劇団わの人気シリーズ『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』3部作が、2025年7月17日から上演される。1作目の主人公・町田徹役の平松來馬、ヒロイン・鈴森咲良役の柳瀬晴日、金城彩夏役の本条万里子、霧崎俊介役の佑太にインタビューを行った。
―――2021年の公演が中止になってしまってから4年、改めて3部作を上演する意気込みを教えてください。
柳瀬「私は8年前の初演から『君バク』のヒロインを演じさせていただいていました。自分としては楽しくていい夏が来たと感じる毎年の恒例行事だったのが4年前に途切れ、年齢的にも『次があったとして、私はできるのかな』という思いがありました。今年は最後と決めているので大きな思いを持って臨むことになります。私は夏が嫌いで、唯一の楽しみが君バクシリーズなので、私の好きな夏もこれが最後と思うと込み上げて来るものがあります。でも、いつも通り肩肘張らずに挑みたいと思います」
平松「リベンジみたいな気持ちもありつつ、怖さもあります。4年間空いてお客様の期待値も上がっているでしょうし、稽古は最後までしたので当時を超えたいという思いもある。人間としても役者としても成長したものを作品に乗せたいし、価値観などもアップデートしつつ面白い作品を作らなきゃいけないという責任を感じます」
佑太「(2021年は)稽古もして、あとは本番を迎えるだけという状態だったので、悔しさとやりきれなさ、お客様に届けられない心残りがありました。改めてやれるのが楽しみだし、それ以上に大きなものが乗っていると思います。新たなキャストと共にまたイチから作って、君バクを届けられたら。「届ける」というのが自分にとって一番のテーマです」
本条「初参加ですが、以前から作品のお名前は聞いていて、作品に関わる方からすごく愛されているシリーズなんだと思っていました。呼んでいただいたことが嬉しいと同時に、皆さんが見たかったものをちゃんとお見せできるのかという緊張があります。これまでシリーズを愛してくださった方がしっくりくるような形で作りたいです」
―――演じる役の魅力、ご自身との共通点はいかがでしょう。
柳瀬「咲良はある事件がきっかけで笑顔を無くしてしまい、他人に関わることを積極的にしなくなった女の子。私が感じる魅力は、感情が表に出ないだけで内には色々あるところ。心の中から出たいのに出られない揺らぎが魅力だと思います。公演ごとに全然違うものになると思うので、今年なにを感じられるか楽しみに思っています。自分との共通点はないです(笑)。私は楽しいのが好きですし、稽古場でも賑やかなタイプなので……」
平松「笑顔が素敵っていう共通点はあります」
柳瀬「! 今のは入れてください。共通点は平松くんが言ってくれたように笑顔が素敵なところです」
一同「(笑)」
柳瀬「見つけてくれたので嬉しくなっちゃった(笑)」
平松「町田徹は本当に平凡な高校生。だけどすごく一生懸命だし、思ったことに対して情熱を注いでしまうのが魅力。時にバカに見えるけど、そこも魅力というか人間味があると思います。僕自身も、これだと思ったものに全力投球したいタイプなので似てると思います」
佑太「3人は前回からの続投。(本条が)新たに入ってきてどうなるのか楽しみです。僕の役は少し知的。SST(スーパー俊介タイム)と言われる解説シーンの印象がすごく強いです。みんな殺陣もあるんですよね」
本条「私はラケットで戦うので、どうしたら格好良く見えるのか考えています。あと、高校生役は久しぶりで、ついに来てしまったかと(笑)。久しぶりの制服が気恥ずかしいけど楽しみ。お話もすごく青春で、みんなともう一度青春を味わえそうな気がします」
―――作品の見どころを教えてください。
柳瀬「第1作目は現代を舞台にしていますが、現代と言いつつ令和の時代ではない。私たちが懐かしく感じるので、若い子達からすると新鮮でバーチャル感があると思います。夏のいいところが全部詰まっていて、理由もなく胸が締め付けられるような、泣けるシーンじゃないのに心がキュッとなるような不思議な作品だと思います」
