昨年、芸能生活50周年を迎えた剣幸。宝塚歌劇団⽉組 男役トップスターとして活躍し、退団後もミュージカル、ストレートプレイ、そしてコンサートと精力的に活動。今なお新たなファンを獲得し惹きつけている。そんな剣が挑むのが、ジャンルを問わず演じきる実力派俳優 小林タカ鹿との二人芝居。舞台は大正14年から昭和16年にかけての浅草。とあるホテルの一室で逢瀬を重ねる2人の俳人が紡ぎ出す物語を、その生き様と時代の流れをキャバレー音楽を絡めて描く。剣は新進の女性俳人・五所踏⼦を演じる。
「二人芝居は好きですね。物語の進行や時代背景によって2人の関係性がどのように変わっていくのかに惹かれる作品です。五所踏⼦は女性だからこその“縛り”から抜け出そうという情熱を持っている人です。“何かを壊して前に進む”、そんな感覚を持っている彼女の姿を、観ている人に伝えることができればいいなと思います。全体として暗さを感じさせる作品ですが、ショーアップした場面もありますから、その対比も楽しんでもらえると思います」
パートナーの小林とは初共演。小林は五所が師と仰ぐ鏡千⾥を演じる。
「私の中ではもうピッタリの俳優さんです。立ち姿から世の中の見方、彼が持っている斜めな感じ全てがピッタリですね。また声がいいんです。あの声で俳句を詠まれたら、それだけで会場がほわっとするんじゃないでしょうか」
短歌番組への出演経験がある剣。俳句と短歌はどこか繋がる部分があるのではないだろうか。
「3年間番組の司会をさせていただきましたが、課題があって歌を詠まないといけないんです。でも少しも上達しなくて(笑)。当時は日頃の出来事を常に短歌に繋げられるようにしていましたが、才能が無いなと思いました。俳句は17文字の制約もあるし、季語も入れなくてはいけません。短歌も俳句も、感性がとても重要ですね」
徐々に戦争へと突き進む社会の中で、女性として、さらに俳人として抗い生きた五所。彼女を通して、剣はどんなメッセージを伝えたいのか。
「かつて不自由な時代に、先駆者として抗い切り拓いた女性がいたことを今の若い人たちに目を向けてほしいです。そして今のような便利過ぎる世の中にちょっと疑問を持ってほしいと思います」
(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)
プロフィール
剣 幸(つるぎ・みゆき)
富山県出身。1980年代に宝塚歌劇団月組の男役トップスターとして活躍。『ME AND MY GIRL』は宝塚史上初の1年間の続演となる。近年は、セルフプロデュース「kohibumi concert」、「NHK 短歌」司会、ラジオパーソナリティ(ニッポン放送、FMとやま)、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』吹替など、活動の幅を拡げている。舞台出演に、『ハロー・ドーリー!』、ミュージカル『エリザベート』、『この森で、天使はバスを降りた』、『Sametime, Next Year』、8時間に及ぶ大作『繻子の靴』など。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞 優秀女優賞受賞。
公演情報
ナイト・ウィズ・キャバレット
日:2025年2月13日(木)~23日(日・祝)
場:シアターグリーン BOX in BOX THEATER
料:11,800円(全席指定・税込)
HP:https://night-with-cabaret.com
問:『ナイト・ウィズ・キャバレット』製作委員会
mail:info@night-with-cabaret.com