
「劇団わ」が手掛ける人気シリーズ『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』。2021年に3部作の上演を予定していたが、新型コロナの影響で中止となった。リベンジ公演に向けて、前回から引き続き3作全てに出演する吉野哲平・青山太久・吉田菜都実・井坂仁美にインタビューをおこなった。
―――公演に対する思いや意気込みを教えてください。
吉野「2021年は座組全員が悔しい思いをしたし、お客さまも消化不良で終わってしまったと思います。今回はさらにパワーアップしたものを全力でお届けしたいです」
井坂「稽古が本当に大変だった印象は凄く残っています。ここにいる4人は前回と同じメンバー。もう一度作れるのが楽しみですし、4年分の経験を活かしてお届けしたいです」
吉田「個人的に、稽古をやって本番ができなかったのはこの作品だけ。心残りだったので、再演すると聞いて凄く嬉しく思いました。当時からのメンバーも新しいメンバーもいるので、今回出演しないみんなの思いも背負って頑張りたいと思います」
青山「チケットを買ってくれていたお客さまもたくさんいらっしゃった中で、シリーズ3部作全部が中止になりました。そこから4年たち、準備を着々と進めている中でまたやれるという実感が湧いてきています。ここにいる4人は前回と同じメンバーなので、4年分の思いを乗せて挑める。よりパワーアップした作品になると思います」

―――稽古が大変だったということですが、当時の思い出を教えていただけますか?
井坂「3作同時に稽古が進んでいくので、全作に出演する私たちは今何をやっているかわからなくなる(笑)。再演にあたって、またあの日々が始まるんだ、気を引き締めなきゃという緊張もあります」
吉野「確かに、大変さを知っているので稽古に臨む気持ちも少し違うかも(笑)。でも、かなり楽しんでやれていた思い出があります」
吉田「私は武器がそれぞれ違ったのでそこで判断していました(笑)」
青山「僕はプロデューサーとしての目線だけど、稽古スケジュールを立てるのが大変でした。あと、僕は元々ミュージカル出身なので、長い舞台の経験はあるけど、この作品は3作で6時間半くらいの台本があるんですよね。改めて考えると大変だったけど、それを乗り越えた後でお客さまに届く感動があるし、やりがいを感じます」
―――君の笑顔シリーズの魅力、演じる役について教えてください。
井坂「『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』は劇団わの代表作だと思っています。それを2・3と作っていくのは大変だしリスキーだと思うんですが、さらに3部作セットでお届けしている。参加するのはプレッシャーを覚えます。全作通して観ることで気づくつながりもあるので、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。私が演じるモイラも、それぞれで表情が違ったり、成長の過程が見えたりするのが演じていて難しいけど楽しい。あとは青山さん演じるアトロ様とどう絡んでいけるか模索したいです」
青山「たぬきの神様ときつねの神様の対決で、僕と井坂さん、哲平さんとなっちゃん(吉田)がペアの役。僕はスーツ刀男子みたいな感じなので、殺陣が魅力になったらいいですし、井坂さん演じるモイラとの掛け合いもコミカルな部分があって楽しいと思います。シリーズ物って公開が半年くらい開くことが多いですが、僕は映画でも漫画でも続きが待てず、早く続きが観たいタイプ。この企画は物語自体の力もあるけど、すぐに続きが観られて、全作で盛り上がれるのがいいところだと思っています」
吉野「タイトルに“君の笑顔”とあるように心から笑顔になれる作品です。全作内容が濃くて、1作ずつしっかり楽しめます。僕が演じるクロさんは神様だけど人間臭くて、一番人間に近いんじゃないかと思うキャラ。クロさんの人間性、クロさんとアトロ様の殺陣は観ていただきたいポイントです」

吉田「凄く王道な作品で、キャラクターもみんな個性的。舞台を普段観ない方やお子さんも楽しめる作品になっていると思います。色々な人に観ていただきたいです。役については、色気を頑張って出すところから。前回、たぬきチームは哲平さん中心にファミリー感が凄く出ていて楽しかったので、今回もチームとしての魅力を押し出せると思います」
―――この4年間の成長や思いを乗せて挑みたいというお話がありましたが、今回の公演で特にパワーアップさせたい部分はありますか?
青山「個人的なことになりますが、4年の間に人として様々な経験をしました。人生で一番くらいの悔しさや辛さから立ち直り、4年前よりさらにお芝居や演劇が好きになったと思います。一度やったような気持ちでまた取り組めるので、前回の稽古と4年間、今回の稽古を重ねて、座組としてのファミリー感も増したらいいなと思っています」
井坂「前回は台本と殺陣で頭がいっぱいで、台本に沿ってやるだけで精一杯でした。でもこの4年、劇団わにも何作か出演して、青山さんや演出の(村上)芳さんとも色々お話しできるようになりました。私は遊びの部分が好きなので、怒られない範囲でもっと遊びを作っていきたいし、お客さまにも楽しんでもらえるといいなと思います。青山太久をステージ上で困らせたいです!」
一同「(笑)」
吉野「4年前は一気に3冊の台本を渡され、周りが見えなくなる状況もあったなと感じています。今思うと、コミュニケーション不足な部分もあったと思う。今回は自分の中に少し余裕を持ちながら、人間としての成長も活かして取り組みたいです」
吉田「あの時はとりあえず稽古場に行って、やって、終わったみたいな。会話しているけど頭の中であれこれ考えている瞬間が多くて。圧倒的にセリフ量の多い哲平さんに対して、内心“がんばれ”と応援していました」

