
チャイコフスキー三大バレエの1つである『眠れる森の美女』。2023年、この古典作品に東京バレエ団・団長 斎藤友佳理による新演出を加えたニュープロダクション版を発表し、大きな反響を巻き起こした。
そんな斎藤版『眠れる森の美女』が早くも再演される。日替わりで5組のオーロラ姫&デジレ王子が出演するが、その中で今回初めて王子役で出演するのがファーストソリストの大塚卓だ。海外のバレエ団で研鑚を積んで帰国した後、2020年に東京バレエ団に入団。6年目となる大塚はまさに伸び盛りにあるダンサーだといえるだろう。
諸先輩に囲まれながら初めてのデジレ王子役。プレッシャーはあるのだろうか。
「皆さんとは他の作品でご一緒しているので、プレッシャーはあまり感じないです。各々のペアで個性も違いますから、先輩方の踊り方を参考にしても、自分たちの味は出していきたい。周りからは競っているように見えるかも知れませんが、そんなこともないですよ。そもそも競えるレベルにないし(笑)」
笑いながら謙遜する大塚だが、やはり他と競うだけの実力があるからこその抜擢だろう。そんな大塚から見て、斎藤による新演出版の魅力はどこにあるのか。
「新演出版は斎藤さん自身がずっと踊ってきて腑に落ちなかった部分の違和感をなくすように作られています。見どころは2幕で登場する“パノラマ”という背景が動いていく仕掛け。見ていて凄く綺麗でした。オーロラ姫の振りにはさりげなく難しい部分が結構あります。横から見ていて僕ならやりたくないと思うことも(笑)。デジレ王子はシンプルだけど、だからこその難しさがあります。ごまかしがきかないし、王子は頑張って踊っているように見えてはいけませんから」
また、大塚は観客の満足度の高い演出にもなっていると、確かな手応えを感じているようだ。
「古典かつ大作なので、途中で飽きてしまう人もいるわけです。でも斎藤版は観ていて飽きないと思います。演出だけでなく場面の転換や小道具1つとっても凄く工夫しています。それに主役だけでなく周囲のダンサーにも高い技術が求められますが、東京バレエ団にはそれが出来るダンサーが揃っている、だから作品としての満足度が高いんです。さらにハッピーエンドなので幸福感も高いです。何よりこの作品は誰も死なないんですよ。眠ることはあっても(笑)」
(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

大塚 卓(おおつか・すぐる)
千葉県出身。5歳よりバレエをはじめる。第43回ローザンヌ国際バレエコンクールでセミファイナリストへ進出した他、受賞歴多数。2015年、奨学金を得てハンブルク・バレエ学校へ留学。卒業後、クイーンズランド・バレエ団に入団し、クラシックバレエ作品からリアム・スカーレット、カルロス・アコスタ、イリ・キリアンらの現代作品にも出演。2020年4月、東京バレエ団へセカンドソリストとして移籍入団。2021年、ソリストに昇進。
公演情報

東京バレエ団『眠れる森の美女』全3幕 プロローグ付
日:2025年4月24日(木)~29日(火・祝)
※他、地方公演あり
場:東京文化会館 大ホール
料:S席15,000円 A席12,000円 B席9,000円
※他、各席種あり。詳細は団体HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp
問:NBSチケットセンター
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(平日10:00~16:00/土日祝休)