
本格的な創作ファミリーミュージカルを長きにわたり子供たちに提供している、日本を代表する児童劇団・劇団東少の夏の定期公演が今年も開催される。2025年はミュージカル『眠れる森の美女』を上演。
本作はヨーロッパの各地で語り継がれてきた昔話をシャルル・ペローが原作としてまとめた物。劇団東少ではオリジナルの展開として、王女と同じ日に生まれた貧しい少女を対比させ、王子との出会いによる気付き、少女達の心の成長を描いていく。劇団東少には初出演、王女役の須藤茉麻と、王子役としておなじみの渡辺和貴に話を聞いた。
―――まずは劇団東少作品に初出演となる須藤さんにうかがいます。出演が決まった時の心境をお聞かせください。
須藤「この『眠れる森の美女』は、メンバー(Berryz工房)が過去に出演していたのと、私は去年の『白雪姫』を観劇させていただき、お子様たちがすごく喜んでいるのを客席で一緒に実感しました。客席が本当にあたたかくて、親御さんとお子様が『ウサギさん出てきた!』みたいに楽しんでいる声が聞こえて、可愛いなと思いながらこっちも心が温まって、それを今度は舞台上で経験させていただけるんだなと思うと、すごく楽しみです。自分が王女役で携わらせていただくことは、とても嬉しく思っております。長年愛されている作品なのでプレッシャーもありますが、私らしい王女を演じられたら」
―――そして王子役として出演を重ねている渡辺さん、7月になるといよいよと。
渡辺「そうですね。7月は毎年(スケジュールを)抑えられていますね(笑)。夏が来たって感じがします」
―――『眠れる森の美女』は3回目の出演になりますが、まずは作品全体の魅力についてお聞かせください。
渡辺「劇団東少さんの作品は基本的にあたたかくて、この作品も基本はそうなのですが、この『眠れる森の美女』の姫は割と東少の中では珍しいキャラクターで、最初嫌われ役から始まるので戸惑いがあるかもしれません。最終的にはすごくいい王女になる成長ストーリーで、姫作品の中ではちょっと大人向けです。王子も他の作品に比べてしっかりお芝居をするシーンがあるので、僕としては1番好きな東少の作品になります。もちろん毎回小さいお子さんたちにもしっかり理解してもらえるように作品を伝えられるようにと頑張っているんですけど、他の作品と作風が違うので、そこも魅力であり、やりがいを感じるところですね」
―――王女役について、どう演じようと思っていますか?
須藤「過去作の映像を拝見しましたが、渡辺さんもおっしゃってたように、最初はかなり強い印象の姫です。わがままって人から見たもので、きっと王女はそう思っていないんですよね。『あいつ嫌い』って子供たちに言われてもいいぐらい、夢の中と眠りから覚めた後のギャップ、違いを出せたらいいなと思っています。そこはしっかり作っていきたいですね」

―――そして『眠れる森の美女』の王子についてはいかがですか?
渡辺「他のシンデレラの王子とかと違って、この作品は王子王子してない、けっこうワイルドな人間なので、あまり王子を意識せずに演じています。夢の中で王女を諭すのですが、彼女が育った環境や、それこそ王女自身はわがままが悪いと思って育ってなくて、それが当たり前の日常だったので、そうでないんだと、しっかりと彼女に自分の思いを伝えて、変わっていく手助けができたらと思います。
他の作品だと王子と出会って恋に落ちますが、この作品に関しては恋っていうよりもまず人間同士のぶつかり合いから始まります。僕自身もそうでしたが『眠れる森の美女』というタイトルは知ってたんですけど、物語を聞かれるとあんまり覚えてなかったんです。お客さまもそういう方が多いと思いますし、初めて観た子供たちも、これが『眠れる森の美女』だという形で大人になっても記憶に残ると思うので、すごく好きになって帰ってもらって、そのあとディズニーの映画を見たりしてもらえたらいいなって思います」
―――この作品が初めての舞台作品の出会いになったら嬉しいですね。
渡辺「普段大人向けの作品をやっていますが、子供からおじいちゃんおばあちゃんまで観てもらえる東少さんの作品を1年に1回はできたらいいなって思っています。やっぱり素直な反応が返ってくる体験は貴重です。初めての舞台体験の方もいらっしゃいますし、普段舞台を観ない方も多いので、そういった子供たちに舞台人として舞台の素晴らしさや、また舞台を観たいなって思ってもらえたら嬉しいです。いつも来る前よりも観た後に、両親に対して、友達や恋人に対して、ちょっとでも優しくなってもらえたらなって思いながらやっています」
―――年に1回、ちょっとピュアに戻るシーズンですね。
渡辺「そうですね。いや、いつもピュアですよ!」
一同「(笑)」
―――夢の中のシーンのお話が出ましたが、見てほしいところ、見どころと思う所をお聞かせください。
須藤「やはり夢の中からの、夢から覚めた後の変化は、自分の中でも演じる上でポイントかなって思っています。そこは王子がしっかり導いてくださると思うので、心強い王子に全乗りして(笑)。わからないことは俺に聞いてと言ってくださったんで、その優しさに乗っていきます!
そして歌にも注目して欲しいです。この作品は”本当に美しいものは目に見えない”をテーマに繰り返し歌います。大切なテーマを皆さんの心に届けたいと思っています」
渡辺「悪い意味で捉えないで欲しいんですけど、須藤さんがこの王女役にピッタリだと! 背が高くて、しなやかなスタイルで本当に素敵な王女ができるんじゃないかなって勝手に思っています。見どころは王子が諭すシーンだと思うので、王女の素晴らしさを引き出します!」

