ソング&ダンス・芝居・タップ・ミュージカル・スケッチ、あらゆる要素を取り入れた“怒涛のジェットコースター大娯楽エンターテインメント”として愛され続けるニュー・エンターテインメント・ショー『CLUB SEVEN』。
2003年5月の初演以来、脚本・構成・演出・振付を務める玉野和紀を筆頭に、吉野圭吾、東山義久、西村直人と初演から作品を支える“レジェンド”メンバーをはじめ、ミュージカル界をけん引する才能あふれるキャストたちが常に全力で作品を盛り上げ昨年遂に20周年という歴史を刻んだ。21年目となる今年は、新たに有楽町よみうりホールにところを移し、レジェンドメンバーと『CLUB SEVEN』お馴染みの大山真志、北翔海莉に加え、林翔太、鈴木凌平、留依まきせが初参加。『CLUB SEVEN』には欠かせない怒涛の五十音順ヒットメドレーをはじめ、ライブ感満載のエンターティメントが展開される。
そんな新たな歴史を歩み始めた『CLUB SEVEN』の稽古たけなわのなか(※取材は公演前の9月中旬)、玉野和紀、北翔海莉、留依まきせが、新時代の『CLUB SEVEN』への想いを語ってくれた。
──『CLUB SEVEN』がいよいよ21年目に突入ということで、劇場がシアター1010と有楽町よみうりホールになりますが、いまどのような気持ちで稽古に臨まれているのですか?
玉野「気持ちは何も変わっていないのですが、昨年は節目の20周年で過去にやって好評だったスケッチのリメイクを中心にしましたから、21年目の今回は新作で、と思って臨んでいます。まず僕がキャストの顔を思い浮かべながらパソコンで台本を書いているのですが、やっぱり実際に稽古をしてみて、みんなの意見も聞きながら作っていくとどんどん化けるし、Aバージョン、Bバージョンが今回もありますので、盛りだくさんになっています。」
北翔「スケッチは今回本当にジャンルが広いのですごく面白いなと思います。いま玉野先生がおっしゃったように、過去にやったものではなく全部新作なので、新しい自分のキャラクターをしっかり作っていかないとレジェンドの方達に置いてかれちゃうぞ、という気持ちがあるので、そこはしっかり自分を磨いて勉強しなければと思っていますが、お客様にはきっと楽しんでいただけると思います。」
──初参加の留依さんは、ここが面白いなどありますか?
留依「あ~、選ぶのはすごく難しいんです。」
玉野「そうだと思う。今回はスケッチに和ものもあるしね。」
北翔「「大奥」ですね。私は総取締役を演じますが、男子禁制の「大奥」をメンバー全員で演じるのですごく面白いです。」
留依「衣裳がとんでもなく豪華ですよね。」
玉野「あぁ、衣裳は豪華だね。またいつものミニミュージカル、今回はミニミニくらいなんだけど洋ものでやっていて、そこの衣装も豪華です。」
北翔「あとは、過去にあった「スケ番とツッパリ」を描いたスケッチがあるのですが、今回はその後を描いた話になります。これまでご覧になってくださっている方には「あのあとこうなったんだ!」が感じていただけると思いますし、もちろん今回はじめてご覧いただいても面白いと思います、ってこうやってほんの一部をお話ししてもとても幅広いですよね。」
玉野「だから衣裳合わせがね、とても9人の舞台とは思えない量で。」
留依「90人分くらいですよね!(笑)宝塚のトップさんでもこれだけの衣裳点数はなかなかないんじゃないかというほどです。」
玉野「しかもまだ五十音順の衣裳カウントしていないからね。」
北翔「そうですよね!」
玉野「いったい1人何回衣裳替えしているんだろう。」
留依「それ数えたいんですけど、いまはまだそんな余裕が全然ないから。」
──宝塚のショーなどで、多くの早替りをしていらしたお2人でも前代未聞ですか?
