
日本初演から45年目を迎えるミュージカル『ピーター・パン』。当時見ていた人が親となり、子供と一緒に観劇するなど世代を超えて愛され続けている。
そんな節目の今年、ヒロインのウェンディ役を山口乃々華が務める。オーディションで射止めた彼女だが、このウェンディには並々ならぬ想いがあった。
──本作を初めて観た時に「強く記憶に残っている」とコメントを出されておりますが、当時のことを教えていただけますか?
「2019年でEXILE NESMITHさんがフック船長を演じていたのがきっかけで、母親と観劇に行ったんです。その時のウェンディがすごく良くて、母親に「ピーター・パンに出演できたらいいな、でも踊りはできるけど歌は苦手だからな…」って言っていました。当時、まだミュージカルのお仕事をしたことがなかったのですが、それでも演じてみたいと思うぐらい印象的な作品でした。その後、別作品のミュージカルに挑戦する時に、マネージャーさんから今後の目標を聞かれて「ピーター・パンに出演して、ウェンディを演じてみたいです」ってずっと言っていたんです!6年越しで夢が叶いました。決まった時は、地元や東京の友達、メンバーからもお祝いの連絡をくれました。みんなが覚えているぐらい「ウェンディを演じたい」と言っていたので(笑)」
──では、ピーター・パンを観た時に感じたウェンディの魅力はなんでしょうか。また、自分と似ている部分があれば教えてください。
「まずは、とにかく可愛くて憧れちゃいますね。ピーター・パンに惹かれて恋をしているウェンディの気持ちが見ていて伝わるんです。そこに感情移入をしたのでより可愛く思えたんだと思います。あとは、私が末っ子なので、ウェンディのような面倒見の良いお姉ちゃんという存在に憧れているのもあります。そういった惹かれる要素がたくさん詰まった、わたしにとってのウェンディなんだと思います。私と似ている部分は多いかもしれません。小さいお子さんの面倒を見たりするのは好きだったり。性格で似ているところでは、好奇心旺盛・チャレンジ精神が強く、興味があればいろんな障害物を飛び越えていけるパワフルな面があるところが、私に近いところだと感じます。」
──その上で役作りをする際に気を付けていることはありますか?
「台本を読みながら、ウェンディの「大人になりたくない」という気持ちから始まり、その考えが変わっていく心の動きを理解していければと思っています。どうして最後に、お母さんに会いたい、家に帰りたいと思っていったのか、そういったところを読み解いていけたらと思います。」
──今回、特に楽しみにしているシーンなどはありますか?
「ウェンディの部屋でピーター・パンが自分の影を探すシーンがあるんですが、あの影を間近で見たいです!ちょっと「ドキッと」するような驚きがあるんですよね。あとはフライングのシーンも楽しみです。ピーター・パンとジョン、マイケルと一緒に飛べるのは嬉しいです。私自身、過去に空中ブランコに挑戦したことはあるのですが、お芝居でのフライングは初めてになります。実は、ピーター・パンが妖精の粉を振りまくシーンでの、粉を浴びてみたいです……ネバーランドシートの方であれば浴びることができるのですが、出演しているとどうしても浴びれないので(笑)最前列で妖精の粉を浴びてみたいですね。」
──初めて共演するピーター・パン役の山﨑玲奈さんの印象を教えてください。
「裏表のない真っすぐな方で、瞳がきらっとしていて綺麗で、とてもかわいいらしいんです。山﨑さんはピーター・パン役を先に経験されていることもあって、とても頼りがいがあり、年下とは思えないほどしっかりしています。10代という多感な時期にさまざまなことを考えながらも、まっすぐで力強い芯のようなものを感じさせる、本当に魅力的な方です。 一緒に歌練習をしているんですが、声が力強くてのびやかで。魅力的な歌声なので、本当に好きになっちゃうぐらいです。実は玲奈ちゃんの1年目(2023年)ピーター・パンを観劇したことがあるんです。たしか2日目に行ったんですが、完成度が本当に高かったんですよ。クオリティーの高さが衝撃だったので覚えています。」
──では、演出家の長谷川寧さんの印象はどうですか?
