
『夢番地一丁目 富士見荘の秋』、『夢みる女』、『江戸っ子芸者 夢奴奮闘記!』と2000年~2003年にかけて、三越劇場や名鉄ホールにて上演された舞台「夢シリーズ」。その座長を務めた山田邦子と、演劇プロデューサーの難波利幸がこの度、22年ぶりにタッグを組む。
本作は、5年間の活動を経て解散し、ロックファンの間で語り継がれる伝説的なガールズバンド「ガーネット」の物語だ。メンバーたちは別々の人生を歩んでいたが、ある日、メンバーだったデボラの訃報が届くことから、ストーリーが動き出す。ガーネットのメンバーでギター・ジャニス役の山田邦子、ヴォーカル・シンディ役の山像かおり、30歳近く年の離れたデボラの恋人の奥原役の橋本祥平の3人に、本作に懸ける思いや意気込みを聞いた。
―――お三方が揃うのは今日が初めてということですが、今回の『ジャニス』のオファーがあったとき、どう思われましたか?
山田「プロデューサーの難波さんとはとても久しぶりにご一緒するんですが、まずはそこが1番の楽しみでした。私は『面白い』とか『明るい』とかを担当して、もう45年なんでね。思いっきり“すごいもの”を作っていこうと思っています。ワクワクしていますよ」
山像「山田邦子さんと言えば、もう私たちがずっとテレビで見ていたお方ですからね。その邦子さんと一緒に、どんな舞台を作るのか……今は本当にワクワクしかないです。ものすごく面白いものができたらいいなと思っています」
橋本「もう本当に光栄です! 僕はプロデューサーの難波さんとご一緒するのが今回初めてなのですが、実は学生の頃に舞台のお手伝いをしていたことがあって、そこで難波さんの舞台に何度か携わったことがあったんです。そこからのご縁で12~13年経って、ようやくご一緒できるという! 夢が叶いました」
山田「待って、待って! この若さから12~13年前なんて、小学生とかではないの?(笑)」
橋本「あはは、案外年齢を重ねているんです(笑)。それで、今回のオファーを難波さんからいただいて、『山田邦子さんとやるんだけど……』と聞いて『絶対にやりたいです!』と即答しました」
山像「友達の食いつきがいつにも増してすごくて、すでにたくさん予約をいただいています」
山田「そこなんですよね。テレビもラジオも応援してもらうことは嬉しいけれど、やっぱり舞台はチケットを買っていただくからね。あぁ、ありがたいなと心の底から思いますよね。私はそんなに多く舞台をやりませんから。『旅行が〜』とか『予定が〜』と言ってきた友人とはもう絶交です(笑)。1回のみならず、何回も足を運んでもらって、熱い夏にしたいですよね」

