8年間に渡り、愛されてきた2人ミュージカルが待望の続編! 「O.G.」が解散!? すれ違いと葛藤を経て再会した2人が向かう復活のステージ

8年間に渡り、愛されてきた2人ミュージカルが待望の続編! 「O.G.」が解散!? すれ違いと葛藤を経て再会した2人が向かう復活のステージ

 新宿・歌舞伎町の場末のキャバレーから一躍、スターへの夢を叶える2人のシンガー、スミ子とカズエを、旺なつきと阿知波悟美が熱演した2人だけのミュージカル『O.G.』。その感動のストーリーと圧巻のステージは、2016年の初演以来、幾度もの再演を重ねながら多くの観客を魅了してきた。そして2025年。待望の続編の幕が上がる。
 紅白出場を果たすなど、一気にスターダムを駆け上がった、スミ子とカズエだったが、コロナ禍もあって忘れ去られ、カズエは失踪。事実上の解散状態となってしまった。そしてある日、スミ子が営む小さなスナックに突如、カズエが現れる。ギクシャクとした空気の中、少しずつ埋められていく2人の空白の日々。友情、家族、そして愛する歌への思いが語られる時、2人はどんな新たな一歩を踏み出すのか?
 稽古に入ったばかりの旺と阿知波の2人に本作への意気込みを聞いた。


―――待望の続編が発表されました。率直なお気持ちを聞かせてください。

阿知波「とても有難い事だと思っています。元々、『O.G.』という作品が生まれたのは、ロムさん(旺)との舞台袖での雑談からでした。当初は割と簡単にやれるような気がしていましたが、公演ができたのは雑談から5年もの年月が経ってから。本当に産みの苦しみをずっと味わう感覚でした。それでも作品が出来上がってみると、多くのお客様に観て頂き、再演もできました。そして沢山の方から『その後のカズエとスミ子が観たい』という声を頂いて、そんなに簡単に出来るものではないよと思っていたところに、こうやって続編が決まったことは、有難い以上の思いがあります。物語には『ミラクル』という言葉が何度も出てきますが、私達にとってもミラクルな出来事です」

旺「今思うと、自然と『O.G.2』へとつながる流れになっていたのかもしれません。最初は『いいね!やろうよ!』と能天気に構えていて、細かい色んな大変なことがあるなんて想像もしていなかった。でもアッチー(阿知波)は、公演を立ち上げるにはどうすればいいかを毎日真剣に考えてくれて、2人で日々の課題を必死にクリアしていって初演にこぎつけることができたんです。
 またゲストやスタッフ、色んな方が支えてくれて、『O.G.』は2016年の初演から最後の再演となった2024年まで、8年間かけて多くの方が愛してくれました。私も『続編が観たい』という声は耳に入っていたのですが、正直毎回の公演に必死で、あまりイメージ出来ていなかったんです。それがあるタイミングでNLTの製作部の方から『続編という方向性はありですか?』と相談されて、『それはありでしょ』と即答しました。アッチーとずっと一緒に頑張ってきて、彼女とまた新たな物語に挑戦できるならこんなに嬉しいことはないと」

阿知波「映画でもよくある話ですが、『1』はヒットしたけど、『2』はあんまりだったというジンクスがあるじゃないですか。それはやはり頭をよぎりました。1本目が評判良かったので、それを上回るものでないとやっても仕方ないと」

旺「私達の中でもそこが一番の不安だったよね」

阿知波「とにかく拙速にならずに、しっかりとした本を書いてもらってからじゃないとスタートできないよという話になり、脚本のまきりかさんと相談しながら、1年半かけて第5稿まで練り直してもらいました。でも脚本はあくまでも設計図であり、丈夫な家を建てるためには、私達役者が丈夫な柱にならないといけない。『2』が決まった時点から体のメンテナンスに入りましたよ」

旺「『2』は前作から9年経っていますから、物語でも実際の時間の流れに合わせて、容姿や動き、醸し出す雰囲気も9年後の世界の話です。演じる私達2人、そして前作を観て下さった方も9歳年を取っている。それでも頑張って生きていきましょうよというメッセージが届けられたらと思っています。テーマはずばり、『それでも生きていく!』です」

―――前作も含め、脚本の段階から積極的に関わっていたそうですね。

阿知波「作家にはまずコロナ禍は外せないねと伝えました。ほぼ世界大戦と言っても過言じゃないぐらいの出来事でしたから。あと、年を取っても力強く生きていくというテーマは変えないで欲しいと伝えました。作品をご覧になった方の背中が少しでも元気に真っすぐ伸びて帰って頂けたらなという思いからです」

