2014年に初演、2016年に再演され、演劇界に衝撃を与えた『おとこたち』(作・演出=岩井秀人)が、ミュージカルとなって新たに幕を開ける。
音楽を担当するのは『世界は一人』(2019年)に続き岩井とタッグを組む前野健太だ。
4人のおとこたちの60年に渡る物語がオリジナルミュージカルとして一体どう立ち上がり、どんなふうに観客の前に姿を現すのか。その制作の過程をPARCOSTAGEにて全5回に渡ってレポートする。
そのVol.1冒頭をカンフェティでも特別にお届け!
Vol.1<既存のミュージカルとはまったく違う作品になる予感>
1月下旬、都内スタジオにてミュージカル『おとこたち』の全体稽古が始まった。開始時刻を前に出演者やミュージシャンが続々と稽古場に集まってくる。……あ、ちょっと嘘です。続々と、とはいえこのご時世。稽古初日につきものの関係者名刺交換大会などはなく、キャスト、スタッフそれぞれが抗原検査を受けたのち、何となくソワソワした空気をまとって静かに着席。
そんなソワソワの中、カフェでの雑談のような雰囲気で語りだす作・演出の岩井秀人。
「『おとこたち』の初演は2014年。現代を描いた作品ではありますが、僕はこれを古典にしてきたいと思ってます。それぞれの俳優さんがなぜその役を演じているのか必要性を共有するためにも、皆さんの体験談などお喋りしながら稽古を進めていけたらいいですね」。俳優自身の体験談?おもしろい。海外発のグランドミュージカルとはまったく違うアプローチで、おとこたち4人が60年に渡って紡ぐ半径5メートルの世界が動き出した。
台本の読み合わせ、いわゆる本読みで最初に口を開いたのは作品冒頭に登場する山田役のユースケ・サンタマリア。「こんにちは、元TikToker、現ライバーの田子春夫です」と、台本には1文字も書かれていないアドリブをスっとかまして全員の爆笑を誘う。これで“アレコレやっても大丈夫”な空気が生成され、場が一気に温まった。その温度を受け、津川役の藤井隆は完璧な間合いでアノ液体のシーンを成立させていく。さらに負けじと参戦する森田役の橋本さとしと鈴木を演じる吉原光夫。ってよく考えたらこのふたり、ミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役経験者。パンを盗んで投獄され、市長になった男を演じて観客の涙を誘ってきたふたりだが『おとこたち』では誰からも尊敬されないし、もちろん革命にも参加しない。涙は誘うかもしれないけど。
取材・文 上村由紀子(演劇ライター)
大学の演劇科を卒業後、舞台作品や映像への出演、FMラジオDJなどを経て取材の現場へ。幼少時からの観劇本数は約4000本。演劇・ミュージカルの専門家としてTBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界)、『アカデミーナイトG』等のメディア出演や番組監修、トークイベントの構成・司会も多数。
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
ミュージカル「おとこたち」
公演日程:2023年3月12日(日)〜4月2日(日)
会場:PARCO劇場
脚本・演出:岩井秀人
音楽:前野健太
出演:ユースケ・サンタマリア 藤井隆 吉原光夫
/大原櫻子 川上友里/橋本さとし
4人の「おとこたち」の履歴書(役どころ紹介)を公開!
本作に登場する「おとこたち」、山田、津川、鈴木、森田。
4者4様の人生をあゆむ彼らが、もし履歴書を書いた(書かされた)なら…。
彼らの人生が垣間見える、一癖も二癖もある回答をお楽しみください。
【スタッフ コメント】
【脚本・演出】岩井秀人/Iwai Hideto
みなさま~!見た~?キャスト!すごくなーい?
あ、岩井です!
このたび、ハイバイ並びに岩井の代表作『おとこたち』をミュージカル版としてさらに爆発させる運びとなりました!
ここ10年でいちばんくらいのビックリです!自分でも。
それにしてもキャストがほんと期待しかできないですよね。
ハイバイや岩井が気になってこれを読んでいる人は、もう見に来てくれると思いますが、
キャストが気になってこれを読んでいるあなた!期待してください。作品はめちゃ保証します。
そして音楽担当は、『世界は一人』でも大大大活躍してくれた前野健太さんです。
準備は整いました。
あの4人の男たちの悲喜劇全てを、マエケンサウンドでもって、壮大に天に召していこうと思います。
あー楽しみだ。もうスタジオに入ってクリエーションは始まっておりまして、歌の力の凄まじさをひしひしと感じております!