―――山田さんはプロデューサーの難波さんとの最初のご縁は、2000年だそうですね。
山田「懐かしいわ〜。2000年にちょうど私は40歳だったの。テレビやラジオを抜け出して、ファンに感謝する感謝祭みたいなことをやろうと思ったんですが、舞台を1度もやったことがなかったんです。そうしたら難波さんと知り合って、『いいですね! やりましょう!』と言ってくださって……。
すべてが勉強でした。自分の人生に確実にプラスになりましたし、その後の考え方も大きく変わりました。お客様に感謝するようになったんです。それまで、テレビを見てもらうのは当たり前みたいに思っていましたけど、劇場に来てもらうことはとても感動的で、感謝感謝なことなんだと思いました」
―――立て続けに舞台をされていますね。印象に残っていることはありますか?
山田「毎日毎日、同じお話じゃないですか。だから『飽きない?』と思っていたんですけどね、毎回お客様も違うし、天気だったり気合だったりによって、出来上がるものが違うんです。本当にナマモノ。テレビや映像だったら撮り直しかもしれないけれど、舞台はみんなのチームワークで乗り切るしかないでしょう?
お客様も本当に面白くて。とある日、あるはずの権利書の小道具がないことがあったんです。『ない! ない!』と騒いで、暗転になって、次のシーンに行く予定だったのに、お客様が『ここにある!』とか言ってきたんですよ(笑)。客席に行って、そのお客さんに権利書の小道具をもらったら、『権利書じゃないよ』と書いてあるの!(笑)。私たちよりも何枚も上手でした」
―――貴重なお話です(笑)。さて、今回の『ジャニス』は、ガールズバンドのガーネットというバンドがあったけれども、ジャニスとシンディが喧嘩して解散したと。そしてメンバーのデボラが亡くなって、30歳近く年の離れた奥原という彼氏が出てきて……。
山田「デボラ、やるなぁ(笑)」
橋本「僕があらすじを最初に読んだときに、まずご縁だなと感じたのは、デボラさんがドラムを担当していること。僕、実はバンドでドラムをやっているんですよ! すごい繋がりだなと思いました。女性ロックバンドは本当に格好いいから、こういう奥原くんみたいな未来は、役でなくても、なくはないのかな?と思いますね」
山像「こ、今回も?(笑)」
橋本「どうでしょう?(笑)。でも、奥原くんもきっとデボラさんの魅力に恋をして、付き合ったはずでしょうからね。実際にデボラさんは登場はしませんが、そういう裏側の部分を深掘りしていくのが、これから楽しみです」
山像「ジャニスとシンディはどんな喧嘩をしたんだろうというところが気になるところですよね。……実は私もロックバンドをやっていたことがあるんです。だから、なんとなく分かるんですけど、バンドは音楽性とかなんとかで解散しがち。このガーネットは果たしてどうなるのでしょうね。
それから、解散後に集まって再びみんなで音楽をやるのかどうかも気になるポイント! やってみたい気持ちもあるし、本当にやるんだったらちょっと怖くもありますけれど……本番でのお楽しみですかね」

山田「“ジャニス”といえば、ジャニス・ジョップリンよね。私も大好きですし、カラオケでも歌います。バンドについてはね、私はハワイアンバンドを持っていて、ボーカルだったんですが……音楽はいいですね。20年ぐらい前から邦楽、三味線や長唄なんかに行っちゃいましたけど、やっぱり音楽はいいですよね。
音楽は、人を救う。悲しい歌もありますけど、音楽で繋がるというのは、ちょっと夢がありますよね。うちのバンドはもう残念ながら途中で解散しましたし、今回のジャニスとシンディの確執は何なのかまだ分かりませんけど……私は学生のときに相方がいて、ずっと一緒に漫才をやってきたんです。私は一緒にデビューすると思っていたけれど、相方は卒業と同時に幼稚園の先生になると。『職業にするの? 趣味でしょ?』と言われて、がっかりして、1人でデビューしたんですね。
1人だったから売れたんだと思いますけど(笑)。また時を経て、同窓会で40年以上ぶりに会うとさ、立ち位置もぱっと同じところに立つんですよ。別れたことは寂しかったけど、その思い出は私の財産。……まだ稽古が始まっていないから、そんなことに思いを巡らせています(笑)」
―――舞台に立つときはどんな思いでいらっしゃるのですか?
橋本「何回やっても、緊張が止まらないです。今はだいぶ落ち着いたんですけど、ひどいときは毎回袖でえづいてしまって……」
山田「悪阻じゃないわよね?(笑)」
橋本「多分違うと思います(笑)。1歩舞台上に立つと、すーっと収まるんですけどね。いや、何回やっても慣れないです。ドキドキしてしまいます」
山田「私も緊張する! けどね、緊張が大好きなの。身体が震えると、『一生懸命、頑張っているんだな』と思うし、こういう“普通”ではない自分にあと何回会えるのかなと思ってワクワクするんです」
橋本「いろいろプレッシャーを感じると、吐き気が出てきてしまうんですけど、いや、でも仰る通り、案外そういう状態も嫌いじゃないんです。だから今後も緊張感を持って、舞台に立ちたいですね」
―――緊張されるのは意外でした。舞台作品をつくる中で、1番楽しい瞬間はどんな瞬間ですか?
橋本「そうですね。稽古場で作ったものに、どうお客さんが反応してくれるのか……初日が1番ワクワクしますね」

