『太陽にほえろ!』『蘇える金狼』『野獣死すべし』『探偵物語』『ブラック・レイン』など数多くの作品に出演した昭和を代表する俳優・松田優作氏が作・演出を手掛けた最後の舞台『真夜中に挽歌』が、11月20日(木)より「上野ストアハウス」で上演される。

物語は、東北の片田舎から上京してきた青年・とおるが、憧れの暴走族リーダー・ジョージとその恋人ハクランと出会い、3人は親しくなるものの、それぞれの現在と過去が次第に交錯し始め、思わぬ方向へと進んでいく。1978年に初演、2021年に再演されたが、本作では初演直前に内容が改変される前の“遺稿版”として初めての上演となる。

今回、監修として優作氏の妻で女優の松田美由紀氏、演出は再演に続き、優作氏とは文学座研究生時代の同期で長年活動を共にし、初演ではとおる役を演じた野瀬哲男氏を迎え、新たな若手キャストでの上演。また優作氏に馴染み深い方をゲストに迎えるアフタートーク&ミニライブや優作氏の主演映画オリジナルポスターやなどの展示など、松田優作ファンにはたまらない特別企画も用意される。
ここでは、監修の松田美由紀氏よりメッセージ、並びに本作に出演する徳田皓己(ジョージ役)、世森響(ハクラン役)、船津祐太(とおる役)のインタビューをお届けする。
松田美由紀 独占メッセージ
今から47年前に松田優作が書いた作品を、この年に上演されることがとても嬉しいです。
昭和、平成、令和と時代は変われども、表現のエネルギーは光り続けますし、その力は決して何も変わっていないと思っています。是非当時のエネルギーというものをピュアに触れて欲しいですし、人の愛といった今となっては希薄になっているものを感じてもらえると嬉しいです。
そしてジョージ役の徳田さん、ハクラン役の世森さん、とおる役の船津さんは全員20代と若いですけど、俳優さんは基本的に何かに憑依する生き物だと思っていて、戦国時代の役を演じる時もあれば、戦争中の役を演じる場合もあるわけで、はっきり言ってあまり時代は関係ありません。大昔の人に魂が入っていったり、自分の肉体を借りて表現する仕事の人たちだから、必ず今の時代の若い俳優でもそれが体験できると思うわけです。俳優は役の器の中にそのエネルギーを閉じ込めて、一気に開放するのが仕事。純粋に表現してもらいたいです。

※来場者のみが体感できる各公演内でのサプライズにご期待、ご注目下さい。
徳田皓己・世森響・船津祐太 インタビュー
――宜しくお願いします。インタビュー前に監修の松田美由紀さんと初めてお会いしていましたが、緊張されましたか。
船津「はい、メチャメチャ緊張しました。美由紀さんは本当に美しくて、とおるはハクランに見惚れるという役ですけど、美由紀さんのお姿を見て、そういう感覚が掴めた気がしました」
世森「以前『ブラック・レイン』のリバイバル上映の鑑賞したことがありまして、上演後に美由紀さんのトークショーもあったんです。イベント中の写真撮影タイムで撮った写真が今でもたくさん残っていますし、昔の作品やCMのyoutube動画などネットにあるものは全て見ていたくらいの憧れの方です。今日初めてお会いできるということで、予定より早く来てしまうほど緊張しましたが、挨拶の時に「頑張ってね」と声をかけていただいてくれて。素晴らしいお人柄で、緊張がちょっとほぐれました」
徳田「最近ではいつも徳田皓己とジョージが同居しているような不思議な感覚で、取材の時も『ジョージだったら』というジョージ目線で見ている僕がおりました。そのせいか、あまり緊張はしませんでした。むしろ、おそらくジョージだったら『いい女だな』と言いそうだなと、俯瞰している自分がおりました。自分ならとてもそんな上から目線の言葉は思いつけないですが!(苦笑) それくらい美由紀さんは美貌の方でした! 収録後、初めて美由紀さんとご挨拶させていただいた際に、しっかり僕の目を見て「頑張ってくださいね」と言ってくださいました。圧倒的なオーラでドギマギしました。野瀬さんからお聞きする優作さんの“厳しさ”と“優しさ”の部分を、美由紀さんの中に見たような気がします」

