紀伊國屋ホールに進出してから16年、欠かさず公演を打ち続けてきた水木英昭プロデュース(水プロ)。単独300ステージ目を迎えるメモリアルステージとなる今回、上演されるのは2021年以来の公演となる『レイジーミッドナイト』だ。
 本作は、とある国営テレビ放送局を舞台に、SNS炎上問題やハラスメント、やらせ疑惑などで失った信頼の回復、視聴率アップのためにバラエティ生放送番組の制作に挑むテレビマンたちの姿を描いたサスペンス・コメディ。
 脚本・演出の水木英昭と、水木英昭プロデュース初参加となる中村誠治郎、そして2014年に引き続き沢渡役を務める村田充に公演への意気込みを聞いた。
―――まずはじめに、水木さんがこの作品を生み出された経緯を教えてください。
水木「僕は昔、スーパー・エキセントリック・シアターという劇団に所属していたのですが、その時に劇団内でユニットを作ったのが、この水木英昭プロデュースの走りでした。この作品は、その時代に一度上演している作品です。僕自身まだ若かったこともあり、立ち回りをやりたかったんです。それで、アクションと笑いという落差をお見せしたいという思いから作りました。自分たちなりに勉強しながらアクションを作り、いかにそれを活かすかを大事にした作品です」
中村「アクションがあるんですね!」
水木「会話の応酬がメインではありますが、立ち回りもメインなんです。最後の10分間はずっと立ち回りですから」
―――なるほど。会話と立ち回りの二本柱なのですね。初演は約30年前ということですが、メモリアルステージとなる今回、上演することへの思いも聞かせてください。
水木「もちろん好きな作品だということが大前提ですが、村田さんは2014年にこの作品を上演したときに出演してくださっているので、1つはまた村田さんとご一緒したいという思いがありました。それから、中村さんにも合うなと感じていたんです。中村さんには以前からオファーしていたんですが、今回、やっと念願叶って初めてご一緒させていただきます。そうしたいろいろなことが合致して、この作品を上演しようと思いました」
―――おふたりはオファーを受けてどんなお気持ちでしたか?
村田「僕は水プロには準レギュラーというくらい、続けて出演しているんですよ(笑)。今回はどっぷりと作品に参加させていただきます。一昨年は子どもたちと劇場に来ている大人たちをワンシーンで泣かせなくてはいけないという芝居をしましたし、実は、僕が役者人生で初めて物販に立ったのもこの作品でした」
中村「そうなんですね、僕も物販立ちますよ!」
水木「本当ですか!? 真に受けますよ(笑)? でも、前回は(村田が)物販に立ってくれたので、すごくありがたかったです。地元の大阪だったこともあり、皆さんに盛り上がっていただいて」
村田「水プロはそういうことがしたくなる団体さんなんです。2014年にもこの作品に出演させていただいて、しんどかった記憶はありますが(笑)、秋口は声がかかる可能性もあると思って毎年空けていたので、今回もお引き受けできました」
―――中村さんは今回、水木英昭プロデュース作品初出演ですね。
中村「残念ながらこれまでスケジュールが合わなかったのですが、またお声がけいただけて嬉しいです。しかも、今、アクションもあることを知って。プロットは拝見していたのですが、まさかアクションがあると思っていなかったので、きっと僕のファンの方も喜んでくれると思います。アクション好きな方が多いので、観に来てくださる方が増えたらいいなと思います」
水木「アクション、バリバリやります」
村田「日本刀ですよね? だから、誠治郎くんにまた美しい納刀を教えてもらいたいと思います」
中村「充さんとは初めて共演させていただいたのが『真・三國無双』という作品で、立ち回りがめちゃくちゃ多い舞台だったんです。その後、LIVE -MUSICAL-STAGE『チャージマン研!2023』という作品で、充さんがダンスの振り付けで、僕が殺陣の振り付けをして」
水木「じゃあ、この2人でエンターテインメントが出来上がるね。しかも、歌も歌えますから!」
中村「今回、楽しみがたくさん詰まっている作品で、しかも主役をやらせていただけるというのは本当にありがたいことなので、やれることは全てやらせていただこうと思います。物販にも立ちます!」
水木「心強いです。だんだんとこの水プロも昔ながらの劇団みたいになってきて、皆さんにご協力いただいて成り立っているという、そんな集団でございます」
中村「しかも、ずっとやり続けていらっしゃることが本当にすごいことですよね。続けることは始めることより大変だと思います。僕の知り合いもたくさん水木さんの作品に出演されているので、今回も『水木さんの作品に出るんだね』とたくさんお声がけいただきました」
―――おふたりが演じる役柄について、水木さんから教えてください。
水木「国営テレビ局を舞台に、テレビマンが自分たちの信用回復、そしてこれから新しいものを作ろうという思いで、通常の縛りがある番組とは一線を画したものを秘密裏に制作していく物語です。
 各民放からエキスパートと称される人たちをヘッドハンティングして、まだ誰にも伝えない中でテレビ番組を作っていく中で、中村さんはかつては俳優だったディレクターという役どころです。本番中に大ピンチが訪れたとき、その設定を活かして登場して暴れ回ります。村田さんは、その国営放送を仕切るプロデューサー兼ディレクターチーフの役で、会社との狭間で葛藤しながら、テレビ制作に勤しんでいくという役柄です。
 いろいろな事件が起こり、それが過去の出来事とも繋がって最終的に浮かび上がってきます。番組制作をしていく中で、唯一打ち解け合う精神性を持った役なのがこの2人という設定になっています」
―――村田さんが先ほど、前回公演ではしんどかった記憶があるとおっしゃっていましたが、それはどんなしんどさだったのですか?
