女の生き様をコミカルに描く 「年に2回は公演したい」 芝居に“大”も“中”も“小”もない 女優2人によるユニットの旗揚げ公演

女の生き様をコミカルに描く 「年に2回は公演したい」 芝居に“大”も“中”も“小”もない 女優2人によるユニットの旗揚げ公演

 女優の池上季実子と本多真弓による演劇ユニット「季真〆組」の旗揚げ公演『好きなだけじゃダメですか』が4月に上演される。
 公私ともに仲が良く、真面目でマイペースな2人が、それぞれの人生を精一杯生きてきた、力強さも弱さも曝け出し、観ている人に心が温まるような作品をコミカルに届ける。
とあるマンションのベランダを舞台に、結婚を迫られ悩んでいるらしき女性と酸いも甘いも経験済みらしき女性が、ベランダ越し程度の関係だからこそ話せることで、自分らしい生き方について考える物語をコメディタッチで描く。
 池上季実子と本多真弓、それに本作で脚本・演出を担当するニシオカ・ト・ニールに話を聞いた。特に池上のユニットに対するあくなき向上心は必見だ。


―――本作は池上さんと本多さんによるユニット「季真〆組」としての旗揚げ公演になります。

本多「旗揚げということは、この先も続けなきゃいけないことになるんですよね」

池上「えっ、続けたくない? 今の発言、問題だよね」

(一同笑)

本多「いやいや、続けますよ!」

―――公演の話をする前に、「季真〆組」結成の経緯をお聞きしたいと思いますが、そもそも池上さんと本多さんとの出会いはいつ頃ですか。

池上「2017年に『大伴家持 剣に歌に、夢が翔ぶ!』という舞台で共演したのが最初の出会いで、東京以外に地方も回って、そこで一緒に食事にいってたりしていたことで親交が深まりました。その後も何度か舞台や朗読劇で共演して、そのうち親子役が2回もあって」

本多「はい、親子役をやってしまいました」

池上「私がお母さん役で」

本多「それ以上言うのはやめて(笑)」

―――数多く共演しているうちに、ユニットの話が出てきたと思いますが、どちらの方から声を掛けましたか。

本多「どちらともなく、お互いが『一緒にやろうね』って言っていたんです。その間に一度、お芝居のことで大喧嘩したことがあったんです。すごい激しい喧嘩で、周りからしてみれば『もう2人の関係は終わりだね』みたいな感じで。ただ喧嘩が終わってから『何で私たち喧嘩するんですかね?』ってLINEしたら、季実子さんが『お芝居が好きだからじゃない?』と返してくれて、それで喧嘩は終わっちゃったんです」

池上「真弓ちゃんは小劇場を中心に出演やプロデュースをやったりしてきて、私はこれまで映像作品が多くて、舞台も大劇場での公演を中心にやってきたけど、小劇場はやったことない。それぞれの視点が全然違うから、ぶつかってしまうのは当たり前だと思うんです。ただ私もまだまだ学ばなきゃいけないことがあると思っていて、真弓ちゃんの“視点”も知っておいて損はないなと。これからも多少ズレたりとかいろいろあるかもしれないけど、『基本、芝居好きだよね』というところで落ち着いちゃいました(笑)」

本多「季実子さんは、大きな舞台にキャスティングされるのは当然だし、みんなも知ってる有名な女優さんですけど、私と出会ったことをきっかけに、小さい舞台もすごく観てくださっているんです。しかも真剣に一つひとつ観ていただいて。私がお誘いするといっぱい観てくださるし、季実子さんからもお誘いをいただきましたし、多い時には月に何本も一緒にお芝居を観劇することをもう何年もやっているんです」

池上「多い時は週2~3ぐらい一緒にお芝居を観に行っていたよね(笑)」

本多「小さな舞台でも季実子さんはこんなに喜んで観てくださるんだと思っているうちに、“一緒にやろう”という流れになりました」

池上「私にとって芝居は“大”も“小”も“中”もないわけですよ。会場の規模の違いはあるにせよ、芝居に区別や違いはなくて、以前大劇場で舞台を観劇した時『どうしてこれだけの規模でお客さんから高いチケット代を取っているのか納得できない!』と思ったこともあれば、『小劇場だけどもっとたくさんの人に観てもらいたいよな』と思わせる作品もあって、ただただ芝居の好きな人と芝居を一生懸命やっている人たちと一緒にいたいだけですね」

