生み出すのか、ご期待ください。
生と死を象徴する、対をなす2作品。
この夏、人間の本質を描く舞台の幕が上がります。
■金森穣 『アルルの女』演出ノート
この夏のNoism0+Noism1の新作は『アルルの女』(音楽:G.ビゼー)を創作する。
ビゼーの代表作である本楽曲はコンサートでも頻繁に演奏され、バレエの世界でも多くの作品が振付されている。しかしそれらはいずれも組曲版(に振付した作品)であり、初演がコーラス付きの劇付随音楽であったことを知る人は意外に少ない。私もそうであり、偶然ミシェル・プラッソンとトゥールーズ・キャピトール管弦楽団による劇付随音楽の完全版録音を聞いて、すぐに戯曲『アルルの女』(A.ドーデ)を買い求めた。
ドーデによるこの物語は、“アルルの女”という不在の女とフレデリという青年の自死の物語(悲劇)として有名である。しかし戯曲を読むと、その悲劇は青年を取り囲む人々、すなわち家族や村の人々といった、大小様々なコミュニティー(囲い)が関係しあって生み出されていることが分かる。そして悲劇の引き金は“アルルの女”によって引かれているというよりも、関係する人々、特に母親によって引かれているように思われる。それは不在の他者に対する幻想という一個人の精神構造が起こした悲劇というよりも、共依存という、実在する他者との関係性のうちに生まれた悲劇であるということである。
そして物語における重要な人物にフレデリの弟がいる。ジャネという名がありながら、戯曲の役名が“ばか”である(家族がそう呼んでいる)という問題に加え、知的障がいを抱えるジャネに母親は見向きもせず、ひたすらフレデリに愛情を注いでいる。それでもジャネは常に笑顔で、“知的”な大人たちが織りなす、不条理な人間ドラマを外から眺めている。その眼差し、そして存在こそがこの悲劇をより痛切なものにし、“人間とは何か”という根源的な問いを投げかけてくる。
人は誰しも1人では生きてゆけない。それが互いに助け合うことの必然を生むと同時に、自立できない(させたくない)という捻れた関係の温床ともなり得る。核家族化が常態化した現代社会では、モンスターペアレンツ、推し文化、ひいてはSNSによる匿名の誹謗中傷など、特定個人との歪んだ結びつきによる問題を多く生んでいる。すなわち本戯曲で扱われている共依存の問題は、極めて現代的な問題なのである。
勿論、本作はドーデの戯曲をそのまま上演するものではない。上記した問題意識に基づいて、私が独自に作り上げた役柄、関係性、展開を、ビゼーの劇付随版楽曲と組曲版楽曲を組み合わせて上演される。
■金森穣 『ボレロ-天が落ちるその前に』演出ノート
2023年大晦日に“りゅーとぴあジルベスター・コンサート”にて初演したコンサート版『Boléro』
を、劇場版『ボレロ-天が落ちるその前に』として初演する。
コンサート版初演演出ノート
ラヴェル作曲のBoléroのオリジナルあらすじは、―セビリヤのとある酒場。1人の踊り子が、舞台で足慣らしをしている。やがて興が乗ってきて、最初はそっぽを向いていた客たちも、次第に踊りに目を向け、最後には一緒に踊り出す―というもの。
Noism 版では酒場を修道院にし、踊る1人の女性を生贄に設定している。生贄の踊りが発するエロス(生への衝動)が、修道士たちの禁欲の鎖を解き放っていく。そして最後は全員で生命の叫びを上げるのだ。それはこの閉塞した時代へのメッセージ、生の讃歌といえるだろう。
劇場版初演演出ノート
閉塞感漂うこの社会の中で、生きること(踊ること)、信じること(志すこと)、そのための熱量を、
過剰なほどの身体エネルギー(叫び)によって届けたい。このコンセプトはコンサート版も劇場版も同じである。しかし劇場版では新たに空間的要素を加味することで、より強く、より深くその想いを届けたいと思う。
杞憂という言葉の語源には「天が落ち、地が崩れることを憂いて寝食もままならなくなった杞の国の人を励ます」という逸話がある。しかし現在、世界を覆い尽くしている不安=国際秩序(戦争)や自然秩序(地震)崩壊への憂慮は、それらが杞憂で終わりそうにもないことを、現実として突きつけてくる。
このような時代において、例え天が落ちたとしても、例え地が崩れたとしても、今この時に全てを賭けること。同志たちと共に“今此処”に全霊で挑むこと。その姿を、その祈りを、客席に届けたい。それが舞踊であり、舞踊団だと思うから。
■Profile
Noism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ) www.noism.jp
