2023年に主演・富田翔、脚本・伊勢直弘、演出・磯貝龍乎によって作り上げられた、ハードボイルドコメディの第2弾となる『ハザマDDD~Hazama the Dimensional Detective Deux “ディディディーディ・ディーディディ”〜』。大人たちによる本気の悪ふざけが話題を呼んだ第1弾『ハザマDD ~ハザマ the Dimensional Detective~』に続き、ナンセンスな“裏事情炸裂”コメディをパワーアップしてお届けする。
富田、伊勢、磯貝に第1弾を振り返ってもらうとともに、第2弾への意気込みを聞いた。
―――まずは第1弾を振り返っていただけたらと思います。手応えはありましたか?
伊勢「もうあんまり記憶がないよね」
富田「記憶がない」
磯貝「どんなお話でしたっけ(笑)?」
富田「でも、なんとか第2弾をやらせていただけるということは、喜んでいただけたんじゃないかなと」
伊勢「適当だな(笑)。でも、第1弾を作っているときに、もし、第2弾をやれるとしたらタイトルは『ハザマDDD』だということは決めてました」
富田・磯貝「あはは(笑)」
富田「観てくださった方々にとってもなかなか印象的な作品だったらしくて。タブーに切り込んでいるし、はちゃめちゃなことをやっていたので、それがどう受け入れられるかと思っていましたが、劇場がすごい空間になっていることを感じたので、またこの作品をできるというのはすごく楽しみです」
―――お客さまからの好評の声もたくさん届いていたんですね!
伊勢「おかげさまで。ただ、少し刺激は強かったみたいですが(笑)」
富田「最初に発表したときは、少し否定的な見方をするお客さまもいたと思います。舞台を応援する人たちを少し馬鹿にするような作品なんじゃないか、という思いがあったようなんですが、実際に観てみたら全然違う。むしろ、前向きな作品なので、2年前のあの時代に合っていたなと思います。コロナ禍を経て、お客さまはあれを求めていたんだと感じられて嬉しかったです」
―――磯貝さんはいかがでしたか?
磯貝「日々思っていたことが具現化されたということを感じて、伊勢さん、ナイスって(笑)」
富田「伊勢さんの悪い部分が全部詰め込まれていたよね(笑)」
伊勢「あはは(笑)」
磯貝「あんなに気持ちいいなんて思っていませんでした。僕もやっていて楽しかったですし、次はなんと出演もさせていただけるということで、とても楽しみです」
―――伊勢さんは、日々思っていたことを書かれたんですか?
伊勢「そうですね(笑)。でも、脚本には脚本家の思いが出ると思うんですよ。あるあるとして、お客さんも楽しめるものを盛り込めたと思いますし、普段から『これ、あるあるだよな』と思っていたことを共有したかったんです」
富田「絶妙でしたよね。嫌な思いをする人が誰もいないんですよ。誰とは言わないけど、わかる! って」
磯貝「いるいるってなるよね」
伊勢「『スタバで自撮りするやつは、8番手』とかね(笑)」
富田「そう! あれ以来、スタバのポストを見るとめちゃくちゃ面白くなっちゃう(笑)。でも、今回はまた新たな形で第2弾なので」
伊勢「今回は、一緒にアイディアを出した方が絶対に盛り上がると思って、企画会議の段階から富翔(富田)にも入ってもらったんですよ。その段階から入ってもらうってなかなかないよね?」
富田「ないですね。プロットを読んで意見をさせていただくというのもあまりない機会なので、すごく面白かったです」
―――第2弾はどのような内容になるのですか?
伊勢「第1弾からガラリと変わるというよりは、前回を引き継いだ空気感の物語です。2.5次元のまた違った側面から物語を見せようと思っていますので、同じように2.5次元を題材にしています。なので、お客さんには『またこの空気感に触れられた』と思っていただけたらいいなと思います」
―――お二人は脚本を読まれてどうお感じになりましたか?
