踊れカーレン思いのままに! 踊ることに魅せられた少女が夢を掴むまでを描く オリジナルミュージカル『Red Shoes(レッドシューズ)』

 創立75年を超える児童劇団の老舗、劇団東少の次回作は『Red Shoes(レッド シューズ)』。アンデルセン童話の『赤い靴』をモチーフに、愛や夢に溢れたオリジナルミュージカルを創作した。
 舞台は150年ほど前のヨーロッパ。下町の花売り娘・カーレンは、踊ることが大好きな女の子。ダンサーの母の遺品である赤い靴を大切にしていた。いつか大きな舞台で踊ることを夢見ていたが、お金持ちのハルトマン夫人がカーレンを養女にしたいと持ちかける。裕福な暮らしはできるものの、下町の仲間たちと別れ、ダンサーの夢も諦めなくてはならない……。カーレンが最後に下した選択とは?
 見どころのダンスシーンでは、ジャズやヒップホップなど現代的なダンスも飛び出すそう。9月中旬、脚本が渡ったタイミングで主役のカーレンを演じる空乃みゆと、カーレンに恋する下町の青年・ハンス役の深澤悠斗に話を聞いた。


―――脚本を読んでどのようなことを感じましたか。

空乃みゆ(以下、空乃)「今まで東少さんでは悪役や姫役もたくさんさせていただいたんですけど、こういう役は初めてでした。台本を読む前はおとなしい感じの女の子なのかなと思っていたんですが、台本をいただいて読んでみたら結構ちゃきちゃき系の強い感じの下町の少女だったので驚きました。やんちゃな女の子がレディになっていく『マイフェア・レディ』的な物語でもあったりするんですよ。
 そんなちゃきちゃき系から成長して、ハルトマン夫人に教えていただいて、きちんとしたレディになっていくという過程をがんばって演じていこうと思っています。今は台本を読んだ段階ですので、キャラクターがまだ自分的に理解できていないところもありますので、演じていきながら作っていこうと思います。セリフも多いし歌もありますし、あとはやっぱり踊り(笑)ですね。踊りは特にがんばりたいと思います」

深澤悠斗(以下、深澤)「たくさん登場人物がいるなというか、いろんなキャラクターがいて華やかだな〜と。その中で、僕が演じるハンスが、みんなが心変わりしていく中、一貫してカーレンのことを想い続けているところがすごく魅力的だなと思いました。そこをどんなまっすぐさで表現できるかがすごく楽しみです。前回はロボットだったので、やっと人間を演じられるという(笑)。そこが楽しみです」

―――前回はロボットだったのですか? 『ピノ』という舞台ですよね。

深澤「そうなんです。一番初めだけ、ちょろっと人間の少年を演じたんですけど、ほんとに一瞬だけで車に轢かれてしまって、そこからは人間ではなくずっとロボット。それも最初はかなり無機質なカタコトで喋るようなロボットでした」

―――ピノキオみたいですね。

深澤「そう、まさにピノキオです。それが周りの人と交流する中で、愛や友情を知ってどんどん人間に近づいていくんですけど、でもロボットだから死ねなくて。周りの人々は次々と死んでいってしまうのに、自分だけはそのままで、最終的に人間よりも人間を知った状態になって、自分から『もう直さないでください』と壊れることを選んだという、ちょっと悲しくもあるストーリーでした。最終的には人間味があるようには演じていたんですけど」

―――そうなんですね。哲学的なストーリーですね。だからロボットだったんですね。

深澤「今回は最初から最後まで人間なので(笑)。そこが楽しみだな、と」

―――東少さんの初めての舞台がロボット役だったんですね。東少さんの舞台に立ってみてどんなことを感じましたか。他の劇団とは違うところなどはありましたか。

深澤「もともとファミリー向けに作っているものを、全年齢対象というか大人も楽しめるようにしたというか、客席には本当に様々な方がいらしていて、それこそ僕が普段出ている舞台にはいらっしゃらない年配の方も見かけましたし、その方々がカーテンコールですごい笑顔で手拍子してくれているのを見て、エンターテインメントというのは全人類、全年代を超える絆だなと思って素晴らしいなと感じました。東少さんや、その周りの方々とまた仕事したいなと思っていましたので、こんなに早く実現できて嬉しいです」

