【稽古場レポート】今の時代にも通じる普遍的な物語 『悲しみに戯けたピエロ-マボロシの作詞家-』

小谷嘉一が脚本・演出・プロデュースを手がけ、大叔父である作詞家・宮川哲夫の物語を描く『悲しみに戯けたピエロ-マボロシの作詞家-』が2025年2月5日(水)に開幕する。岩佐祐樹が主演を務め、安藤千伽奈、山沖勇輝、真野拓実、中島拓人、望月雅友、永石匠、富山バラハス、佐藤響汰、汐月しゅう、三野友華子らが出演。開幕まで1週間を切ったタイミングで稽古場取材を行い、岩佐と安藤から開幕に向けたコメントも伺った。

<稽古場レポート>

この日行われたのは衣装つきの通し稽古。小谷から「稽古をなぞるんじゃなく、新たな発見をするつもりで」と声がかかり、円陣を組んだ上で稽古が始まる。
本作は、「街のサンドイッチマン」、「ガード下の靴磨き」、「東京ドドンパ娘」といったヒット作を生み出し、「霧氷」で第8回レコード大賞を受賞した宮川哲夫(岩佐祐樹)と、令和に生きる舞台女優・石本希望(安藤千伽奈)の苦悩や葛藤が交錯していく物語。

「実在の人物をモデルに、創作や表現に対する苦悩を描く」と聞くと堅く難しい作品かと思うが、明るくユーモアに満ちた前説とにぎやかなオープニングによってその不安は払拭された。舞台で演じたことをきっかけに宮川の故郷・伊豆大島にやってきた希望と出会う七海(三野友華子)、宮川の友人である伴蔵(山沖勇輝)と井出(真野拓実)、宮川に大きな影響を与えた石坂(望月雅友)など、令和・昭和それぞれに個性的ながらどこか親近感がわく人々が次々登場し、自然と物語に引き込まれていく。友人同士の気軽なやり取り、仕事相手との駆け引きや衝突、家族の温かさなどが時に熱く、時にコミカルに描かれており、自由度の高いシーンではアドリブも。演出を手がける小谷やスタッフ陣はもちろんキャストからも大きな笑い声が上がっているのが印象的だった。

宮川を演じる岩佐は、“詩人”と“作詞家”の間で揺れ動く心を丁寧に描き出す。自らが本当に表現したいものと世間のニーズ・評価といった普遍的なテーマに真正面から向き合いながら必死に生きる宮川の苦悩と変化を瑞々しく見せてくれた。

そんな宮川に共鳴する希望役の安藤も、表現者としての葛藤や苦しみを等身大で演じる。彼女がなぜ宮川の故郷である伊豆大島にやってきたのかをセリフはもちろん表情でもしっかり伝え、共感できるキャラクターを作り上げている。


約2時間に宮川の半生と希望の物語がぎゅっと詰め込まれており、友人、仕事仲間、家族……と多くの人々が登場するのだが、その誰もが魅力的だ。
宮川の才能を評価し応援する作詞家の石本(汐月しゅう)、作曲家の吉田(中島拓人)、ビジネスパートナーである音楽プロデューサーの磯辺(永石匠)らのシーンは、友人とはまた違う信頼関係が伺えるのが楽しい。
言葉や演技を仕事にする人物がメインではあるものの、仕事に対する姿勢、家族や友人への思いなど胸に刺さるセリフも多く、誰かしらに感情移入できるのではないかと感じた。

また、作中では宮川が作詞した楽曲が登場するほか、戦前から戦後、現代と様々な時代が描かれている。各シーンに登場する音楽、小道具やファッションも見どころの一つと言えるだろう。

現代を生きる希望とともに宮川の半生を辿るもよし、彼が葛藤しながら紡いだ言葉に注目するもよし、個性的なキャラクターとキャスト陣の化学反応を楽しむもよし。身構えずに見て、笑って、大切なメッセージを受け取ることができる作品を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
本作は2025年2月5日 (水) よりシアターグリーンBIG TREE THEATERにて上演されるほか、2月11日(火)からはアーカイブ配信も行われる。