富田「早い」
全員「あははは(笑)」
磯貝「それ、感想じゃない(笑)」
富田「とにかく書くスピードが早い。とんでもなく早い」
磯貝「書いてないんじゃないかってくらいだよね。AIなんじゃないかというくらい早い(笑)」
富田「でも、普段だったら具現化したものを芝居の中で良くしていくという作業ですが、今回は脚本会議や打ち合わせから、参加させてもらい、ゼロの段階から見ているので、僕自身もまた違った見方ができるなと思いました。このメンバーなので意見も言いやすかったですし、自分の意見が形になるというのも嬉しいことですし、これを現場でどう具現化していくのか、すごく楽しみです」
―――富田さんのアイディアもたくさん盛り込まれているんですね。
伊勢「もちろんです。企画会議の場で上がった話は全部箇条書きにして盛り込んでいます」
富田「企画会議をしていた段階では、タイトルしか決まっていなかったので、『こういうのを入れたらどうか』『この小ネタが欲しいですね』と話したことを全部盛り込んでくれてますね」
磯貝「あとは、脚本に書かれている会話自体がすごく楽しいので、もう朗読劇でもいいんじゃないかと思ってます(笑)」
富田「それなら、すごく助かる(笑)。地獄のようなセリフ量なんですよ」
磯貝「これまで、散々、主演やってきているのに?」
富田「そう。しかも、セリフが難しい。探偵の役なので、法的な言葉もたくさん出てくるから。こんなにも悪ふざけできる楽しい作品なのにセリフが(笑)。前回は、悩んだのはそれだけでしたね。今回も頑張って自分のものにしないとなと思っています。まあ、最悪、朗読劇になるんで大丈夫です(笑)」
―――そうすると、前回、一番苦労されたのはセリフ量?
富田「一番はセリフ量ですね」
磯貝「翔さんが、セリフを覚えたてで、長台詞を言っているときに、その向かい側でうじすけさんがずっと踊っているんですよ(笑)。しかも、シャカシャカ洋服の音をさせて(笑)」
富田「あはは(笑)。集中しないといけない場面なのに! そんなこともありましたが(笑)、前回は稽古もかなりしっかりやりましたよね。冒頭のシーンは、毎日、稽古してましたから」
磯貝「みんなで返し稽古(場面を区切って同じシーンを繰り返し稽古すること)しましたよね。寿里さんが、そのセリフ返しで全部噛んで(笑)」
富田「それを龍乎が嬉しそうに報告しにくるの(笑)」
磯貝「その(寿里の)姿が可愛いんですよ(笑)」
富田「でも、毎日、しっかりと稽古をしていたくらい難解なセリフたちでしたが、それがハマるとすごく気持ちいいんですよ。くだらないことをやっているのに、それがハマっていくという脚本なので、大変じゃないように、隙がないように演じたいと思ってやっていました。今回もそうしていきたいと思っています」
―――磯貝さんは今回、演出面ではどんなことをお考えになっていますか?
磯貝「すごくいい意味で何でもできる役者さん、スタッフさんが揃っているので、自由な発想で作っていけたらと思います。本当は伊勢さんも出演するはずだったんですよ」
伊勢「危うく(笑)」
富田「むしろ、龍乎とダブルキャストにしたい(笑)」
―――前回、この3人で作品をクリエイトしたことについてはいかがでしたか?
富田「僕はこれまで演出を担当されている伊勢さんとご一緒していたので、まず、脚本・伊勢さんが初めてでした。それに、龍乎とも共演したことはあっても演出を受けたことがなかった。なので、どうなるんだろうと思っていましたが、こんなにハマるんだというのが僕の感想です。伊勢さんは、自分が書いたものを『ちゃんと壊していいよ』と言ってくださる方なので、とてもやりやすかったです。もちろん変な壊し方はしないですが、そこに龍乎が肉付けをしていって、僕がこうやりたいと言ってやらせてもらえるのはすごく心地よかったです」
伊勢「僕は、脚本を自由に遊んでもらっていいと思っているタイプなんです。なので、脚本家として脚本を提供したときは一切、文句を言ったことないんですよ。『ハザマDD』も自由にやってくださいと思っていましたが、やっぱり富田翔という俳優と磯貝龍乎というクリエイターはすごい。もともと、期待していましたが、その期待を超えるくらい遊び倒してくれたという印象があります。今回の脚本は、一応、完成しているので、これからはこのお話のことは忘れて、本番を観に行って『俺、こんなの書いたんだ』って思いたいと思います(笑)」
富田「でも、全部が伊勢さんの責任になるからね(笑)」
磯貝「前回もカーテンコールで『責任は全部、伊勢さんです!』って言ったよね(笑)」
富田「『伊勢さんが書いているんです!』って」
―――(笑)。磯貝さんはいかがでしたか?