―――劇団東少は、どんなカンパニーですか?
渡辺「ここ何年か子供たちがたくさん出演するようになって、稽古場も賑やかですごく大変ですけど、でもそこが東少の良さで、稽古中から笑いの絶えない明るいカンパニーなので、それがそのまま舞台に乗っかっていて、やはり出ている人たちが楽しまないとお客さまにも伝わってしまいますよね。子供って正直なので、違うと思うと『あれ何?』ってそのまま声に出したりもするので、嘘のないお芝居ができたらと思います」
―――キッズの話が出ましたが、須藤さんは今まで多くの子供たちとの作品作りや、過去の活動など様々な経験があり、そういった活動が活かせる現場なのかな、とも思いました。初めましての方や子供たちとの接し方などリーダーとして心がけていることは?
須藤「私は甥っ子と姪っ子がいるので、子供と触れ合うことには慣れてる方だと思うんですけど、でもお仕事現場は違います。この間も小学生や中学生の子と一緒にお仕事させてもらいましたが、子供扱いしてはいけないなと。たぶんそれを嫌う子も中にはいらっしゃるだろうなと思うから、適度な距離感を保てたらいいなと思っています。今回はどうしましょうね。役みたいにツンツンしてると思われないように良い距離を見つけていきたいです(笑)。東少作品に出られる方々はどうですか?」
渡辺「普段やっている現場にも子役はいますが、そっちの子たちはとても教育されていて大人なんですよ。お芝居も歌もダンスも飲み込みが早くて、めちゃくちゃ上手な子たちが多いんですけど、東少さんはいい意味で真っ白なんです。小学校みたいな感じで、わんぱくな子が多くて、いい意味でも悪い意味でも真っ白なので、僕もいつも大人として一線引かなきゃなとは思うんですけど、つい飲み込まれちゃって、僕の楽屋にはいつも小学生がいる(笑)。かわいいですよ。今回こそは、ちゃんと大御所感出していきたい(笑)」
―――夏休みのファミリーイベントということで作品にちなんで、家族との夏の思い出のお話をお伺いしたいです。
渡辺「もうお仕事をやってたよね」
須藤「やってましたね。小学生からお仕事をしていたので、家族で出かけることは無くなっちゃいましたが、ずっと家族が舞台やライブを観に来てくれて。それこそ今回は母が姪を連れて来たいという話になっていて楽しみにしています」
――― 須藤さんは“成長を見せる夏”ですね。
須藤「そうですね。私はもうそれが普通のことになっていますが、母にとっては、おそらく娘の成長が見られる機会だったのかな」
渡辺「僕は小さい頃、夏は海に旅行へ行った覚えがあります。親子で観劇って素敵なイベントですよね。この作品を観に来たお客さまが、これから夏の思い出に東少作品を観ることが習慣になってくれればいいなと、いつも思っています。
コロナ禍が明けて、前回中止になった『眠れる森の美女』の三越劇場での公演をできるチャンスをいただいたので、より多くの方に来てもらいたいです。そして来た時よりも笑顔で帰っていただいて、行って良かったと思ってもらえる、金額以上のものをお客さまに提供できたらと思います。1日1日大切に演じます。劇場でお待ちしております!」
須藤「作品のお話をして長年愛されている作品だとあらためて実感し、より一層、大切にお届けしなきゃなっていう気持ちになりました。ファミリーミュージカルということで、子供たちのこれからの夢や希望に繋がるように、観に来てくださった方の心をひとつでも動かせるような作品を作っていきたいと思っております」
(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

須藤茉麻(すどう まあさ)
1992年7月3日 生まれ、東京都出身。2004年に『Berryz工房 (ハロー!プロジェクト)』としてデビュー。2007年第58回NHK紅白歌合戦に初出場。アジアソングフェスティバル新人賞受賞するなど海外でもコンサートを開催し、国内外問わず人気を博す。11年の活動中に、シングル36枚、アルバム8枚をリリース。Berryz工房の活動を経て、現在は演劇を中心に活動中。主な作品に、舞台『海街diary』、ミュージカル『SUNNY』、舞台『幕が上がる』主演、他。

渡辺和貴(わたなべ かずき)
1985年9月13日生まれ、三重県出身。高い身体能力を生かし、多くの舞台で活躍中。主な作品に、ミュージカル『忍たま乱太郎』シリーズ、 舞台『NO TRAVEL, NO LIFE』主役、朗読劇『モルグ街の殺人~最初の探偵デュパンの物語~』主役ほか。劇団東少では『孫悟空』孫悟空役、『シンデレラ』『眠れる森の美女』『白雪姫』『人魚姫』に王子役で出演。6月には舞台『誠之志士~近藤勇~』が控えている。
公演情報
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2025年 夏休みファミリー劇場 劇団東少公演
ミュージカル『眠れる森の美女』
日:2025年7月19日(土)~22日(火)
場:三越劇場
料:プレミアム席[特典付]5,800円 一般席4,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.tohshou.jp
問:劇団東少
tel.03-6265-7070(10:00~17:30/土日祝休)