浅草を飛び出し進化しつつ、変わらない熱量を見せたい “赤穂浪士”や“生類憐みの令”の要素を盛り込んだ歌・ダンスも盛りだくさんな和風ロミジュリ

 浅草の東洋館を中心に、2006年から活動してきた劇団ドガドガプラス。2026年5月には劇場を錦糸町・すみだパークシアター倉に移し、2014年に初演、2017年に再演を行なった人気作 『吉原ロミオとジュリエッタ』を上演する。劇団主宰(脚本・演出)の望月六郎、初演から引き続き主演を務める丸山正吾に、劇団や作品について話を伺った。


■多彩な要素がふんだんに盛り込まれた、情報量の多い芝居
―――シアターウェブマガジン「カンフェティ」初登場ということで、まずは劇団ドガドガプラスさんのカラーや特色を教えてください

望月「『踊り子女優化計画』ということで20年前に始まった劇団です。黒澤明などの映画監督がよく踊り子を抜擢することがあり、その理由として、体の動きの良さや大胆さを挙げていたんです。それをいいなと思い、お芝居の中に歌やダンスの要素がある作品をやっています。僕としてはアングラだと思うけど、お客さんにはエンタメ系ですねと言われますね」

丸山「東京1、訳のわからない劇団(笑)。でも、望月さんの中では一本筋が通っていて、俳優たちもそれに納得し、笑いながら作っています。不気味なところはあんまりなく、爽やかにぶっ飛んでいる劇団です」

―――望月さんが脚本においてこだわった部分、丸山さんが感じる本作の魅力はなんですか?

望月「いつか『ロメオとジュリエット』をやりたいなという思いがあり、最初は『ウエスト・サイド・ストーリー』にかけて『上野下谷穢土物語(うえのしたやえどものがたり)』にしようかと考えていました。元禄時代を舞台に、僕らなりの作品にできたらと思って完成した作品です」

丸山「いわゆるロミジュリを和風で、しかも望月さんが作る。赤穂浪士と穢多頭の娘の恋というところからもう面白いと思います。最終的に2人が狼になって、野山を駆け回った挙句心中するのがすごく刺激的。文字にすると何のことかわからないと思うので、見に来ていただけたら嬉しいです」

―――丸山さんは赤穂浪士・毛利小平太を演じます。

丸山「初演は20代の頃だったんですが、肺が焼けるほどしんどい役でした。喋りまくって走りまくり、叫んで泣いて怒って笑うみたいな。30代でももう一度演じ、今回は43歳。30代の時は若者を演じる気恥ずかしさがありましたが、40代で若者を演じるのは逆に楽しみです。
 20代の頃は、赤穂浪士であること、狼になることなど、ガワを大事にしていました。30代ではその意識が少し薄れたので、40代になるとガワは不要になるかもしれないです。歳を重ねると直情的な恋愛の感情はなくなってくるので、没入して演じられるんじゃないかと思っています」

―――役との共通点、演じていて特に楽しいところはいかがですか?

丸山「共通点は……よく動いてよく走るところでしょうか。楽しいところとしては、人が遠吠えするのを聞く機会はまずないと思うので(笑)。俳優みんなでする遠吠えは、見ていても楽しいと思います。お客様も遠吠えしたくなるかもしれないので、可能だったらお客様も遠吠えOKにしたいですね(笑)」

―――キャストの皆さんへの期待、楽しみなことを教えてください。

望月「知っている顔が多いので安心もあるし、オーディション組もドガドガに興味を持ってきてくれているので楽しみです。劇団としても新陳代謝があるので、また次の何年間かも面白くなるといいなと思っています。初演から務めてくれている主演の丸山は40歳を過ぎていて、今回が恐らく最後のロメオ。それも見どころかと思います」

丸山「初参加の方が多いので、そういう人が望月さんの演出を受けてどう化けていくのか楽しみです」

―――望月さんの演出、脚本の魅力を教えてください。

丸山「人が思い付かないことを思いつくのが才能だとしたら完全に天才。豊かな想像力が一番の魅力だと思います。あとは自分が書いたインテリジェンスな本を自分で破壊していく。演出家としての望月さんと作家としての望月さんが分離しているところが面白いと思います。
 作家としての魅力は情報過多なところ。豊富な知識をふんだんに使って本を書いていらっしゃるので、人間が2時間ちょっとで摂取していい情報量じゃないんです(笑)。多くの方がパンクして、ぼーっとしながら劇場を後にされていますが、情報過多なのが気持ちいい・美学を感じるという感想もいただきますね」

