能楽の世界へようこそ!~はじめの一歩~<後編>

カンフェティスタッフたちによる不定期連載企画
「カンフェティ エンタメ盛り上げ隊」


「少しハードルが高いけど、一度は観に行ってみたい……」
そんなふうに長年思い続けているジャンルはありませんか?

あなたのそんな気持ちをカンフェティスタッフが後押し!
そのジャンルを長年愛するスタッフが、おすすめポイントを語ります。
一歩を踏み出すきっかけとなりますように!


前回の記事では、能・狂言の楽しみ方や魅力、ミュージカル演劇等との共通点について自由に語りましたが、能楽についてもっと知りたくなったスタッフ一同、能楽堂の体験イベントに行ってきました!


遊園地に来たくらい楽しかったですね。とってもワクワクしました!
能面と装束に実際に触れたり、能舞台に上がらせてもらったり!元々の知識がなくても、参加してみると楽しいですね!能楽に対する好奇心が掻き立てられる体験でした。
作品の山場のシーンの体験が特にアツかったです!作品を見る前に実際にやるのもありなんだと思えた日でした!

【今回の参加者】
スタッフC:30代女性 台湾出身。野村萬斎さんきっかけで海を越えた。能楽鑑賞歴10年以上。音楽(バンド)も好き。
スタッフO:20代女性。能楽鑑賞は学生時代の授業で経験。小劇場より小さい会場の演劇をよく観る。
スタッフS:30代女性。能楽鑑賞未経験。ハッピーなミュージカルが好き。

能楽体験の流れ
・はじめに
能『小鍛冶』とは?
能面・装束・道具に触れる
謡(うたい)体験
いざ、能舞台へ
・仕舞『小鍛冶』の実演/おわりに

今回参加したのは、東京ドームがある水道橋駅(東口)から徒歩3分の宝生能楽堂で行われた体験イベント──【大人のための能楽体験】舞い、謡い、物語と出会う──今回のテーマは『小鍛冶』です。

本当に近いですね!東京ドームの横!知らなかったです。
そうなんです、公演前後の買い物も便利です!

まずは楽屋へ入り、白足袋に履き替えます。

いきなり楽屋ですか!ドキドキ
白足袋は能楽堂側が用意してくれるので、気軽に参加できます。やさしい〜(もちろん、持参も可能)

▶体験スペースとなる楽屋


うわあ、能面が…!!!

この能楽体験では、テーマとなる演目について能楽師から直接お話を聞いた後、能面・装束・道具に実際に触れて体験します。そして一緒に謡を謡い、最後は舞台上で舞の型も体験できます!


大盤振る舞い!本当にいいんですか!

今回、解説と体験を担当してくださったのは、宝生流シテ方能楽師の鶴田航己(つるた こうき)さん・石塚尚寿(いしづか なおとし)さん・松田脩(まつだ ゆう)さんです。(写真左より)

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能『小鍛冶』とは?

まず、『小鍛冶』ってそもそも何の話?

▶「童子」の面について説明している石塚さん

時は平安時代。
夢でお告げを受けた一条天皇の命令によって、勅使の橘道成が刀匠・宗近のもとを訪れ、剣を打つよう命じました。
しかし、剣は二人で打つものなので、宗近はその相手――相槌がいなくて悩んでいました。氏神の稲荷明神に参拝したところ、一人の童子が現れました。


相槌って…鍛冶の相槌が語源だったんですね!

童子はなぜか剣を打てという命令を知っていて、宗近に昔の霊剣草薙や日本武尊の話を語り、「きっとあなたはそのような素晴らしい剣を打つことができます。相槌を務めるから、待っててね」と言って消えました。

えっ!?

家に帰った宗近は大急ぎで剣を打つ準備をしました。
祭壇に上がり、祈りを始めると、そこに稲荷明神が現れました。
先ほどの童子は、なんと稲荷明神の化身だったのです…!
宗近と稲荷明神が力を合わせて打った剣は、

名剣――「小狐丸」

(拍手)


 以前実際に観劇したときに、この稲荷明神が登場した場面で、本当に鳥肌が立って感動しました……(前回の記事参照)
体感したい方はぜひ正面席を、少し間近で観たかったら脇正面を。
席を変えてリピートしたいですね(これも楽しみの一つ!)

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能面・装束・道具に触れる

物語について説明いただいた後、ついに…実物体験です。
参加人数は20人ほど。3箇所に分かれて順番に回って体験します。

①能面

当日見せてもらった能面は6つで、まず『小鍛冶』で実際に使われる3面(写真左より):
・童子(どうじ)
・小飛出(ことびで)- 稲荷明神役。目が大きく飛び出し、口を大きく開いた迫力ある面
・大飛出(おおとびで)- 小書*1 が付く際に使用
そして、体験用の3面:
・小面(こおもて)
・平太(へいだ)
・中将(ちゅうじょう)

小飛出は動物や狐など「地」の霊を、大飛出は「天」に飛ぶ神を表現するという解釈もあるとか。

*1 小書:演目名の横に小書が付くと、普段と違う演出があります。『小鍛冶』では「黒頭」「白頭」などがあり、本来の赤いかつらが黒や白に変わります。一部演出も異なります。

▶小飛出(左)と大飛出(右)


能面体験では、なんと実際にかけることができます!

