6度目の上演にして関西初上陸! 松田凌×神尾佑が新たなタッグで魅せる迫真のカナダの戯曲『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

6度目の上演にして関西初上陸! 松田凌×神尾佑が新たなタッグで魅せる迫真のカナダの戯曲『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

 カナダ・モントリオール、判事の執務室。36時間を超える取り調べの最後のおよそ2時間をリアルタイムで描く緊迫の会話劇『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』は、2014年の日本初演以来、その衝撃的な内容と繊細な演技や上演ごとの異なる演出によって根強く支持されてきた。6度目の上演となる今回は、主役の「彼」を、本作品4度目の主演となる松田凌が。そして、膠着する取り調べの中に真実を見極めようとする刑事役を、初の参加となる神尾祐が演じる。

◆「昭和」の匂いがする役者 × 信じるものに間違いなし

 今回初共演となる二人。お互いの第一印象はどうだったのだろうか。

神尾「知り合いの舞台を観に行った時に初めてお会いしたんですが、こちらが拍子抜けするくらい丁寧にあいさつしてくれて、すごく礼儀正しい子だなと思いました」

松田「緊張していたんですよ。大先輩ですし、背も高いし、厳しい人だったらどうしようと思っていたんですが、すごく柔らかくて。“よかった~”と思いました。一気に距離が縮まりました」

 しかし、作品作りをしていく中で松田がみるみる意外性を現していったという。

神尾「彼くらいの年齢の役者さんて、僕の印象だとみんなスマートなんですよ。真面目で、お酒も飲まず、将来のことまで考えてちゃんとした生活をしている。彼も礼儀正しいですし、そっち系の子かなと思っていたんですが、話せば話すほど、掘れば掘るほど“大丈夫~!?”って。芝居見ててもあぶなっかしくて、刹那的で。それが魅力的だなぁと思います。そもそも僕が若いころなんかは“役者なんて社会不適合者がやるもの”みたいなところがありましたからね。だから“あ、なんだ、こっち側か”と。いい意味で昭和の匂いがしますよね。特に今回の「彼」という役は本当にあぶなっかしいですし。だから、見ていて面白いですよ」

 「反論の余地もありません。」と松田が笑う。

松田「僕から佑さんに対しては、印象が変わったというより、より深く“よかった”と思えたところがあります。自分が俳優になろうと思った時から憧れてきた世界で、その当時から第一線でやってる佑さんとこうして共演の機会をいただいて。演出の小山ゆうなさんと話している感じもそうですし、出してくるお芝居を間近で感じたり、生き方についてもいろいろ聞いて“やっぱり俺、間違ってなかったなぁ”って思えました。つかさんの舞台から始まって、映像でも活躍されて、そういう憧れを体現してくれている先輩がいるって思うと、やっぱり夢を見られるんですよね。僕は今が楽しいんですよ。生きてくその一日一日が。今は佑さんと芝居ができて、その日が楽しい。だから、佑さんを見ていて信じるものに間違いなしだなと思いました。」

◆まだるっこしいんですよね。でもそれが生っぽさを増幅させるんです

 一見正反対に見えた二人が和気藹々と会話を弾ませる。残る共演者、「速記者」「警護官」を交えた現場の雰囲気も気になるところだ。

松田「みんな器が広いのかなぁ。僕は何度かやらせていただいているんですけど、その中でも今回は相当クレバーなチームだと思ってます。受け止めることも、持っていく時の器の形も。雰囲気としては一番いい“気”が流れてます」

神尾「演出の小山さんが非常にあたたかく見守って下さって。あくまでも提案という形で辛抱強く待ってくれる。だから、その分、立ったり座ったりという動きひとつにしても自由に試せるし、やりやすい環境を作っていただいているなと思います。それに応えられる人間が揃っているとは思いますね」

松田「やっぱりこの作品は難解なので。それが魅力でもあるんですが、別の作品と比べるとやっぱり稽古の仕方が特殊なんですよ。“こう演出します”ではなく“どうやっていく?”からはじめるので」

神尾「とにかくゴリゴリの会話劇なので、演出家含め全員でディスカッションして理解を深めていくんです。読んだだけでは会話として成り立たないんですよ。確かに取り調べの手法としてはあるかなと思うんですが、それを戯曲で書かれると、感情がつながらないから覚えられない」

松田「まだるっこしいんですよね。でもそれが生っぽさを増幅させるんです」

神尾「外国の戯曲ですから、この言葉よりもこういう言いまわしの方が日本語としては適しているんじゃないかというようなことも小山さんは受け入れてくれて、原典と照らし合わせて“だったらわかる”というまで掘り下げて。そういうことをしながら、役者としてはそれを覚えて会話をしてみて、という感じです」

 そんなチームの、今回ならではの“旨味”を、二人はどう感じているのだろうか。

神尾「自分のアクションで相手のリアクションが変わって、相手のアクションで自分のリアクションが変わるというその積み重ねの濃密な時間というのは、このキャストだからできることだと思います。会話劇というのは役者の力量が非常に要求されるところだと思うんですが、それが稽古場ではうまく進んでいる気がしますね」

