「最強の一人芝居フェスティバル」過去5年のベスト作品を全国で上演! 直球コメディから自伝的作品まで作り手も観客も刺激する10作品を選出

 大阪に2ヶ所、東京に1ヶ所の小劇場を運営する「インディペンデントシアター」。2000年に最初の劇場がオープンした翌年から、一人芝居に特化した演劇フェス『INDEPENDENT』を毎年開催し、日本全国の俳優たちが作品を発表している。26年目の今年は「5th Season Selection」と題して、2021年~2025年の間に上演した約170作品の中から、特に優れた10作品をセレクトして、全国7都市を巡るツアーを行う。第1回から同フェスを企画する、相内唯史プロデューサーに話を聞いた。

———2001年に「INDEPENDENT」を始めた狙いは何でしたか?

 「インディペンデントシアターがオープンした当初は、演劇関係者の間で認知度が低かったので、劇場側から発信する作品を作ろうと思いました。そこで一人芝居にしたのは、まず当時の劇場(※旧インディペンデントシアター1st。2019年に現在地に移転)の舞台が本当に狭くて、大人数の舞台に向いてなかったこと。それとまだあの頃は一人芝居をする俳優が少なかったので、逆に劇場側から一人芝居を作るよう仕掛けてみたらどうか?というのがありました」

———出演者を3・4組ごとにブロックに分けて、各ブロックの合間には飲食ができたり、DJイベントを楽しめるなどの、夏フェスみたいなノリは第1回からすでに始まってますね。

 「そうですね、フェス感は大事にしたかったです。僕はもともとライブハウスによく出入りしていて、演劇に関わるようになった時に「なんで演劇では、対バンみたいな企画をやらないの?」って思って。それで聞いてみたら、演劇はそれぞれの作品に合わせたセットや照明があったりして、バンドのように気軽に一緒のステージではやれないんだよ……みたいなことを言われたんです。だったらこちら側でフォーマットを整えて「こんなルールで作ってください」って決めたら、対バンみたいなことができるよねって」

———それで上演時間30分程度、大道具は最小限というルールができあがったと。それは第1回から、上手く行ったのですか?

 「最初に言ったように、そもそも一人芝居をやる俳優さんが少なかったので、オファーをしてもかなりの人に断られました。それでもなんとか開催できたんですけど、オファーを断った人たちも見に来て、いろいろ感想を言ってくれたんですよ。正直10本全部が面白いわけじゃなかったけど、これを続けていくといろんな人が一人芝居の面白さに気づいて取り組むということが、波及効果で広がるんじゃないか? みたいなことを。
 実は次の年は別のことをするつもりで、告知までしてたんですけど、みんながそう言うのなら続けてみようと思いました。そうすると次第に『やってみたい』と志願する人が増えてきて、2006年からは『トライアル』という、公募の予選まで行うようになりました」

———2006年からは、5年分の作品の中から10作品をセレクトして再演する「Season Selection」も始まりました。

 「新しいことをするのはもちろん労力がいりますけど、続けていくこともすごく労力がいるので、ただ普通にやっていたら、多分どこかで燃料が尽きるって、第2回の時から思ってました。だから5年間で一区切りを付けて、その中から特に良かった作品を再演するってなれば、参加者も運営側もモチベーションになるんじゃないかと思いました」

———今回登場する10作品の見どころを教えてください。

 「犬養憲子さん『はぐ』は、1人の女性の人生の振り返りが、最終的に人類の話にまで一気に広がる芝居。犬養さんは沖縄の人で、作・演出の大迫旭洋さんは福岡の人なんですが、前回の『INDEPENDENT』のツアーの時にお互いの作品を観て、地域を超えて一緒に作ることになったので、『INDEPENDENT』があって生まれた作品だと言えます。
 おぐりまさこさん『開園まで』は、意図せずに不倫の関係に陥った女性が、不倫相手が自宅に来るまでの間に、相手に楽しんでもらえる時間と空間を作ることを考える物語。コメディタッチではありますけど、どこまで行っても結ばれない関係に区切りを付けられない苦しみや、複雑な関係がかもし出す哀愁が見えてきます。
 尾沢奈津子さん『名前のつかない有様に』は、当時自分のカンパニーの解体を発表したばかりだったダンサーの尾沢さんが、初めて舞台で台詞をしゃべった作品です。大きな喪失の中でコミュニケーションを取るために手話ではなく身振り手振りで自分の考えや、情景を伝えようとする姿が、ダンスとつながっていくという内容です。
 亀山貴也さん『Too Late To Die』は、ベテランの売れっ子俳優と、モブキャラを演じる俳優が同じ楽屋になって、舞台の本番中に会話を交わす姿を、1人2役で演じます。モブキャラの俳優が何回も着替えてどんどん出入りする中で、じょじょに「なぜ2人が同じ楽屋になったのか」がわかってくるというサスペンスコメディです。
 澤井里依さん『ケンジとトシ』は、タイトル通り宮沢賢治と妹のトシを描いた作品。2人の子どものころから別れまでの、様々な葛藤や成長を描いた物語です。澤井さんが衣装や小道具で2人を演じ分けたり、賢治の童話を人形劇風に見せたりとか、いろいろな一人芝居のやり方を1本で楽しめる作品でもあります。


