【「板尾のめ゙」第十一回】ダダルズ『袋破裂』/「こんなにやっているのに伝わらない。可笑しみがあった」

【「板尾のめ゙」第十一回】ダダルズ『袋破裂』/「こんなにやっているのに伝わらない。可笑しみがあった」

様々な舞台映像を、前に出ない天才板尾創路の眼(フィルター)を通して語る「板尾のめ゙」。第十一回は、2023年12月にSCOOL(東京都三鷹市)で上演された、ダダルズ『袋破裂』。大石恵美が一人で作・演出・出演を手掛けている作品だ。

<作品紹介>

「あの、よくやったよな。お前、本当よくやったな、あのとき。という考えを舐め回すんですよね」。そう女が切り出し、そこからノンストップで女は話す。女の脳内をジェットコースターのように駆け巡る一人芝居。

──今回板尾さんにご覧いただいたのは、ダダルズ『袋破裂』。一人芝居でしたが、どうご覧になりましたか?

正直、映像では色々なことがなかなか伝わりにくい気がしました。きっとこの作品を生で観ると、彼女の熱量とかやり遂げる感じとかが、ものすごくダイレクトに伝わってきそうだな、と。なんか映像を観てとやかく言うのは失礼な気がしてます。すみません。

とはいえ、作品としてはどうなんやろうな……彼女の事を知っている人だったら超面白いのかな(笑)。日常で感じた事や自分の思いを熱量高く伝えようとしているから、なんかついつい観てしまうんですけど、内容は支離滅裂と言えば支離滅裂でしょう?こんなに鼻水垂らして、涙も流して、声出しているのに、伝わってこないし、全然共感できないし、人にあらすじを説明できないし(笑)。まぁ「こんなにやっているのに伝わらない」というところが逆に面白くなってきますけどね。

僕はだんだん大石さんが可哀想に思えてきてね。自分を消耗しきっている。それも含めて、可笑しみみたいなものを感じました。

──脚本も演出も出演も全部一人でやるという、究極の一人芝居です。

僕はこういう一人芝居は観た事がなくて、こういうのもあるんだなぁと思いましたね。何となく「これを話して、そのあとはこれで……」と彼女の中での組み立てはあるんだろうけども、全部一人でやるのは本当に大変でしょうね。

──どこまでが「キャラクター」で、どこまでが「本人」なのかが気になりました。大石さんご自身がコールセンターで働いていたご経験があったり、出てくる漫画の作品名も実際にあるものだったりするので、きっとご本人そのものの要素が色濃く出ていると思うのですが。

確かにねぇ、どうなんでしょうねぇ。

それよりも僕は1時間以上、声も体も機能が衰えない事が凄いなと思いました。鼻水は垂らすけど(笑)、最初から最後まで疲れがあんまり見えなくて、同じテンションでずっとやり続けられるなんて。
 

──1度観た人がクセになって次回作も観にいきたくなる。そんな作品と言われているのですが、板尾さんご自身は、次回作も観てみたいですか?

劇場でしか感じられない熱量が絶対にあると思うので、生で観てみたい気はします。

でも一方で、配信をコツコツやるのもアリなんじゃないかな。そんな毎回毎回わざわざ小屋を借りなくてもできるコンテンツだと思うし、テーマも多岐に渡るカオスな感じではなくて、もう少しポイントを絞ってみたり、尺も短めのものを作ってみたりね。

そして作品を作り溜めて、配信でファンを増やして、時々小屋で発表する。そういうスタイルの方がもしかしたら結果的にお客さんは増えるかもしれないな、なんて思いました。
 

(インタビュアー・文&撮影:五月女菜穂)
 

ダダルズ『袋破裂』配信中!

カンフェティストリーミングシアターにて配信中!

 
ダダルズ『袋破裂』
作・演出・出演 大石恵美

[視聴券販売期間]
2025年2月25日(火)10:00~3月31日(月)23:59
[配信期間]
2025年2月25日(火) 10:00~4月14日(月) 23:59
※レンタル視聴可能時間 14日間(336時間)
[視聴券]2,000円(税込)
 

板尾創路プロフィール

1963年生まれ。大阪府出身。NSC大阪校4期生。相方のほんこんとお笑いコンビ=130Rを組み数々の番組で活躍。2010年には『板尾創路の脱獄王』で長編映画監督デビューを果たし、『月光ノ仮面』(2012年)『火花』(2017年)を監督。映画・TVドラマのみならず舞台作品にも多く出演し、2019年の初回から『関西演劇祭』のフェスティバルディレクターを務めている。

「板尾のめ゙」バックナンバーはこちら!

【第十回】ナカゴー『森』

さまざまな舞台映像を、前に出ない天才 板尾創路 の眼(フィルター)を通して語る「板尾のめ゙」第十回は、2014年に青山円形劇場で上演された、ナカゴー『森』。森に集まる男たちとたくさんの女たちの物語で、22分という短編作品である。…続きを読む

 ※第九回以前はリンク先にて公開中!

(第1回~第9回)


【第一回】□字ック『剥愛』
【第二回】Hauptbahnhof(ハウプトバンホフ)『回復』
【第三回】画餅(えもち)『サムバディ』
【第四回】いいへんじ『友達じゃない』
【第五回】南極ゴジラ『(あたらしい)ジュラシックパーク』
【第六回】ウンゲツィーファ『動く物』『旅の支度』
【第七回】劇団スポーツ#10『略式:ハワイ』
【第八回】万能グローブガラパゴスダイナモス『三途の川のクチコミ』
【第九回】20歳の国『長い正月』

Advertisement

コラム・特集カテゴリの最新記事