平松「徹くんからしたら、夏って補習ばっかりだし暑いし、そんなに特別じゃないんですよね。でも、そんな彼にとって、いつもの夏が忘れられない夏に変わっていく作品だと思います」
柳瀬「徹は今に対して一生懸命すぎて、特別ってわけじゃないんだよね。日常からそのまま走っていったらそこにいたみたいな」
平松「演劇でも、観ている瞬間は表情とかもすごく鮮明に覚えているけど、1ヶ月、1年と経つと記憶は薄れていきますよね。それでも『あの作品楽しかったな、好きだったな』と記憶に残るような作品になったらいいなと思います」
佑太「3部作通して見るとさらに楽しめると思います。SSTも1作だけだと『ふーん』って感じだけど、3部作観たら『なるほど』と思えるところがある。ここから続く2作にも仕掛けがあると思うので、『君の笑顔シリーズ』を楽しんでもらえたらと思っています」
本条「個人的にすごく嬉しいセリフがあって。前回、劇団わさんの『HappySpell』で初めてヒロインを務めた時のセリフが出てきて、胸熱でした」
佑太「劇団わさんの公演を見ていると、いろいろな作品にキーワードが散りばめられている。作品同士の繋がりがあるので、いろいろな楽しみ方ができると思います」
本条「『HappySpell』でもそうだったけど、悪役も憎みきれない。私はまだ台本を読んだ段階なので、皆さんがどう演じられるのか、お客さんのように楽しみにしています」
―――お互いの印象はいかがでしょう。
平松「本条さんとは初めましてなので、どんな方なのかまだわかりません。稽古に入るのが楽しみです。佑太くんは10年くらい前に初めて共演して」
柳瀬「私はその作品を観ています。すごいよね。(平松の)初舞台を観てるとか、そんなことあるんだ」
平松「そんな佑太くんと同い年の高校2年生を演じる。演劇って面白いなと思います。晴日さんは、初めましての時はすごく大人しい方なのかと思っていましたがすごくフランクで明るい方だった。稽古もやりやすいです」
柳瀬「まりやん(本条)とは『HappySpell』でご一緒したんですが、一言で言うとチャーミング。今回演じる彩夏は咲良と正反対の活発な子で、夏に彼女が微笑んでいたら最高!ってイメージです。佑太さんは何回も共演していますが、印象は天然アニキ(笑)」
平松「僕も同じ印象(笑)」
柳瀬「よくそのピュアさでその年までいられたなと度肝を抜かれることがよくあります(笑)。そんなふうに世の中を見ているんだと新鮮に感じるし勉強になるけど、仕事中はすごく人を見ているし、頼れるお兄さん。だからこそ天然とのギャップに驚きます。平松くんは経験に基づくしっかりした部分もありつつ、若いからこその周囲を巻き込む力を感じます。純粋に心を動かされる瞬間が何回もあって。通し稽古って私たちにとっては特別なものじゃないんですが、それでも毎回平松くんが『気合い入れしましょう!』と言ってくれると頑張ろうと思える。私もこうありたいと考えさせられる存在です」
平松「嬉しい」
佑太「平松くんは8歳から知っているんです。昔、家に遊びに行ってご家族と一緒にご飯を食べたくらい仲良し。お母さんと『そろそろ稽古が終わりそうです』などの連絡をとったり、(平松を)肩車したりしていたので感慨深いところがあります。子供のイメージがあった彼が20歳を超えて、一緒に同級生を演じるのは不思議な感じですよね。10年近く成長を見ている相手と一緒に舞台に立てる。続けていてよかったと思えます」
本条「平松さんは初めましてなので楽しみ。(徹は)ヒーローっぽくないところからスタートしてかっこよくなっていく子です。予想ではエネルギッシュで太陽属性な方なのかなと。今後答え合わせできれば(笑)」
佑太「柳瀬さんはザ・仕事人。咲良は笑っちゃいけない役で、本当に笑わない。仕事になった瞬間の切り替え、役を深めていく姿を見ると仕事人だなと」
本条「『HappySpell』で初めてご一緒しましたが、その時の役の印象も相まってチャーミングでミステリアスな印象があります。咲良のイメージがスッと入ってくる。ちょっと人間離れした感じが合いそうだなと思っています」
―――今回のお稽古で楽しみなこと、カンパニーに対する期待などはありますか?