「今回初めてご一緒するので事前にお会いしていろいろとお話したのと、年始に私が出演している舞台を観にきてくれたんです。初対面でも初めてお会いした感じはなく、お話しやすい雰囲気の方なんですよね。フランクにお話をさせてもらいました。寧さん演出のピーター・パンは、アクロバティックでパワフルさがあります。セットも大きく派手ですよね。あと、本当に出演者全員が、汗をかきながら頑張っているので、私もあの中に入れることが楽しみです。」
──これから演じるウェンディは「大人になりたくない」と思いながら、ネバーランドに行きますが、山口さん自身も大人になりたくないと思ったことありますか?
「学校を卒業してから「自分の責任で生きていかなきゃいけないんだ」と自覚してきた中で、いつも誰かに囲まれているのも悪くなかったなって考えることもあります。本当の意味で「大人ってなんだろう、子供ってなんだろう」というのを考えたりもしますが、もうこれを考えている時点で大人なんだなと思っています(笑)大人ではありたいですが、子供でもいたい。」
──2019年で観た時と、2023年で観た時では、ご自身の中で違いはありましたか?
「初めて観劇した時は、圧巻で本当に楽しかったという感想で、2023年に観た時は、すでにお芝居のお仕事をしていたので、お勉強をするような目で観ていました。ただ、その時にも細かいことや嫌なことを忘れていて、見終わった後にリフレッシュした気持ちになりました。良い時間だったと思えるような、ちょっとわくわくして帰るみたいな。ピーター・パンは、誰しもが子供のころ触れたことのある作品だと思うんですよ。その時の気持ちに戻れるパワーのある作品ですね。童心に戻ったり、今ある悩みを一旦置いといて、この世界感を楽しめる、まさにネバーランドに連れて行ってくれるような吸引力の強さを感じます。」
──大人も一緒に楽しめる作品ということですね。
「大人にとってはリフレッシュになる作品じゃないかなと思います。実はウェンディ役が決まった時に、それこそ演劇や舞台をあまり見たことのない友達から「絶対に観に行くね」って言ってもらっています。その中には1~2歳ぐらいのお子さんを育てている友達もいるので預けて観に行くっていう方もいるんです。今回はママだけの観劇になるかもだけど、次回はお子さんを連れて、どんどん毎年恒例の観劇行事になってほしいです。お子さんの感想がどんどん変わっていくのも、親にとってはきっと嬉しくて楽しいし、同じものを観るのって、かけがえない瞬間になると思うので。」
──最後に本作の意気込みをお願いいたします。
「45年目でいろんな方々が重ねて繋いできたピーター・パン。きっとどんどん形を変えながら、これからも繋がっていくと思うんですけど、その記念すべき節目で、新しいウェディを自分なりに見つけられたらなと思っています。忘れられない夏になるように全部を注ぎ込み頑張りたいです。楽しい思い出、もう1回チャレンジしてみようと思う勇気、夢を見る力など、いろんなギフトをお渡しできるように頑張りますので、ぜひ劇場にお越しください。」
文・取材/カンフェティ
写真提供/ホリプロステージ
公演情報

青山メインランドファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』
■日程:2025年7月28日(月)~8月6日(水)
■会場:東京国際フォーラム ホールC
■作 :サー・J・M・バリによる作品を元にしたミュージカル
■作詞:キャロリン・リー
■作曲:モリス(ムース)・チャーラップ
■翻訳・訳詞:福田響志
■演出・振付:長谷川 寧
■出演:
ピーター・パン:山﨑玲奈
フック船長:石井一孝
ウェンディ:山口乃々華
タイガー・リリー:七瀬恋彩
ダーリング夫人:実咲凜音
ロストボーイズ*:飯田汐音、小野寺夏音、梶 みなみ、富田明里、宮島優心(ORβIT)
パイレーツ*:今村洋一、黒沼 亮、佐藤 大、七味まゆ味、武井雷俊、馬場礼可
モリビト*:ASUKA、奥富夕渚、住 玲衣奈、髙中梨生、堤 はんと、中川友里江、西垣秀隆、森田駿介
ジョン*(Wキャスト):白石ひまり/三浦あかり
マイケル*(Wキャスト):小林愛佳/柳生有咲
スウィング:三井夕萌、大賀辰次朗
*五十音順
※ネバーランドシート(妖精の粉付)販売中