 柴田智之さんの『Aさんの故郷、野田村を訪ねて』は、柴田さん自身の作・演出で、彼が実際に体験したことを描いた、ドキュメンタリー演劇的な要素のある作品。作業療法士の資格を取るための実習で出会ったAさんとの対話を通して、自分はやっぱりアーティストだということを思い知らされるという、人生を見つめ直すような物語です。
 丹下真寿美さん『屋久島の女』は、末満健一さんが2005年に別の俳優と作った作品ですが、当時演劇を始めたばかりの丹下さんが観て『演劇を真剣にやろう』と思うきっかけとなった舞台で、2025年にリメイクされました。重いテーマのゴシックホラー作品ですが、20年も前に書かれた作品なのに、まったく色あせていないことに驚きます。
 福田恵さん『マイゴ』は、ショッピングモールで迷子のアナウンスをする係の人が、迷子になる人の共通点に気が付いたことから起こるコメディです。芸人のどくさいスイッチ企画さんが脚本を書いてますが、彼は学生時代に演劇をやってたそうで、これがきっかけで演出の大沢秋生さんと福田さんと3人で『演劇の青山』を結成しています。
 藤原瑞基さん『よあけのみち』は、ド直球の落語的なコメディです。自分が『フランダースの犬』のネロ少年だと言い張る男が、道端でパトラッシュのミイラを見せるという見世物をして小銭を稼いでいる。当然ネロは実在するわけがないのに、あまりにも話にリアリティがあるので『本当にネロなの?』とお客さんがだまされていく内容です。
 山田蟲男さんの『蟲』は、江戸川乱歩の短編が原作。山田さんが『原作ものでもいいですか?』と相談されてきて、『INDEPENDENT』では小説原作の作品は少ないので是非とお願いしました。かなり重くてグロさもある作品ですけど、原作に思い入れがあるということで、ものすごく鬼気迫る演技で、ちょっと突き抜けている作品です」

———かなりバラエティに富んだラインアップですね。まだ「INDEPENDENT」を観たことのない人に、楽しみ方のアドバイスはありますか?

「まずはお気に入りの役者さんや、気になる作・演出家が出ているブロックを1つ楽しんでいただけたらいいかなと。その1ブロックを観るだけでも、一人芝居にはこんなに違いがあるってことがわかると思います。10本とも僕にとっては全部自信作ですけど、やっぱり人によって好みは変わるじゃないですか? でも1ブロックで何本も観られるから、1本が合わなかったとしても、次はまたカラーの違う作品が出てくる。どんどんいろんなものに興味が移っていくという部分でも、気楽に見ていただけると思います」

———1本が30分程度なら、本当に気軽に未知の世界にトライしやすいですよね。

「僕自身、学生時代に対バンでいろんなバンドのライブを見たことで、良いバンドをいくつも見つけたという経験があるので。1ブロックを見るだけでも、自分に合う演劇/合わない演劇があることに気づいてもらえると思うし、そうするとこれから他の舞台を選ぶ時の、判断の基準みたいなものを作ってもらえるんじゃないかと。初心者の人がこれから演劇を楽しんでいくための、スタートにもなれる企画だと思います」

(取材・文:吉永美和子)

プロフィール

相内唯史(あいうち・ただし)
北海道札幌市出身。大学在学中から映像技術者やイベント企画運営スタッフとして活動し、2000年に「ジャングルインディペンデントシアター(現インディペンデントシアター)」劇場プロデューサーに就任する。2001年に一人芝居フェスティバル「INDEPENDENT」を開始し、日本各地や海外にまで展開。その他にもコンセプチュアルな企画を多数仕掛け「出来ない事はない」小劇場の最強ゼネラリストとして精力的に活動中。観客の視覚をトータルデザインするユニット「CriticalCreation」では、みずから演出を手掛けている。

公演情報

最強の一人芝居フェスティバル
『INDEPENDENT:5th Season Selection / JAPAN TOUR』

日:2026年7月16日(木)~20日(月・祝)
場:in→dependent theatre 2nd
料:1ブロック券3,500円(当日指定席・税込)
  1日通し券5,000円(事前指定席・税込)
  ※他、各席種あり。詳細は下記HPにて
HP:https://independent-fes.com
問:INDEPENDENT
  mail:info@independent-fes.com

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