柳瀬「作中で棒アイスが登場するので、差し入れで棒アイスが登場しがち。それが楽しみです(笑)。私も持っていきますし、気分を上げるために必要ですね」
平松「君バクには必須ですね」
柳瀬「同じキャストでの再演ってまずない中で、ここまで同じメンバーが集まれたのがそもそもすごいこと。みんなの中でも、あの悔しい思いをした夏を取り戻したいと思っているのかなと感じます。みんながそれぞれの想いを持って稽古に臨むと思うので、いいものにしかならないはず。楽しみです」
平松「めっちゃいいこと言ってる! 前回コロナ禍で悔しい思いをしたし、稽古中はずっとマスクをして、みんなでご飯にもいけなかった。今回はたくさんコミュニケーションを取れるのが楽しみです。4年前と同じメンバーがたくさん集まっても、1つの作品をみんなで作るのは変わりませんし、新たに参戦してくださる方の思いやエネルギーもぶつかりあっていくはず。すごく楽しみです」
佑太「主人公チームは4人でいることが多いので、チーム感が大切だと思います。前回の稽古でも掛け合いが楽しかった思い出があるので、本条さんが入ってどんなバランスになるのか楽しみです」
本条「私は皆さんのお芝居を見るのが楽しみです(笑)。自分よりとにかく周りにワクワクしています。衣装もそれぞれの役にぴったりなので、みんながステージに立った時にアニメみたいになりそう」
佑太「青春の中に華やかさがあるから、観ていても飽きなそうだよね」
―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
柳瀬「お客様からも『夏といえば君バクだよね』と言っていただくことが多く、夏にふさわしい作品です。ここまでストレートな夏の作品って意外と少ない。お客様はものすごく暑い中来てくださって本当に大変だと思うんですが、劇場に入ったらより暑い(笑)。でも、『夏っていいかも』と思ってもらえるような作品になっています。4年前のリベンジとか、私の最後とか関係なく、100人近くが関わっている作品の熱意を劇場で受け取ってほしいです」
平松「とにかく最高の夏にしたい、その時間を皆さんと一緒に過ごしたいという思いがあります。先ほども言いましたが、『なんか良かったな』、1年後にも『去年の夏、良かったな』と思っていただけるように、記憶に刻まれる作品にしたいです。本当に暑い夏なので、そこは覚悟していただいて。4年前も思いましたが、今日は今日しかない。観劇を迷っている方がいたら、劇場に足を運んでいただければ、絶対にかけがえのない時間にします。僕自身も一生懸命挑みます!」
佑太「夏に青春の物語って“ザ・夏”ですよね。観にきてくださる方も一緒に青春を思い出したり、共有できたりすると思います。夏を感じたい、青春を味わいたい方はぜひ劇場に足をお運びください」
本条「絶対に面白いと思います。ワクワクする展開が多いし、ミステリアスなところからすごく熱い王道展開になる。どんな作品が好きな方にも刺さる場面があると多います。夏休みに上演するとっておきの映画みたいな感覚です。この夏の素敵な思い出の1ページになると思います」
佑太「子供から大人まで楽しめそうだよね。夏の定番作品みたいな。それが世界中に届いたらいいなと思います」
(取材・文&撮影:吉田沙奈)
プロフィール
平松來馬(ひらまつ・らいま)
2002年1月12日生まれ、神奈川県出身。2005年にデビューし、テレビドラマやCM、舞台など幅広く活躍。主な出演作にミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン、ミュージカル『新テニスの王子様』、『HUNTER×HUNTER』THE STAGEシリーズ、ミュージカル『Fate/Zero』シリーズなど。
柳瀬晴日(やなせ・はるひ)
1991年4月28日生まれ、青森県出身。声優、女優としての活動に加え、クリエイター集団 fragment edge作品では衣装やメイク、キャラクターデザインなども手掛けている。近年の主な出演作に劇団わ『「地獄の沙汰は金次第」って言うけど地獄じゃ金は使えねぇんだぜ?』、劇団バルスキッチン『ほぼほぼ心霊スポット』、Project Amythos『空の匣庭』など。
本条万里子(ほんじょう・まりこ)
4月28日生まれ、神奈川県出身。役者・振付師として活躍。近年の主な出演に、シューティング歌劇『ゴシックは魔法乙女 -5悪魔襲来-』、舞台『脳漿炸裂ガール2 ~俗物奇行~ Anarchy in the Journey』、『新サクラ大戦 the Stage』シリーズなど。
佑太(ゆうた)
3月23日生まれ、東京都出身。多くの舞台で活躍中。近作に、蓮×歌 TRY OUT リーディングミュージカル『リュクルゴスの聖杯』、舞台『歌唱戦隊ライブレンジャー』シリーズ、舞台『覇権DO!!~戦国高校天下布武~』、ミュージカル『Queen’s Pirates~赤いドラゴンに宛てる手紙~』など。
公演情報
劇団わ 本公演『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』
日:2025年7月17日(木)~22日(火)
場:中目黒キンケロ・シアター
料:10,000円(全席指定・税込)
HP:https://gekidan-wa.tokyo/back-to-the-kiminoegao2025
問:劇団わ mail:cs@gekidan-wa.tokyo