
明治時代の陰陽師を描いた舞台『鬼神の影法師』は、2023年11月に〈黎明篇〉で幕を開け、その後〈玲瓏万華篇〉、〈千年双月篇〉と続く人気シリーズ。これまでの3作では、明治維新の混乱の末に陰陽寮(陰陽師たちが所属し、天文や暦を司っていた組織)が廃止された“後”の時代が描かれてきた。そして今回、描かれるのは陰陽寮が廃止される“前”――士門・柊弥・郡司の学生時代を描く新章〈陰陽寮篇〉だ。
「ずっとシリーズを続けたい」と語る主演・千家士門役の砂川脩弥、白玖役の中山優貴に、公演への意気込みや見どころを聞いた。
―――新章の開幕です! まずは意気込みをお聞かせください。
砂川脩弥(以下、砂川)「『鬼神の影法師』は黎明編から始まって、今回で4作目になります。シリーズがあっという間に4作も続くことはすごく嬉しいですし、僕にとっては今回が初めての単独主演なので、気合いが入っています。……とはいえ、今回も(津守玲志役の谷水)力がいてくれるし、いつものメンバーですから、あまり力みすぎずに、安心して座長をやらせていただきます!」

中山優貴(以下、中山)「今のところ、僕は鬼神シリーズ皆勤賞なんですが、こんなに短いスパンで4作目ができることって、なかなかないことですよね。
前回でいったん物語も一区切りで、今作からこれまでの“過去”のエピソードになるんです。だから、この『鬼神〜』を観てくださっているファンの方が『過去はどういう風に過ごしていたんだろう?』『どういう関係性だったんだろう?』などと気になっていた部分がいろいろ明らかになっていくのではないでしょうか。僕自身もどんな物語になるのかすごく楽しみにしています!」
―――演じられる役についての思いをお聞かせください。
砂川「これまで描かれた千家士門は、すごく周りに助けられて、与えられて、どんどん強くなっていく主人公だったと思います。今回の陰陽寮篇は原点回帰といいますか、もともと彼は天才肌な部分はあると思うんですけど、与えられる前の“未熟な士門”を作っていくことになるのかな。いろいろ想像して楽しみです」
中山「白玖はもともとすごく強い式神ですが、作品を重ねる度に、どんどん人らしくなった気がしています。いろいろな人と出会って、温かい心が少しずつ芽生えてきた。最初は一匹狼状態で、自分がいればもう敵はいない怖いもの知らずなところがあったんですが、陰陽師たちと協力したり、3作目に至っては犬猿の仲であった鬼匡と共闘したりして、そういった部分でも成長を感じます。ただ、今回は“過去”なのでね。ずっとピリピリしているのか、尖りまくっているのか……」
砂川「逆にめっちゃ柔らかいかもよ(笑)」
中山「確かにめっちゃ柔らかかったけど、何かがあったから、こんな人になったのかもしれないしね(笑)。どう描かれるのかが楽しみです」

―――作品の見どころとなりそうなポイントを教えてください。
砂川「これまでの作品にもちょくちょく陰陽寮時代の話が出てきたので、実際、士門と柊弥と郡司の3人はどんな風に陰陽寮生活を送っていたのか、どれだけわちゃわちゃして楽しそうな雰囲気なのか、僕も楽しみなんですが……でも新章ということで今回からでも十分楽しめると思います。ほら、映画の『スター・ウォーズ』もエピソード4から始まったりするじゃないですか(笑)。時系列としては、今回の4作目〈陰陽寮篇〉が一番最初なので、今回を観終えてからまた〈黎明篇〉に戻るというのも全然楽しいと思っています!」
中山「1番の見どころは、士門と白玖が式神と主の関係だったというところですかね。これまでの作品は、共闘したり信頼しあったりはしているんですが、基本的に“大嫌いムーブ”しか出していないので(笑)、パートナーとして生きていた頃は見どころになるのではないかなと思います。
また、今回は谷水力が演じる玲志もいますよね。陰陽寮時代、あいつは何をしていたんでしょう? 士門とはまだ会っていないけれど、生きてはいただろうから……意外とすれ違っているのかな? どう絡んでくるのかな? そういう部分も見どころの1つかなと思いますね」
―――お互いの印象をぜひ教えてください。相手は「実は……」というエピソードもあれば教えてほしいです。
砂川「事務所は一緒なんですけど、実は『鬼神の影法師』から知り合って仲良くなったんですよね。共演もこのシリーズからですから」
中山「そうそう。だから意外に実は『鬼神〜』からなんです(笑)」
砂川「実は、彼、めっちゃ虫が苦手です。敏感に反応していますよ」
中山「はい。もし本番中に舞台上にでかい虫が来たら、本当に困ります。『1回止めない?』と言いたいぐらいです。特に飛ぶ虫が苦手です。僕、背が高いから虫がぶつかる面積が人より広いんですよ……(笑)。
一方、脩弥は士門だし、士門は脩弥だし……という感じなんです。あまり素とキャラが変わらないですね。のんびりしているんですけど、やるときはやる。オフのときはダラダラしているけど、仕事はちゃんとしている。だからすごく信頼しています」
―――改めてこの『鬼神の影法師』シリーズはお2人にとってどんな作品なのですか?
砂川「僕はこの『鬼神の影法師』で初めてW主演させていただきましたし、今回も初めて単独主演をやらせてもらいます。だから自分としてはめちゃくちゃ思い入れのある作品です。
あとシンプルに、1番素の砂川脩弥でいられる作品であり、座組です。ホーム感が強いです。めちゃくちゃ大変な作品だったり、緊張したりする現場から、この『鬼神の影法師』のメンバーに会うとすごく安心するんですよね。ビジュアル撮影などで結構頻繁に顔をあわせているので、僕にとってのマイホームです」

