白は何色に染まるのか? 再会した看護師4人の人間模様を描く

白は何色に染まるのか? 再会した看護師4人の人間模様を描く

 劇団スタジオライフの5期生5人が2010年に立ち上げた「Jr.5(ジュニアファイブ)」。第13回公演『白が染まる』は、とある地方の看護専門学校で出会い、青春を謳歌した仲良し4人組が主人公。
 卒業後、連絡を取り合うことも少なくなったある日、4人は10年ぶりに再会を果たす。再び意気投合した彼女たちは同じ職場で働くことになるが、学生時代とはまた違った結束を徐々に見せていき……。
 今回、その4人組を演じるのは、紺野まひる、高野志穂、罍陽子、山崎静代(南海キャンディーズ)。出自の違った4人がどのような化学変化を見せてくれるのか、期待がかかる。
 出演する紺野、高野、罍、そして作・演出を務める小野健太郎に話を聞いた。


―――どういう作品になるのか、教えてください。
小野「本作は、看護師女性4人組が夫を殺害して多額の保険金を得たという、2002年に発覚した実際の事件をモチーフとしています。看護師という『白』が徐々に染まっていくような様を描けたらと思います。
 とはいえ、あくまで事件はモチーフ。そのままの事件を扱っているわけではなく、現代の要素を入れながら、フィクションとして上演します。仲良し4人組の友情がどう変化するか。その人間模様を中心に描いていきたいと思っています」

―――出演者のみなさんは本作に出演が決まったときのお気持ちや意気込みを教えてください。

紺野「お話をいただいたときは、単純に面白そうだなと思って、参加を決めました。一方、扱う題材が重いので、抱え込むものが大きすぎて、日々の生活がちょっと暗くなるんじゃないかなと心配もしていたんです。でも、準備稿を読んでみると、ちょっと最初に思っていたものとは違って。少しずつ皆さんと一緒に積み上げながら、役を作っていこうと思っています」

罍「世の中にはたくさん犯罪を犯した人がいるわけじゃないですか。でもその人たちと自分って、そんなに違うのかな?と思うことがあって。一歩踏み外したら、私もそちら側になる可能性を大いに秘めている。犯罪を肯定しているわけではなく語弊を恐れずに言うと、犯罪を犯した人って魅力的というか、何か惹かれるんですよね」

紺野「分かる気がします。事件を調べれば調べるほど、どうしてそれに至ったのか、知りたくなるし、興味深いですよね」

罍「そう。だから題材としてすごく面白いなと思ったんです。役者として関わってみたいなと思う題材ではあった。……で、蓋を開けたら、すごくキラキラしたキャストが集まっていました(笑)!」

高野「オノケン(※小野健太郎のこと)と以前共演したことがあって、そのときに飲み会で芝居の話なんかをして、本当に楽しい時間を過ごしていたんです。それからおよそ10年ぶりに今回のお話をオノケンからもらって、それだけでもう楽しそうだなと思ったんですよね。作品の内容を聞いて、そんなディープなものに、私に声をかけようと思ったことがちょっと意外でしたけど。
 私が演じる役は実在している人で、お子さんがいらっしゃるんですね。私にも2人子どもがいるのですが、2人の子どもがいる中で、どういう心境で事件に至ったのか。子どもの存在を忘れてでも、その境地に行けるのか。この役を演じることは、私にとって挑戦でもあり、きつい作業だろうなと思うんですけど、それを信頼しているオノケンと一緒にできるから。やる意味があるだろうなと思ったんです」

―――キャスティングをされた小野さん。特にこの4人組に対して、期待していることを教えてください。

小野「いつもはプロデューサーの奥田(努)がキャスティングをするのですが、今回の作品では僕もお声がけをさせていただきました。いい意味で役にハマっている人というわけではなく、どうなってしまうんだろうという期待を持たせてくれるキャスティングだと思います。
 それは『この人は悪そうな人だから、悪い役』ということではなくて、人って、誰でもちょっと踏み外してしまう可能性があるわけじゃないですか。今回見せたいのはそういうところ。みんなどこかに黒い要素は持ちながらも、それ以外の要素をたくさん持っている人が演じてみたらどうなっていくのか。それを見てみたいと思ったんです」

―――それぞれみなさん畑が違うと言いますか、出自が違うのがまた面白いですよね。

罍「でも凸凹というか、歪でありながらも、そこがうまくハマる感じがします」

高野「うんうん。このチラシを撮影するときは、本当にみなさん初対面だったんですけど、みなさん話しやすくて、楽しそうでしたよね」

―――4人組が軸となるということで、みなさんそれぞれ、仲の良いお友達などずっと続いている関係性は?

