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新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態によって、多くの文化活動が停滞を余儀なくされた。演劇界もまた例外ではなく、そんな逆境の中、1つの挑戦的な演劇ユニットが誕生した。それが、俳優・賀集利樹と酒井貴浩が結成した“かしこみかしこみ”だ。コロナ禍での出会いから生まれたこのユニットは「演劇をもっと身近に」というシンプルな信念を掲げ、作・演出のますもとたくや、木村好克とともに自由な作品を世に送り出してきた。そして前作から約4年半の時を経て、ついに新作の上演が決定。前回出演の三好佑季と、今回初参加となる宮原華音を迎え、さらにパワーアップしたステージに挑む。
≪コロナ禍が生んだ笑劇の始まり≫
―――様々な想いからスタートしたユニットですが、過去作品を振り返って、手応えなどお聞かせください。
賀集「1回目、2回目をやった時に、“身近に感じてもらえる演劇”を作れたかなという手応えを強く感じました。コロナが始まる前くらいから、僕自身も舞台演劇に携わることが増え、その面白さは感じていましたが、舞台を観に行くきっかけは、“知っている人が出ているから”とか、“ファンだから”といった関係性によるものがほとんどで、やはり『舞台って敷居が高い』というイメージがあると思うんです。
僕たちが目指したのは、そんなイメージを根本から変えられるもの。『小難しいことは何もなく、ただただ観に来て楽しんでもらえる』ものを届けたい。そんな想いから、最初は少人数で、2人芝居からスタートしました。それが今回は前回出演いただいた三好さんと、新たなキャストを迎えてお届けできます」

酒井「賀集さんと同じ気持ちです。コロナによって、皆さんの仕事がなくなってしまった時期に、何か行動を起こさなきゃいけないと思ったことがきっかけでした。賀集さん、脚本・演出のますもとさん、木村さんと4人で作ったんですけど、この3人が力を貸してくださったおかげで、コロナという逆境があったからこそ、何かプラスになるようなことができればという思いです。
4年半ぶりの復活になりますが、メンバー全員事務所も違いますし、様々な事情があって復活までにはかなりの時間がかかりましたが、だからこそ、せっかく復活するならパワーアップした状態でやらないとダメだと。それで今回、宮原さんが参加してくれることになりました」
―――前回から参加の三好さんは、今だから言えるエピソードをお聞かせください。
三好「賀集さんと酒井さんにはめちゃくちゃ引っ張っていただきました。前回、私は高校3年生で学業との両立がすごく大変で、初めてあんなにいっぱいの量のセリフを一気に覚えるという体験をしました。しかもテスト期間とかぶっていたので、もう頭がごちゃごちゃになりそうでしたけど、でもなんだかんだ乗り越えられました。あれから20歳になったので、演技の面でも成長した部分を見せたいなって思っています」

―――初参加の宮原さんですが、期待しているところは?
宮原「私はこれまで役柄的に怖い役、強い役が多かったんです。だからこそ、今回は自分自身の殻を破る時なんじゃないかと感じています。今までファンの皆さんが見てきた私じゃない部分を出せる場所だと思ってぜひ出演させていただきたいと思いました。台本はまだこれからですが、楽しみもあり、自分との戦いの部分もあるのかなと思っています。
私は仮面ライダーが大好きで、事務所の後輩の子たちが以前“かしこみかしこみ”のショート動画に出演していて、『ずるいな』と思っていたんです(笑)。だから今回お話をいただいた時は『ぜひ!お願いします!』と即答しました」
賀集「本当にご縁を感じますね。作・演出の木村好克は、役者に“こんなイメージないだろう”という新しいことをさせるのが大好きな人なので、きっと皆さんがまだ見たことのない宮原さんや三好さんが見られるんじゃないかと思います」
≪「信頼」が生み出す、俳優の新たな一面≫
―――第3回公演『ひたむき』では脚本・演出のますもとさん、木村さんにはリクエストなどされたのでしょうか?
酒井「基本的に天才である2人が書いているので、すべてお任せしていますし、信頼しています」
賀集「僕も普段は絶対やらないようなことを、この舞台ではやらされてますね。『え、そんなことやるの?』みたいな(笑)。でも、それが新しい境地に導いてくれる演出と脚本なので、僕はありがたいんです。普段の仕事とは違って、『こんな一面もあるんだ』と観に来てくれた方にも思ってもらえる場を作っていただける。だからもう、身を委ねてお2人の演出をつけてもらう、という感じですね」
酒井「それぐらい本が面白い。僕は、かしこみ以外の舞台に出ないんですけど、三好さんもかしこみ以外の舞台に出演していません。それぐらい価値があるチームだと思っています」

