軽妙なやり取りに笑い、温かい気持ちで劇場を後にできるはず 毎回の違いを自分たちも思い切り楽しめる、お祭りのような雰囲気がトローチの魅力

軽妙なやり取りに笑い、温かい気持ちで劇場を後にできるはず 毎回の違いを自分たちも思い切り楽しめる、お祭りのような雰囲気がトローチの魅力

 辻親八、東地宏樹、桐本拓哉、小林さやかによる演劇ユニット「トローチ」。第7回公演は、作・演出を太田善也が手がけ、一柳みる、伊藤麗、今井勝法、松尾英太郎、横井翔二郎、荒波タテオらがゲスト出演する。とある田舎町で大晦日の夜に起きた事件を描く『夜明けのジルバ〜漫画喫茶殺人事件〜』について、辻親八、東地宏樹、小林さやかにインタビューを行った。

―――ミステリは劇団トローチにとって初めてのジャンルかと思います。挑戦しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

東地「第1、2回目の公演で作・演出をやってくれた太田(善也)くんに相談したら『オリエント急行殺人事件』みたいなものをやりたいと言われたのがきっかけです。トローチは1年半に1回しか公演をしないこともあって、いろいろなものをやりたいと思っています。1つのものにとらわれずに挑戦したいという意味で、ミステリは確かにいいなと思いました」

小林「『オリエント急行殺人事件』はそれぞれのキャラクターが粒立っている印象があります。トローチは客演に魅力的な方々をお迎えしていますから皆さんに光が当たるだろうし、太田さんの作品ならコメディ要素もあって面白いだろうと思いました。気楽に見てもらえそうで楽しみです」

辻「僕は劇団ヘロヘロQカムパニーで横溝正史の金田一シリーズに出演しているんです。謎解きをしていく時って、出ていても毎回楽しみ。今回もお客様に推理しながら楽しんでいただけたらいいなと思っています」

東地「推理っていうと、コロンボみたいに最初から犯人がわかっているものと犯人がわからないものがある。今回の作品は誰が犯人かわからないところにも面白みがあると思います」

―――ファンの皆さんはチラシのイラストからそれぞれの役を想像しているかと思います。ネタバレにならない範囲で演じる役の印象や魅力を教えてください。

小林「見ての通り、東地くんは名探偵(笑)」

東地「そうですね。大晦日から年明けまでの話で、大雪の中漫画喫茶に閉じ込められた人たちがいて、事件が起きる。みんなちょっと怪しげです」

小林「チラシではいろいろな衣装を着ているんですが、実際は舞台が田舎なのでこの通りではないかもしれません。桐本(拓哉)なんかはちょっと謎ですよね。少し現実離れしたキャラクターたちが出てくる感じになると思います」

東地「太田くんが『こんなふうにしたい』と絢爛豪華なキャストが着飾って並んでいる『オリエント急行殺人事件』のチラシを見せてくれたんです。すごくいいなと思ったものの、撮影するとなると衣装代が大変。そこでさやかちゃんのお知り合いでもある漫画家の大久保ニューさんに頼んだら快く引き受けてくれて、今までにない可愛らしいチラシになりました」

辻「僕らが言うのもなんですが、チラシの評判がすごくいいです(笑)」

小林「チラシの話になっちゃった(笑)。今回の客演の皆さんは初めましての方ばかり。いろいろなお芝居を見て、出てほしい人を探して声をかけました。今井勝法さんや荒波タテオくんは舞台を見て『絶対出てほしい!』と思って、松尾英太郎さんも、主宰しているシリコンのお芝居が本当に面白くて『ぜひ役者で』とお願いしました」

東地「もともと知り合いだったわけではないので、僕らもフレッシュだけど、客演の皆さんはドキドキしてるんじゃないかな(笑)」

―――初めましての方が多い中で、キャラクターや配役はどのように決めたんでしょうか。

東地「台本を書く前に一度みんなで集まりました。作・演出の太田くんが皆さんとお話しして、人となりや雰囲気を掴んで書いてくれましたね」

小林「あとは、私たちがみなさんのお芝居を見た時の印象を伝えて」

東地「太田くんは僕らがキャスティングした皆さんのお芝居も見に行ってくれました。それが役に反映されていると感じました」

辻「才能だよね」

小林「伊藤麗ちゃんも初めましてですが、明るくて太陽のような女優さんです」

東地「横井(翔二郎)くんは前回に引き続き出てもらいます」

小林「人気者だけど芝居にストイックなんだよね」

東地「チラシのビジュアルから分かる通りギターを持っています。ファンの方は期待していただいていいと思います」

―――台本を読まれた印象、太田さんの作品や演出に感じる魅力はいかがでしょう。

小林「太田くんの台本はセリフが面白い。コメディがやっぱり上手で、掛け合いで笑わせる才能があります。でも、本人は真面目でもあり暗いところもあり、温かいお父さんでもある。心の傷を癒して励ましてくれるような作品が描ける人です。1作目、2作目よりそこが色濃くなっているなと感じました」

東地「今回のセリフを必死に覚えながら、無駄な接続詞がないと思いました。すごく推敲されている。10年前がどうだったかはっきり覚えていないけど、僕のセリフは特に削ぎ落とされてるなと思い、太田くんの成長を感じてすごく嬉しくなりました」

辻「見落としている面白い部分がまだたくさんあるんだろうと思います。一度ざっと読んで、少し時間を空けてから改めて読むと、自分のセリフ以外でも掛け合いの深さを感じる部分もあって。このキャストが読んだらどうなるのかワクワクしています。みんな出自が違って演技のスタイルもバラバラですから」

小林「そうですね。一柳みるさんは劇団昴の素晴らしい女優さんですし」

東地「みるさんが出演するのは豪華だよね」

―――キャストの皆さんについて、楽しみなことや期待していることはありますか?

