
ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団がこの秋、日本初上演の『Sweet Mambo』をもって来日する。世界初演は2008年で、ピナ最晩年の作品の1つだ。
「初演を観た時、圧倒された記憶があります。本作の初演キャストは私にとって特別で、みんな入団前から憧れていたアイドル的存在ばかり。ここまで学んでこられたのも彼らのおかげで、一生辿り着けないと思っています」と語るのは、ヴッパタール舞踊団の瀬山亜津咲だ。初演時はスタンバイダンサーを務めたものの、創作の過程を目にすることはなかったそう。
「ピナが創作する時はクローズで、団員も立ち入ることはできません。ピナは何かテーマを掲げるのではなく、ダンサーに質問をして、出てきた答えを作品に落とし込んでいく。ダンサー個々の光をいろいろなところにちりばめて、観る人に自由に受け取ってもらう。それがピナの作品なのだと思います」
瀬山は入団25年のキャリアを誇り、リハーサルディレクターとしてピナの精神を次の世代に伝えているが、これは「自身の大きな課題」だと話す。
「今のダンサーの2/3はピナを知らない世代です。2〜3年カンパニーにいたからといって、ピナの世界を習得できるわけではなくて。私は今も習得できずあたふたしています。ピナの世界観の中に自分を置くのはすごく時間がかかることです。その中で成長していき、やっと辿り着けるかどうか。ピナは“I can not do it”が嫌いな方でした。“もっとできる”という精神を植えつけられた気がします」
来日公演では、初演キャストと新メンバーの新旧ダンサーが出演。両者の化学反応も見所だ。
「当時ピナがダンサーに投げかけた質問を、もう一度読み返しては、“今のあなただったらこの質問にどう答えますか?”と問いかけてみたり……。振付自体は初演と変わらないけれど、内面的な部分から、作品に新しく息を吹き入れています」
今回の来日は8年ぶりで、京都公演は実に32年ぶり。京都は初来日時の公演先で、ピナはかつて京都賞を授与されるなど、カンパニーとの縁も深い。
「そういう意味で私たちもすごくエキサイティングしています。私もこの作品が大好きで、キャストに影響されてきました。ぜひ今の彼らを観ていただきたい。そしてお客様に自由に感じてもらえたらと思っています」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:Claudia Kempf)
プロフィール

瀬山亜津咲(せやま・あづさ)
瀬山紀子、石沢秀子にクラシックバレエを学ぶ。アメリカ ノースカロライナ・スクール・オブ・ジ・アーツ留学を経て、テキサスのバレエ・オースティン、メキシコ、キューバ等で研鑽を積む。その後、ドイツ フォルクヴァング芸術大学で学んだ後、2000年にヴッパタール舞踊団に入団。以来、ピナ・バウシュの数多くの創作に参加し、またレパートリー作品を踊る。映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』にも出演している。
公演情報
.jpg)
ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団
『Sweet Mambo(スウィート・マンボ)』
日:2025年11月21日(金)・22日(土)
※他、埼玉公演あり
場:ロームシアター京都 メインホール
料:S席 12,000円 25歳以下5,000円
A席 8,000円(全席指定・税込)
HP:https://rohmtheatrekyoto.jp
問:ロームシアター京都チケットカウンター
tel.075-746-3201