磯貝「ただただ楽しかったです。プレッシャーが全くなく、脚本も素晴らしいものでしたので、肉付けさせてもらったくらいで。文字を見るだけでイメージできる物語だったので、すごくやりやすかったです。翔さんも老体に鞭打って、めちゃくちゃ動いてくれるんですよ(笑)。若手よりも体を張って、精神力を使って、盛り上げてくださって、本当にいいカンパニーだなと痛感しました」
―――最後に公演に向けての意気込みと読者へのメッセージをお願いします。
伊勢「何も考えずに頭を空っぽにして観にきていただけたら嬉しいです。覚悟も勇気も何もいりません」
富田「ただ観に来て欲しいだけ(笑)」
伊勢「それが1番の楽しみ方だと思います。劇場でお待ちしております」
富田「いろいろな作品がある中でも、生の空間でしか感じられない代表のような作品だと思います。舞台の良さが詰まっていて、役者たちはやんちゃして、でもしっかりと作っている。日替わりもたくさん出てくる作品になると思うので、浅草の街を楽しんで欲しいですね」
磯貝・伊勢「あははは(笑)。芝居じゃないの?」
富田「芝居が終わった後に、浅草の街を楽しんでもらって。ああ、いい1日だったなと思えるような公演に絶対になると思いますので、ぜひ浅草を楽しんでください(笑)」
磯貝「きちんとしたメッセージ性がある作品だと思います。最終的に『ありのままの自分でいいんだ』『もっと自由でいいんだ』『何を縛られてたんだ、自分は』と気づくと思います」
伊勢「俺、そんな本、書いたっけ(笑)?」
磯貝「あはは(笑)。でも、新たな自由に気づくと思いますし、そうしたメッセージ性やスピリチュアル性をぜひ観に来て、精神的にも癒やされて欲しいなと思います」
富田「運気が上がるしね」
磯貝「上がる、浅草だし」
富田「運気が上がる芝居です!」
(取材・文&撮影:嶋田真己)
プロフィール
伊勢直弘(いせ・なおひろ)
1972年3月21日生まれ、北海道出身。脚本家・演出家・俳優・MC。2006年~2013年までハイブリット・アミューズメント・ショウ「bpm」のリーダーを務める。2009年には、演出作品『ひこうき雲 -KAMIKAZE-』をロサンゼルスにて上演、海外デビューを果たす。2013年からは城西国際大学メディア学部講師に就任し、アクティングや演出等で後進の育成を担う。
富田 翔(とみた・しょう)
1982年1月7日生まれ、東京都出身。2002年にテレビドラマ『ごくせん』で俳優デビューし、2003年にスーパー戦隊シリーズ『爆竜戦隊アバレンジャー』にアバレブルー役で出演。近年は舞台を中⼼に活動し、数々の話題作に出演。その他、書道デザイナーとしての活動を⾏うなど、活躍の幅を広げている。
磯貝龍乎(いそがい・りゅうこ)
1987年3月14日生まれ、北海道出身。旧芸名は、磯貝龍虎。2008年、ミュージカル『テニスの王子様』The Treasure Match 四天宝寺 feat.氷帝 でデビュー。以後、俳優として様々な舞台に出演。2016年に、オムニバス舞台『上手』の一編『ヘルニア』で初の脚本・演出を担当する。その後俳優活動を続ける中、多くの舞台制作に携わり、2022年6月には本人初プロデュースとなる舞台『SHAPE』を上演、翌2023年にはライブを舞台に取り込んだ狂音文奏楽「文豪メランコリー」を上演し、新しい舞台の形として業界関係者から絶賛された。
公演情報
GORIZO STAGE Vol.9『ハザマDDD~Hazama the Dimensional Detective Deux“ディディディーディ・ディーディディ”〜』
日:2025年2月14日(金)~24日(月・祝)
場:浅草九劇
料:特典付き9,400円 一般7,200円(全席指定・税込)
HP:https://gorizo.co.jp/hazamaddd
問:GORIZO STAGE制作部
MAIL:info@gorizo.co.jp