2バージョンの振付で魅せる身体表現の可能性を追求 温暖化の脅威と劇団の危機 精神状態を心配するほどの衝撃作

 CCCreationとあやめ十八番の堀越涼によるオリジナル作品第3弾『シオヒガリ』は、温暖化により国土の一部が水没した近未来の日本が舞台。自分の内面や病を描くべきか、それとも海面上昇によって故郷を失った災害をテーマに描くべきか、新作公演の創作に追い詰められる劇団「トコシエ」を率いる劇作家・的形修司が、自らの表現と向かっていく物語。
 オリジナル作品第2弾『白蟻』(2024年)に引き続きタッグを組む、堀越涼と主人公・的形修司を演じる多和田任益に、お互いの印象や本作の意気込みや見どころを伺った。


―――おふたりは2024年『白蟻』が初めましてだったそうですが、その時のお互いの印象はいかがでしたか。

堀越「すごく真面目。最初からずっと真面目でしたし、勘の良い人だったので、演出するのに大変だったことは一切ないんですよね。逆に多和田くんは負担のある大きい役を演じていただいたので、きっと大変だったと思います。僕的にはすごいいいなと思って『あとは頑張って』とお任せで状態でしたけど、出来上がりは本当に素晴らしかったです」

多和田「出会ってすぐに『めちゃくちゃ天才な人』だなと思いました」

堀越「頭良さそうだと思った?」

多和田「はい」

堀越「えっ、嬉しい‼」

多和田「あんな戯曲を書けるなんてすごいと思っちゃったというか、脳みそを覗いてみたいと思いましたね。正直すごく怖い人と思っていたら、全然そんなことはなくて、むしろとても接しやすい方でした。あぁいう作品を生み出される堀越さんに『あとは頑張って』と言われたのも、『重く言われるよりは良いか』と切り替えることが出来ました。重い口調で『ちょっと頑張ってね……』みたいに言われると、僕自身も重くなりがちになるので、今思えば、ラフに言ってくださったのは、堀越さんの愛だったかなと思いました。ただ2024年の中では、ダントツで一番大変だった現場でした。ドラマ『シュガードッグライフ』の撮影と舞台『熱海連続殺人事件』の本番を同時並行していたのも大変だったんですけど、僕の中では『白蟻』が全然大変でした(笑)」

堀越「え、本当?(笑)」

多和田「本番期間も、待ち時間に僕と平野(良)さんだけお弁当を食べながら、2人でセリフをやり合うくらい追い込まれてましたね。すごく大変だった分、得るものもめちゃくちゃあったので、その出会いをくださった恩人だと僕は思っています」

―――そして今回、『シオヒガリ』の出演となりますが、お話をいただいた時どう思われましたか。

多和田「またあの大変な期間が来るなと思いました(笑)。僕自身“自分に自信ないタイプ”なので、『白蟻』が終わって、『あいつダメだったな』と思われているんじゃないって心配してたんですけど、再び一緒にやりたいと思ってくださって、素直にすごく嬉しかったです。しかも今回のプロットを読ませていただいた時、きっと内容的に堀越さんが身を削って台本を書かれることになるんじゃないかなと想像できたので、その役を僕に任せようと思っていただけた気持ちに応えたいと感じたし、『白蟻』でのあのしんどさは、このためにあったのかもしれないとも思いました」

―――的形役のキャスティングは堀越さんが指名されたのでしょうか。

堀越「今回は、フィクションな部分と、自叙伝な部分の両方ある作品ですけど、自分を投影した主人公っていうのを、まぁ誰にやっていただこうかなっていう中で、僕とプロデューサーの宮本さんで、的形は多和田くんがいいんじゃないかっていうので、お話をさせていただきました。もちろん『白蟻』での頑張りやお芝居の感情も見ていますし、性格的なことも分かっていますし。僕は割とあっけらかんなタイプですけど、作品中の主人公はちょっと繊細なところがあって、だから余計多和田くんに合うなと思って。まぁ、自分の役ですから、カッコいい人にやってもらいたい願いもあって」

