『ゴドーを待ちながら』『ゴドーを待ちながらを待ちながら』同時上演 演劇通も演劇初心者も、両方観ればより楽しめます!

『ゴドーを待ちながら』『ゴドーを待ちながらを待ちながら』同時上演 演劇通も演劇初心者も、両方観ればより楽しめます!

 不条理劇の最高傑作で日本のみならず世界各地で上演されている『ゴドーを待ちながら』と本作をベースに2013年にアメリカで発表された『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の2作が2月に上演される。
 ノーベル文学賞受賞作家、サミュエル・ベケット原作の『ゴドーを待ちながら』は、1953年にパリで初演。ゴドーを待ち続ける男ふたりの姿を描いた物語。また日本初演となる『ゴドーを待ちながらを待ちながら』は、『ゴドーを待ちながら』を上演する劇場のバックステージを舞台に、出番を待ち続けるアンダースタディー(メインの役を演じる俳優の不慮の事故などに備えて、稽古から参加して、上演期間中はひたすら待機している俳優)の姿が描かれるコメディ会話劇。
 演出には文学座の西本由香。出演は『ゴドーを待ちながら』には小倉久寛、横堀悦夫、佐藤銀平、釆澤靖起、上野黎也。『ゴドーを待ちながらを待ちながら』には加藤虎ノ介、津村知与支、朝海ひかると実力派キャストが集結した。
 『ゴドーを待ちながら』で、ウラジミールと共に謎の人物「ゴドー」が来るのをひたすら待ち続けるエストラゴンを演じる小倉久寛と、『ゴドーを待ちながらを待ちながら』でアンダースタディーのエスターを演じる加藤虎ノ介に話を聞いた。


―――まず『ゴドーを待ちながら』『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の2作が交互に同じ劇場で上演されるという企画を聞いての感想を教えてください。

小倉「最近、地上波のテレビドラマ放送とその作品に連動したスピンオフドラマがネットで配信されるケースが増えてきていますが、今回の2作品はそのような感じがしていて、とても面白い企画だなと思いました。しかも『ゴドーを待ちながらを待ちながら』というタイトルがユーモアがあっていいですね」

加藤「『ゴドーを待ちながら』はタイトルを聞いたことがある程度で、『ゴドーを待ちながらを待ちながら』に関しては全く知らなくて、僕はどちらの作品に出るんだろうかと、最初は頭がずっと『?』の状態でした」

―――ちなみにお二方は『ゴドーを待ちながら』を観劇されたことはありますか。

小倉「恥ずかしながら今回出演が決まるまで、本を読んだことも観劇したこともありませんでした。僕が役者を始めた45年ぐらい前は、不条理演劇がすごく流行っていて、当時いろいろな団体さんで上演していて、観なきゃと思っていたものの、結局見逃して……。僕と同年代の役者だったらきっとみんな観てるんじゃないかと思いますね。内容はなんとなくは知っていましたけど、詳細までは知らなかったんですよ」

―――意外と通ってこなかったんですね。

加藤「昔から演劇に触れることがほとんどなくて、僕も恥ずかしながら今回の上演で『ゴドーを待ちながら』のことを知りました。不条理劇の傑作と言われている作品に小倉さんが出演されるのですごく楽しみです。ちなみに稽古場で観た方がいいですか? それとも本番を観に行った方がいいですか?」

小倉「今はまだ、どっちとも観ない方がいいです」

一同「(笑)」

―――小倉さんは『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の台本を読まれたそうですね。

小倉「面白いですね。“『ゴドーを待ちながら』の解説書”のように感じましたし、“演劇とは何か”というのを言っていて、作品として深いなという印象でした。中でも舞台監督補佐から『演技なんてだれでもできる、舞台の進行のほうが難しい』と言われたエスターが『俳優は登場人物に命の息吹を吹き込む仕事なんだ』と言い返したせりふがすごく好きでした」

―――ちなみに加藤さんは『ゴドーを待ちながら』の台本を読まれましたか。

加藤「僕はまだ読んでないです。なので、本番を拝見させていただいて、理解を深めようと思っています」

小倉「観るときは、コッソリと観てください」

加藤「さすがに小倉さんに黙って観劇するのは失礼なので、観る際はきちんと挨拶に伺います(笑)」

―――では、加藤さんは『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の台本を読んで、どんな感想を持たれましたか。

加藤「真っ先に出たのが『どうしよう……』です。2025年は例年以上に多くの舞台に出演してきましたが、自分も年齢を重ねてきて、体に負担が増えてきたのを実感していました。今回は出ずっぱりで膨大なせりふ量なので、そこが心配になりましたね。ただ、作品は間違いなく面白いと思いました!」

小倉「お互い、せりふ量は多いよね」

加藤「本当に多いです。これは早めにせりふを覚えないと大変になりそうだから、『明日覚えよう』『明後日覚えよう』と思いつつ、稽古をしていました(苦笑)」

小倉「『ゴドーを待ちながら』は、辻褄が合わないせりふがあちこちにあって、原作のサミュエル・ベケットに怒られるかもしれませんが、『別にこのせりふは言わなくても』とか『他の場面でこのせりふがあってもストーリーには関係ないのでは』とも感じました。きっとこれが、ゴドーの面白さで奥深さなのかもしれませんが」

加藤「実は僕は、この作品を通じて初めて日本とは異なる“アンダースタディー”という存在を知りました」

―――日本ではあまり馴染みがないアンダースタディーですが、海外ではプロフィールに記載できるぐらいだそうですね。

小倉「僕は、アンダースタディーと聞いて、70年代に上演した蜷川幸雄さん演出の『近松心中物語』で、主演の平幹二朗さんが急遽降板となってしまったとき、本田博太郎さんが代役として大抜擢されたエピソードを思い出しました」

