2011年に結成され、演劇公演を中心に活動している4人組 ふぉ~ゆ~(福田悠太・辰巳雄大・越岡裕貴・松崎祐介)。コメディ&ハッピーエンドな明るい作品への出演に定評のある彼らが、3~4月に上演される新作『CRIMINAL FOUR ―愛しき大悪党―』では一転して、クールな犯罪集団に扮する。今から10年後のパリを舞台に、表の顔は警察官のユーゴ(福田)、話術巧みな詐欺師のライアン(辰巳)、天才ハッカーのシモン(越岡)、脅威の身体能力を持つガスパール(松崎)のグループ「ル・ミラージュ」が、黒い噂のある市長候補をめぐる陰謀に立ち向かっていく、というピカレスクものだ。
福田「作・演出の山田(能龍)さんの作品は、シリアスなのにどこか笑えて、哲学的でもある。『僕らと一緒に何かできないか?』というお話をさせていただいたら、『ふぉ~ゆ~は普段、“明るい”とか“正しい”というイメージが強いから、逆に“悪党”というのはどうだろう? そういうふぉ~ゆ~を見てみたい』と、提案していただきました」
辰巳「山田さんの言葉に『いや、僕もそうなんです!』ってなりましたよ。僕は楽しいだけじゃなくて、観終わった後にグサッと刺さる何かがある作品も大好きなんです。だから普段のふぉ~ゆ~とは逆のものを、いつかやってみたいという思いが、ずっとありました」
越岡「犯罪集団ではあるけれど、弱い者ではなくて極悪人を相手にする人たちなので、『オーシャンズ11』みたいな感じですよね。みんなそれぞれ得意分野があって、その能力を活かして戦っていく」
松崎「一人ひとりが“個”を持っている、自分にはないスキルを持つ人たちが集まるという点では、アベンジャーズとも言えますよね。チームプレイでありつつ、個々にもすごい力と魅力があるという」
辰巳「ただ、それぞれがスペシャリストゆえに、実はみんなバラバラで、周りが『大丈夫か?』って思うようなチームでもあるかな。僕らは本当に仲がいいので、どうやったってチーム感が出るんですけど、逆にお互いを信じあえていない集団をどう演じるか?というのは、僕らにとってはチャレンジです」
“スーパー善人”と言われる(福田談)ほど、いい人揃いの呼び声が高いふぉ~ゆ~。それ故に、悪役へのアプローチは、稽古前からかなり考えているそうだ。
福田「僕は普段から、ふぉ~ゆ~のリーダーとしての立ち振る舞いには定評がありますけど(笑)、ユーゴもル・ミラージュのリーダーです。二足の草鞋の両極端といえる一番大変な所にいて、一番ぶっ飛んだ役だと思うので、その感じを楽しみたいですね」
辰巳「俳優は誰かになりきって目の前の人を感動させる仕事だけど、詐欺師はそれを悪い方向に振り切っていく。だから、人を騙してお金を取れるぐらいの演技力があり、人間の心理を突いていく詐欺師の役を、いつかやってみたいと思ってました。騙しているようで本音なのか、素でいるみたいだけれど素じゃないのか?とか、色々考えて演じたいし、心理学の本も読んでみようと思ってます」
越岡「シモンはIQが高くてキザで芸術家肌と、僕にはほど遠い役柄で、唯一合っているのは『方向音痴』(笑)。その設定がどう生かされるのかということと、賢い人を演技でどんな風に見せるのか?というのを探っていくのが、楽しみではあります」
松崎「ガスパールはサッカーが大好き。海外サッカーや選手に詳しくなれそうな感覚があります。あと身体能力が抜群ということで、自分に似るところを感じるけど、僕は昔に比べたらちょっと動けなくなってきていて……」
辰巳「老いを感じてる(笑)。ガスパールは“フーリガン”の元リーダーだから、相当血の気が多いので」
松崎「口よりも先に手が出ちゃうような人ですね。あと、ライアンとガスパールはよくケンカするんですけど、その関係性も見どころです。昔、僕と辰巳はリアルにケンカをして、半年間口をきかなかった期間があったので(笑)、そこはちょっと似ている所かな?」
越岡「多分シモンは、それをあまり真剣に捉えずに静観していそう、頭がいい人だから。『またこいつら、こんなことでケンカしてるよ』ぐらいに思っている……もしかしたら、それすら思ってないかもしれないね」
福田「ユーゴはリーダーとしてそこを上手くまとめるのか、逆にまとめ上げないのか、どうするのか?も見ものです。ふぉ~ゆ~のリーダーの仕事って、こういう(取材の)場で『僕がリーダーです』と言うことぐらいしかないんですけど(笑)、役の中から『リーダーの仕事とは?』を、見つけられたらいいかなぁと思います」
根っからの悪人というより、どこかに「本物の悪を許さない」という正義感を秘めている、ふぉ~ゆ~らしい悪漢になる模様。今回の役作りの参考、あるいは単純に好きなヴィランについても聞いてみた。
福田「ル・ミラージュ自体が鼠小僧次郎吉とか、そういう民衆のヒーローの要素を持った人たちなんですけど、そういう悪党は僕もカッコいいなと思います」
辰巳「ホアキン・フェニックスが演じた『ジョーカー』とか、『タクシードライバー』のトラヴィス(・ビックル)みたいな、悲しき悪人がすごく好きです。ライアンも過去に色々なことがあって、詐欺を働くようになった人なので、その部分も大切にしていきたいと思います」
松崎「1つのキャラクターに絞るのは難しいんですけど、どの作品でもただ単に悪いことをしている人って、そんなにいないと思うんですよ。悪にも生き様があって、理由や目的があって行動したけど、それが人に迷惑をかけたり、犯罪になってしまったり。そういう美しき目的を自分で噛み砕いて、表現ができたらいいなと思います」