多和田「いやいやいや」

堀越「様々な下心もありつつ(笑)。多和田くんにやってくれないかなという感じですね。劇作家にカッコいい人なんていないんですから!」

一同「(笑)」

堀越「お芝居ですから、ショーとして見せたいわけですよ。やっぱりカッコいい多和田くんにやってもらいたい‼」

―――ホームページを拝見させていただいて、あらすじの前に映画監督のフェデリコ・フェリーニの名言『すべての芸術は自伝的だ。真珠とは牡蠣の自叙伝である』が記載されていますが、これはどういう意図で載せているのでしょうか。

堀越「キャッチコピーにして欲しいと言ったんですよね。作家というのは、自分の本を書く時、必ずどこか自分の部分を削いで作品に入れるというところがあるんですけど、今回はその割合が多いよねという意味でもあります。実はプロットを提出した際に、かなり心配の声がありまして……。音楽監督の吉田能が心配して、僕の妻に連絡してきたんですよ。『堀越の精神状態は大丈夫?』って(笑)」

多和田「プロットを見たらそう思いますよ!」

堀越「僕自身は『全然平気だよ‼』みたいな感じですけど、そのぐらいセンシティブな作品ではあるんですよね」

多和田「僕も堀越さんに連絡する!気持ちは正直分かります(笑)。もし梅棒の次回公演がこんな内容だったら『えっ?』ってなりますよ。(梅棒主宰の伊藤)今人さんが書いてきたら、一回様子伺うと思います」

堀越「梅棒が解散しちゃうんじゃないかと思っちゃうよね(笑)」

多和田「堀越さんとご一緒するのは今回が2回目ですけど、僕の中で堀越さんらしいプロットだなと勝手に思いました。もしも堀越さんじゃない人が書いたプロットだったら『この劇作家さん、大丈夫かな?』って絶対に思います。なので、『白蟻』でご一緒してて、めちゃくちゃよかったです。もし今回が初めてだったら『受け止めきれるかな……』と思っていたはずです」

堀越「だからというわけではないんですけど、メインキャストで初めましての人は少ないんですよ。1回ぐらいは僕のこと知っていてもらった方が、やりやすい部分は絶対あると思います」

―――多和田さんは、劇作家で劇団のトップを演じますが、役作りをする上でこういうことをやってみたいというプランなどございますか。

多和田「先日観劇したケラリーノ・サンドロヴィッチさん作の戯曲『シャープさんフラットさん』も劇作家が主役のお話で、的形とタイプは違うものの、病んでいるところとかは似ていて、“自分はどう的形を演ろうか”ということが頭を過りました。2020年に『梅棒』のメンバーになって6年近く経って、公演の振付やシーン演出を速度感を上げて出来るようにはなったのですが、こだわりがどんどん強くなって、エンタメと演劇とのせめぎ合いがあったりして、主宰の今人さんに意見を伝える機会も多くなったと同時に、生みの大変さを前より具体的に感じ取れるようにもなっている中で、劇団の代表で劇作家の役を演じるのはタイミング的に考えさせられるものがあるな、と思ったりもして。まだプランはないけど、きっと役作りの間に今人さんや梅棒でのことを自然と思い浮かべるだろうなと思います」

―――まだ稽古前の段階ではありますが、本作の見どころを教えていただけますか。

堀越「振付が異なる2つのバージョンを作るところが、演出的にはチャレンジなところですし、見どころでもあります。今回のメインキャストは踊れる方が揃っていて、しかも身体能力の高い方をアンサンブルで集めて、2バージョン作った上で、どのぐらい違うものになるかも含めて、身体表現の可能性を探っていきたいなと思っていて、僕自身楽しみではありますね」

多和田「僕も同じですね。“振付2バージョン”という文字を見た瞬間に、シンプルにワクワクしました。演じる方からしてみれば、大変だなとは思うんですけど、僕らが違う身体表現をすることによって、お客さんの作品の感じ方が変わったり好みが分かれたり、様々与える印象や影響が違ってくると思うので、演者としてやり甲斐を感じます。それと、『白蟻』で音楽監督の吉田さんの生み出す音の虜になっちゃって、演者としても、いちファンとしてもまたあの音楽、音の中で演じられるのはとても嬉しいです」