旺「普段、私は脚本に対しては口を出さないのですが、この『O.G.』に関しては、こうじゃないか、ああじゃないかと皆で創っていく感覚があります。脚本だけでなく、演出、音楽、振付の皆が集まって意見を出し合う。一般的にはタブーかもしれませんが、このチームに関しては皆で一緒につくる。ある意味、こんなに贅沢に創作できる環境は他にはないですね」

―――前作では、スターダムへ駆け上がった2人が、年月を経て疎遠となり、突然の再会から動き出す時間がどう描かれるのかが気になります。

阿知波「38年間も一緒に過ごした2人が離ればなれになって、その間に何があったのかはお互いに知らないんですね。そこに『久しぶり!』と能天気に姿を現したカズエに対して、腹立たしく思っているスミ子がいてというところから物語は始まるのですが、それでも許し合えるものが2人の中にあるとしたら、いったいそれは何なのか?という核心を描くためにはどうするかを必死に模索しているところです」

旺「新作だからと特に構えなくていいのは、きっとスミ子とカズエの2人の蓄積があるからなんでしょうね。どんなボールが来ても取れるんじゃないかという不思議な安心感。稽古の中でも前作のあのシーンとつながっているなという感覚を味わっている面白い経験が出来ています」

阿知波「初演から再演含めて215ステージも踏めばそうなりますよね。そりゃどんな変化球でもジャンプしてでも取りますよ(笑)」

―――チラシのキービジュアルもショーを彷彿とさせる仕上がりですね。

旺「これはスミ子とカズエというよりは、旺なつきと阿知波悟美の2人が役者としてのオンの面と、個人としてのオフの面を表現したものになっています。スミ子とカズエを演じている役者にフォーカスを当てたイメージですね」

阿知波「私としては、表は何かに挑む感じでハリウッド映画やミュージカルショーをイメージしたもの、裏ではオフの2人がパーティーで再会したイメージをコンセプトにしました。このチラシが多くの方の目に留まってくれたら嬉しいです」

―――本作から観劇される方にも配慮があるそうですね。

旺「そうですね。前作にあたる部分、これまでの2人に何があったかを映像で説明しているので、今回から『O.G.』をご覧になる方も置いてけぼりにしない配慮がされています」

―――最後に読者へメッセージをお願いします。

旺「一度きりの人生の中で、皆それぞれ背負っているものが違いますが、その背負っているものも含めて本作を観て、次の一歩を迷わず自信を持って踏み出して欲しいと思います。その原動力になれたらこの作品をやった意味があると思うんです。是非、私達2人の心意気を見届けにいらしてください(笑)」

阿知波「観たあとに背筋が伸びて、1,2回ぐらいスキップして帰ってもらえたら嬉しいです。芝居は刹那なものですが、生きる為のヒントが沢山含まれていると思うんです。わざわざ時間とお金を使って観に来て下さった方に少しでも何かを持ち帰ってもらえる舞台にします。是非、多くの方のご来場をお待ちしております」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

旺なつき(おう・なつき)
1977 年の入団から8年間宝塚歌劇団で個性派の男役として活躍。退団後、ミュージカル、ストレートプレイを問わず数々の舞台で主演をつとめる。1993 年、舞台『コレットコラージュ』で文化庁芸術祭賞受賞。2014 年、『マレーネ』で紀伊国屋演劇賞・個人賞受賞。 代表作に『ジュディ・ガーランド』、『鬼平犯科帳』、『女系家族』、『桜の園』、『劇場(汝の名は女優)』、『リア王(女優版)』、『ジェーン・エア』などがある。

阿知波悟美(あちわ・さとみ)
日本工学院卒業後、故・賀原夏子主宰の劇団NLTに入団。28歳の時に『レ・ミゼラブル』初演オーディションに合格しテナルディエ夫人で出演する。2010 年にミュージカル『キャンディード』で読売演劇賞優秀女優賞受賞。 『Musical O.G.』で紀伊国屋演劇賞・個人賞受賞。代表作に『毒薬と老嬢』、『佐賀のがばいばあちゃん』、『レ・ミゼラブル』、『キャンディード』、『華岡青州の妻』、『ビリー・エリオット』、映画『スーパーの女』、テレビ『ひらり』、『金曜時代劇 新・半七捕物帳』、『火曜サスペンス劇場 九門法律相談所』、『適齢期』、『再婚トランプ』などがある。

公演情報

ミュージカル『O.G.Ⅱ』

日:2025年3月5日(水)~9日(日)
場:シアターサンモール
料:S席6,500円 A席5,000円 B席4,000円
  学生割引3,000円 ※要学生証提示
  視覚障害者割引4,500円 ※介助者は1名まで無料(全席指定・税込)
HP:http://www.nlt.co.jp
問:劇団NLT
  tel.03-5363-6048(平日11:00~17:00)

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