
2022年、日生劇場で初演の幕を開けた日本発のオリジナルミュージカル『四月は君の嘘』が、2024年のロンドン・ウェストエンド、韓国・ソウル現地プロダクションでの上演という快挙を経て、いよいよ8月23日より東京・昭和女子大学人見記念講堂で、待望の再演の幕を開ける(のち9月12日~14日愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール、9月19日~20日大阪・梅田芸術劇場メインホール、10月4日~5日富山・オーバード・ホール 大ホール、10月12日~13日神奈川・厚木市文化会館 大ホールで上演)。
大ヒットを記録した、新川直司の同名コミックを原作としたこの作品は、瑞々しく切ない高校生たちの友情や恋に、音楽を志す者同士が出会いと別れを通してその才能を開花させて行く音楽ものとしての魅力を併せ持った傑作で、ミュージカル界のヒットメイカー、フランク・ワイルドホーンが作曲を担当。キャッチーで瑞々しい音楽が、原作の魅力を十全に引き出す傑作ミュージカルとして鮮烈な印象を残した。
そんな作品の再演で、数々のピアノコンクールで優勝し神童と称えられていたものの、指導者であった母の死をきっかけに自分が演奏するピアノの音が聴こえなくなる、という大きな壁にぶつかりピアノから遠ざかっている主人公・有馬公生役を演じる東島京が、岡宮来夢とのWキャストで主演として迎える作品への意気込みや、ミュージカルへの思いを語ってくれた。
──まず作品についてどう感じていらっしゃいますか?
「とにかく綺麗だなと思います。台本の言葉も、原作漫画もアニメもそうなんですが、心に残るメッセージ、名言が詰まっていて。音楽含めてすべてが心に残る作品です。そんな作品で主演を任せていただいたので、自分の中では不安もプレッシャーもありますが、いまの自分にできることはまっすぐ正直に、誠実に役と向き合うことだと思っていて。公生のことも作品のことも、より深いところで理解できるように、ずっと正直でありたいなと思っています」
──その有馬公生役についてはどう感じていますか?
「公生にはすごく共感できるんです。考え方や、物事の捉え方についても「うん、そうだよね」と、自分でもそう思うなというところがたくさんあって。公生は本当に優しくて、ついつい自分の気持ちを後回しにしてしまうのですが、誰かのために何かをすることを、ずっと大切にして彼は生きてきたんだろうなと思うし、僕自身もこの人に笑顔になってもらいたいからやる、ということがこれまでにも結構あったというか、いつもそうだったと思うので、そういう公生との共通点を大切に、丁寧に彼と手を繋いでいけたらと思います。
公生は目指していたものを失って、舞台がはじまった時には暗闇に飲み込まれていっているように見えるのですが、決して光がなくなったわけではなくて、光はちゃんとあるけど、彼に降りかかった闇に包み隠されて見えなくなってしまっている。だからずっと暗い海の底で叫び続けているけど、誰にも届かないから一人閉じこもっている。でも本当は、どこかで誰かに傍にいて欲しい、手を伸ばして光を取り出して欲しいと願っているように感じていて。そういう感覚って僕にもありましたから、すごく理解できるので、彼の消えていない光をきちんと表現していきたいです」
──そんな公生に手を差し伸べる人たちを演じる、共演者の皆さんについてはいかがですか?
「一方的に作品を拝見させてもらってきた方々ばかりで、Wキャストの公生役の岡宮来夢さんは座長経験も豊富ですし、役に入っていく過程を見ているところからたくさんの刺激をいただいています。宮園かをり役の加藤梨里香さんと宮本佳林さんはすごく明るいエネルギーに満ちていて、一緒にいると自然と笑顔になったり、温かい気持ちになるので、公生としても自分としても助けてもらっています。澤部椿役の希水しおさんと山本咲希さんは、ぶっきらぼうな態度をとりながらすごく真っ直ぐに向かってきてくれるので、公生として悲しんでいる暇もないくらいです(笑)。渡亮太役の吉原雅斗さんと島太星さんのお二方からは、役の良いところがそのまま表れていて、お芝居をしていてワクワクします。皆さん当て書きなのかと思ってしまうほど役にぴったりだし、世代も近いのでカンパニーの仲の良さが、舞台をリアルに創っていってくれるんじゃないかなと思います」
──また、この作品はやはりフランク・ワイルドホーンの楽曲の魅力も大きいですが、歌っていていかがですか?
「最高です。とにかく歌えることが幸せです。ワイルドホーンさんはきっと魔法使いなんだと思います。本当に音楽に愛されているし、ワイルドホーンさん自身も音楽を愛しているなと感じます。楽曲がまるで生きているように感じるし、すごくたくさんの表情があって、笑うし、泣くし、怒るし、悩むし、まるで自分の分身のようであり、ずっと傍に居続けてくれる相棒であり、家族のようでもあります。でもいざ歌うとなると、すごいカロリーが必要な楽曲ばかりなので苦労もしていますが、絶対に強い味方になってくれるだろうという確信があるし、役のことも作品のことも深く理解して書かれていると感じるので、上手く歌おうとするのではなくて、役の姿で何も作らずに役の声で歌うことで、お芝居と歌がひとつになるだろうと思います。お芝居と歌とダンスがすべて入っているのがミュージカルの何よりの魅力だと思っているので、楽曲と握手するように歌いたいです」