―――前回はオムニバス形式で、歴史コメディなどがあったそうですが。
賀集「はい、今回もオムニバス形式になります。歴史パートでは前回は織田信長でしたが、今回は坂本龍馬を取り上げる予定です。セリフの量が本当に多いんですよ(笑)。基本的に引っ込みもほとんどないので、お二方にもそこを楽しんでいただけたら」
酒井「3本立てで、“ダンス症候群”という話と、かしこみのコンテンツ“パン道部”というパンの話、そして“早着替えタイムサスペンス”をやります」
賀集「タイムリープの話ですね。制限時間があって、その間に何度タイムリープができるか。舞台演劇ならではの試みで、きっと観ていて楽しいし、僕たちも『あぁもうダメだ!』ってなるような、スリリングなものになるはずです」
酒井「10公演やりますが全部違う仕掛けができるように、毎公演変えたいと思っています」
―――身体能力が高い方ばかりなので、役どころ的なものを期待しちゃいます。
賀集「そうですね、宮原さんはとても動ける方なので、ちょっとしたアクションもあるでしょう!」
≪客席も舞台の1部に? 劇場に仕掛けられた新たな試み≫
―――今回は劇場が少し大きくなりますが、特別な仕掛けがあるそうで。
酒井「そうなんです。お客さまの入れ方とか、席の作り方をすごく特殊にしました」
賀集「舞台上に席を作ってしまいました。日本って客席とステージの間に絶対的な境界線があるじゃないですか。それを取っ払った感じのものは、やっぱり小劇場でしかできないんです。新しい試みとして先駆けじゃないけど、こんな所にお客さんいる⁉ていう位置に、覚悟してもらうしかない特別席があります」
―――それを聞いて、どのようなお気持ちですか?
三好「絶対に圧を感じると思います。緊張感が違いますし、視界に常にお客さまが入っていそうで、ある意味キャストですよね。普段のライブや特典会でファンの方と近い距離で喋ることはありますけど、この距離で芝居を観てもらうっていう経験はないので、まだ想像ができないです(笑)」
宮原「私はこの間まで舞台に出演していたんですけど、(演出で)客席降りがある役者さんがいて、いいなと思っていたんです。私はファンの皆さんと近い距離になることがあまりないので、こういう機会はとても嬉しいです。より近くで反応が見られるのっていいですよね、楽しみです」