越岡「ハッカーの悪人って、誰かいるかなぁ?」
辰巳「僕は舞台の『スマホを落としただけなのに』で、元ハッカーの警察官をやったけど」
越岡「身近にいました、お手本が。でも俺、自分がフィッシング詐欺に遭ってるから、シモンに一番向いてないかもしれない(笑)。宅配業者を装ったメールに引っかかって、タブレットのIDが使えなくなって、連絡先とか思い出の写真とか、全部消えました」
福田「でも、この役のために引っかかったんでしょ?」
辰巳「ちょうど今回の舞台の話が浮上した頃に遭ったんですよ。もう『この役に深みを持たせるために、詐欺に遭いました』と言っていこうよ」
越岡「はい! 詐欺に遭った側の痛みが、ハッカー役に生きるんじゃないかと思います(笑)」
ちょっとしたネタもポンポンと会話のリレーにして、どんどん話をふくらませる。この4人のチームワークで、愛すべき悪党集団が生まれることになりそうだ。
福田「僕らが挑戦したことがないようなジャンルで、いつもとはまた違った深みのある舞台になると思います。ちょっと大人の空気をまとった、皆様に愛されるような悪党を演じられたらいいですね」
辰巳「ライアンとしてどれだけ口からでまかせを言えるのかが楽しみだし、すり~ゆ~……他の3人が犯罪者を演じるのを見るのも楽しみ。劇場に来ていただいた皆様の、何かを盗みたいです」
越岡「今までやってきたようなコメディっぽいところもあるけれど、僕たち自身も知らなかった、新しいふぉ~ゆ~の一面を見せることができる芝居になると思います。ファンの皆さんはもちろん、僕たちを知らなかった皆さんにも『こんなことをするんだ』と思っていただける舞台になればと思います」
松崎「笑いでエンターテインメントを届けていたふぉ~ゆ~が、悪(わる)でエンターテインメントを届けるという新たなチャレンジを、お客様がどう思うのかワクワクしますね。あともう1つ挑戦する“パニクール”……」
辰巳「パルクール!(笑) PaniCrewみたいになっちゃってるよ!」
松崎「それ! 僕だけじゃなくて、4人でパルクールをやります。そのためにも怪我をしないよう、健康第一でがんばります!」
(取材・文:吉永美和子 撮影:河西沙織)
※シアター情報誌「カンフェティ」3月号・電子版では、ふぉ~ゆ~の皆さんのアザーカットも掲載!
福田悠太さん
「ここぞという時用の特別なルーティンはありません。が、何かそれっぽいルーティンが欲しいなと考えているタイプです。例えばどんなのがありますかね? 特徴的なやつだと決まったポーズを取るとか? ありきたりなやつだと歯を磨くとかですかね? こうして、しっかり考えてみると、きっと僕の性格上、決まったルーティンをやるのに飽きてしまいやらなくなってしまいそうだなと思いました。そんな僕にもオススメのルーティンがありましたらよろしくお願いします」
辰巳雄大さん
「撮影や舞台毎にテーマソングを決めて、本番前や準備中にスイッチを入れている。体調のコンディションなどが日々違っても音楽を聴くと自分の中でその本番モードに切り替わる」
越岡裕貴さん
「雨の中、流れてるジャズとか聞いて気持ちをゆったりさせますねー。
そしてスッキリする香りのアロマを嗅いでリラックスさせます。
後は、早めに準備するかなー慌てるのが嫌なので、、
とにかくゆったーーりとしたいです」
松崎祐介さん
「本番前というか常にポケモンを捕まえています。
そしてふぉ〜ゆ〜4人で集まり肩を組んで僕が代表でいつも気合い入れの一言を言います。そして目を合わせてグータッチしてそれぞれスタンバイするのです」
プロフィール
ふぉ~ゆ~
メンバー全員が1986年生まれ。名前に「ゆう」が付くことから「for you」と掛け合わせて命名された。M-1グランプリ2024では3回戦に出場し、話題に。グループとしての出演作に、『Endless SHOCK』、『ENTA!7 Zepp in the SHOW』などがある。
福田悠太(ふくだ・ゆうた)中左/ふぉ~ゆ~のリーダー。2018年に舞台『DAY ZERO』で単独初主演。主な出演作に、『女の友情と筋肉 THE MUSICAL』、『ウィングレス -翼を持たぬ天使-』など。
辰巳雄大(たつみ・ゆうだい)中右/2018年に舞台『ぼくの友達』で単独初主演。主な出演作に、舞台&映画『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』など。2024年より、所沢市観光大使に就任。
越岡裕貴(こしおか・ゆうき)左/2021年に舞台『This i s 大奥』で単独初主演。主な出演作に、映画『まくをおろすな!』、ミュージカル『RUN TO YOU』など。
松崎祐介(まつざき・ゆうすけ)右/2018年に舞台『デルフィニア戦記〜動乱の序章〜』で単独初主演。主な出演作に、舞台『流星セブン〜暁の操り人〜』、『トンデモ?ピーター・パン!』など。
公演情報
『CRIMINAL FOUR ―愛しき大悪党―』
日:2025年3月6日(木)~23日(日)
※他、大阪・福岡公演あり
場:IMM THEATER
料:11,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.ktv.jp/event/foryou/
問:サンライズプロモーション東京
tel.0570-00-3337(平日12:00~15:00)