中山「今、脩弥も言ったんですけど、僕もホームグラウンドだなと思います。ありがたいことに、この短い期間で4作目も突入していますし、イベントなども含めて、コンスタントに会う機会がすごく多いんですよ。みんな各々他の現場でいろいろな経験を積んで、外で得た経験やパワーをまた『鬼神』に活かして……『鬼神』がもっと大きくなっていけるように頑張ります。
あとは、シンプルに続きが僕らも気になるんですよ。きっと(脚本の)木村さんの頭の中には『こういう分岐があって……こうなって……』という構想があるんでしょうけど、それが僕らも楽しみ。『ここ、こうだったんだ⁉』みたいな気づきがあり、いちファンとしても楽しみなんです。そういう作品に出演できることはありがたいですし、嬉しいと思っています」
―――俳優としての夢や目標を教えてください。
砂川「僕は、一緒に演じている相手に対しても、観ているお客さんに対しても、感情を与えられる役者でありたいと思っています。なかなか言葉にするのは難しいんですけど、感情をぶつけられる役者でありたいですね。それから、目標はこの『鬼神の影法師』シリーズを続けること! そして、20年後、安倍晴明役としてレジェンド的に出演したい(笑)」
中山「僕は『これはコイツにしかできねえな!』というものをいっぱい作りたいです。例えば、『この役は誰が演じるのがいいかな』とキャスティングしているときに、『これは中山にしかできない!』とか『中山にやらせてみたい!』と思わせるものを1つでも増やしたいです。『こんな役も、全然違うあんな役もできますよ』と役者としての引き出しを多く持ちたいですね。
役者の仕事は、いろいろな役になって、いろいろな人生を歩めるのが面白いところ。自分とはまたかけ離れた人物も演じられるような、役幅が広い役者になりたいです」

―――最後に観劇を楽しみにしている皆さんに一言お願いします。
砂川「まずは過去作をコンプリートしている方に向けて。やはり、この『鬼神の影法師』が4作目までできるというのは、応援してくれたファンの皆さんがいるからこそだと思うので、まずは本当にありがとうございます。その応援してくれていることに胡座をかかず、精一杯作品に向き合って、いいものを作っていきたいと思いますので、これからも応援のほどよろしくお願いします!
そして、今回初めて『鬼神の影法師』に興味を持ってくださって、観劇しようと考えてくださっているお客様。このシリーズは、初めて観てくれる人も普通に楽しめるような本になっていて、絶対に面白いと自信を持って言えるので、ぜひ観に来てください。よろしくお願いします」
中山「『鬼神の影法師』のこれまでの3作品を観てくれている方! 今、僕もあなたと同じ気持ちです。過去はどうなっているんだ?と気になっています(笑)。そして、今回初めてご覧になる方も、とても楽しめる作品になっていると思います。これまでお伝えしている通り、4作目とはいえ「過去」の話なので、実質エピソード1なところがあると思うので、時系列的には正しい見方です(笑)。観ていただいて、『このキャラのここが良かったな』と推しが見つかったら、ぜひ過去作も含めて推しの輝いている姿を観て欲しいです。劇場でお待ちしています!」
(取材・文:五月女菜穂)

プロフィール

砂川脩弥(すながわ・しゅうや)
1994年11月17日生まれ、沖縄県出身。幼少期から地元・沖縄にて芸能活動を始め、2016年、GirlsAward×avex「BoysAward Audition」にてBoysAward賞を受賞後、上京し本格的に芸能活動を始める。19年『仮面ライダーゼロワン』にてテロリスト「滅亡迅雷.net」の司令塔、滅/仮面ライダー滅役を演じ、注目を集める。近作は、舞台『青のミブロ』(2025年)、舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯(2024年)、舞台『弱虫ペダル』THE DAY2(2024年)など。

中⼭優貴(なかやま・ゆうき)
1991年4月2日生まれ、千葉県出身。2009年、第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストファイナリスト「GREE賞」授賞。14年4月「SOLIDEMO」のメンバーとしてメジャーデビュー、同年12月に「第56回 輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞。アーティスト活動とは別に、舞台やドラマ、バラエティなどにも出演。近作は、『キューピット・パラサイト The Stage』(2025年)、Asterism⁂『NoLimit』(2025年)、舞台『鬼神の影法師』-千年双月篇-(2025年)、T1project Musical vol.6 ミュージカル『ココロノカケラ』(2024年)
公演情報

舞台『鬼神の影法師 -陰陽寮篇-』
日:2025年10月16日(木)〜26日(日)
場:新宿村LIVE
料:S席[特典付]10,000円 A席9,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.kishin-stage.com
問:GEKIIKE制作部 mail:gekiike@starbeat.jp