第二次世界大戦末期に日本軍が組織的に行った、特別攻撃作戦=特攻。決して帰還することのできない攻撃を命じられた特攻隊員たちに寄り添い続けた実在の女性・鳥浜トメの目線を通して、戦争の惨禍を後世に語り継ぐべく再演している『Mother ~特攻の母 鳥濱トメ物語~』が、3年ぶりに幕を開ける。2013年公演から出演し、今回はプロデューサーも務めるワッキーが、作品への熱い想いを語ってくれた。
「コロナ禍で出来なかった時期を経て、また上演できることをとても嬉しく思っています。これだけ心を動かされる意味も意義も大義もある舞台は、絶対に続けていかなければいけないという気持ちがどんどん強くなって、集客や営業を考えるようになり、今回プロデューサーをやろうという流れになりました。
『Mother』は特攻隊の遺書に基づいて藤森一朗が書いた作品で隊員たちの話がオムニバス形式で続いていき、終幕に向かって1つになっていく物語です。上演の度に若い隊員や女学生役を演じる人たちの目の色が変わっていくんです。それを感じる度にこの事実を風化させてはいけないという想いが強くなります。
トメさんは特攻隊員一人ひとりの想いを聞き、託された遺書を全国に送り続けました。誰からも愛される人だったので、演じる浅香唯さんは役にピッタリの素晴らしい座長だと思います。
また今回、安藤美姫さんが出演してくれます。2016年公演に弟さんが、そして2021年公演に娘さんが出演していて、劇場にいらした時に、奥さんのシーンをちょっとやってもらったら凄くいい感じだったので、出演の運びになりました。本格的なお芝居への出演は初めてですので、大きな見どころになると思います。
冒頭の出撃のシーンでは、隊長さんが降りてきてくれるような不思議な感覚になります。これは藤森さんがその時代に生きた方たちに失礼のないように、膨大な下調べをして、食堂の話を深いところまで掘って書いているからこそだと思います。
彼らのことを自分が決して忘れさせないと誓っていたトメさんは1992年にお亡くなりになりましたが、その想いを受け継いで、演劇として届けていくことが僕の使命だと思っています。ぜひみなさんに、この実際にあった話を観て、聴いて、感じていただいて、これからもずっと上演が続けられるように応援していただきたいです」
(取材・文:橘 涼香 撮影:敷地沙織(平賀スクエア))
プロフィール
ワッキー(ペナルティ)
北海道出身。1994年、お笑いコンビ ペナルティを結成。コントネタでは濃いキャラクターを演じ、オリジナルの歌を歌うことも多い。幼少期よりサッカーを始め、船橋市立船橋高等学校で全国高等学校サッカー選手権に出場。お笑い界一と称えられた身体能力の持ち主。タイ料理店でのアルバイト経験をきっかけにタイ語を学び、日常生活に困らない会話力を持っている。2013年、『Mother ~特攻の母 鳥濱トメ物語~』に憲兵役で出演。現在、特攻隊長役として出演を続けている。
公演情報
アース製薬 100周年 presents
『Mother ~特攻の母 鳥濱トメ物語~』
日:2025年3月19日(水)~23日(日)
場:新国立劇場 小劇場
料:7,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.airstudio.jp/index_2025mother.html
問:株式会社エアースタジオ
tel.03-6659-2830