松田「本当に毎回違うんですよね。毎公演違うかも。もちろん一定の水準を超えての話ですけど。「彼」と「刑事」の二人の空気感も一言目から毎回違うので「速記者」と「警護官」もそれに応じて変わっていったり。そういった意味では繊細な作品で、だからこそ何度も見ていただいているお客様や、初めて観るお客様も“なんなんですか、この舞台は!?”という衝撃を感じてくださってると思うんです。だから“旨味”と言うなら毎回味が変わるかも。今日ちょっと塩味だったなと思っても、明日はすごく辛口になってる可能性もある。そういう振り幅があるというところが、もしかするとこの作品自体の“旨味“なのかもしれませんね。それは今回に限らず言えることですけど」

◆京都文化博物館での上演と配信

 横浜赤レンガ倉庫公演を経て、いよいよ関西へと進出する本公演には、大きく二つの新しい試みがあるという。その一つが、国の重要文化財にも指定されている京都文化博物館での上演だ。

松田「これまでの劇場も、横浜赤レンガ倉庫やシアタートラムといった、劇場の中でも独特の雰囲気があったり作品の情景に合う場所で上演させていただいてきたんですが、今回まさか京都文化博物館でやろうとは。衝撃でしたけど実際に下見もさせていただいて、なるほどと合点がいくところがいくつもありました。建物がそのままセットみたいなんですよ。趣がありすぎて驚きました。重要文化財なので歴史ある場所でやらせていただけるというのは貴重ですし、歴史のまま残ってたりするので、この作品を上演するような空気がすごくあるんですが、いかんせん博物館なので。劇場ではない場所でやるということが、半分楽しみ、半分怖さもあります」

神尾「劇場じゃないですからね(笑)。もとは銀行だったんですよね。だから、“照明どこにするの?”っていうところから始めないといけないんですが、床といい壁といい窓、天井、すべてに歴史があるので、その空気には劇場にはないものが非常にありました。横浜の赤レンガともまた違う趣があって。景色もまったく変わるだろうし。やってみないとわからないですけどね、楽しみです」

 千穐楽にはもう一つの試みとして、同博物館での配信も決定している。

松田「配信の一番のメリットというのは、足を運べなかったお客さんに観ていただけることですよね。この作品はパンドラの箱みたいなところがあって、一度開けたらその人にとって何が起こるかわからない、それくらい人生に入り込んでくるような作品なんです。僕自身そうですが、虜になるような中毒性があると思うんですよ。本当は生で観ていただくのが一番ですけど物理的に難しい方もいるでしょうし、会場ではお客さんの数も限られるので、正直もったいない、悔しいと思う部分もあるんです。だから、この作品がどういうものかを広くたくさんの方に知っていただくためにも、今回の配信はいい機会だと思っています。アーカイブも残りますし、会場の景観含め、貴重な映像になると思いますので、是非ご覧いただけたら嬉しいです」

(取材・文:吉野淡雪 撮影:NORI)

プロフィール

松田 凌(まつだ・りょう)
1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。高校2年生の時に下北沢 ザ・スズナリで舞台『URASUJI3』を観劇し、「自分も同じ舞台に立ってみたい」と、その日に俳優になることを決意。2012年、ミュージカル『薄桜鬼』斎藤一(主演)役で舞台デビュー。主な出演作は、TV『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013)、『ニーチェ先生』(2016)、『男水!』(2017・主演)、映画『ライチ☆光クラブ』(2016)、舞台『ナミヤ雑貨店の奇跡』(2016)、『瞑るおおかみ黒き鴨』(2016)、『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』(2019・生駒里奈とW主演)など。Zu々プロデュース公演『Being at home with Claude~クロードと一緒に』では再演(2015)、Lecture-Spectacle<読み聞かせ>(2016)、そして再々演(2019)で「彼」を演じ、今回4度目の主演。同じくZu々プロデュースでは、映画『秘密の花園』(2021)に出演。

神尾 佑(かみお・ゆう)
1970年3月16日生まれ、福島県出身。1994年、北区つかこうへい劇団に入団。映画『進撃の巨人(前篇・後篇)』(2015)、ドラマ『SP~警視庁警備部警護課四係~』(2007・2011)、NHK 連続テレビ小説『マッサン』(2014~2015)、ドラマ『TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部~』(2014)、ドラマ『偽装の夫婦』(2015)、舞台  『hana-1970、コザが燃えた日-』(2022)など、多作品に出演。

公演情報

Zu々『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

日:2023年7月20日(木)~23日(日)
場:京都文化博物館 別館ホール
料:6,800円(全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://zuu24.com/withclaude2023/
問: Zu々 mail:withclaude1967@gmail.com

※全席完売。以下、配信でご観劇ください。

【ライブ配信】
日:2023年7月23日(日)
場:Confetti Streaming Theater
料:視聴券3,900円(税込)
  ~7月23日(日)17:30まで販売中

[配信開始]
7月23日(日)18:00~
※アーカイブ配信なし
※視聴ページには17:50頃からログインが可能

【レンタル動画】
日:2023年7月23日(日)
場:Confetti Streaming Theater
料:視聴券[特典映像付]4,800円(税込)
  ~8月13日(日)23:59まで販売中

[配信期間]
7月28日(金)18:00~8月15日(火)23:59

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