――ありがとうございます。松田美由紀さんが監修する『真夜中に挽歌』に出演される3人ですが、本作に出演が決まった時、どのようなお気持ちだったか教えていただけますか。
徳田「驚きと嬉しさの両方があったというのが正直なところです。野瀬さんが、面談の際に僕が入った瞬間『ジョージだ!』と思ってくださったことが、僕にとっては何より光栄なことですし、嬉しいことです。偉大な松田優作さんの作品に出られるプレッシャーもありますが、演じるからには全力で松田優作さんの魂をお伝えできるよう、誠心誠意、真心込めて演じさせていただきます」
世森「再演の台本を拝見した時に、ハクラン自身が可憐で凛々しくて、なよなよしている部分がある私にとって難しそうだなと思ったんですけど、徳田さん同様、私も野瀬さんから第一印象ですごく褒めてくださって、今はやる気満々です」
船津「『僕でいいんですか』というところは正直ありました。『ジョージ役でもいいかも』とは言われていたんですけど、野瀬さんとの面談で、ちょうど徳田さんとすれ違った時にあまりにもジョージの雰囲気にピッタリ過ぎて『あっ、落ちた……』と思いましたが、とおる役で選んでくれて、本当に嬉しかったです。少しでも爪跡を残せるように全力でお芝居に向き合っていきたいと思います」


――台本を読んでみて、どのような感想を持たれましたか。
徳田「当時の時代を知らない僕たちがあの時代を演じるというプレッシャーはあります。でも時代が変わっても、同じ20代の僕たちと変わらないものも在るはずで、優作さんが届けたかった核心のようなものを伝えられたらと切実に思っています。個人的には、一番最初のセリフがジョージなので、そこでこの作品の良し悪しが決まってしまうくらいの覚悟感で挑んでいます。また、自発的に物語の進行や物事を仕切る役が初めてなので、今回の経験を通して役者として成長できればと思っております」
船津「一言で表すと“衝撃”であり“アングラ”で、令和の時代でどこまで表現出来るだろうみたいな楽しみもあります。もちろん今の時代に配慮した形にはなるんですけど、当時のエネルギーは損なわず、演劇好きの方にも、松田優作さんのファンの方にも、何か残せるんじゃないかなと思って、皆さんの前でお見せ出来るのを楽しみにしています」
世森「前回公演のDVDを最初に観ていて、そのイメージで遺稿版を読み進めていたら、『えっ、こういう終わり方なんだ!』という印象がすごい強かったです。終わり方が違うということは、その登場人物のバックボーンも全然違うものになってくるので、この3人でしかできない『真夜中に挽歌』になるんじゃないかなと思っていますし、ハクランは今でいう“あざとい”キャラクターで、その部分がお客さんに伝わるようにこれから稽古を重ねていきたいです」


――演じる上で、役作りをされたりしましたか。
徳田「松田さんが出演された作品や当時の暴走族の映画もたくさん観て役作りに努めてきましたが、未だ試行錯誤中です。声のトーン、演じ方、一つ一つ野瀬さんにご指導いただいて稽古に励んでいます」
船津「青森の田舎から来たという設定もあり、青森弁の方言指導を専属の方とマンツーマンでやってきましたが、発音に関して日本語よりイタリア語の方が似ているくらい難しくて……。青森弁を体に染みつかせるために、今も青森の方の映像を見たりしています」
世森「私も船津さんと同様、当時の話し方についていろいろと見たり聞いたりしました。昭和の方の話し方が一音一音がはっきりしていて、例えば今なら「喋れる」が主流ですけど、当時だと「喋られる」といった感じで、今とは少し違うイメージがありますね」

――本作の見どころや注目ポイントを教えて下さい。
世森「起承転結がハッキリしているのに、どこからが“転”だろうみたいな、3人の立場や関係性がいつの間にか変わっている、まるでジェットコースターのような感覚が本作の見どころだと思います。あととおるの変貌ぶりにも注目して欲しいです」
船津「きっと当時は奇をてらう作品ではなく、王道な作品として成り立っていたと思っていて、この令和の時代に上演できるというところは見どころではないでしょうか」
徳田「優作さんがジョージ・とおる・ハクランそれぞれに込めた想い。僕たち全身全霊で挑みますので、僕たち3人を通して、優作さんの魂を少しでも感じ取っていただけたら嬉しいです」