一同「(笑)」
吉田「今回は支えていけるように頑張りたいなと思います。前回印象的だったフィードバックが“色気がない”だったので、前回よりも大人を目指して頑張りたいです」
―――注目ポイント、楽しみなシーンを教えてください。
井坂「“江戸バク”(バック・トゥ・ザ・君の笑顔〜お江戸でござる~)でストーリーが進む中、私演じるモイラが1人だけ全然違うことをしているシーンがあって。そのシーンをどう進化させるか今から楽しみです」
青山「井坂さんの役は、セリフを喋っていない時が可愛い(笑)。もちろんストーリーも追ってほしいけど、見逃さないでほしいところです」
吉田「シーンというより、“この役のこの一言が好き”というところが多いです。ちょっとしたところも注目していただけると楽しいと思います」
吉野「自分の役は芯の通った言葉が多いので、言葉一つひとつが注目ポイントかなと思います。殺陣の手数も多いし、君・江戸・ロボで殺陣の色が違うのが見どころだと思います。あと、全体的に可愛げのあるキャラが多いですね」
青山「ストーリーとしては、それぞれの主人公が“好きな人に笑顔になってほしい”という思いを持っていて、普遍的な愛が描かれているのが魅力です。あと、この4人が演じる神が語る運命論。3部作を通して普遍的だけど、それぞれの認識が変わることでガラッと印象が変わる部分もある。また、田中紀彦というキャラが全時代に巻き込まれるんですが、彼の成長は間違いなく見どころ。大平(智之)は非常にいい役者だし、役としてもいい。それぞれに主演とヒロインがいるけど、3部作通しての主役はやっぱり田中かなっていう美味しいポジションです」
―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。
井坂「4年ぶりということで、楽しみにしてくださっている方も多いと思います。また、『観に行くよ!応援チケット』という劇団わの新システムが始まっていて、公演までの時間も楽しんでいただけるようになっています。お客さまの期待を超えられるようなものを作りたいですし、座組がより仲良くなって作品にもいい影響があると思う。ぜひ劇場に足を運んでください」

吉田「観てくださる予定だった方からも、『楽しみ』、『嬉しい』という声をいただきました。当時の思いなども持って楽しい公演にしたいですし、私たちも楽しみ、お客さまにも笑顔になって帰っていただけたら嬉しいです」
吉野「4年前、座組も劇団わもお客さまも悔しい思いをしたと思います。全部背負い、お客さまの期待をさらに超えたものをお届けしたいですし、僕らも最高に楽しんで作品を作りたいです」
井坂「前回中止になった時、青山さんが泣いたんです。それが辛くて忘れられなくて。その思いも背負わなきゃと思いますし、今回は泣いたとしても嬉し涙を流してほしいと思います」
青山「4年ぶりに公演ができることを感謝してやっていきたいです。コロナ禍で一度演劇を取り上げられたことで、感謝しながらやりたい気持ちが強くなりました。観に来てくださる一人ひとりの想いが嬉しいし、お客さまが絶対損しないように面白いものを作ろうという覚悟にも繋がっている。4年前より素晴らしいものになるという確信があります。自分自身も無理せず、楽しんでやりたいと思っています。公演後にイベントもありますので、それもよろしくお願いします!」
(取材・文:吉田沙奈 撮影:間野真由美)

プロフィール

吉野哲平(よしの・てっぺい)
俳優・パフォーマー。心-Shin-所属。主な出演に、舞台『Sing Equally under the Sky-DIVISION-』、『北斗の拳-世紀末ザコ伝説-』、『BURRRN!!!~無稽・本能寺~』など。

青山太久(あおやま・たく)
俳優・演出家・殺陣師・コミュニケーショントレーナー。劇団わ主宰。身体能力を生かした殺陣を得意とし、幅広い演技力に定評がある。近年の演出作に、劇団わ ミュージカル『Happy Spell』など。

吉田菜都実(よしだ・なつみ)
東京音楽大学声楽科を卒業後、ミュージカルからコメディ、ストレートプレイまで幅広くこなす。主な出演に、ミュージカル『暁のヨナ』、舞台『時空警察ヴェッカー1983・改』など。

井坂仁美(いさか・ひとみ)
舞台を中心に活躍中。仮面ライダーGIRLSのリーダーとしてグループを牽引。主な出演に、『風都探偵 The STAGE』、舞台『志立彩色女学院アイドル科』など。
公演情報
劇団わ 本公演
『バック・トゥ・ザ・君の笑顔』3部作
日:2025年7月17日(木)~8月8日(金)
※三部作上演・イベントあり
場:中目黒キンケロ・シアター
料:10,000円(全席指定・税込)
HP:https://gekidan-wa.tokyo/back-to-the-kiminoegao2025
問:劇団わ mail:cs@gekidan-wa.tokyo