北翔「過去最高ですね。」
留依「私もそうです。」
玉野「全部が最高なんですよね。五十音順の曲数も最高だし、結局95曲になったので。前回の20周年が90曲で過去最高だったんですけど、更にそれを越えて5曲増えてしまった!(笑)」
北翔「出演する度に増えていくんです!もう驚かなくなってきました(笑)」
玉野「みっちゃん(北翔の愛称)最初に出た時何曲だった?」
北翔「何曲だったでしょう……でも90曲には全然届いていなかったですよ。去年の20周年で「遂に90台に!」と思いましたから。」
留依「もう100曲いけるんじゃないですか?」
玉野「いや、スタッフさんが「えっ?」という顔をするから。また何を用意するの?って(笑)。小道具も多いからね、僕のわがままで本当にスタッフさんには申し訳ないんだけど「これ作れる?」ってすぐ言っちゃうから。」
留依「でも他の皆さんも言ってますよね「これはこうしたいです」とか。」
玉野「そうそう。」
留依「あぁ、こんな風に言っていいんだって。」
北翔「驚いたでしょう?(笑)」
玉野「他の稽古場とはちょっと違う感じだからね。皆で一緒に創っている劇団みたいな感じだから。五十音はもう豪華な忘年会芸だし(爆笑)。」
留依「オープニングのナンバーとか皆さんめちゃくちゃカッコいいじゃないですか。これだけ歌えて踊れてお芝居のできる人たちが、めちゃくちゃふざけるのが『CLUB SEVEN』の醍醐味なんだなと。」
玉野「あーちゃん(留依の愛称)もカッコ良かったよ!でもそれが『CLUB SEVEN』の立ち上げからの目的だったからね。ミュージカルやダンスで活躍しているイケメンたち、カッコいい連中が、思いっきりコントをやったらどうだろう?というコンセプトで始まったから。元々はダンサーの集まりで、初期の頃は歌も下手くそだったけど(笑)ずっとやってきたらもうみんなどんどん上手くなっていって。(吉野)圭吾は若い時は女装NGだったし、(西村)直人は「むちゃぶりはやめて下さい、お客さんの前で完成形じゃないものを見せたくない」と言ってた。でも「違うんだよ直人、一生懸命やることを見せるんだよ」って話したりもしたの。でも今じゃ(東山)義久もだけど、「いや、そんなことまでしなくていい、そこまでやれとは言ってない」ってこっちが言うくらい(笑)どんどんやってくるから。」
留依「皆さんの創造力がすごくて。」
玉野「だから『CLUB SEVEN』をやって、みんなひと回りもふた回りも大きくなったから。臨機応変にどうするか?とか、本当に力がついたと思う。」
留依「そういう対応力や柔軟性がとても勉強になっています。そこが重要なんだなと思って。」
玉野「だから他のどの舞台よりもライブ感があるよね。失敗もあったりするけど、そこはみんなが拾ってくれるから。」
北翔「本当に『CLUB SEVEN』をきちんとこなせたら、どの舞台に行っても怖いものはなくなりますからね。」
玉野「それは皆言うよね。」
留依「(大山)真志さんも同じようにおっしゃっていて、私も出していただけて本当に良かったですし、添え物感が出ないように一層頑張らないと、と思って。」
玉野「そんなことはないよ!女子二人だけだから目立つしね。」
──玉野さん、新しく入られた留依さんについてはどうですか?
玉野「実力がありますから、なんの心配もないですね。歌えるし踊れるし。今までみっちゃんとコマ(沙央くらま)に出てもらった時くらいで、宝塚の男役出身の人同士という組み合わせは少なかったんです。だいたい1人は娘役の人で。でも今回はみっちゃんとあーちゃん、二人共元男役さんで身長も同じぐらいだし、実力派でめちゃくちゃ相性がいいし、それでいてそれぞれのキャラもちゃんとあるからすごい戦力になってくれています。ソフト帽でカッコよく踊るシーンもあるので、お客様には喜んでいただけるんじゃないかな?と言っても色っぽくね。ソフト帽をかぶったからといって、男に戻らないでね!(笑)。」
北翔「私、色気がないんです!(笑)。」
留依「頑張ります!」
──北翔さんは既に「ミス・CLUB SEVEN」という印象ですが。
玉野「女性としてはレジェンドになっていますからね。」
北翔「とんでもないです!」
玉野「何をやっても喜んでくれるから嬉しいですよね。『CLUB SEVEN』大好きと言ってくれますし、オリジナルで書いているスケッチを信じてくれているのがありがたいです。オリジナルって正解がなかなかないものなので、その正解を皆で創っていて、基本的に男性陣は変わらず、女性のキャストを替えて行こうという趣旨でやってきたんだけど、今回みっちゃんは3回目で、これまでに3回出てもらっているのは、タータン(香寿たつき)だけで、それくらい頼りになる、『CLUB SEVEN』の方向性をわかってくれている人です。あとは、今回(林)翔太もそうだし、じゃる(鈴木凌平の愛称)もそうなんですけど、初参加のメンバーがあたふたしていないので、たいしたものだなと思っています。「場所どこだっけ?」と俺が逆に訊いたりもしていて(笑)。」