村田「水木さんと初めてご一緒した作品だったので、水木さんの演出の手法を知らずに現場に入ったのですが、1つのシーンを何度も何度も繰り返し稽古をしていくというスタイルだったので、稽古が大変でした。『もう1回やってみよう』が何度も来るので、この人、本当に稽古が好きなんだなと(笑)。でも、大変ではありましたが、楽しくもありました。
 水木さんの脚本はコメディ要素も多くて、面白いことを真剣にやる作品が多いんです。僕が今回演じる役はかなり繊細な役ですが、その中でも面白い部分や役の奥行きが出せるのではないかと、稽古でチャレンジしていく時間が持てます。そうしてチャレンジした芝居を見てもらえて、面白いものはいいと言ってどんどん採用してくれるので、大変だったけど楽しかったです」
―――中村さんは今回、初めて水木さんとご一緒するということで、このカンパニーや稽古に向けての期待や楽しみを教えてください。
中村「僕は現代劇が好きで、時代劇はむしろ苦手なんですよ。なので、そうした意味でもテレビ局を舞台にしたこの作品は楽しみですし、それにプラスして殺陣もあるということですので、より楽しみが増えました。ただ、今の充さんのお話を聞くと稽古は緊張しますね(笑)。楽しみながらやれたらいいなと思います」
―――村田さんとの共演についてはいかがですか?
中村「充さんは一緒にいると癒されて安心する先輩です。舞台上の充さんを客席から観ていると、めちゃくちゃかっこいいところとキュートなところの使い分けが素晴らしいといつも思います。そんな充さんとまた一緒に芝居できることがすごく楽しみです。
 殺陣も嫉妬してしまうくらいかっこよくて。しかも、本番に合わせてくるので、やっぱりすごいなと思います。充さんに持っていかれすぎないように僕も頑張ります」
水木「今、若い俳優さんたちもものすごく頑張っていろいろな光を放っていますが、そうした方たちに、おふたりのファンがとても多いんですよ。若い俳優さんたちから『誠治郎さん大好き、村田さん大好き』という言葉をよく聞きます。今回、そんなおふたりに作品の主軸を担ってもらえるというのはすごく嬉しいです」
―――村田さんから見た中村さんはどんな俳優ですか?
村田「今、先輩と言ってくれましたが、僕はあまり後輩という感じはないんですよ。一目置いている人ですから。アクションはもちろんですが、それだけでなく、舞台に立っているときに芯のある雰囲気を感じて、もっと共演したい人です。信頼感がすごくあります」
水木「今回、出演してくれるニコラス・エドワーズも誠治郎さんとの共演に緊張していました。彼が日本に来て、初めて演劇の舞台に立ったときにメインの役を誠治郎さんがやっていらしたそうで、すごく思い入れがあると話してくれました」
中村「それは嬉しいです。僕も楽しみです」
―――今、少しお話も出ましたが、今回のカンパニー、他のキャストの皆さんについてはいかがですか?