本多「好きなものも結構似ているし、観劇した後の芝居の話もすごく盛り上がって、それで、一緒にやろうとなりました」

―――「季真〆組」というユニット名は、どのような経緯で決まりましたか。

本多「季実子さんと一緒にあーだこーだと話していて、これも喧嘩寸前でしたよね」

池上「そうだっけ(笑)」

本多「熱い話をしているうちに、季実子さんが『“季真〆組”はどうだ』と言ってくださって」

―――「季真〆組」の“季”と“真”はそれぞれのお名前からとっていますが、“〆”を使うところがすごいセンスを感じます。

池上「字画数をいろいろ調べた結果、“〆”にしました」

―――おそらく「生真面目」という言葉とかけての「季真〆組」だと思いますが、「生真面目」は“融通がきかない”というネガティブな含みもあります。抵抗はなかったのでしょうか。

池上「お互いに融通が利かないところあるけれど、“私たちだから、ま、いいか”みたいな感じで、すんなりと受け入れました」

―――ユニット名が決まって、いよいよ旗揚げ公演となりますが、ニシオカ・ト・ニールさんに脚本と演出をお願いしようと思ったのはどちらでしょうか。

池上「こういうのは真弓ちゃんが詳しいからお任せしました。真弓ちゃんの方からト・ニールさんのお名前が出て、一度お目にかかって話をしようとなりました」

本多「旗揚げ公演は、真面目で硬いお芝居よりも、華やかで楽しいコメディの方がいいかなと思っていて、私の中で脚本と演出はト・ニールさんしか浮かばなくて」

ニシオカ「季実子さんと真弓さんとは、2023年の『じりりた』を観に来ていただいたのが最初でしたよね。季実子さんがいらしていることを知った時は『大女優が来る!』という気持ちで、『大丈夫かな?』と思っていたら、意外とフランクで(笑)。その後、昨年7月に上演した舞台『パンセク?』の宣伝を兼ねて、真弓さんが運営している『UCHIAGE』というBARで1ヶ月半ぐらい日替わり店長を務めたんですよ。その時が真弓さんと初めてしっかり喋ったぐらいだったので、お2人と比べたら、深い付き合いではないんです。最初にお声がけをいただいた時は『私で大丈夫ですか?』みたいな気持ちでしたけど、ありがたくお引き受けさせていただくことになりました」

池上「最初に3人で会った時も、大いに盛り上がっちゃって、その日のうちに大まかなあらすじやタイトルがポンと決まったよね。ト・ニールさんに『どのような設定がいいですか』と聞かれたから、『マンションのベランダを通して喋る』『ベランダの真ん中が空いていて、そこに真弓ちゃんの恋人が来るの』とか、勝手なことベラベラ話していたら、ト・ニールさんが『全部採用です、季実子さん』と言ってくださいました」

(一同笑)

ニシオカ「原作は季実子さんです(笑)」

池上「長年付き合っているカップルがいて、急に彼氏が『結婚しよう』と言って、彼女が『え、何で結婚しなきゃいけないの?』というストーリーはどうかなと話したんです」

本多「私たちにとって今何が面白いか、何に興味持っているかということから始めた方がいいかなと思って。『恋愛とは?』というのは、私たちの中でのテーマでもあり、話題でもあるよねといった話を膨らましていくうちに、季実子さんがノリに乗ちゃって」

池上「ベランダのシチュエーションは、実際に夢に出てきたもので、メガネをかけた彼と私がすごく愛想よく喋っているうちにパッと目が合って、私が『気が合うね』と言ったら、彼が『そうだね、結婚しちゃおう』と言ってチュッとキスされた時に目が覚めたんです。その話を友達に話したら、『で、季実子さんは結婚するの? したいの?』と言われて、『え、私と結婚した方がいい?』と逆質問したら、『めんどくさくなかったらね』と言われたの。男も女も結婚したい理由はいろいろあって、結婚したとしても旦那のお墓には入りたくない人もいるわけで。そういう話や私たちの発想をト・ニールさんに投げかけて、面白可笑しく書いてもらおうかと」

ニシオカ「お2人からアドバイスをもらって、役はやっぱりこの2人に合う役がいいな思って書きました。台本の半分が出来上がった時点で一度読み合わせしましたが、初見からお2人が声を出して笑ってくれて嬉しかったです」

