完売間近!劇団壱劇屋東京支部『APOCADENZA』考察官&補佐官による見どころ徹底解説!

完売間近!劇団壱劇屋東京支部『APOCADENZA』考察官&補佐官による見どころ徹底解説!

いよいよ10月24日(木)に開幕する劇団壱劇屋東京支部『APOCADENZA -アポカデンツァ-』

この世の全てが記された“黙示録(アポカリプス)”を巡り、あらゆる世界線から襲い来る追跡者たち。アポカリプスを記した偉大な予言者、膳所言宗(ぜぜことむね)が何処かに遺したアポカリプスを求める追跡者たちに、言宗の一人娘、膳所ほいみが巻き込まれていくという物語。

稽古も終盤に差し掛かったころ、私設考察団体ビューロに属する考察官モン・クイーン・ベルベット役の西分綾香と、その補佐官ジョス・チェッカー役の岡村圭輔に今作の見どころを聞いた。

【用語解説】
<階段世界>
劇団壱劇屋東京支部の作品群において、共通の概念として登場する言葉。
この世界は階段状になっており、その世界に生きる人々が認識しているものは、巨大な階段の一部分・一段分である。「この世界が階段状になっている」という事実を認識しているのは、為政者など、それぞれの段の高位者のみ。通常、一般市民には知らされていない。
上段に向かうには途方もなく高い壁を越えなければならず、下段に降りるには底が見えない崖を落ちていくしかない。しかし稀に、様々な手段を用いてこの段を越え、別世界にやってくる者が現れる。
今作『APOCADENZA』は、この階段世界の枠組みから外れた、空に浮かぶ惑星で巻き起こる物語である。

<私設考察団体ビューロ>
階段世界の全てを俯瞰的に観察・考察している、私設考察団体。
その原動力は考察官それぞれの知的好奇心に基づいており、どの段の国家にも属さない非公式な集団。そのため公的な権限は一切持たず、基本的には観察対象への介入はできない。
各段に考察官が派遣されていて、補佐官として「ジョス・チェッカー」が帯同している。

──お二人は今作でどういった役どころなんでしょうか?

西分 ある種の傍観者というか、物語の本筋にいる人ではなく、外から見ていてお客様に情報を提示する役割がある役ですね。

岡村 ビューロという組織で考察する考察官を補佐する役です。2023年4月に上演した『PARADURE -パラデュール-』にはモン・クイーン・ベルベットとは別の考察官・ガストン・ファンボがいて、そのガストンにも補佐官のジョス・チェッカーがついています。今回とはまた別個体のジョスです。考察官が個性豊かなのでそれに応じてジョスも違うんです。

──ジョスを役作りする中で『PARADURE』のジョスと変えないようにしているところはありますか?

岡村 そこはあまり考えていないですね。同じ名前だけど違う個体というのを提示したい気持ちが強いです。

──初めて台本を読んだときと稽古終盤の今では印象は変わりましたか?

西分 変わっていないですね。作品の中で、心理変化や相手とのやり取りで心情が変わったり成長したりするのが必要なキャラクターと、全くいらないキャラクターがあって、今回は後者の役割をやりきればいいポジションだねと竹村(晋太朗)さんと話していたんです。

岡村 初見で読んだときは、しっかりエンタメでめっちゃおもしろそうだなと思いました。自分は舞台や映画、台本でも1回で取得できる情報量がそんなに多くない方でして。稽古を重ねて、台本を読むだけじゃなく実際に中に入ってお芝居していく中で「この先の場面ってもしかしてここに影響を受けて繋がってる?」と感じることが今作はより多いなと感じていて、面白いポイントが散りばめられているなと思います。これは、スルメタイプ?(笑)

西分 わかるわかる(笑)

岡村 噛めば噛むほどさらにどんどん味が出てくるいいスルメです!(笑)

西分 今回は下敷きがSFなので、SF的な考察を楽しんで見ることもできるんですが、竹村さんの作品だから人間ドラマがちゃんと根底にあります。その人間ドラマを浴びる順番がこれまでの作品と逆かもなという印象もあって。

岡村 確かに。

西分 まず人間ドラマを浴びてから細かい部分を考察するというのがいつもの流れだとすると、今回は台本の構成や人物相関図を読み解くのが最初にあって、そのあと人間ドラマを浴びるみたいな。4回読み直したあとにめっちゃ食らった人間ドラマのシーンがあって、この“あとから来る感じ”ははじめてかも。

岡村 咀嚼したあとからの方がより心に刺さる感じするね。

──西分さんはキャスティングから関わられていますが、キャスティング時の想像とは違いますか?