北翔「しっかりしていますよね。翔太くんは淡々と、黙々ときっちりこなしていて。」
留依「そうなんです、翔太くんしかできていない!という時も(笑)。」
玉野「本当に優等生だよね。なんでもできるし。だから、今回本当にすごいメンバーが集まっていて、じゃるもとにかく踊れますから、ダンスの方向性という意味でも力になってくれています。」
北翔「今回『CLUB SEVEN』と言いながらも、キャストが9名いますので、2人増えているのはすごく心強いなと思うんですが、女性パートは2人しかいないので、男性パートのエネルギーが強くなっている分負けられないものがありますから、今までとはちょっと違うエネルギーを出さないといけないと思うんです。その1人があーちゃんで私が宙組にいた時1年生か2年生ぐらいだったよね?」
留依「そうです、そうです。」
北翔「すごく学年が離れていて、そのまま私は専科にいっちゃったので、本当に下級生の頃の留依まきせさんしか知らなかったので、「立派になられて」と。」
留依「そんなそんな。私は12年後に、みちこさんと対で踊らせていただいたり、一緒に歌わせていただける日がくるんだよ、と当時の私に言いたいなと思っています!」
玉野「俺、あーちゃんと宝塚で会ったことある?」
留依「1回もないんです。振付を受けたこともなくて。たまたまなんでけすど、私は劇団でタップをやる機会が1度もなかったので、タップは13年ぶりぐらいなんです。」
玉野「靴も買ったんだよね。ただ、振付で「ここはこうだよ」って言うとすごく機嫌が悪くて(爆笑)。」
留依「違います!自分に怒ってるんです!ここ最近でここまで現場で出来ないことってなかったから。」
玉野「でもやっぱり若いっていいなぁと思うよ。パワーが違うから。もう俺なんかこの歳で、こんな早いものやっている人は他に誰もいないから。」
北翔「私もそれは感じていて。」
玉野「何言ってるの!みっちゃん1番出来てるじゃない!」
北翔「いえいえ、やっぱりこれまでは自分が若い方のチームだったんですよね。でも今回あーちゃんはひと回り下ですし、鈴木さん、翔太君とみんな若いので、気づいたら自分が先輩チームの方々の方に入ってきているんです。そうしたら振り覚えひとつとっても若手メンバーのようにはできなくなってきている、という差異を感じてしまって。それをちょっと西村さんにお話ししたら「みっちゃん、それ、みんなが通ってきた道だから」って。」
玉野「そうそう、そうなんだよ。」
北翔「20年間の歴史のなかで、西村さんも「イケイケでスタートしたけど、年数を重ねることによって新しく若い子が入ってきて、ジャンプ力もバネも違うし、対応力や記憶力も、『あれ?自分は?』と思う時はある。だけど、自分たちには自分たちが培ってきた引き出しもあるし、味もあるんだから、そこを出していくのが『大人のCLUB SEVEN』の良さだから」と言っていただいて。そうか、今度は自分のポジションで出来る自分なりの味、カラーを出していくというのがまた新しい勉強なんだなと思っています。」
玉野「さっきの「怖いものはなくなる」という話じゃないけれど、これだけダンス、歌、台詞の量が一人ひとり多い舞台はそんなにないからね。もう覚えらない、覚えられないって上の連中はみんな言っているでしょう?」
北翔「でも玉野先生もそうだし、皆さん覚えられない、できないっておっしゃりつつ、いざ曲がかかったり、芝居を通しますとなると、パッとスイッチが入って本当にプロなんだなと、こういう現場ってすごくいいなと思います。『CLUB SEVEN』の何がいいって、玉野先生から「こういう役をやってみて」と提示されたものをなんとかして表現しようと思うことで、新しい北翔海莉の引き出しを作ってくださることなんです。それによって自分もさらに向上しようという思いに火がつくんですよね。この間稽古場にセットが出来た時にあーちゃんが「みんなが扉から出てくるって面白いですね」と言ったんですけど、特に五十音なんて、扉から出てくる度にキャラクターが変わっているから「この面白さがやめられなくなるのよ」って話しましたけど。」
留依「最初に出てくるところなんて本当に皆さんカッコいいじゃないですか。それが五十音になるととんでもなく面白くなるのが素敵なんです。」
──そのとんでもなく面白いもののなかでも、ここから目が離せないという瞬間はありますか?