すごい、思った以上に視界が狭い!
すごく不安になります……。どこに何があるか距離感がわからないし、なんか取り残された感じ……えっと、どうしよう(かけている間はずっと不安でした💦)
あと、結構密閉されますね(面裏で、顔に合うように額当てなどをしています)! これで舞台上にいるなんて……。酸欠にならないのでしょうか………。

②装束

ここでは、武将や鬼神の力強い役に使用する法被(はっぴ)と、平安時代の武官や公家が着用する長絹(ちょうけん)を実際に羽織ることができます。

③一畳台で剣を打つ

参加者は稲荷明神役で、宗近と力を合わせて剣を打ちます!

実際の上演では、稲荷明神役は能面をかけた状態で、この一畳台に上がってさらに正しい場所にしゃがんで、剣を打ちますっ!
え!!(思い出される能面の視野の狭さ)難しい……。
足で台を確認してからシュッと上がらないといけないんですね。
降りる時も足で……慎重に!気をつけないとですね……。
能楽師ってすごい!

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謡(うたい)体験

能面、装束、一畳台での体験の後は、実際に声を出す「謡い」の体験です。謡いとは、能の詞章に節を付けて歌うことです。

剣を打つ場面の謡いを!

「童男壇の上に上がって。宗近に参拝の、膝を屈し~」

節もリズムも、思った以上に真似するのが難しい!
もうとにかく一生懸命やります!!

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いざ、能舞台へ

『小鍛冶』と能について理解を深めた後は、いよいよ能舞台へ!

揚幕を通る前の空間は「鏡の間(かがみのま)」と言います。出番を待つ場所で、大きい鏡が置いてあって、シテ(主役)はここで能面をかけて、気持ちを整えます。

体験の際にぜひ注目してみてください~

舞台に上がるとなんとなく空気が違うというか、不思議と身が引き締まりますね……!
尊敬している方々が立っている舞台なので、感無量……。
能の基本の歩き方、すり足で歩くと、床の木目がよく分かって気持ちが良い~。かなり整います。

舞台では、型―例えば、喜び・悲しいを表す動き―を体験しました。

感情によって動きが決まっているというのは面白いですね!真似ようとするとつい全身に力が入っちゃいますが、お腹に力が入った状態が正しいんですね。
型をつくると、自分の気持ちもその型の指す感情に傾いていく……!姿勢って大事ですね!

能舞台の後方に設置された鏡板には、老松の絵が描かれています。この鏡板についてですが、神様が客席側の松に影向(降臨)された際、鏡のように映し出されたものが鏡板という説もあります。
ほかに、『道成寺』という演目のためだけにある装置もあるので、詳しい説明はぜひ、体験の際に聞いてみてください!

大きい鐘を天井に吊る演目です。大迫力でドキドキします!

(『道成寺』について、前回の記事では忘れられない公演の一つとして取り上げました)

能舞台について、ほかにも色々ご説明いただきましたが、当日実際に体験していただく際の楽しみを残しておきます!

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仕舞『小鍛冶』の実演

最後に、『小鍛冶』の仕舞を鑑賞。
こちら、上演中は撮影・録画禁止なので、ぜひご参加して体験してみてください。

(拍手)場の掌握力に圧倒されました。美しかったです!!
声もすごく響いて少人数でも迫力! 本格的な公演も観てみたくなりました……!


この能楽体験イベントは8月も開催!
能が初めての方も安心してご参加できます!初心者の方にこそ体験していただきたい、能の奥深い世界。一歩足を踏み入れてみませんか?きっと新しい発見があるはずです。

「能の中でも“最恐ホラー”のひとつ――『黒塚』を題材にした”大人のため”の能楽体験」

追われる修行僧たちと、鬼となった老女――
人の情と鬼の執念が交差する、深く切ない物語。
そして、能楽の中でもひときわ“怖い話”として知られる『黒塚』。
今回はこの“能のホラー”を題材に、謡と舞の型を実際に体験しながら、
物語の世界を身体で感じてみませんか?(能LIFE Onlineより抜粋)

日時:2025年8月30日(土)14:00開始(15:30終了予定)
会場:宝生能楽堂(東京都文京区/水道橋駅 徒歩3分)
参加費:税込3,300円
公式X:https://x.com/hoshokai159/status/1949016844125569421


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