西分 結構違いますね。いい意味でめっちゃいい方向にぐちゃぐちゃで面白いです。今回出演してくださっているゲストのみなさんは、メインで活動されているジャンルがそれぞれ違うんです。異種格闘技戦のような感じなんですが、なぜか調和がとれている部分とご自身の得意分野で殴り込んできてくださっている部分があって、このバラバラな人たちで演劇を作るとこういう風になっていくんだなというところが予想外でした。

──個性的なゲストのみなさんを考察官の目線で紹介していただけますか?

西分 おかむ(岡村)の推しは誰?

岡村 考察官関係なくなっちゃうけど、岡村的推しは未来人のスマイなんですけども。スマイというより山本(匠馬)さんが演じるスマイの虜になっちゃってます。自然と見ちゃう。

西分 わかるな~!見ちゃうし聞いちゃう。耳が台詞を追っちゃう。劇団内で山本さんの台詞を真似するのが流行ってるくらい。100%リスペクトなんですが、山本さんの台詞回しが自分にはない引き出しすぎて、真似したくなる。”私の好きなスマイのフレーズ大会”が巻き起こるんですよ。それも「やろう!」と言って始まるんじゃなくて「この台詞いいよな~」と始まる感じで。

岡村 それくらい惹きつけられます。お客様にも刺さりまくるんじゃない?

西分 私は割とPtジー29が好きで。役回りがめっちゃ絶妙なんですよ。劇中で皆が追いかけているアポカリプスには興味がなくて、ほいみに興味があるというポジションで。強くいすぎると物語と喧嘩するし、影が薄すぎるとなんでいるの?って存在になってしまうところで、(日永)麗ちゃんの差し引きが絶妙で、すごいバランスで物語に関わっていてなんで成立しているのかがちょっとわからない。すごいと思いながら見ています。

岡村 ジジ役の坂本(真)さんもみんな虜になってますね。山本さんとはまた別のニュアンスでみんなが注目しています。

西分 壱劇屋東京支部の作風から一番遠い会話劇という分野で日頃活動されている、坂本さんが持ってきてくださったエッセンスがめっちゃ効いています。なおかつジジというとにかく善人で悪どい立ち回りが一切できずにアポカリプス争奪戦に巻き込まれていくという役どころが、坂本さんの持ち味と合致しているなと思います。坂本さんが巻き込まれていく様子が本当に面白い!全台詞を面白くする天才って感じ。

岡村 台本読んだときにはジジがここまで存在感のあるキャラクターになると思ってなかったから、すごいな、こんなやり方があるんだということばっかり。

西分 次はワタタツミを演じる麻央(侑希)さん。本当に超次元スタイルで稽古場で会うたびに同じ人類とは思えない。

岡村 すごいよな、本当に。

西分 神様側の製造者が違うなと思ってる(笑)。ご出演いただけるとなった時に、麻央さんのファンの方が見たい麻央さんってなんだろうと竹村さんと話していて。男前で強い麻央さんと女性としての麻央さんを両方見てもらえたら面白いよねということがあって、月の引力で性別が変わるというキャラクターになったんですが、そこが見せ場だなと。アクションもめっちゃあるし。作中のアクション量でいうと結構上位ちゃう?

岡村 殺陣のシーンで割と見かけるもん(笑)。

西分 そう、いるねん(笑)。ワタタツミも主張が一貫していて、人間を平等に嫌っている。それで大国の王であり姫であって海洋人たちを率いて戦ってる。今回、集団戦をする人が少ないので、その中で麻央さんがリーダーシップをとってみんなを鼓舞して戦う感じがすごくかっこいいなと思います。

岡村 凛としたあの空気感は出せないよな。海洋人たちを鼓舞するシーンで一緒に雄叫びをあげたくなっちゃう。抑えきれないこの衝動。自分は全然関係ないのに(笑)。

西分 次は騎士役の栗田(学武)さん。稽古初日の読み合わせで、「この人は関西の人やわ!」って思った(笑)。隙あらばボケてくる。騎士は作品の中でコメディリリーフ担当で、みんなピリついている中でお客様が心許せる存在だなと。

岡村 清涼剤のような感じですね。

西分 ただ終盤に怒涛の展開が待ち受けていて、そこのカタルシスがいいなと思う。ずっと積み上げたものが最後どうなるのかという・・・。

岡村 全然言えなくてもどかしい・・・。

西分 高らかに笑うというキャラクター設定で、ずっと稽古場で大きな声出してはるからそれだけで面白い。あんなに手足長いイケメンがふざけることある?って。

岡村 本当にそう。ずっと面白いよな。

西分 続いてオラクル役の尾形(大吾)君。竹村さんがずっと「尾形君はいい役者さんや」とずっと言っていて、よく名前を聞いていました。本当に好きなんだなと。とにかく品があって、コミュニケーション能力が高い!

