【稽古場レポート】桜の季節にふさわしいハートフルコメディ!広島弁が躍動するLIVES「せんせい」

【稽古場レポート】桜の季節にふさわしいハートフルコメディ!広島弁が躍動するLIVES「せんせい」

4月3日(木)からウッディシアター中目黒で上演されるLIVES制作の「せんせい」。開幕まであと二週間に迫ったタイミングで稽古場を訪問した。

LIVESは俳優の大浜直樹が脚本、演出を勤め、同じく俳優の石橋政人が演出助手と舞台監督を担当する演劇ユニット。1999年にスタートし、数々の人間喜劇を描いてきた。今回の「せんせい」は2007年初演。脚本は現代に合わせて加筆・修正されている。

稽古場は廃校になった中学校校舎を改修したスペースだった。教室の面影を残す空間は今回の演目にぴったりだ。舞台は高校の職員室。季節はまさに桜の開花時期だった。

職員室では教師と生徒たちが今年度で退職する真野先生のためにサプライズを企画している。女子3人と男子1人の少なすぎる人数に先生は「もっと集めらなかったのか」と問い詰める。そのセリフが全て広島弁で「〜じゃけ!」「ぶち〜」などの攻防で、とても賑やかだ。箸がころんでもおかしい年頃の女子高生たちと、現代では少しきつめに聞こえる先生との言葉のやりとりは、昭和の学園もののようでどこか懐かしい。

大浜は役者たちに言葉をしっかりと聞かせること、会話を流すように発しないことなど細かい演出をしていく。少しの抑揚やリズムの緩急でセリフが際立つのを感じる瞬間だった。

存在感が薄いため、現役の生徒からは人気がない真野先生だったがFacebookの告知を見たという卒業生たちが次々と職員室を訪れ、先生の印象が変わっていく。
その卒業生たちがみんな曲者で面白い。警察官に看護婦、役者など。中でも英語教材の販売員の体で職員室を訪れたミムラという女性は、在学中に教鞭を取っていた先生も覚えていないミステリアスな存在だった。

スナック勤めだという仲良し2人組の女性は息もぴったりで、その場がパッと明るくなるような賑やかさ。でも昔は不良少女だったという。そのギャップがたまらない。

物静かな真野先生に、これだけの人気があったなんてと不思議がる現役生徒。
松岡修造のように熱い先生だったという卒業生の言葉に耳を疑う。果たして本来の真野先生はどんな人物なのか?集まった卒業生たちの意図とは?
くすりと笑えるシーン満載の喜劇ながら、ミステリーの香りも漂う展開に最後まで目が離せない。

休憩時間に大浜直樹と、教師役で出演する石橋政人にインタビューした。

___「せんせい」は2007年が初演で、2014年にも再演されて今回3度目の上演となるのですが、今回の再演に至ったきっかけを教えてください。

大浜「2007年もそうですが、2014年からもとても時間が経っていると感じています。強烈に時が経ったなと感じています。特に最近の変化のスピードは、もの凄いじゃないですか。今、これだけAIが進化したり、SNSが全盛の時代で、人と人との結びつきが変わってきているじゃないですか。人との繋がりかたが激変して、2007年から18年も経って、その時に作られた物語がこれだけ変化した今の世の中にどの程度、通用するのか確かめたい。そういう気持ちはありましたね。もちろん脚本は、多少現代に置き換えていますが」

___初演の2007年と現代とでは、一番変わったと思うところはどんなところですか?

大浜「やっぱり繋がり方が圧倒的に変わりましたね。SNSですね。情報の仕入れ方も変わりましたし」

___そもそもの脚本の着想はどんなところから来ているのでしょうか。

大浜「そもそもは僕の父親が高校教師をしていまして、脚本を書いた時がちょうど父親の定年退職のタイミングだったんですよ。どう考えてもそれがきっかけとしか思えないですね(笑)」

___全編広島弁ですが、広島ご出身なのでしょうか?広島出身ではない役者さんにとって方言は難しかったのではないのでしょうか。

大浜「そうです。僕が広島出身なので全て広島弁です。みなさん苦労はしてますね」
石橋「僕は昔っから大浜さんとやっていて、その時に猛特訓されたんで、今んところは(大丈夫)笑。僕はもともとは大阪出身なんですが、大阪弁と言葉は同じなのに音が違う言葉があって、そういうのに混乱はしました。でも今回は脚本を大浜さんが全て読んでくれて、それを録音したものをみんなに配ってくれたので、その音を聞いているので音は取りやすかったですね」

___広島人の気質とはどんなものなんでしょうか。女性の言葉にもなんだか凄みを感じました。

大浜「よその県を見た訳ではないんであんまりわからないんですが、基本的に気性は荒いと思います。今はわからないんですけど、関西も気性は荒いですがベースにユーモアがある。広島とはまた違う気がしますね」

___石橋さんは今回久しぶりに「せんせい」の脚本を読んで、どのようなことを感じましたか。

石橋「やっぱり『面白いなぁ!』と感じましたし、大浜さんの脚本って溜めてドン!と笑わすというのが多いんですけど、この作品に関してはニヤニヤが止まらない(笑)。脚本を読んでいる間ずっとニコニコしていて、でもちょっとミステリーなところもあってすごく面白い作品だなぁと思っています。最後まで飽きないんです」

___ミステリーなんですか?

石橋「ミステリーだと思いますよ。この後、また2人登場人物がいるんです」

それは楽しみですね。(取材・文・写真/新井鏡子)

公演情報

LIVES せんせい
<公演期間>   2025年4月3日 (木) 〜 2025年4月7日 (月) 
<会場>     ウッディシアター中目黒

<出演> 
星乃まりな、川崎瑠奈、ゆゆ・THE・エクスカリバー、木村圭吾、荒川智大、杉本美保、原動機付、鈴木里奈、田中優希、近藤恭世、ちむらゆーり、佐藤文吾、さとう豆、瀬乃さくら、舘秀々輝、樋郡めぐみ、佐藤夏紀、石橋政人、大浜直樹

<スタッフ>
作・演出 大浜直樹
演出助手 石橋政人
照明   富山貴之
美術   江連亜花里
音響   宮﨑裕之
舞台監督 松澤太陽
制作   LIVES
    合同会社 太陽マジック

<団体概要>
LIVES
1999 年、近畿大学文芸学部の卒業生で結成した演劇ユニット。
2002 年に全国規模の演劇大会『E-1グランプリ』で優勝。その後多数の長編作品を上演。
脚本・演出は主宰の大浜直樹が手掛ける。

<日程>
4/3(木)  19:00
4/4(金)  14:00/19:00
4/5(土)  13:00/18:00
4/6(日)  13:00/18:00
4/7(月)  13:00
※開場は開演の30分前。受付開始は開演の45分前になります。
※上演時間は約2時間です。

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