というわけで、来年もよろしくです!
【音楽】前野健太/Kenta Maeno
岩井さんの「歌心」
出演者の皆さんの「歌声」
これが合わさってとんでもないことになりそうです。
豊かで、ばかばかしくて、お茶目で、スウィートで、
カッコよくて、ジーンときて、涙をふいて
そんな曲たちを作れたらなと思います。
あふれる歌声を、お楽しみください。
【キャスト コメント】
ユースケ・サンタマリア/Yusuke Santamaria
前に演った岩井くん演出の舞台が、異常に記憶に残っているんですよ。
初日から千穐楽まで客席の前の方で僕らの芝居を見ながら、メモとっているんです。ずっと。
そして毎回、いろいろな注文を出してくるんです。ちょっと無茶めなやつを(笑)。
あぁ、この人には終わりが無いんだなと思いました。 そこが狂っているし、信頼できる。
マエケンの歌も楽しみ。 共演者の皆んな、大好きです!
舞台『おとこたち』楽しみにしてほしいです。
藤井隆/Fujii Takashi
岩井さんに初めて呼んでいただいた『いきなり本読み!』が異常に楽しくて興奮しました。この度また声をかけていただいてとても嬉しいので精一杯頑張ろうと思っています。パルコ劇場へ通えるのもとても嬉しいですし大阪と福岡の旅公演があるのもとても楽しみです。稽古を想像すると緊張しますが、皆さんと楽しく稽古を重ねて本番を迎えられたらいいなぁと思っています。どうぞよろしくお願いします。
吉原光夫/Yoshihara Mitsuo
ある舞台を観劇してくださった岩井さんからお手紙を頂き、その作品や演技についての感想の的確さに頷き、そして岩井さんがお芝居の中での歌唱を(ミュージカルに対しても含め)疑問視してる事に同調して、すぐにオファーを受けました。
その後、ひょんな事から作品作りみたいなのにも参加させて頂き、楽しい時間を過ごさせて頂きました。
まだ始まってないのに、もうとっくに始まってる。
きっと初日には凄い景色が広がってるのだろうと…たぶん笑
確信してまーす。
こんなに楽しみなのも久しぶりです。
是非劇場にて、お待ちしてます!!
大原櫻子/Ohara Sakurako
初演を観させていただきましたが、これがミュージカルになる…というのが、正直想像出来ません!どのような形に変化するのか、とてもとても楽しみです。
オリジナルの『おとこたち』の脚本を改めて読ませていただき、人間の複雑な心境が明確に描かれすぎていて、笑えないエピソードもつい笑ってしまう自分がいました。
この物語に出てくる「おとこたち」に、ちょっと…いや、とても大きく心に傷を負わせるような役になるのかなと思っています。じわじわと「おとこたち」を責めていきたいと思います(笑)
川上友里/Kawakami Yuri
「おとこたち」のミュージカルとは。なんですか?どんな風ですか?楽しみです。私は19歳から演劇をし続けておりますが、ミュージカルは初めてでございます。この作品に私を呼んで下さる岩井さんはギャンブラーですね、かっこいいと思います。とにかくお客様に楽しんでいただくべく皆さんと精一杯頑張ります。是非観に来てください!
橋本さとし/Hashimoto Satoshi
ある舞台で二等兵の兵隊役で岩井秀人氏と出会い、「こんなに頼りなげな二等兵が似合う奴いない!」と横で生気の無い目をして立っている彼に役者として嫉妬し、シーンが終わり暗転になった途端に鳥目気味の僕の手を引き楽屋まで誘導してくれる彼に「お、頼りになる奴やん!」と心の中で感謝してました。
そんな岩井氏の人間への優しい眼差しと飄々とした独自の演劇観に少し毒のあるスパイシーな世界観にいつか参加させてもらいたいと思っておりました。
それが叶ったのが、『いきなり本読み!』というムチャ振りな企画で恥部を曝け出されました。
今回は稽古で思い切り曝け出し、本番では恥ずかしくないよう演じたいと思います。
曲者の男たちが集う芝居…楽しみです。