■劇団の魅力はそのままにスケールアップを目指す
―――3度目の上演ですが、今回ならではの見どころなどいかがでしょう。

望月「それほど様変わりしているつもりはないけど、強いていうと劇場が変わります。今までと違う空間でやるのが見どころかと思います。演劇としては多少芸能に近付けつつ、初めてじゃない人には、変わらないところを見せようかなという思いがあります」

丸山「やっぱり劇場が変わるのは大きいですよね。ドガドガプラスは寄席小屋でやっているイメージが強いと思うので、普通の劇場ではどうなるのか楽しみにしていただきたいです」

―――すみだパークシアター倉での公演は初めてですが、そのことに対する思い、楽しみなことなどはいかがでしょう。

望月「今までは暗転もできない劇場で、照明さんからは『ここじゃなければもっと色々できるよ』と言われていました。今までよりスケールはアップできるのかなと思っています。あと、東洋館は他の公演との兼ね合いで夜しか公演ができないし、セットも当日組めるものしか作れませんでした。だから、今回初めてマチネができることになります。出演者からはドガドガの芝居は大変だから1日1回じゃなきゃ無理という声も多くて、挑戦だと思いますね」

丸山「東洋館は壁も床も幕も黒い部分がほとんどなくて、劇場が明るいんです。今回は普通の劇場なので、お客さんが少し声を出しづらくなると思うんですが、そこでいかに乗ってもらえるか。お祭りのような楽しい空間にする方法を思案しているところです」

―――現時点で、演出についてどんな構想がありますか?

望月「踊りの空間が必要なので、美術や道具で見せるわけにいかないところもあります。チームと僕の趣味として、いっぱい人が出ているシーンが好きで、今回は25名の出演者のうち23名登場するシーンが、大人数が右往左往するようなシーンがあります。
 あとは、劇場のスケールが大きいとできることが多いと思うけど、できるだけローテクでやろうと。映像だとある程度のクオリティで見る人をびっくりさせる必要があるかもしれないけど、演劇だとお客様が見て『そういうことね』とわかる・わかってもらえた喜びがあります。お客様と一緒に演劇ならではのイリュージョンを作りあげるのも、この劇団のお芝居を見ていただく楽しさかもしれません。ローテクだと演者は大変な部分も多いけど、それによってカロリーが上がっている気もしますね」

―――ドガドガプラスさんを初めて見る方に向けて、楽しみ方のアドバイスをお願いします。

望月「上演中の笑いはもちろん、拍手や掛け声は大歓迎です。お芝居だから静かにって感じではないですね。あとは、出演する年齢層が幅広く、一番上が60代で一番下が10代。ファン層は男女半々で、年齢も様々です。『楽しんでやろう』という気持ちで見に来ていただけると嬉しいです。
 掛け声は歌舞伎の大向こうみたいな感じで、俳優名でも役名でもOK。タイミングはなかなか難しいと思いますが、そこはよく来ている方の掛け声を真似ていただけたらいいですし、声をかけるポイントもあります」

丸山「SNSなどに『考えるな、感じろ』と書いているファンの方が多いです(笑)。でも、歴史や社会問題などに詳しい方は、そこも楽しめると思いますね」

■目指すは浅草公会堂での劇団公演
―――元禄時代のお話ということで、観る前に押さえておくといい知識などがあれば教えてください。

望月「江戸時代には天保とかのドラマにしやすい時期もあります。色々調べて最終的に元禄を選んだ理由は、華やかな町人文化。それから、生類憐れみの令と赤穂浪士です。戦乱が終わった華やかさと荒々しい戦国時代の名残の両方がある。盛り込みすぎはどうかと思ったけど、元禄を描くのにその辺が出ないのも変なので全部入れました。ざっくりした時代背景はわかっていただけるといいと思います。
 ロミジュリは2つの家の宗教戦争の話がベース。それを吉原で書くと決めた時に、被差別側だけど権力を持っていた穢多頭・弾左衛門の娘と、赤穂浪士の武士で、討ち入り前まで活躍しながら討ち入りに参加しなかった毛利小平太という男の身分違いの恋にしました。
 吉原という場所は治外法権で、自治警察がいたわけです。喧嘩は御法度、喧嘩両成敗の場所を舞台にしているので、元禄という時代、吉原という場所について、多少知っておいていただくとわかりやすいかなと思いますね」

丸山「ロミジュリってどんな話か、赤穂浪士ってどんなものか、穢多頭とはどんな存在か。などを調べていただいたら、あとは基本的に楽しい世界だと思います」

―――時代によって作品の受け取り方は変わると思いますが、今上演することで、お客様にどんなものを届けたいですか?