山田「分かる。お客さんが面白い箇所を教えてくれるときがある。『そうか、ここが面白いのか』と初日でびっくりすることありません?」
橋本「あります、あります。『ここでこんなに反応があるんだ!』と思うし、『本をちゃんと読めていなかったのか?』と反省もします(笑)」
山田「初日の反応を経て、作ってきたものが固まる感じがするわよね」
―――山像さんはいかがですか?
山像「最初は遠慮がちでも、稽古でああだこうだ言いながら作っていって、だんだんとみんなの息が合ってくる瞬間が好きなんですよ。先ほどの話にも通じますが、それで初日を迎えたときに、お客さまの反応でまた舞台が作られる。
粘土細工が出来上がっていくように、一つひとつを積み重ねて、ちょっとずつ出来上がっていく。時間はかかるけど、そういう達成感があるんです。とはいえ、完全に『やりきった!』、何かやり残したような……それも舞台をやめられない魅力だと思うんです」
―――ところで今回の公演は「Room NO.925 第1回公演」ということで、これは事実上の旗揚げ公演と捉えてよろしいですか?
山田「あら、気づかれました? そう、第1回公演と書いてあるんですよ。一応、旗揚げですよね。9(く)2(に)5(こ)なので、第925回までできればいいなと思います」
―――では次もあると期待しております! 最後にお客様に向けて、見どころや意気込みをお願いします!
橋本「僕自身、こんなに素敵な皆さんとご一緒する機会をいただけたことが本当に嬉しいなと思います。僕を応援してくださっているファンの方も『こういうのが観たかった!』と思ってくださるはず。今回は旗揚げ公演ということで、また次も呼んでもらえるように、精一杯自分をアピールして頑張りたいと思います。劇場でお待ちしています!」
山像「ガールズバンドというだけで、ワクワクドキドキが止まらないような感じの作品になると思いますが、皆さんに『観に来て本当に良かった』と思ってもらえるような作品になるように頑張ります。絶対に損はさせませんので、ぜひご来場ください」
山田「そうそう、入場料も9250円ということで、9(く)2(に)5(こ)なんです。そんなちょっとしたところも面白がっていただければ。くすっと笑えるような、また、ぎゃははと笑えるようなことを散りばめていきたいと思いますし、クーラーガンガンの涼しい劇場を楽しんでいただければと思います。一生懸命頑張ります!」
(取材・文:五月女菜穂 撮影:平賀正明)


山像かおりさん
「腹の立つことや侮辱されるようなことがあっても、すぐ、忘れてしまえること。たとえ『この恨みはらさでおくべきか!』くらい頭にきたことでもなぜか忘れてしまうのです。もちろん大切なことも忘れてしまうので、引き継ぐのも何かしらとは思うのですが(苦笑)」
プロフィール

山田邦子(やまだ・くにこ)
東京都出身。お笑いタレントや俳優などマルチに活動。「オレたちひょうきん族」、「やまだかつてないテレビ」など、数々のバラエティ番組に出演。「NHK好きなタレント調査」では、1988年から8年連続1位を獲得。2024年10月、日本喜劇人協会 第11代会長に就任。

山像かおり(やまがた・かおり)
大阪府出身。俳優。文学座を経て、椿組、玉造小劇店、流山児★事務所、劇団道学先生など出演多数。ジュリエット・ビノシュの吹替えやアニメなど声優としても活動。羽衣1011、西瓜糖を主催し、脚本家「秋之桜子」名義で、舞台、アニメなど幅広いジャンルに脚本を提供。

橋本祥平(はしもと・しょうへい)
神奈川県出身。俳優。2013年に舞台デビュー。近年の出演作に、『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』シリーズ、舞台『鬼滅の刃』其ノ伍 襲撃 刀鍛冶の里、『日本三國』など。
公演情報
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Room NO.925 第1回公演『ジャニス』
日:2025年8月20日(水)~24日(日)
場:博品館劇場
料:9,250円(全席指定・税込)
HP:https://no-4.biz/room-no925/janis/
問:エヌオーフォー【No.4】
mail:no.4.stage@gmail.com