本多「いい年の2人がずっと実のない会話をしていますが、本当に季実子さんが面白いので、是非観て欲しいですね」

―――池上さんと本多さん以外にも、本多さんの恋人役として、和泉流二十世宗家として活躍される狂言師の和泉元彌さん、声優としても数多くの有名作品に出演されている東地宏樹さん、SYOMIN’S主宰でミュージカルや音楽劇でも活躍する今奈良孝行さんが日替わりゲストとして出演されます。

池上「キャラクターやバックボーンが異なる3人なので、すごい楽しみにしています。同じセリフでも世界観は全然違うと思うし、私たちの言い方も変わってくるでしょうし、だから3回観なきゃダメよってことです(笑)」

本多「私の恋人役ですけど、3人がどのような形でお芝居に挑むかによって、私たちも影響されて変わっていくと思います。少なくとも季実子さんは絶対変わると思う」

池上「東地さんにわざと『え、もう一回言って?』って言いそう」

ニシオカ「おそらく、アドリブが多くなると思います」

(一同笑)

ニシオカ「季実子さんのアドリブで、上演時間がめっちゃ伸びるかもしれませんが、最後はやっぱり季実子さんに締めてもらうつもりです」

池上「男性も女性も自分の中で『あるある』という感じの台本になったらいいなと思うし、結婚は今や社会問題にもなっていますし、『もし自分こうなったらどうするかな』と振り返ってしまう形で面白おかしくできたらというのはあります」

―――物語の舞台がベランダというのもいいですね。

本多「私の中ではベランダがいいかなと思ったんです」

池上「下町にありそうなL字やコの字の団地っぽいイメージかな」

ニシオカ「お互いの家には行かないぐらいの仲のいい女子って、実は一番長続きするというか、あまり近すぎてもというのもありますよね。それが面白いなと思って。お客さんが『わかるー!!』と演者に話しかけちゃいそうな世界観になれたらいいですし、実際にお客さんが話してきたら面白そう(笑)」

池上「私たちがベランダから出て、本番中にお客さんと話しかけるのもいいじゃない?」

ニシオカ「またアドリブの時間が増えそうです」

(一同笑)

―――本番中、突然季実子さんに声をかけられたらビックリしますよ。ちなみにどんな方に観て欲しいと思っていますか。

池上「私たちのような40~60代だけでなく、30代以下の若い方や70代以上の方はもちろん、男性にも観に来て欲しいですね。『女の人たちはこう思っているんだ』と思ってくれたら嬉しいです」

本多「男女問わず幅広い年代の方に楽しんでいただけるようにと思っていますが、20代30代の恋愛とは違う、大人の恋愛や結婚をテーマにしたいので、特に同世代の女性には共感してもらえる作品になるのかなと思います。世の男性に、女性の気持ちを教えてあげたいなんて気持ちもあるかも」

―――ご夫婦で観劇されるのもありかなと思いますが。

ニシオカ「全然ありあり!! でも観劇後に気まずくなったりして(苦笑)」

本多「長年のカップルも観に来て欲しいです。観終わって『籍入れちゃう?』とかってなったりするかもね」

ニシオカ「逆に『私やっぱり結婚は絶対しない』ってなっちゃう可能性もありますけど」

池上「変化を求めたいというか、長年のカップルもちょっと前に一歩進めるような作品になれたらいいですね」

―――ありがとうございます。今後の「季真〆組」についても聞いてみたいですけど、資料によると、活動は1年に1回のペースとなっています。

本多「季実子さんは『年に2回はやりたい』って言うんです。企画をするのも大変ですけど、季実子さんのスケジュール確保するのがもっと大変になりそうです」

池上「そんなことないわよ!」

本多「季実子さんが『私が「季真〆組」のためにスケジュールを空ける』と言い出すんです」

池上「そもそも真弓ちゃんにプロデュースというのを教えてもらいたい気持ちがあって、私はこれまでいつもお膳立てされた中でお芝居をしてきたので、プロデュースすることはどういうことをするのか、現時点では何もわかっていないんです」

ニシオカ「ずっとお膳立てされてきたとおっしゃっている人が、わからないことを知りたいと思う向上心が凄いことですよ」

池上「だって、その分野がわかんないんだから、やっぱりプロに聞くべきじゃないですか。」

本多「ビジュアル撮影で、事前に『メイクさんはどうします?』と季実子さんに聞いたら『いらない』って言うんです。当日いろいろ準備したりで大変だから、撮影当日は1人でもスタッフが多い方が主宰的には楽で、メイクさんがいらないということは、メイク道具などは自分で用意しなきゃいけなくなるし。ところが撮影当日、季実子さんが衣装やメイク道具、さらにはアイロンまで、重い荷物をご自身で持ってきたんですよ」

