憧れだった紀伊國屋ホールでの上演決定! 生きるとは? 死ぬとは? ぽこぽこクラブの自信作を再演

 鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」で出会った俳優の三上陽永、渡辺芳博、杉浦一輝の3人が2013年に旗揚げした「ぽこぽこクラブ」。この度、満を持して紀伊國屋ホールでの公演が決まり、2019年に愛媛県内子町の内子座で創作した『光垂れーる』を上演する。
 作・演出を担当し、出演もする三上陽永に、作品の見どころや紀伊國屋ホール公演を実現させた裏話などを聞いた。

――改めて「ぽこぽこクラブ」について教えてください。

「鴻上尚史主宰の虚構の劇団に所属している僕と渡辺芳博と杉浦一輝の3人が立ち上げた団体です。虚構の劇団には、研修生から劇団員になる際に、自分で脚本を書いて演出をするという試験があるので、みんな脚本を書いた経験があり。当時、“僕らはこんなこともできる!あんなこともできる!”ということを鴻上さんにアピールしたいという思いがあって、役者のエゴから始まったんです(笑)。
 最初にオムニバス公演をやったら面白かったので、次は長編をやろうと、『泡の国』(2013)という作品をやって……そこから気がつけば8年近く、時が経ちました」

――今回は初めての紀伊國屋ホールでの上演。その点、思い入れもあるのでは?

「そうですね。もともとぽこぽこクラブを続けるきっかけとなったのが、照明家の坂本明浩さんでした。かつては第三舞台の照明も手掛けていた方なのですが、僕たちの『泡の国』をたまたま観てくれたんです。
 いや、作品は正直、お粗末なものだったんですね(苦笑)。坂本さんにも『陽永くん、ひどかったね』と言われつつ、『でもやりたいことはすごく伝わった。次はいつやるの?』と言われて。『もうやらないかもしれないです』と正直に話したら、坂本さんが『僕が照明やるよ。ギャラは出世払いでいいから。君たちにはもっと大きい劇場でやってほしい。ぜひ紀伊國屋ホールでやって』と言ってくれたんです。
 それで、坂本さんは僕らが公演をやる時に照明図面を2つ書いてくれるんです。実際にやる劇場の照明図案と、紀伊國屋ホールの照明図案を。僕らはどこか夢物語のように思っていたんですけど、坂本さんが『紀伊國屋ホールがこの期間空いていて、ぽこぽこクラブどうですかって言われたよ』と話をつけてきてくれた。
 正直、僕は最初断りました。まだ早いと思っていたから。演出家コンクールで最優秀賞をいただいたけど、これからちょっとずつ階段を昇ろうと思っていたので。そしたら坂本さんが『そんなんじゃ僕、死んじゃうよ! 僕が生きているうちに紀伊國屋ホールでやってほしいんだ! 紀伊國屋ホールは待ってくれないよ!』と(笑)。それから覚悟を決めました。やってやろうという気持ちです」

――なぜこの作品を選んだのですか。

「『光垂れーる』という作品に思い入れがあるからです。愛媛県内子町の内子座に1ヶ月滞在して、学校の先生や役場の人なども含めて、いろいろ議論しながらつくった作品なんです。
 僕は、演劇は結果も大事ですけど、過程の芸術だと思うんです。その作品をつくるまでに、どういう出会いがあったのか、どういうつながりが生まれたのか。そういうことが大切な気がしていて、それが詰まった作品が『光垂れーる』なんですね。
 今、絶賛改訂作業中で、なんだか新作のようになってきているのですが(笑)」

――設定を変えるのですか。

「いえ、根本的なテーマは変わっていません。死者と生者のつながり、“生きているってどういうこと?”“死んでいるってどういうこと?”という3つが主軸にあります。今回、21人もキャスティングしたので、それをうまくまとめようと頑張っています。
 これらのテーマを選んだのは、昨今の死生観について思うところがあったから。僕は幼い頃、悶々と“親が死んだらどうしよう”とか“僕は死んだらどうなるんだろう”とか布団の中でぐるぐる考えていたんですね。でも、今はネットで検索すれば“死ぬとはこういうことですよ”と答えが簡単に出てしまう。本当はもっとモヤモヤ悩んでいいと思うのに、情報が早過ぎて立ち止まることがないんです。
 使い古されたようなテーマではあるんですが、今やるべきテーマなのかなと思っています」

――この舞台をどんな人に観てほしいですか。

「幅広い方に観てもらいのですが、特に演劇を普段観たことない人にぜひ観てもらいたいと思いますね。ぽこぽこクラブの推奨年齢は、6歳から100歳と掲げています。間口は広く、奥行きのある芝居を目指す。『光垂れーる』を再演したいと思ったもう一つの理由は、内子座公演の時に小学生から90歳ぐらいまでの幅広い年齢層のお客様に観劇いただいたて。すごく喜んで帰ってくれた経験があって。
 僕は本来演劇は、大衆に向けた娯楽であり、祝祭であると思っています。役者の熱気を肌で感じて、それが明日を生きるエネルギーとなれば、嬉しいです」

(取材・文&撮影:五月女菜穂)

プロフィール

三上陽永(みかみ・ようえい)
1983年6月12日生まれ、青森県出身。2008年より鴻上尚史主宰「虚構の劇団」に所属。今井雅之演出『THE WINDS OF GOD ~零のかなたへ~』、劇団EXILE『ろくでなしBLUES』、2014年フェスティバル/トーキョー 渡辺源四郎商店『さらば!原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』、2016年 舞台『パタリロ!』など外部公演にも多数出演。

 演出家、脚本家としても活動を行い、2013年に自身が演出を担当する「ぽこぽこクラブ」を旗上げ。他にもワークショップ講師として、市民劇団や大学生、企業の合宿などで幅広い層に指導を行う。「やっぱり、人は面白い」をモットーに人間の持つ温かさや、姑息さ、狡さ、醜さ、優しさを​引き出す演出・表現を目指している。若手演出家コンクール2020最優秀賞受賞。

公演情報

ぽこぽこクラブvol.8
『光垂れーる』

日:2022年3月3日(木)~6日(日)
場:紀伊國屋ホール
料:前売・当日6,000円
  U-25[25歳以下]3,000円
  高校生以下1,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.pocopoco.club/
問:ぽこぽこクラブ mail:pocopoco.club.seisaku@gmail.com

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