紺野「私は宝塚の同期ですね。やはりすごい強い絆だと思います。当時はつらいことも多かったんですけど、今となってはすべて笑い話になってしまいます。退団してからは、同じ組だった上級生や下級生とも仲良くさせてもらっていますが、一番はやはり同期ですね。その絆は、他では真似できないし、もうどこでも手に入れることができない貴重な時間。ずっと私の根底にあるものだなと思います」

罍「あまり友達が多いタイプではないんですよね。演技部の仲間は、全然誰も活用していないLINEグループは一応あるんですけど、今回、観に来てくれたら嬉しいな。あとは20代の頃、一緒に踊ってた仲間とか……。あと研究所の同期とか……? しょっちゅう連絡をとっているわけではないんですけど」

高野「そうですよね。この年になったら、仲がよくてもそんなに頻繁に連絡をとらないですよね」

罍「連絡とったら、距離感はないみたいな感じ。……はい、きっといっぱい友達はいます(笑)」

高野「私は15歳までずっと海外にいて、しかも日本人学校に1回も行ってなかったので、日本語が全然できなくて。帰国しても、自分では日本語を喋っているつもりなんだけど、全然日本語じゃなかったみたいで、周りの友達をきょとんとさせていたんです。
 そこにたまたま帰国子女の子がいて、その子が全部通訳してくれたんですよね。その頃、親友になった子たちは、今でもすごく仲がいいです。もちろんお互いの人生があるから、そんな頻繁には会えないですけど、お芝居も必ず観に来てくれる。私が長台詞を言っていると『あの志穂がね……』と、それだけで感動してくれる(笑)。彼女たちがいなかったら、多分いじめらていたかもしれないです。親友であり、恩人です」

―――Jr.5としての野望や挑戦を教えてください。

小野「俳優として外部に出演しているときに地方公演を経験したことはあるんですけど、次は自分たちの団体でも全国を回りたいなと思っています。いろいろな人に純粋に観てもらいたい。その土地土地の人とライブで触れ合って、土地を体感して、そこの中で演劇をやりたいなと思っています。
 今回の挑戦はというと、実際の事件をモチーフとして作品を書き上げたことですかね。もちろん作品の方が劇的になっているんですけども。実際の事件を扱った本を読みながら、作品を書きながら、というのは初めての体験でした。とはいえ、僕は本をどんどん変えていくタイプなので、俳優の皆さんが作り上げたものを見て、またそれで新しいものにして、皆さんにご提供できたらいいなと思っています。

―――最後に観客の皆様に一言お願いします!

紺野「まだ稽古が始まったばかりですが、1人ひとり持っているカラーがだいぶ違うと思ったんですよね。だから、この4人がなぜ仲良しになって、こういうことをしたのか。それがすごく面白く、本番までに出来上がってるんじゃないかな。自分に発破をかけつつ、そこをじっくり見ていただけたらと思います」

罍「駅前劇場で、このメンバーの公演はなかなかないと思いますし、Jr.5がすごく頑張ってチケット代がそこまで高くないんですよね。びっくりするのが、高校生以下は1500円! これを強く打ち出したい! 暑い日が続きますが、ベースは白から始まるみたいなので、涼みに劇場に来ていただければ。帰りは何色になってるかわかりませんけどね(笑)」

高野「今のご時世、配信で観られる作品はいっぱいありますけど、せっかくならライブで観てほしいですね。やっぱり感じることが、ライブだと違うから。ぜひこの群像劇を生で感じてほしいと思います」

小野「一言で言ったら、もう俳優を見ていただきたいと思っています。俳優がどれだけ輝けるか、はねられるか、です。そのために台本と演出で支えていきます。仲のよい4人組の人間模様や振り幅を観ていただきたい。それを絶対に最高にやっていただける俳優がそろったので、ご期待ください」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

紺野まひる(こんの・まひる)
1977年4月12日生まれ、大阪府出身。1996年に宝塚歌劇団に入団し初舞台を踏み、雪組の娘役として活躍。2002年に娘役トップとなり、同年9月に退団。退団後は、映像や舞台などで活躍している。

高野志穂(たかの・しほ)
1979年10月21日生まれ、東京都出身。幼少期をシンガポールやイギリスなど海外で過ごす。NHK朝の連続テレビ小説『さくら』(2002)で主演ならびにドラマデビュー。以後、ドラマや舞台で活動している。

罍 陽子(もたい・ようこ)
1979年12月13日生まれ、埼玉県出身。青年座研究所24期を経て、劇団青年座に入団。退団後は、小劇場やテレビドラマで活躍。2020年に「もたい陽子」から「罍陽子」に改名。

小野健太郎(おの・けんたろう)
1978年6月20日生まれ、宮城県出身。スタジオライフの5期生5人が2010年に立ち上げた「Jr.5」で脚本・演出を手掛け、俳優としても活動している。

公演情報

ジュニアファイブ第13回公演『白が染まる』

日:2022年8月5日(金)~12日(金)
場:下北沢 駅前劇場
料:一般4,500円 U25[25歳以下]3,500円 高校生以下1,500円(全席自由・税込)
HP:https://junifive.wixsite.com/juni5
問:​演劇企画集団Jr.5
  mail:jr5engeki@gmail.com

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