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する、日本初の公共劇場専属舞踊団。芸術総監督は金森穣。プロフェッショナル選抜メンバーによるNoism0(ノイズムゼロ)、プロフェッショナルカンパニーNoism1(ノイズムワン)、研修生カンパニーNoism2(ノイズムツー)の3つの集団があり、国内・世界各地からオーディションで選ばれた舞踊家が新潟に移住し、年間を通して活動。2004年の設立以来、りゅーとぴあで創った作品を国内外で上演し、新潟から世界に向けてグローバルに活動(国際活動部門)を展開するとともに、市民のためのオープンクラス、学校へのアウトリーチをはじめとした地域に根ざした活動(地域活動部門)を行っている。Noismの由来は「no-ism=無主義」。特定の主義を持たず、歴史上蓄積されてきた様々な身体知を用いて、あらゆるism を再検証することで、今この時代に新たな舞踊芸術を創造することを志している。
■公演概要
『アルルの女』
演出振付:金森穣
音楽:ジョルジュ・ビゼー
衣裳:井深麗奈
映像:遠藤龍
出演:Noism0、Noism1
『ボレロ-天が落ちるその前に』
演出振付:金森穣
音楽:モーリス・ラヴェル
出演:Noism0、Noism1
※音楽は録音での上演です
新潟公演
2025年6月27日(金)19:00、28日(土)17:00、29日(日)15:00 ※全3回
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
入場料(税込):全席指定5,500円 U25 3,000円 高校生以下1,000円
*未就学児の入場はご遠慮いただいております。
*U25 は公演時25歳以下の方対象(未就学児を除く)。
U25・高校生以下の方は入場時に身分証をご提示ください。
*託児サービス、車椅子席等の詳細はりゅーとぴあHPをご覧ください。
取扱い:りゅーとぴあ(オンライン・電話・窓口)
▶オンライン・チケット https://piagettii.s2.e-get.jp/ryutopia/pt/ [発売初日11:00-]
▶電話 025-224-5521(11:00-19:00 / 休館日除く) [発売初日11:00-]
▶窓口(りゅーとぴあ2 階) [発売初日(会員先行・一般発売ともに)取扱いなし]
発売日:3月26日(水)りゅーとぴあ会員先行 3月29日(土)一般発売
問合せ:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521(11:00-19:00 / 休館日除く)
埼玉公演
2025年7月11日(金)19:00、12日(土)17:00、13日(日)15:00 ※全3回
彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
入場料(税込):全席指定6,000円 U25 3,000円
*未就学児の入場はご遠慮いただいております。
*サイドバルコニー、2階席の一部は舞台の一部が見えづらいお席です。
*U25は公演時25歳以下の方対象(未就学児を除く)。
U25の方は入場時に身分証をご提示ください。
*車椅子でのご来場の方は購入時にSAFチケットセンターにお問い合わせください。
*本公演での託児サービスはございません。
取扱い:
SAF チケットセンター(オンライン・電話・窓口)※埼玉公演のみ
▶SAF オンラインチケット https://www.saf.or.jp/t/[発売初日10:00-]
▶電話0570-064-939(10:00-18:00 / 劇場休館日除く)
▶窓口 彩の国さいたま芸術劇場(10:00-18:00 / 休館日除く)
埼玉会館(10:00-18:00 / 休館日除く)
りゅーとぴあ(オンライン・電話・窓口)
▶オンライン・チケット https://piagettii.s2.e-get.jp/ryutopia/pt/ [発売初日11:00-]
▶電話 025-224-5521(11:00-19:00 / 休館日除く) [発売初日11:00-]
▶窓口(りゅーとぴあ2 階) [発売初日取扱いなし]
発売日:3 月22 日(土)SAF メンバーズ先行 3 月29 日(土)一般発売
※埼玉公演のりゅーとぴあ取扱い分の発売はりゅーとぴあ会員・一般共に3 月29 日(土)
問合せ:SAF チケットセンター0570-064-939(10:00-18:00 / 劇場休館日除く)
主催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
共催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉公演)
製作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
[この事業は新潟市からの補助金の交付を受けて実施しています]