―――本作は温暖化により国土の一部が水没した近未来の日本が舞台ということですが、実際に“近未来の日本”はどうなっていると思いますか。

堀越「やっぱり温暖化は避けられないと思うんですよ。僕らの小学校1〜2年生の頃って、プールの水温が上がらなくて、よく中止になっていた記憶があるんですけど、今では暑くて危険だから入れないとか、プールサイドを歩けないというレベルになっていて、だいぶ夏も変わっているし、これからどんどん暑くなったらどうなるんだろうと想像しながら今回の台本を書いたという感じですね。もちろん涼しい方がいいですし、自分の名前が『涼』というぐらいなので、涼しいことが一番好きだとは思っているんですけど、なかなか難しいかもしれないです。これからあと20年後、どのぐらいの気温になっているか、ちょっと想像もつかないところがありますが、『シオヒガリ』のお話通りになっちゃうんじゃないかなと思います」

多和田「僕も『シオヒガリ』のような未来にいずれなるかもしれないなと。プロットを見た時に、本当はもっと先の話かなとか思うけど、意外と間近に迫っていてもおかしくないんだろうなと思いましたし、それこそ『白蟻』で描かれていた世界も、本当に近づいてきているなと感じていて、堀越さんの脚本は本当にありそうなことと、そうでないことの”絶妙なライン”突いているんですよね」

―――最後に公演を楽しみにされている方に向けてメッセージをお願いします。

堀越「分かりやすくて、分かりにくい。理解しやすくて、理解できないようなお芝居になったらいいなと思ってるんですよ。言っていることは分かるし、理解は出来るけど、飲み込めないみたいな。そういうような世界にできたらいいなと思って頑張ります。僕もきっと悩みながら進んでいくでしょうけれども、素晴らしい俳優の皆さんに集まっていただいてるので、みんなで相談しながら、稽古場は和気藹々と、でも悩み苦しみの話ではあるので、それを丁寧に届けたいなと思っております」

多和田「2024年に堀越さんと初めてご一緒して、『白蟻』という作品に出会えてよかったと今でも思っていますし、観に来た演者仲間たちが、みんな悔しがっていたんですよ。『ああいう作品に出られててすごい』『私も僕も出たいと思った』などと言っていただいて、僕も同じ立場で観に行ったら絶対同じ気持ちになったと思うんですよ。そして再び堀越さんと一緒にやらせていただけるのも本当にめちゃくちゃ有難いし、『白蟻』の評判がよかっただけに、絶対超えなければいけないプレッシャーはあります。でもそれを超えられる演者とスタッフの皆さんが集まってくださったというのも思っていて、きっと公演が終わったら『苦しかった』と言っているんでしょうけど、その苦しさがこの作品において実を結ぶための大事な糧だと思って、しっかり向き合って頑張っていきます。ぜひ2バージョン観てください」

(取材・文&撮影:冨岡弘行)

プロフィール

堀越 涼(ほりこし・りょう)
1984年7月1日生まれ、千葉県出身。2012年に劇団ユニット「あやめ十八番」を旗揚げし、以降、全作品の作・演出を手がける。2022年『空蝉』で第34回池袋演劇祭優秀賞受賞。2025年『六英花朽葉』で北海道戯曲賞優秀賞受賞。主な脚本・演出作に、『沈丁花』(演出・脚本)、『女中たち』(演出)、『白蟻』(演出・脚本)、『近松心中物語』(演出)など。

多和田任益(たわだ・ひでや)
1993年11月5日生まれ、大阪府出身。2011年に俳優デビュー。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』で注目される。主な出演作に、舞台『文豪ストレイドッグス』シリーズ、舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』、舞台『白蟻』、ドラマ『シュガードッグライフ』など。2020年、ダンスエンターテインメント集団「梅棒」に加入。また振付師として舞台やアイドル楽曲の振付にも携わっている。

公演情報

CCCreation Presents 舞台『シオヒガリ』

日:2026年9月17日(木)~27日(日)  
場:KAAT 神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
料:マチネ S席10,000円 ソワレ S席8,500円 ※他、各席種あり。詳細は下記HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.cccreation.co.jp
問:CCCreation mail:contact@cccreation.co.jp

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