水木「今回は初めての方がたくさんいるんですよ。おふたりはお知り合いも多いですよね?」
中村・村田「そうですね」
水木「実は、初めての方は仲間たちからの推薦なんです。『この人、いいよ』と聞いてお声をかけて、今回、ご出演していただくことになりました。
 コロナ前は、一緒にやらせてもらう前に必ずお会いしてお話をしていたんですよ。村田さんが言っていたように、めちゃくちゃ稽古をするスタンスなので、そういう意味でも最初にお話をしておきたくて。ですが、今はなかなかそういう形も取れなくなったので、自分たちが信頼する俳優さんからおすすめしていただいてキャスティングすることも多いんです。今回もそうしてすてきな方がたくさん集まってくれました」
―――そうして集まった皆さんがどんな作品を作り出されるのか、楽しみです! 最後に改めて公演に向けての意気込みと読者にメッセージをお願いします。
水木「今回はサスペンス要素もありますが、僕らはエンターテインメントヒューマンコメディを旗印にしています。無条件で笑えて、ストーリーの中で感動して、最後にはホロっとしながらも、歌や踊り、立ち回りも楽しんでいただけるような作品作りを一貫して目指していますので、気軽にお越しください」
村田「前回の公演に出演してから10数年経っていて、時代的にもコンプライアンスの面でもあの頃とはだいぶテレビに対しての意識も変わっています。そうした中、新しくなった脚本に向き合って、前回は思いもよらなかったプランが生まれたらいいなと思います。
 誠治郎さんをはじめ魅力的なキャストの皆さんと化学反応を起こして、過去最高の『レイジーミッドナイト』を作り上げなくてはいけないという責任感を持って、お客さまに最高のエンターテインメントをお届けしたいと思っています」
中村「コメディも現代劇も好きなので、自分がやれることは全てやって挑みたいと思います。舞台は高いお金を払ってチケットを買うので、観に行くハードルも高いと思います。ですが、生で観ることで記憶にも残りますし、これほど良いコンテンツは他にはないと思っていますので、ぜひ最初の一歩を踏み出していただけたらと思います。
 こうして何度も再演されるというのは素晴らしい作品であることは間違いないと思うので、前回を超えるものにして、面白かった、観に来て良かったと言っていただけるよう、作品の1ピースになれるよう最大限努力させていただきます。ぜひ観に来てください」
水木「ちなみに……立ち回りの振り付けをお願いできませんか?」
中村「ぜひ!」
水木「振り付けも誠治郎さんにやっていただくことになりましたので、そちらもぜひ楽しみにしていただけたらと思います」
(取材・文:嶋田真己 撮影:立川賢一)
中村誠治郎さん
「『見た目とギャップのある声が出せる選手権』。びっくりするくらい可愛い声出せます。赤ちゃんの鳴き声も出せます」
村田 充さん
「『歌えて踊れて芝居もできる人 OVER45』なら上位かもしれません。理由は……舞台上で体現していますので」
水木英昭さん
「『蚊に刺された時に不機嫌になる成人男子選手権』。体質的に蚊に刺され痛みを感じる人……俺以外に聞いた事ないんですよね。……痛いんですよ。本当に」
プロフィール
中村誠治郎(なかむら・せいじろう)
JAC(ジャパン・アクション・クラブ)出身。華麗なアクションや殺陣に定評があり、自ら殺陣指導を行うこともある。映画『昭和最強高校伝 國士参上!!』で第5回ジャパンアクションアワード ベストアクションシーン賞 最優秀賞を受賞。2021年には新田健太・椎名鯛造・川隅美慎と殺陣ユニット「HoriZonE」を結成。
村田 充(むらた・みつ)
2000年にドラマ『二千年の恋』で俳優としてデビュー。以後、映画・ドラマ・舞台で広く活躍。主な出演に、映画『るろうに剣心』シリーズ、舞台『弱虫ペダル』シリーズなど。
水木英昭(みずき・ひであき)
1987年、劇団スーパー・エキセントリック・シアターに入団。2000年の退団まで、全公演に出演。2005年、水木英昭プロデュースをスタート。“手に汗にぎる、笑いです。”をキャッチフレーズに、様々な作品を世に送り出している。
公演情報
水木英昭プロデュース vol.29
『レイジーミッドナイト 2025』
【東京公演】
日:2025年11月23日(日・祝)~30日(日)
場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
【大阪公演】
日:2025年12月4日(木)~7日(日)
場:扇町ミュージアムキューブ CUBE01
料:スペシャルシート[前方エリア・特典付]
  9,800円
  レギュラーシート7,800円(全席指定・税込)
HP:https://www.mizu-pro.com
問:水木英昭プロデュース
  mail:mizu-pro@mizu-pro.com