望月「僕の趣味っていうとおかしいけど、劇は激しいものだと思っています。日本は平和だから戦後とか戦中とかの激しい時代を描いていたけど、今は激しい時代になったので、逆に『一生懸命生きる』話を楽しんでもらえたら。この2、3年は現代を必死に生きる若者たちを描いた『SEXY女優事件』シリーズという現代劇をやっていました。
 今回は現代の必死さではなく、違う時代を楽しんでもらいたい。でも、若い人の方が漫画やアニメの影響で時代劇が好きだと思います。昔はキャストから『古くて嫌』なんて言われたこともあったけど(笑)、今は現実離れしていて楽しいという声も多いですね。忍者とか侍とか、いい意味でコスプレ感覚なのかもしれません」


丸山「今はホワイト社会が広がっていると思いますが、人間なので繕わない部分もあると思います。この作品は、一切繕わない直情的な人ばかり出て来ます。何も隠さずに生きていく美しさもあるのかなという感じですね」

―――旗揚げから20年に突入する上で、これからの劇団ドガドガプラスの構想や目標を教えてください。

望月「東洋館に落ち着いた時から、浅草公会堂を目指そうと話していました。今回で新しいお客さんも増やして、コロナ禍の3年を抜いた23年目くらいに浅草公会堂で20周年公演をやれたらと思っています。初めてのお客様にも、ぜひ推してほしいですね(笑)」

丸山「浅草公会堂での公演はもちろん実現したいです。これからについては、望月さんが何をやりたいというか想像がつかない。何をやりたいかは望月さん次第です」

―――最後に、楽しみにしている方へのメッセージ、興味がある方の背中を押すようなコメントをお願いします。

望月「楽しみに来てほしいです。堅苦しく見るというよりは、芸能を観に行くという感覚で。歌や踊りがあるエンタメという意味では2.5次元舞台に近いと思うけど、うちは原作がないので、登場人物や時代についてちょっとだけ勉強していただけるとより嬉しいですね。
 漫画とかでも、皆さん『チ。-地球の運動について-』とか『ゴールデンカムイ』とか、難しいものを楽しんで読んでいるじゃないですか。そういった作品に近いものだと思ってもらえたらいいかなと。もちろん、知らない方を置いていくつもりもないので、素直に楽しんで頂いでも大丈夫です。ぜひ楽しんでください」

丸山「今までも見てくださっているお客様には、普通の劇場でドガドガプラスがどこまで無茶苦茶できるのかを見てほしいです。うちの劇団はおそらく大好きか大嫌いかしかないと思うので、初めての方はぜひ一度見に来ていただきたいです。脳みそをシェイクして、『もう2度と見るか!』と思うか、『また見たい!』と中毒になるか。ぜひ確かめてください。ちなみに、心の広い方におすすめです(笑)!」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

望月六郎(もちづき・ろくろう)
東京都出身。映像作家の金井勝に師事し、助監督を務めたのちに映画監督としてデビュー。映画監督として勢力的に活動する傍ら、2006年に自身が脚本・演出を務める劇団ドガドガプラスを旗揚げした。主な劇団公演として文豪の作品をモチーフにした『贋作』シリーズ、『SEXY女優事変』シリーズなど。

丸山正吾(まるやま・しょうご)
静岡県出身。2001年から役者としての活動を開始。これまでに唐十郎(劇作家・演出家)、望月六郎(映画監督・演出家)、和栗正明(俳優・声優)、北見敏之(俳優)に師事。劇団ドガドガプラス、ボブジャックシアターに所属し、両劇団の看板俳優として活躍している。

公演情報

劇団ドガドガプラス 第37回公演
『吉原ロミオとジュリエッタ〜百花繚乱・仇吹雪〜』

日:2026年5月5日(火・祝)~10日(日)
場:すみだパークシアター倉
料:一般5,500円 学生4,500円 ※要学生証提示
  (全席自由・税込)
HP:https://doga2.jp
問:劇団ドガドガプラス
  mail:info.doga2plus@gmail.com

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