ダンスカンパニー CAT-A-TACの新作公演『不思議の国のアリス ~ハートをなくした女王~』が2025年8月2日~3日にかけて上演される。誰もが知る『不思議の国のアリス』をベースにしながら、“心(ハート)をなくした女王”というオリジナルの設定を加え、“無声ダンス劇”と語りによって物語が展開される。原作に登場するユニークなキャラクターたちはそのままに、アリスが“心”をめぐる旅に出るという本作。身体表現によるユーモアと、優しさの滲むストーリーが、多世代に向けて語りかける。脚本・演出・振付に加え、自らも出演する主宰・藤田善宏に、本作の魅力と創作の裏側を聞いた。
―――本作では『不思議の国のアリス』を題材としたストーリーが展開されます。誰もが知る名作を演目に採用した経緯を教えてください。
藤田「『こくみん共済 coop(全労済)文化フェスティバル2025夏』に出るにあたって、“子どもにも楽しめる作品を”っていうリクエストがあったんですね。それで、誰もが知っている物語をベースにしながら、僕たちらしく再構築できるものは何かな?と考えていく中で、『不思議の国のアリス』が浮かびました。今回は、アリスという広く知られたキャラクターを通じて、どの世代にも届くような物語が作れそうだと思ったんです」
―――出演者はどのように決まったのでしょうか?
藤田「今回のキャストは、半分はオーディションで、もう半分はこれまで一緒にやってきた方たちにこちらから声をかけたメンバーです。年齢もバックグラウンドもバラバラで、それぞれまったく違う個性を持った人たちが集まっていて。似たタイプが揃ってるというよりは、いい意味でガチャガチャしていて、その多様さ自体が面白さにつながっていると思います。それぞれが持っている表現をぶつけ合って、どんな化学反応が起きるか、僕自身も楽しみにしてるところですね。
うちは“ダンス劇”といっても、ちゃんと物語を伝える作品をつくっているんです。今回もセリフのない“無声ダンス劇”に加えて、ストーリーテラーの語りも加わることで、子どもでもちゃんと物語がわかる構成にしています。だから、踊れるのはもちろん表現力があるかどうかを大事にして選んでいます」
―――本公演のテーマや見どころ教えてください。
藤田「『不思議の国のアリス』の世界をベースにしているんですけど、今回は“ハートの女王が心をなくしてしまった”っていう設定が軸になっています。女王がどうして変わってしまったのか、アリスたちはどうやって心を取り戻していくのか。そんな“心”をめぐる旅を描いているんです。“優しさ”とか“想像する力”を大事にしていて、原作のアリスとはまたちょっと違う展開が待ってるので、そこにも注目してもらえたら嬉しいです」
―――ストーリーテラーの役割についても教えてください。
藤田「今回も基本はセリフを使わない“無声ダンス劇”なんですけど、小さいお子さんにも楽しんでもらえるように、ストーリーテラーが物語をガイドしてくれるような構成にしています。ただ、説明し過ぎないように、“想像の助け”としてそっと寄り添うような存在にできたらと思っています」
―――演出上の工夫は?
藤田「『アリス』って、身体が小さくなったり大きくなったり、不思議なことがどんどん起こるじゃないですか。“落ちる”シーンを道具で表現してみたり、椅子を逆さにして別のものに見立ててみたり、そういう“見立て”を使って空間を変化させています。大道具をたくさん使わなくても、身体とモノとの関係を工夫することで、お客さんの想像力を引き出せる舞台になると思っています」
―――CAT-A-TACは身体表現を駆使した“無声ダンス劇”を得意としていますが、藤田さんが思う“無声ダンス劇”の魅力は?
藤田「セリフで全部説明しない分、観る人が自分の感覚で受け取れるのが大きな魅力ですね。耳じゃなくて目でも感じることで、言葉にとらわれずに伝わるものがあると思うんです。同じシーンを観ても、大人と子どもで感じ方が全然違ったりして、それがまた面白いなって思っています」
―――過去の公演でも、さまざまな道具を使用してのパフォーマンスを実施されていると思いますが、普段どのようにしてアイデアを生み出しているのかお聞きしたいです。
藤田「とにかく『面白そう』と思ったものはまず稽古場に持ち込んで、実際にやってみます。シーンに合いそうな物もあれば、まったく関係なさそうな日用品も試してみると、意外と『これ、いけるかも?』って広がっていくんですよね。例えばイスも、座るだけじゃなくて倒したり逆さにしたりすると見え方が全然変わって、空間の意味ががらっと変わる。そういう“視点のズレ”から世界がどんどん広がっていく感覚を大事にしています」
―――最後に、公演を楽しみにされている皆さまへメッセージをお願いします。
藤田「『不思議の国のアリス』の世界観に、僕なりの解釈を加えて、“ハートをなくした女王”の物語として再構成した作品です。身体と音楽、そして語りの力を借りて、小さなお子さんにもわかりやすく、でも大人も楽しめる奥行きのある内容になっていると思います。夏の思い出に、ぜひご家族やご友人と一緒に、劇場でお会いできたら嬉しいです」
(取材・文:渡辺美咲)
プロフィール
藤田善宏(ふじた・よしひろ)
振付家・演出家・ダンサー・グッズデザイナー。ダンスカンパニーCAT-A-TAC(キャットアタック)主宰。ダンスカンパニー コンドルズのメンバー。文化庁芸術祭舞踊部門 新人賞受賞。福井国体開会式典 演技振付総合監修。群馬大学非常勤講師。身体表現と道具を駆使したセリフのない物語、柔軟な発想を生かした異ジャンルや伝統芸能などとのコラボが得意。子供からお年寄りまで3世代間で楽しめるダンス劇や児童演劇・幼児教育教材の監修、障がい者対象のWSやアウトリーチなど多様性を重視した活動にも力を入れる。小栗旬主演舞台、TEAM NACS、NODA・MAP、山田洋次監督演出舞台、Eテレ他、振付出演ステージング多数。またグッズデザイナーとして、バレエ・ダンス用品 Chacott(チャコット)とのコラボ商品を全国店舗にて発売。ユニークなアイデアでジャンルレスに様々な人たちと繋がり、新たな芸術表現を創造している。愛猫家。プロレス・仏像愛好家、メガネ・アンティーク収集家。
公演情報
CAT-A-TAC『不思議の国のアリス ~ハートをなくした女王~』
日:2025年8月2日(土)・3日(日)
場:こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ
料:一般4,500円
U-25[25歳以下]3,000円 ※要身分証明書提示
※他、各種割引あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://cat-a-tac.jp/alice/
問:MITATEYA合同会社 mail:info@cat-a-tac.jp