岡村 知らぬ間に懐にいるよね。

西分 いるいる。全く嫌味なく、かといって後輩っぽく来るわけでもなく。対等なディスカッションの上でするっと懐にいるからすごい。ほいみを助ける青年ということでほいみとのシーンが多いんだけど、ほいみ役の三田(麻央)ちゃんもコミュ力が高いから、二人で咀嚼してスムーズにやっていて、稽古の合流が一番最後だったけど、それに対する心配も不安もない。

岡村 ついこの間なのに、もう馴染んでいるよね。

西分 尾形君自身の身体能力の高さも相まって、アクションが見ていてワクワクします!オラクルは、重要な役なんだろうなというのが分かると思うんですけど、尾形君のいろんな芝居を一回で楽しめるお得パックって感じ(笑)。それはぜひ見てほしいです。

西分 最後に主演の三田ちゃん。三田ちゃんは究極のお客さん目線を持っていて、ここで心に刺さってほしいとか訴えかけたいとかをまず自分の感受性で受け取ってくれる人だから、稽古場で三田ちゃんが悶えていると、よかった、いけてるわって思います(笑)。膳所親子はこの二人の関係値が物語の根幹になっていて、竹村さんが一番伝えたいメッセージを担っているので注目してほしいなと。お父さんとの関係値って人それぞれじゃないですか。家族の話って普遍的なのにそれぞれ全員が違うから、見え方が変わってくるんじゃないかなと思うので感想が楽しみです。

──見逃さないでほしいところはありますか?

西分 今回もアクションモブチームが大変なんですけども。特に力仕事が多くて、縁の下の力持ちっぷりを見ていただけたらと思います。

岡村 個性豊かなキャラクターがいる中で、真ん中に立つほいみがすごくいいなと思っていて、ほいみとジジのシーンがめっちゃ好きでさ。見逃さないシーンなんだけど、しっかり見てほしいです。

西分 派手な見た目のキャラクターやアクションに目が行きがちになるんですが、今作ずっと普通の人間のほいみへの視線を忘れずにいてほしいなと思うのは本当にわかる。フォーカスが当たるようには作られているけど、ちゃんとほいみの物語を追いかけることで、物語がゴールする時にさらにグッとくると思います。

──最後に意気込みをお聞かせください。

岡村 私は今年初めての壱劇屋東京支部本公演への参加ですので、まずは、いますよ!ってことをしっかりアピールしていきたいなと思っております。今回は物語の根幹にしっかりと関わらずに、一歩引いた位置にいる役ですので、ちゃんと話が進んでいくように外から力を与えていきたいなと思いますし、今年最後の壱劇屋東京支部の公演で、作品の内容自体も来年以降の公演に関わってくる内容なので、そこに繋がるような公演にしたいですね。

西分 来年の夏に壱劇屋東京支部にとって最大規模の、スペース・ゼロでの公演がありまして、私たちにとって挑戦になります。今回の『APOCADENZA』が面白いかどうかで今後の壱劇屋東京支部にも来てくださるか決める方もいると思うので、来年に向けてすでに勝負は始まっているなと思いますし、落とせないなという気持ちが団体としても個人としてもあります。作品を重ねるごとに物語が繋がっていくという、演劇で取り組むにはコスパの悪いことに挑戦しているのですが、ぜひ壱劇屋東京支部に1作でも早く出会っていただいて、来年以降も一緒にその段階を楽しんでいってほしいなと思います。

(文:カンフェティ)

劇団壱劇屋東京支部

APOCADENZA -アポカデンツァ-

公演期間:2024年10月24日 (木) 〜 2024年10月27日 (日)
会場:新宿村LIVE

出演
三田麻央
竹村晋太朗/西分綾香/藤島望/岡村圭輔/小林嵩平/丹羽愛美/長谷川桂太/日置翼
石川耀大/黒田ひとみ/八上紘/雨宮岳人/伊鶴由貴/今泉春香
<声の出演>淡海優
(以上、劇団壱劇屋東京支部)
尾形大吾
栗田学武(劇団アレン座)
坂本真
日永麗
麻央侑希
山本匠馬
熊野ふみ/佐竹正充/梅野鶴/奥平祐介/柿本龍星/佐々木太一

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