玉野「色々あるけど、真志が特にずるいんだよ。」
留依「それいつも言っていらっしゃいますよね?」
玉野「だって真志に合うものから決めていくからさ(笑)。圭吾は圭吾であるし、直人も義久もこれはこいつだなというところで選んでいるから、結局余ったのをやるのが俺なんだ(笑)。」
北翔「でも、可愛いキャラ担当じゃないですか!」
玉野「あーまぁそうだね、子供とかね。」
北翔「アイドルとか。」
玉野「なぜかそっちの方向に行ったんだよね(笑)。そうだな、どこを挙げようか、見て欲しいところいっぱいあるからなぁ。」
北翔「私はみんなでアイドルグループの恰好をして、すごく本格的な振りをやるところが1番の見せ場かなと思います。」
玉野「そうだね、あーちゃんのブリブリの可愛いやつは、是非見て欲しいな。」
留依「えー(笑)、昨日そこの衣裳を初めて着たんですけど、私全然似合わなくて、絶対翔太くんの方が似合ってるんです!(爆笑)。音楽の宗田(梁市)さんにも「今回のあーちゃんの課題は儚さだね」って言われました。ミュージカルでは令嬢役をやらせてもらうのですが、そこに儚さが欲しいそうなんです。でも「私、儚さ皆無なんですが」って言って(笑)。」
北翔「泣くシーン多いよね?」
留依「結構あります。」
北翔「いいじゃない儚い感じで。」
玉野「あそこはみっちゃんじゃないんだよ。」
北翔「私は泣かない女ですからね(笑)」
玉野「女子二人しかいないから、みっちゃんにはみっちゃんしかないっていう役があるので、それぞれの担当でお願いします(笑)。」
──そんなお二人は、もし一日玉野さんになれるとしたら何をしたいですか?
北翔「それはオープニングのタップダンスのソロです!あそこを踊ってみたいです。」
留依「私も同じことを思いました。こうさーっとやってみたいんですけど、絶対にできないから、玉野さんになれるなら是非やりたいです。(三人でポーズ)」
──玉野さん、20周年では最後に16人での川越公演がありましたし、今回もシアター1010から有楽町よみうりホールと場所を移しますが、劇場の大きさが変化することで、演出的にも変化があるのですか?
玉野「会場が変わってもこっちは何も変わらないんですよ。常に全力でやるのみなので、大きな会場だから大きなエネルギーでということではなくて、キャストの人数が変わっても一人ひとりが全力なのは同じですし、観てくださる方のキャパが5万人だろうと200人だろうと、僕たちが全力だということは同じなので。今回新しい劇場になりますから『CLUB SEVEN another place』とタイトルにつけましたが、どこに行っても『CLUB SEVEN』は『CLUB SEVEN』なので、楽しみに観にいらしていただけたらと思っています。」
北翔「21年目の『CLUB SEVEN』ということで、また新たに挑戦していく姿を皆様にお伝えできたら嬉しいなと思ってます。この舞台をご覧になる方の背中をそっと押せるような、そんなパワーを全力でお届けするのが私たちの仕事だと思っているので、今回も命がけでやりたいですね。」
留依「精一杯頑張りますので、是非劇場にいらして下さい!」
【取材・文・撮影/橘涼香】
公演情報
『CLUB SEVEN another place』
■脚本・構成・演出・振付・出演:玉野和紀
■出演:玉野和紀 吉野圭吾 東山義久 西村直人
林翔太 大山真志 鈴木凌平 北翔海莉 留依まきせ
■日程:
●9/22~9/23◎シアター1010
●9/28~10/13◎有楽町よみうりホール
■料金:12.500円(全席指定・税込)
※Aバージョン、Bバージョンあり(スケッチの一部が変更。詳細公式サイト参照)
■お問い合わせ:
有楽町よみうりホール公演
キョードー東京TEL:0570-550-799(平日11:00~18:00/土日祝10:00〜18:00)