空乃「私は4作品目なんですが、創業70周年記念の時にちょうど『孫悟空』をやって、その時にパーティーに招かれて、70周年ってすごいなと。あまり聞いたことがないと言うか、宝塚が111周年なんですが、それに劣らない程の歴史がある劇団といいますか。ポスターのデザイン1つにしても絵のタッチとか昔から変えていないんですよ。そういうことを大事にされているのも歴史を感じます。
 舞台では子供たちがいっぱい観にきていて、ちょっと不思議なことがあったりすると『あっ!そこ!』とか声かけてくれるんですよ(笑)。子供たちの声が聞こえてきたりとか、そこが違いますね。大人もそれを見て元気になるというか」

―――今回の見どころはダンスシーンですよね。ヒップホップもあると伺いましたが、深澤さんはダンスの経験はどれくらいおありなのですか。

深澤「僕が初めて舞台に立ったのは17歳の時なんですけど、ダンスとかまだ何にも習ったことはない状態で、しかも現役のサッカー部だったので、サッカーの動きしかできなかったんです。高校を卒業してからテーマパークダンスといういわゆるディズニーランドのパレードで見るようなダンスを習い初めました。パリッとした笑顔で踊ってジャーン!みたいな。そんなザ・エンターテインメント的なものを習っていたのは2年ほどで、そこからは現場、現場でいろんなジャンルを踊らせていただいて、何となくそれが染み付いてきたみたいな感じです。
 別に基礎は何もなくて……自分の中で人生での後悔は、バレエを昔からやっておけば良かったなということなので、一時期は狂ったようにバーレッスンをやっていたこともあるっちゃあるんですけど、ジャズとかの方が得意かなっていう感じはあります。今回はヒップホップですか? 怖いですね(笑)」

―――空乃さんは宝塚ご出身ですが、ダンスのキャリアはどこから始まったのですか。

空乃「歌はちっちゃい頃からやっていたんですけど、踊りは本当に宝塚受験のためのスクールに通ってからなので17歳、高校2年生のときから本格的に始めたので……」

深澤「じゃあ、同じくらいの時期ですね」

空乃「もう……かなり大変ではありました(笑)。音楽学校2年間はほぼレッスンで、バレエのクラスはABCDに分かれていて、私は一番下のDクラスにいました。ダンスの授業はジャズ、モダン、日舞など、まんべんなくありましたがヒップホップの授業はなかったですね」

―――そんなに厳しいレッスンだったんですか。

空乃(無言でうなずく)

―――バレエをやってる皆さんがおっしゃいますよね。優雅に見えるけれども、体力的にも技術的にも本当に大変なことをやってると。

空乃「はい。それこそトウシューズを履いている方もいらっしゃるんですけど、そのトウシューズも学校に入ってから初めて履いたので、履き方もわからなくて。ただ試験があったんですよ。トウシューズを履く試験。それが50人中50番だったんですけど」

―――トウシューズの試験ってどんなものなんですか?