――これまで松田優作さんの作品をたくさんご覧になられたそうですが、一番印象に残っている作品は?
世森「先程も話しました『ブラック・レイン』です。テレビやスマホではなく、映画館で鑑賞したというのもあって、臨場感が伝わってきましたし、疾走感が溢れてました」
船津「あまりにも有名ではありますが、『太陽にほえろ!』の殉職シーンですね。『なんじゃこりゃ!!』のセリフはいろいろな方がモノマネとかでやられていますが、初めて殉職回をじっくりと観た時、『音が割れるくらい声が出ていたんだ』という衝撃はありました。あのシーンが語り継がれる理由も納得できるし、誰もオリジナルは超えられないなと思いました」
徳田「『ブラック・レイン』も『太陽にほえろ!』も大好きですけど、僕は『家族ゲーム』です。家庭教師として、受験生を教えながらも自分はエロ雑誌を読んでいたり、受験生をビンタして絶妙なタイミングでもう一度ビンタするシーンは、コメディ要素としてはピカイチです。異質ですけど、優作さんらしい作品だなと思いました」
――では公演を楽しみにされている方に向けてメッセージを船津さんからお願いします。
船津「松田優作さんの魂というのが確かにあって、それを繋げられる野瀬さんが演出して、もちろん松田優作さんのファンの方も楽しめると思いますし、松田優作さんをあまり知らない方や、演劇を楽しみに僕らを観に来てくださる方でも絶対楽しめる作品になると思います。ぜひ楽しみにお待ちしていただければなと思います」
世森「一つ一つのセリフが、演出の野瀬さんや私たち3人の気持ちがこもっていて、上演時間はちょっと短いと感じるかもしれませんが、本当に密度が高い作品になっています。ぜひ劇場でお待ちしております」
徳田「令和の時代は、昭和の時代と比べて、自分に甘い部分みたいなところは多少なりあると思っています。自分の生き方や周りの接し方を考えていただけるような作品になっていますし、僕たちもこの世界観を表現して、エネルギーとしてお届けしますので、ぜひ楽しみながらも考えていただけたらと思います」
松田優作 作『真夜中に挽歌』は、11月24日(月・祝)まで上演。
(取材・文:冨岡弘行)


プロフィール

松田美由紀(まつだ・みゆき)
1961年10月6日生まれ、東京都出身。1979年『金田一耕助の冒険』で映画デビュー。女優・歌手・写真家・アートディレクター・映像作家などマルチに活躍中。本作では監修を担当

徳田皓己(とくだ・こうき)
1999年9月8日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に、劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演、新ミュージカル「スタミュ」2ndシーズン、特攻隊ミュージカル「流れる雲よ~令和六年より愛をこめて~」など

世森響(よもり・ひびき)
2001年2月17日生まれ、千葉県出身。主な出演作に、舞台「黄泉の国でも愛してる」、清水邦夫作、世森響企画・主演・演出「朝に死す」、「花飾りも帯もない氷山よ」、「薔薇十字團・渋谷組」、劇団めでたし「妖の冬桜」など

船津祐太(ふなつ・ゆうた)
8月20日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に、劇団すたあComet「NEET with FALLEN WARRIOR」、劇団八一「NANDEMOIDO3」、劇団すたあComet「パニック・パーティー・パラダイス」など
公演情報
松田優作 作『真夜中に挽歌』
日程:2025年11月20日 (木) ~2025年11月24日 (月・祝)
会場:上野ストアハウス(東京都 台東区 北上野 1-6-11)
■出演
徳田皓己
世森響
船津祐太
上西雄大(特別出演)
■スタッフ
作:松田優作
企画・演出:野瀬哲男
監修・協力:松田美由紀(オフィス作)
劇中歌:松田優作
共同プロデューサー:野瀬哲男、渡邉俊夫
■公演スケジュール
2025年
11月20日(木) 19:00
11月21日(金) 15:00/19:00
11月22日(土) 14:00/18:00
11月23日(日・祝) 14:00/18:00
11月24日(月・祝) 13:00/17:00
■チケット料金(税込)
S席チケット:7,500円
S席チケット+チェキ1枚:9,500円
S席チケット+チェキ2枚:11,500円
S席チケット+チェキ3枚:13,500円
S席チケット+チェキ4枚:15,500円
S席チケット+チェキ5枚:17,500円
S席チケット+フォトブック:9,500円
(ブロック内自由席)
自由席チケット:5,500円
自由席チケット+チェキ1枚:7,500円
自由席チケット+チェキ2枚:9,500円
自由席チケット+チェキ3枚:11,500円
自由席チケット+チェキ4枚:13,500円
自由席チケット+チェキ5枚:15,500円
自由席チケット+フォトブック:7,500円
U18(18歳未満):3,000円(全席自由席)
★ゲストスケジュール (各回本編終了後)
11月20日(木) 19:00
・野瀬哲男(演出)・徳田皓己・世森響・船津祐太による出演者クロストーク
11月21日(金) 15:00/19:00
・李世福(Gt)&奈良敏博(シーナ&ロケッツ(Ba))によるミニLIVE
11月22日(土) 14:00/18:00
・上西雄大 (映画監督、俳優)
11月23日(日) 14:00/18:00
・二家本辰己 (殺陣師、アクション監督)
11月24日(月・祝) 13:00
・一色采子 (女優)
・西田聖志郎 (俳優、プロデューサー)
11月24日(月・祝) 17:00
・野瀬哲男(演出)・徳田皓己・世森響・船津祐太・上西雄大による出演者クロストーク