―――お二方は別々の作品に出演するので、今回共演することはありませんが、小倉さんからみた加藤さんの印象、加藤さんから見た小倉さんの印象をそれぞれ教えていただけますか。

小倉「ちょっと怒ったり、ハイになっていくお芝居が目を引く面白い役者さんですね。先程話した『俳優は登場人物に命の息吹を吹き込む仕事なんだ』のせりふにピッタリです」

加藤「ありがとうございます。僕は若い頃からバラエティ番組やドラマなどで小倉さんが活躍されているのを観ていました。当時から、いい意味で“軽快な空気”を持つ素敵な方だなと思っていました。今回ご一緒するのは嬉しいですけど、別作品で全く絡まないのがとても残念です」

小倉「加藤さんの演技はきっと面白いんだろうな」

加藤「ハードルが上がっちゃうので、やめてくださいよ(笑)」

―――小倉さんは稽古前に演出の西本さんとお話されたそうですね。

小倉「台本を一読しただけではわからないことが多くて、西本さんに『この年まで演技をやっているんですけど、台本を読んでもよくわからないんですよ』と言ったら、『大丈夫です。わかる必要はありません。ゴドーという人を待っている2人による“暇つぶしの会話”だと思っていただければいいです』と。その言葉を聞いて思い出したことがありまして、若い頃に三宅(裕司)さんと一緒に電車に乗って、並んで立っていると、三宅さんは僕の顔を見ながら、目の前に座っている人が笑うまでずっと話し続けるんですよ。しかもその人だけが聞こえるぐらいの声量で(笑)。本質はいろいろあるんでしょうけど、今回の作品はそういうことなのかなと思いますね」

―――加藤さんが、台本を読んだ上での注目ポイントを教えていただけますか。

加藤「先程アンダースタディーの存在を知らなかったと話しましたが、きっと演劇に興味のない人はほぼ知らないと思うんです。そういった人にも演劇にはこんな世界があって、こんな人たちがいて、立場によって考え方が違うというのを、楽しんで観ていただけたらすごく嬉しいです。3人芝居ですが、それぞれの立ち位置も面白いですし、演劇好きじゃなくても楽しんでもらえるよう、工夫して、入口はなるべく分かりやすいように伝えられたらと思います」

―――では最後にこのインタビューをご覧になられている方に向けて、メッセージをお願いします。

小倉「長年俳優をしていますが、名作と言われる作品に出演するのは今回が初めてになります。本当にドキドキしているんですよ。きっと本番でも緊張すると思いますが、お客さんが僕らをすごくいい感じで転がしてくれると思います」

加藤「もともと大阪で活動していた人間ですので、今回大阪でお芝居が出来る事がすごく有難いです。最近は、関西の小劇場が少しずつ減ってきているという話を聞きます。関西で演劇を観てきた人にはぜひ来ていただきたいですし、大阪にいる小劇場の仲間たちには必ず観にきてもらおうと思っています!」

(取材・文:冨岡弘行 撮影:間野真由美)

最近あった“いいね!”はなんですか?(モノ・コト・ヒトなんでもOK)

小倉久寛さん
「プロ野球観戦が好きで、年に何度か球場に応援に行きます。すると、ほとんどみんな贔屓のチームのキャップをかぶって応援しています。キャップをかぶるだけでチームの一員になったようで気合が入ります。僕は見て頂ければわかると思いますが、頭が大きいので合うキャップだいたいがありません。持っているキャップはだいたいが頭にのっているだけです。それが残念というか、悔しいというか、恥ずかしいというか……。ところが、今年の夏サイズがぴったりのキャップを見つけました。いやぁ、キャップをちゃんとかぶることがこんなに嬉しいとは。家でテレビ観戦の時もかぶっています。嬉しくてかぶったまま寝たこともあります」

加藤虎ノ介さん
「再会が多かった事です。
コロナなど様々な状況でご無沙汰になってしまっていた友人達に去年今年と久しぶりに舞台や落語の案内などを送らせて頂いたのですが、ほとんどの友人が忙しい中こころよく来てくれました、感謝です。
ご無沙汰になってしまうとなかなか連絡をするのも躊躇いがありますが、旧交を温めることが出来て本当に嬉しかったですね」

プロフィール

小倉久寛(おぐら・ひさひろ)
1954年10月26日生まれ、三重県出身。劇団スーパー・エキセントリック・シアター創立メンバー。主な出演作に、「熱海五郎一座」シリーズ、映画実写版『美女と野獣』日本語吹替、NHK 連続テレビ小説『らんまん』など。

加藤虎ノ介(かとう・とらのすけ)
1974年10月20日生まれ、大阪府出身。主な出演作に、NHK 連続テレビ小説『ちりとてちん』、舞台『反乱のボヤージュ』、NHK 大河ドラマ『べらぼう』など。

公演情報

ゴドーを待ちながら』
ゴドーを待ちながらを待ちながら

【東京公演】
日:2026年1月30日(金)~2月15日(日)
場:赤坂RED/THEATER
料:一般7,700円 初日割引[1/30・31]6,600円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://ae-on.co.jp/godot2026 
問:アイオーン mail:info@ae-on.co.jp

【大阪公演】
日:2026年2月21日(土)・22日(日)
場:茨木クリエイトセンター・センターホール
料:一般7,700円
  65歳以上・障害者およびその介助者7,200円
  ※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
  (全席指定・税込)
HP:https://www.ibabun.jp/event/20260221-22/
問:(公財)茨木市文化振興財団 tel.072-625-3055

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