世界中で翻訳され、読まれている村上春樹の長編小説。3年振りの再演。門脇麦×成河×渡辺大知がインバル・ピントの独創的なセンスで物語を紡ぐ

世界中で翻訳され、読まれている村上春樹の長編小説。3年振りの再演。門脇麦×成河×渡辺大知がインバル・ピントの独創的なセンスで物語を紡ぐ

世界中の言語に翻訳され、数多くのファンがいる村上春樹作品だが、その代表作のひとつともいえる『ねじまき鳥クロニクル』。が、2020年に舞台化された。イスラエルの奇才、インバル・ピントが演出、振付を手がけたが、ひとりの主人公を二人の俳優(成河渡辺大知)が演じ、身体表現=ダンスをふんだんに持ち込んで俳優だけでなくダンサーも多数起用したユニークな仕上がりは各方面で大きな話題を呼んだ。
その『ねじまき鳥クロニクル』が3年振りに再演を果たす。物語の鍵になる女子高生・笠原メイ役を初演に引き続いて演じるのは門脇麦。映像作品や舞台で個性的な役柄をしっかりと演じる俳優として評価が高い門脇が、村上×インバルによる独特な世界にどう挑むのか。そんな興味を秘めつつ話を聞いた。


―――――残念なことに3年前の初演は途中で公演中止となりましたが、ようやく再演となりました

「3年ぶりの再演となりますが、あまり気負わずに、また続きから作ろうという気分です。久々に成河さん、渡辺大知さんに会えるのは懐かしさがあるというか。(この作品を)一回やっていますから、気心が知れていていいですね。」

―――――村上春樹さんの原作は読まれていましたか

「読んでいます。でもそれも3年前の話ですからもう一度読み返そうかと思っています。私、結構本は読んできている方なのですが、村上春樹さんの作品にはあまり触れてなくて、『ねじまき鳥クロニクル』で初めて村上さんの作品に触れました。こういう形の出逢いもあるんだな、と思いました」

―――――門脇さんは長くバレエを続けられてきて。それを辞めて女優を目指そうとしたときに、親御さんが舞台かミュージカルなら良いと言われたそうですね。

「そうですね。バレエも舞台に近いですし、ミュージカルのダンスパートに子供の頃出たことがありましたたから。テレビの世界は怖そうだから、舞台の方が健全なんじゃないかと親は思ったみたいです」

―――――でも今やテレビドラマや映画など、沢山の映像作品で大活躍されていらっしゃいます。

「どうしても舞台公演は稽古に1,2ヶ月かかりますから、本番を入れると3ヶ月は必要なので、2本手がけてしまうともう半年それにかかってしまうわけです。それでも元々舞台は好きですし、映画、テレビ、舞台の3本柱でやっていきたいと思っていますので年に1本は舞台もやらせて頂いています。」

―――――今回の作品は表現や構成が非常にユニークな作品だと思うのですが、門脇さんご自身はどう思われますか。

「私の役は実在する人物という設定ですから、全体的に流れる抽象的な表現の中で、私が出ているシーンが一番分かり易いと思います。他の舞台で演っていることとかけ離れたことを演っている意識はあまり無いです」

―――――さらにこの作品には役者さんだけでなく“踊る”キャストが沢山出演したり、これまた独特な世界観を持った音楽家の大友良英さんが音楽を担当されたりと、もはやどんな舞台になるか予想がつかないのですが、今回主人公の義理の兄、綿谷ノボル役に初演から引き続いての大貫勇輔さんに加えて、バレエ界のトップダンサーのお一人、首藤康之さんが出演されますね。

「これにはビックリしました。ずっと観ていたスターなので。バレエを諦めて辞めたのにこのような機会に共演させていただけるとは…!感激です。」

―――――それはどんな感覚ですか?

「私自身は、芸能人と向かい合っても“同業者”という感覚です。でもバレエ界に居ない私にとって首藤さんは“ああっ”と思える存在で(笑)」

―――――演出・振付・美術のインバル・ピントさんもまた、非常にユニークというか、独特な作品を生み出す方ですね。

「私は日本で公演された彼女の作品のほとんどを観ていると思います。。最初に観たときにいつかご縁があったら良いなと思っていましたが、本当に唯一無二の独創性を持っている方ですね。表現をセリフではなく身体を使って具現化していく。日本では他に居ないと思いますし、なかなか観ることができる機会も少ないですから、あの独特な世界を是非皆さんにもご覧いただきたいと思います」

―――――ありがとうございました。

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

門脇 麦(かどわき・むぎ)

米国ニュ-ヨ-ク生まれ。5歳から東京で育つ。その頃からクラシックバレエを本格的に学び、映画を通じて役者を志すようになる。2011年にテレビドラマでデヒューし、2014年公開の映画『愛の渦』での体当たりの演技で数々の映画賞新人賞を受賞する。近年では『リバーサルオーケストラ』『ながたんと青と ―いちかの料理帖―』など主演ドラマが続き、9月に主演映画「ほつれる」が公開している。

公演情報

『ねじまき鳥クロニクル』

日:2023年11月7日(火)~26日(日)
場:東京芸術劇場 プレイハウス
料:S席(平日)10,800円
  S席(土日祝)11,800円
 (全席指定・税込)
HP:https://horipro-stage.jp/stage/nejimaki2023/

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