小林「とにかく個性豊かな方々が揃いました。女性2人は強いというかすごく芝居にストイックな印象があるので、役に真摯に向き合ってくれると思います。男性陣は本当にタイプがバラバラ(笑)。それぞれの魅力が一番いい状態で出るように太田くんが演出してくれると思います」

東地「そうなんですよ。毎回いい人ばかり集まってくれるので」

辻「楽しみですよね」

―――今回の見どころになりそうな部分、ご自身が演じるキャラクターのポイントになりそうな部分はどこでしょうか。

東地「単なるミステリとコメディではなく、現代に通じる問題も描かれているので、そこは見どころだと思います。見ている方もどこか思い当たる節があるような登場人物が揃っています。優しい人もいれば、昔こんな経験をしてこうなったとか、自分なりの正義で生きているけど側から見たらどうなんだとか。いろいろ考えさせられる作品です。自分の役についてはセリフが多いので、噛まないように自分の中に叩き込みたいです。僕が演じるのは面白くもありかっこよくもあるキャラ。名探偵は憧れの存在でもあったので、気合を入れてやりたいです」

小林「ミステリでコメディだけど、人間関係における様々な問題が描かれています。いろいろな形の正義があり、それがうまく噛み合わないから誰かが傷付いて、人を攻撃してしまったり自信をなくしてしまったりもする。でも、そんな人の背中を押せるような作品でもあると思います。見た後に少しでも勇気を出して、今年1年を元気に過ごしてもらえる作品になると思います」

辻「田舎って平穏そうでいろいろあると思うんですが、そのエスプリが効いている作品です。初稿を読んだ時も、これは面白くなるだろうなと感じました。横溝正史などの作品をやっていても、土地の背景や人の繋がりをすごく細かく描いているんですよね。僕の好きなテイストだなと思いました」

小林「架空の街の架空の方言が出てくるので、それもちょっと注目してもらえたら」

―――初めてトローチを観る方に伝えたいユニットの魅力、特色はありますか?

東地「挨拶にもよく書きますが、基本的には自分たちが見たい・見て面白い芝居を作りたいと思っています。そのためには、いい脚本・演出家と力を貸してくれる客演陣、スタッフさんが必要。いつもそうですが、今回も今回も素晴らしい方々が集まってくれました。魅力としては、僕ら4人は変わらないけど、毎回違う集団に感じるくらいカラーの違う作品を作っていること。毎回文化祭やお祭りだと思い、自分自身が楽しむ気持ちでやっている。1年半の思いの丈をぶつけています」

小林「おじさんおばさんの部活動みたいな(笑)」

辻「『トローチってどういう路線を狙ってるの?』と聞かれることがあるけど、『毎回違うよ。決めなくていいんじゃないの』というスタイルでやっています。実際、今回は7回目ですが毎回違うものになっているし、決まったテーマがないのがいいと思っていて。毎回それを探していくのがトローチの魅力。新作って怖いところもあるけど、楽しみなほうが大きいですね」

―――最後に、楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

小林「この1年を勇気と自信を持って生きられるような作品になると思っています。ぜひ、元気になりにいらしてください」

東地「楽しんでもらえたらということしか考えていないです。終わった後にいいお酒を飲んでもらったり、楽しかったなと些細な幸せを感じてもらえたら、それだけで僕らはやった甲斐がある。誠心誠意、今できる精一杯をしたいと思うので、ぜひ騙されたと思ってきてください(笑)」

辻「災害などいろいろありますが、先日能登のニュースを見ていたときに、寄り添っている人たちが明るかったんです。もちろん辛いこともあるけど、人が集まると明るくなるんだと思いました。劇場に来てくださった方に、『人間って捨てたものじゃないぞ』と思っていただけたら。トローチの芝居ってそれでいいと思う時もあります。ぜひいらしてください」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

辻親八(つじ・しんぱち)
1954年10月20日宮城県生まれ、俳優・声優。主な出演作に『ハリーポッター』シリーズ(吹替)/シリウス·ブラック、トイ・ストーリー4(吹替)/スリンキー、アニメ『宇宙兄弟』、『フェアリーテール』、舞台『追憶のアリラン』(劇団チョコレートケーキ)、『悪魔の手毬歌』劇団ヘロヘロQカムパニーなど。

東地宏樹(とうち・ひろき)
1966年5月26日東京生まれ。俳優、声優、ナレーター。主な出演作は、吹き替え『メン・イン・ブラック』のウイル・スミス、『プリズンブレイク』マイケル役、『アバター』のジェイク役、『スーパーナチュラル』のディーン役など。アニメ『葬送のフリーレン』ハイター役、『黒執事』バルド役、『PSYCHO-PASS』須郷徹平役、『ダイヤのA』片岡鉄心役など他多数。

小林さやか(こばやし・さやか)
10月12日札幌生まれ。女優、声優。大沢事務所、エンパシィ所属。主な出演作に映画『私の知らないあなたについて』、アニメ『サザエさん』、『私の頭の中の消しゴム』(吹き替え)、舞台『雨とベンツと国道と私』(モダンスイマーズ)、『黄色い封筒』(青年座)など

公演情報

トローチ第7回公演 
『夜明けのジルバ ~漫画喫茶殺人事件~』

日:2025年2月23日(日・祝)~3月2日(日) 
場:赤坂RED/THEATER
料:5,500円 割引回[2/24・25、2/26・28 19:00、3/1 19:00] 4,900円 学生3,500円 ※要学生証提示
  (全席指定・税込)
HP:https://troche.asia
問:トローチ mail:troche.info@gmail.com

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