池上「スタッフが1人減ることで、予算が浮くわけじゃないですか」

ニシオカ「季実子さんがそういうことを考えて言っているんですか?」

本多「それに撮影で使うスカーフも50枚ぐらい持ってきて」

ニシオカ「すごいバイタリティですね」

本多「だから私も季実子さんと一緒にいて刺激ばかりもらっています」

池上「今度真弓ちゃんに、助成金の申請の仕方を教えてもらうと思っているんです」

ニシオカ「『徹子の部屋』に出るような季実子さんが助成金の申請のやり方を知らなくて大丈夫ですよ!!」

(一同笑)

池上「真弓ちゃんは、そういう事も詳しいから私もそれは熟知したいと思っているんです」

ニシオカ「女優さんから急にプロデュース業をする人っていると思うんですけど、申請や予算といったことは携わらないケースって多いじゃないですか。本当に季実子さん凄いですよ」

池上「お金の計算なんて面倒で嫌いな方だけど、プロデュースをするとしたら人を巻き込むことになるから、話は別じゃないですか。次の公演では、カンフェティさんの表紙を掲載できるように、予算のことも勉強したいと思っています」

(一同笑)

―――まさか池上さんの口から「予算や申請の勉強をしたい」という言葉を聞くとは思いませんでした。では最後にインタビューをご覧になってる方に向けてのメッセージをト・ニールさんからお願いします。

ニシオカ「この2人の生き様を観て欲しいです。元気も出るし、ちょっと考えられるし、自分のパートナーがいる人もいない人も、絶対に面白いと思います。基本的にはくだらない話にはなりますので、気軽な気持ちで観てください」

本多「年齢関係なく、幅広くいろいろな人に楽しんでもらえる作品になります。私にとって念願の季実子さんとの2人芝居で、季実子さんとト・ニールさんと一緒に過ごす稽古の時間がとても楽しみです。季実子さんが毎回本当に違うことをやりそうなのが唯一の心配ですけど、私を知ってる人も知らない人もどうぞ観に来てください」

池上「念願の真弓ちゃんとの2人芝居ですし、コメディと銘打っている舞台に出演するのは多分初めてだと思います。“初企画プロデュース”ということで、みんなが『じゃあ、ちょっとどんなものか観てやろうか」と思って来ていただけると有難いです」

(取材・文&撮影:冨岡弘行)

プロフィール

池上季実子(いけがみ・きみこ)
1959年1月16日生まれ、アメリカ・ニューヨーク(マンハッタン)生まれ、京都府育ち。1974年にドラマ『まぼろしのペンフレンド』でデビュー。『男女7人夏物語』、NHK 大河ドラマ『おんな太閤記』、『プラチナエイジ』など出演作多数。映画『陽暉楼』で『第7回日本アカデミー賞』主演女優賞、映画『華の乱』で『第12回日本アカデミー賞』助演女優賞を受賞。

本多真弓(ほんだ・まゆみ)
1973年6月20日生まれ、東京都出身。2001年、作家の大岩真理と共に演劇ユニット「クレネリZERO FACTORY」を主宰兼役者として立ち上げる。主な出演作に、『夏の砂の上』、『まほろばのまつり』、『ほどける双子』など。近年は演劇プロデューサーとして「グッドディスタンス」「令和で万葉プロジェクト」を参画する。

ニシオカ・ト・ニール
1980年7月20日生まれ、北海道出身。演出家、脚本家。劇団「カミナリフラッシュバックス」主宰。現在TBSで放送中のドラマ『未来のムスコ』で脚本を担当。主な脚本作品に、読売テレビ『あらばしり』、日本テレビ『アンサンブル』、MBS『世界で一番早い春』など。

公演情報

グッドディスタンスpresents
季真〆組『好きなだけじゃダメですか?』

日:2026年4月10日(金)~19日(日)
場:下北沢 シアター711
料:一般6,000円
 ※他、各席種あり。詳細は下記HPにて
  (自由席・税込)
HP:https://www.gooddistance.net
問:グッドディスタンス
mail:gooddistance@gmail.com

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