空乃「バーレッスンで立てるかどうかなんですけど。踊るんじゃなくて、まずちゃんと立てるかどうか」

―――そうか。トウシューズで立つだけでも難しいですよね。周りは小さい頃からやっている方もいる中で、すごい努力ですよね。ダンスの魅力ってどんなところにあると思いますか。

空乃「自分にはない力を持っている人たちだなぁと。普通のミュージカルでもそうですけど、ダンスの場面とかやっぱり見ると『いいなぁ』と思いますね。気持ちよさそうに踊ってらっしゃるダンサーさんを見ると憧れもあります」

深澤「リハーサルの時などに動画を撮って見るとかするじゃないですか。それで本番の動画を見ると、やっぱり『本番は練習どおり』、『練習は本番どおり』って言うけれど、本番ってあきらかに自分の技量を越える瞬間があるんですよ。なんていうか『ゾーンに入った』といいますか。自分ってこんな動きができるんだ、とかそういう、自分を1つ上の自分に解放できるのがステージで。それを表現できるのがダンスのような気がするので」

―――本番の魔力ですかね。

深澤「それは本当に危険なことでもあるんですけど、そういうリミッターが1つ外れる瞬間が、やっぱりとても気持ち良く感じるので、そこが僕にとっての踊る側のダンスの魅力です。
 見る側としては、技術が卓越した方のダンスを見るとやっぱり『は〜、人間ってこんな動きができるんだ!』という感動があります。それこそ僕はジャズとかテーマ(パークダンス)とか見るのも好きではあるんですけど、バレエの熊川哲也さんのパフォーマンスを見ると『人間がこんなにジャンプできるのか』とか『人間にはこんな可能性が秘められているのか』などと再確認できることが魅力だと思ってます」

―――最後に観にきていただく方にメッセージをお願いします。

空乃「結局カーレンは幸せだったなと思ってます。最初はカーレンは親がいなくて一人ぼっちだったりするんですけど、そこでハンスさんが励ましてくれたりとか、そのうちクリスさんが現れたりして、そうした友情であったり愛情であったりする人間関係があったかいなと思える作品だと思います。
 そこを見せられたらいいなと思うのと、あとはやっぱり自分の歌もダンスもお芝居も技術的な問題もあるので、そこを自分なりに頑張れたらいいなと思うのと、みんなに支えてもらいながら仲良くなれたらいいな、と。
お子さんにも喜んでもらえると思っているので、大人の方も観て心があったかくなってくれたらいいなと思っています」

深澤「前回の『ピノ』では、命の尊さと愛の大切さを伝えられたと思うので、今回は夢を見ることの大切さ、夢を叶えていく過程で、どんな辛いことがあっても信じていれば叶えられるんじゃないかっていう希望を、老若男女問わず沢山の方に伝えていけたらいいなと思っています。
 観た後にちっちゃい夢でいいので1つずつ叶えていくっていうことをしてほしいなと思います。例えば、夜にあれを食べにいくとか、こんな服が着たいなとか、ちっちゃい夢からコツコツ叶えていこうと思えるような作品にしたいです。あとは僕たちのヒップホップも楽しみにしていただけたらと(笑)」

(取材・文&撮影:新井鏡子)

プロフィール

空乃みゆ(そらの・みゆ)
千葉県出身。元宝塚歌劇団の娘役。主な出演作に2020年1月『ミクロワールドシンフォニア』ミュージカル出演(紀伊國屋サザンシアタータカシマヤ)、2020年1月『かぐや姫』(成田市民ミュージカル)、2025年3月『TARKIE~伝説の女たち~』(有楽町よみうりホール)、2023年12月ミュージカル『孫悟空』がある。

深澤悠斗(ふかざわ・ゆうと)
1999年生まれ、千葉県出身。主な出演作品に2025年東宝ミュージカル『四月は君の嘘』、ミュージカル『PINO』 ピノ役(主演)、2024年『アイ★チュウ』シリーズ 十文字蛮役など。2026年1月~3月に、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs四天宝寺 不動峰 桜井雅也役での出演が控える。

公演情報

2025年 劇団東少
ミュージカル『Red Shoes』

日:2025年12月3日(水)~7日(日) 
場:シアターアルファ東京
料:プレミアム席[前方席・特典付]8,500円 一般席6,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.tohshou.jp
問:劇団東少 
  tel.03-6265-7070(10:00~17:00/土日祝休)

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