<キャストコメント>

宮川哲夫役・岩佐祐樹

いいスタートダッシュを切り、そのままの勢いで進んでくることができました。本番を終えるまでペースを落とさず駆け抜けたいです。
僕が演じる宮川哲夫さんは実在する方。だからこその人間くささと、想いを言葉にしていく詩人を演じていく奥深さを感じています。演じている時は苦しいですが、すごくやりがいがある役です。
見どころとしては、小谷さんが想いを詰め込み、たくさん準備して書いた作品だということ。史実に基づいた深みがありますし、昭和時代のお話ですが今の時代にも通じる価値観が詰まっていて、毎日頑張っている方々に刺さるはずです。一つひとつの言葉を大切に受け取っていただけたら嬉しいですし、面白みを感じていただけると思います。
気軽に見ていただけるし、それでいて持って帰れるものもたくさんある、温かくて素敵な作品になっています。どうぞ心ゆくまで楽しんでください。

石本希望役・安藤千伽奈

お稽古期間はあっという間でした。本番までにもっと自分に落とし込み、より良いものを皆様にお見せできたらと思っています。コニーさん(小谷)が日本で作る最後の作品ということもあって、気合を入れて挑みたいなと思っています。
私が演じる希望は、役者をやっている人なら絶対に共感できる役だと思います。私も希望と同じような悩みや葛藤を感じたことがあるので、そこは大切に演じていきたいです。涙するシーンもありますが、個人的にアドリブをすごく楽しみにしています(笑)。稽古でも毎回違っていてすごく面白いので、見どころだと思います。
私が演じる希望はコニーさんであり、私自身も共感できる存在。そこをもっともっと理解して、落とし込みたいです。役者に限らず誰もが共感できる物語だと思うので、この作品が、見てくださった方にとって支えになれたらいいなと思っています。

<公演情報>

小谷嘉一プロデュース公演『悲しみに戯けたピエロ-マボロシの作詞家-』

公演期間:2025年2月5日(水)〜 2025年2月9日(日)
会場:シアターグリーンBIG TREE THEATER(東京都豊島区南池袋2-20-4)
※全公演アフタートークあり
チケット料金 SS席:9,900円 S席:8,800円
A席:7,700円(全席指定・税込)

■出演者
岩佐祐樹 安藤千伽奈
山沖勇輝 真野拓実 中島拓人 望月雅友
永石匠 富山バラハス 佐藤響汰
高橋みのり 加藤あやの じん
黒河内りく 真辺彩加 道本成美
汐月しゅう
三野友華子

■スタッフ
作・演出:小谷嘉一
演出補:大部恭平、富山バラハス
音楽:野田浩平
舞台監督:白石定
運搬:株式会社グランディング
舞台美術:仁平祐也
音響:前田マサヒロ
照明:糸賀大樹
宣伝美術:神谷光
スチール撮影:遠山高広
メイク:神保奈々
衣装進行:中野絢子
制作:ofcha.biz、近藤侑風
映像:コヤムービー
メイキング:小野塚圭太
Web:鈴木莉菜
衣装協力:株式会社Ask
プロデューサー:小谷嘉一、大部恭平
監修、制作統括:大部恭平
企画・製作:おぶちゃ

<アーカイブ配信公演>
4,000円(税込)
販売期間:2025年1月19日(日)22:00〜2月17日(月)22:00
配信公演:2025年2月6日(木)回想定
アーカイブ配信期間:2月11日(火)22:00〜2月17日(日)23:59
https://ofcha.theshop.jp/items/97483285
※ご購入のタイミング、視聴開始のタイミングに関わらず、2月18日(火)0:00以降は映像の再生はいただけません。

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