
日本の現代演劇を語る上で、つかこうへいは欠かせない劇作家・演出家だ。彼が残した作品の人気は未だ衰えず、諸作品を発表してから半世紀以上が過ぎているにもかかわらず、数多の俳優や演出家が挑み続けている。
新宿梁山泊で活躍した申大樹が主宰する深海洋燈も、そんな挑戦者の1人。今回『つかこうへい祭り』と銘打って、『戦争で死ねなかったお父さんのために』と『熱海殺人事件〜売春捜査官〜』を2本立てで上演する。団体の公式サイトを見るとテント芝居を名乗る、アングラの血脈の上に在ることは明らか。つか作品とは距離がありそうだが。
申「新宿梁山泊には10年在籍しました。そこで出会った仲間たちと、自分たちのテントを持つことを目標に掲げた集団として、深海洋燈はスタートしたんです。でも僕は元々つかさんの劇団にいたんですよ。上京したのもそこに入るためでした。深海洋燈という団体名も、つかさんが亡くなった後に対馬海峡に散骨されたことから、深海にいるつかさんに明かりを灯しながら、その心をずっと忘れずにいようという、僕の決意が籠もった名前なんです」
2024年には念願のテント芝居を実現。申にはそんなバックボーンがあることがわかったが、今回で3度目の『売春捜査官』の主演を務める傳田圭菜や、身体表現で作品を彩る史椛穂にとって、つか作品はどんな存在なのだろうか。
傳田「学生時代、文化祭で『飛龍伝』をやった時にヒロインのオーディションに落ちたのがすごく悔しかった思い出があります(笑)。その後つかさんの作品に触れる機会がなかったのですが、申が初めて演出した『売春捜査官』に出演した時に人生が変わりました。つかさんがこれほど素晴らしいなんて、なんで生きているうちに会えなかったんだろうと思いました」
史椛穂「私は昔、子役をやっていて。その頃に三浦洋一さんと共演したり、加藤健一さんと一緒に踊らせてもらったりしていたので、関係するみなさんとすれ違ってはいたんです。でも作品に取り組むのは2022年の『熱海殺人事件〜売春捜査官〜』が初めてでした」
つかの薫陶を受けている申。そしてこれまで数多上演されたつか作品とはまた違った風を吹かせてくれそうな傳田や史椛穂。深海洋燈が見せてくれるつかこうへいは明らかに新たな衣を纏うはず。実に楽しみだ。
(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)


申 大樹さん
「テント公演オーディションで沢山の若い才能と出会えたことが最近の“いいね”です。皆、熱意沸る方々で、次回テント公演が楽しみです」
傳田圭菜さん
「ゆく年くる年。ずっと突っ走ってきた1年ですが、人間区切りをつけることは大事! 新たな1年、目標に向かう気持ちが“いいね!”」
史椛穂さん
「深海洋燈で公演に向けて多忙な中でも稽古をしてるとき。“このメンバーで創る”ってだけで、ちょっと自分が強くなれる日」
プロフィール

申 大樹(しん・だいき)
大阪府出身。学生時代に維新派を経て、上京後はつかこうへい劇団16期生として活動。その後、新宿梁山泊の主要メンバーとして人気を集める。2020年に深海洋燈を立ち上げ、脚本・翻案・構成・演出・出演を担当。独特な目線で作品や物事を切り取り、ダイナミック且つ繊細な演出に定評がある。

傳田圭菜(でんだ・けいな)
長野県出身。国内外を問わず数々の舞台や映像作品に出演。2014年、プロデュースユニット「激嬢ユニットバス」を旗揚げ。2023年より主宰を務めている。2020年、深海洋燈に加入し、女優業と並行して舞台制作プロデュースも手掛けている。

史椛穂(しずほ)
東京都出身。2歳より多様なジャンルのダンスを学ぶ。2016年より芸術実験空間「月をノミマショウ」主催。“此処を舞台として此処で踊る”をコンセプトに、出逢いの中で繋がる空間と人を大切に、そこで産まれる想像力豊かな表現の誕生を願い続けている。
公演情報

深海洋燈 つかこうへい祭り『戦争で死ねなかったお父さんのために』/『熱海殺人事件~売春捜査官~』
日:2026年1月29日(木)~2月8日(日)
場:すみだパークシアター倉
料:一般4,500円 学生券3,500円
(全席自由・整理番号付・税込)
HP:https://shinkailamp.wixsite.com/-site-1
問:深海洋燈 mail:shinkailamp@gmail.com