──東島さんが柚希礼音さんのコンサートで、将来の夢として「ミュージカルスターになりたい」とおっしゃって、歌唱力と共になんて頼もしいんだろうと感じてから、本当に一気にミュージカル界の新進スターとして躍り出ていらしたなと感じますが、ミュージカルとの出会いはいつだったのですか?
「母が元々ミュージカルファンだったので、小学4年生の頃に初めて劇団四季さんの『ライオンキング』を観て、その瞬間から、これがやりたい、ミュージカルスターになりたいと思ってきました。中学生の頃から本格的なレッスンをはじめて、もう楽しくて楽しくて、通っていたボーカル&ダンススクールの代表の方を通じていまの事務所の方と出会い、それからずっと同じ思いで突き進んで、いまこうして元気に舞台に立てていることが幸せです」
──ご自身の努力ももちろんですが、これだ!というものに幼くして出会えたというのもすごいことですね。
「本当に出会いに感謝していますし、いまも素敵な方々と出会いたいと思って日々を過ごしています。これからもたくさんのミュージカルに出会いたい。こうして作品や役を通してひとつずつのご縁に恵まれることを楽しみにしていますし、作詞作曲が趣味なので、自分の楽曲をいつか発表したいですし、それがミュージカルの舞台で流れる日が来たら、そんな幸せなことはないです。たくさんの夢を叶えるために、いま自分にできることを精一杯やって、一つひとつの出会いを大切に、自分に正直にいることが一番の近道になるのではないかなと思っています」
──これからのご活躍に期待していますが、まずはこの『四月は君の嘘』を楽しみにしている方々にメッセージを。
「美しい言葉と音楽で紡がれている、お芝居のなかにある歌もダンスもすべてが手をつないでいる素晴らしい作品です。僕が初めてミュージカルを観て、その魅力の沼にハマったように、きっとご覧になる方々にミュージカルっていいなと思っていただける舞台になると確信していますので、是非劇場にいらしてください!お待ちしています」
取材・文/橘涼香 撮影/中村嘉昭

プロフィール
東島京(ひがしじま・みさと)
2005年生まれ。大阪府出身。近年の主な舞台作品に『最高の家出』ミュージカル『チョコレート・アンダーグラウンド』『ワイルド・グレイ』『SONG WRITERS』『春のめざめ』柚希礼音 25th Anniversary『REON JACK5』など。
公演情報

ミュージカル『四月は君の嘘』
原作◇新川直司(講談社「月刊少年マガジン」)
脚本◇坂口理子
作詞・作曲◇フランク・ワイルドホーン
作詞◇トレイシー・ミラー/カーリー・ロビン・グリーン
編曲/ジェイソン・ハウランド
訳詞・演出◇上田一豪
出演◇岡宮来夢/東島京 加藤梨里香/宮本佳林 希水しお/山本咲希 吉原雅斗/島太星(いずれもWキャスト)ほか
8/23~9/5◎東京・昭和女子大学人見記念講堂
9/12~14◎愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
9/19~20◎大阪・梅田芸術劇場メインホール
10/4~5◎富山・オーバード・ホール 大ホール
10/12~13◎神奈川・厚木市文化会館 大ホール
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