
スペイン・バルセロナで生まれ、現在は世界で活躍するチェリスト・九十九太一。近年は父である画家・九十九伸一とのコラボレーションによる、絵画と音楽の「デジタル紙芝居」を発表している。そんな彼らが今年もまた新たな作品を発表する。『VIRTUAL CITY BCN・仮想空間都市バルセロナ』とタイトルがつけられた今回の作品は、前作『コミニョーリ・煙突夢物語』の主役である赤い長靴をはいた小さな煙突・コミニョーリくんが再び登場。逃げ出してしまった飼い猫を探し回っている「レオノール叔母さん」とともに、異次元空間の仮想空間都市バルセロナへ猫探しの旅に出る……というストーリーだ。作品について九十九太一に話を聞いた。
「これまでに引き続き、九十九伸一をはじめ、同じ制作メンバーで作品作りに取り組んでいます。特に今回は私が生まれ育ったカタルーニャの芸術・文化をオマージュし、名所や日本ではあまり知られていない隠れたスポット、さらにカタルーニャの日常風景を物語の中で数多くご覧頂くことができます。バルセロナをよく知る方はもちろん、バルセロナに興味をお持ちの方も楽しんで頂けます。過去作第1弾『GOSHU・セロ弾きのゴーシュ』、第2弾『コミニョーリ・煙突夢物語』をご覧頂いたお客様からは、今回の作品に対して期待するコメントを頂いています」
チェリストとして既に高い評価を得ている九十九太一。さらにユニークなのは、普通の「チェロ」だけでなく、独自の「エレキチェロ」を使った即興性の高い演奏だ。今作の音楽についてどんな構想があるのだろうか。
「曲は基本的に楽譜に起こしたものを演奏しますが、物語の進行に合わせて即興も取り入れます。またカタルーニャ民謡のメドレー形式での演奏を取り入れています」
溢れる色彩と独創的な世界を描いた、九十九伸一の絵画とエレキチェロによる音楽。その2つが揃って初めて生まれる「デジタル紙芝居」は、言語の壁を飛び越えて、誰の心も震わせることができるはずだ。
「この作品は平和な日常を讃美したオリジナル作品であり、バルセロナを中心としたカタルーニャの文化・芸術などとコラボレーションしているところが大きな特色でしょう。前作とは完全に独立した物語になっていますので、初めて触れる方でも存分に楽しんで頂けると思います。是非コンサート会場にお出掛け下さい」
(取材・文:渡部晋也)
プロフィール

九十九太一(つくも・たいち)
1988年、スペイン・バルセロナで生まれ育つ。幼少期にチェロの音色に興味を持ち、7歳からチェロを学び始め、12歳でカタルーニャ州立バルセロナ高等音楽院に入学。15歳から作曲とチェロを両立させながらチェロ界の巨匠マルサル・セルベーラ氏、エンリコ・ディンド氏、ピーター・ティーマン氏に師事。2023年夏、新たな映像とエレキチェロによる生演奏の新感覚エンターテインメント「デジタル紙芝居」・第1弾『GOSHU ~セロ弾きのゴーシュ~』を発表、日本各地で演奏活動をした。同年11月には、宮沢賢治の生まれ故郷 岩手県花巻市で開催された『宮沢賢治・没後90周年特別企画・チェロでつづる宮沢賢治の世界』に招待され演奏。また、2024年11月には、在バルセロナ日本総領事館後援を受け、カタラン語による世界初公演がスペイン・バルセロナにて実現される。西洋と東洋を融合させた神秘的なリズムとハーモニーを形而上的に組み込む音楽スタイルを中心に、自然や様々な時代の芸術作品からも刺激を受け、創作活動を続けている。
公演情報

九十九太一 エレキチェロ コンサート『VIRTUAL CITY BCN・仮想空間都市バルセロナ』
日:2025年7月30日(水)14:30開演(14:00開場)
場:大和市文化創造拠点シリウス サブホール
料:1,500円(全席自由・税込)
HP:https://www.s-tsukumo-kan.jp
問:ギャラリーおがわ
tel.046-267-0077(10:00~18:00/月火休)