―――これは争奪戦が起きそうです。
酒井「舞台に座っているお客さまが客席から丸見え。そんな特別なSS席を各4席ご用意しています!」
≪経験者すらも鍛えられる”かしこみかしこみ”の稽古≫
―――稽古期間が短いと伺いました。
酒井「稽古は短いです。しかも台本が上がってくるのも、稽古が始まる数日前に70ページくらい突然届いて、『はい、覚えてください』という感じです」
賀集「かなり鍛えられると思います。でも皆さん経験値があるので、そこはあまり心配していません」
三好「楽しみなのは大前提で、4年半空いているので、あの量のセリフを覚えられるか今すごく不安です。でもお話をいただいて受けたからには、皆さんと一緒に成功させたいという気持ちでいっぱいです。どんなお話が来ても、殻を破ります!」
宮原「かしこみに関しては、特に経験は関係ないんじゃないかなと思っています。今までの自分とは違う、新たな挑戦だと思っているので、本当に新しい宮原華音を誕生させる日だなと。なかなか一緒にお仕事できる方たちではないので、ご一緒できるのがとても楽しみです」
―――座長の賀集さんからメッセージをお願いします。
賀集「今までかしこみを観に来てくださった方には、『お待たせしました!』という気持ちです。初めて観られる方もいると思いますが、『こんなに面白いんだ、こんなに軽くていいんだ』と感じてもらえると思います。僕たちは小難しいことは何もやっておりません。ただただ観てハッピーになれる、こんなに笑ったことないよって思ってもらえるような舞台をお届けできると思います。そこはもう絶対保証しますので、ぜひ劇場にいらしてください。酒井プロデューサー、締めお願いいたします」
酒井「はい(笑)。“かしこみかしこみ”は全然難しくなく、小学生でもわかるようなお話です。毎公演お子さんが来ていて、大喜びで大爆笑しているんですよ。お客さまとの距離が近い中で、熱量を感じて、本当に楽しんで帰っていただける、遊びに来るような感覚の舞台にできたらと思います。
初めて演劇を観る人にも、『舞台って観やすいんだな』と思ってもらえるような、そんな敷居の高くない演劇を目指しています、お待ちしております」
(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

賀集利樹(かしゅう・としき)
1月16日生まれ、兵庫県出身。『仮面ライダーアギト』主役で俳優デビューし注目を集め、多くのドラマや映画、舞台で活躍中。ドラマでは『はぐれ刑事純情派』シリーズ、『ハンチョウ〜神南署安積班〜』シリーズほか。近作の舞台として、舞台『刀剣乱舞』士伝 真贋見極める眼、令和七年 正月公演『おちか奮闘記』、デビュー20周年記念 丘みどり 特別公演「輝く月の姫君」など。2026年1月~舞台『わが歌ブギウギ-笠置シヅ子物語-』が控えている。

酒井貴浩(さかい・たかひろ)
3月18日生まれ、愛媛県出身。確かな演技力と親しみやすさで多くのドラマや映画で活躍中。近作に、東海テレビ・フジテレビ系『浅草ラスボスおばあちゃん』、フジテレビ『人事の人見』、NHK-BS『あきない世傳 金と銀2』、Netflix『Demon city 鬼ゴロシ』など。カゴメトマトジュース「血圧仮面」CM。2020年から地元愛媛県西条市の「LOVE SAIJO応援特使」に就任している。

宮原華音(みやはら・かのん)
4月8日生まれ、東京都出身。モデル、女優、格闘家として身体能力を生かし、幅広く活躍中。主な作品に、映画『ハイキック・エンジェルス』主演、映画『BLOOD-C』シリーズ、『リアル鬼ごっこ』ほか。ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』、『仮面ライダーガッチャード』、『SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-』主演。近作の舞台では『死神遣いの事件帖 終』などがある。

三好佑季(みよし・ゆき)
9月16日生まれ、東京都出身。女優、モデル、歌手としてアイドルグループAND CaaaLLで活躍中。テレビ東京系列で放送されたガールズ×戦士シリーズ『魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!』愛乃モモカ役で注目を集める。同番組で結成されたアイドルユニット・magical²のメンバーとしても活動した。主な作品として、『魔法×戦士マジマジョピュアーズ!』主演、『超NATSUZOME2022』メインビジュアルモデル、渋谷クロスFM『SHIBUYACULTUREDESIGNSTUDIO』メインパーソナリティーなど。AND CaaaLLでは定期的にイベントや東名阪LIVEツアーなど、精力的に活動している。
公演情報
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演劇ユニット かしこみかしこみ
第3回公演『ひたむき』
日:2025年11月19日(水)~24日(月・振休)
場:千本桜ホール
料:SS席10,000円 S席8,000円 A席5,000円
高校生以下[A席]3,000円 ※要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://linktr.ee/kashikomikashikomi2021
問:演劇ユニット かしこみかしこみ
mail:kashikomikashikomi2021@gmail.com
