劇団プープージュースが贈る傑作時代劇、堂々の再々演 日本が大きく変わる時期、命を賭して闘い、生き抜いた青年達の血風録

劇団プープージュースが贈る傑作時代劇、堂々の再々演 日本が大きく変わる時期、命を賭して闘い、生き抜いた青年達の血風録

 幕末から明治維新にかけての激動期の日本。各地で血なまぐさい事件が起きる中に、1人の若き暗殺者がいた。公演ごとに多彩な俳優陣を揃え、社会派からコメディまで幅広いジャンルの作品で人気の劇団プープージュースが、劇団唯一の時代劇『竜馬を殺す』を再々演する。
 主人公となる暗殺者・犬養亨(いぬかいとおる)を演じるのは、8年前の再演でも同じ役を演じた三浦健人。実はこの作品、三浦の俳優人生に大きなきっかけを作ったのだという。劇団主宰で作・演出の山本浩貴、劇団の古株メンバーの中野マサアキと共に話を聞いた。


―――主役となる犬養亨役の三浦さんですが、この作品には並々ならぬ思い入れをお持ちだとか。

三浦「18歳から芝居を始め、半年くらい経ったときにこの作品を観にいきました。初演ですよね。先輩が連れて行ってくれたんです。その時に身体の奥の底から感動しまして。まだ右も左もわからないくせに、この人達についていきたいと思いました。その後に山本さんと出会って、21歳でプープージュースに加入したんです」

―――その後に再演があって、そこで犬養役をやられていますね。

三浦「入ってすぐで恵比寿・エコー劇場でした。そして今回です。
 実は主役を張ったのは犬養亨だけなんですよ。しかも今回は、初めて作品を観たときの犬養役だった大迫(一平)さんが竜馬役なんです。もう憧れていた方がそこにいる特別な舞台ですね。
 しかも僕に芝居を教えてくださったコージ ダン カオルさんもいるし、又兵衛役だった隣にいる中野先輩が同じ役でいらっしゃるし、その他色々な思い入れが詰まっています。さらに劇場も初演と同じシアターサンモールですから」

―――中野さんはベテランメンバーですが、旗揚げにはいなかったんですね。

中野「旗揚げから数年後に入ったはずですよ(笑)。でも山本とは同い年ですね。僕の役は今回も又兵衛なのですが、周りのメンバーも違いますし、全くゼロから新しい作品を創るつもりで取り組んでいます」

―――『竜馬を殺す』はその前に上演する『革命の家』からの連続公演ですね。これは意図したプログラムですか?

山本「ええ。『革命の家』は現代の、そして今作は幕末〜明治維新当時の革命。2部作というわけではないですが、この形でやりたいと思ったんです。それに三浦がずっとやりたいといっていたので(笑)

三浦「もう(前回が)終わった瞬間から『またやりたいです』っていってました」

中野「8年間言い続けてきたからね(笑)」

三浦「言い続けてみるものですね(笑)」

山本「そもそもこの作品は自分の中で思い入れの強い作品でもあるんです。自分たちが作った唯一の時代劇ですしね。僕は中学生の頃から時代小説が大好きで、好きすぎるあまりに安易には書けなかったんです。そうしてようやく書けたのが『竜馬を殺す』・『竜馬が生きる』だったんです」

―――俳優陣の顔ぶれはだいぶ入れ替わっていますか。

山本「ほとんど変わってます。初演からのメンバーは寺中寿之さん、大迫一平さん、そして中野さんくらいでしょうか。でも他の作品でお付き合いのある役者さんがほとんどなんです。しかもコージ ダン カオルさんは僕自身も芝居を始めた時に教えてもらった方で、KAZ KOBAYASHIさんともダンさんのところで出逢いました。KAZさんは今アメリカで俳優として活躍されているんですが、この作品の為に帰ってきてくれています」

―――ヒロインはモーニング娘。OGの飯窪春菜さんですね。

山本「彼女は4年前の『フェイクニュース』で主演をしてもらいました。日頃はおとなしそうに見えるのですが、芝居への熱量が凄くある方で、また一緒に作品を作りたいと思って今回オファーしました。一緒に作品を創りたい役者さんですね。やはり想いの強い人と作りたいんです」

中野「飯窪さんはその時が初舞台、初座長でしたが、それでもしっかりやってくださった」

―――アクションも見どころのひとつですよね。

山本「そうですね。さっきもいいましたが、今回は殺陣師にKAZ KOBAYASHIがいるし、その先生のコージさんも殺陣が凄いんです。凄いアクションになるでしょうね」

―――――そんな熱いメンバーと共に紡ぎ上げるのは熱気を帯びた世界観ですね。

山本「主人公の犬養亨は親に棄てられ奴隷として生きてきたのですが、それが新撰組に加わって維新の動乱に飛び込んでいく。実は父親が武士だったという話だけを知っている犬養には武士への憧れがある。そして武士の時代が終わろうとしているときに武士になって、自分の存在意義の為に暗殺者となる。そんな犬養の象徴が竜馬を斬ることになり竜馬を付け狙います」

三浦「初めて観たときこの世界観に影響されました。犬養は4歳で棄てられてほぼ人として扱われずに育ってきました。今からは考えられない世界です。それが仲間に囲まれて徐々に人間になっていく。そして最後には人よりも人になった、そんな言葉を吐くんですね。その言葉を心の底から発したいと思います。犬養の人生を、僕という俳優の身体を使って再生させたいです」

―――皆さんどんなお客さんに観てもらいたいですか?

中野「時代劇は昔ほど盛んでなくて、今は地上波でもやってません。特に若い人は触れる機会が少ないんです。だからこそ皆さんに時代劇を、しかも劇場で演じる生の時代劇を観て欲しいです」

三浦「もちろん全ての層のお客さんに観てほしいですが、そのなかでも若い人には観てもらいたい。先ほど話したとおり、ほぼ人でなかった男が人になる。そして大義の下に行動する。そんな姿を見て感じ取ってもらいたい」

山本「確かに若い頃は地上波の時代劇が普通にあったんですよね。それを通して自分たちの国の歴史に触れたものです。もっとも僕には小説がありましたけれどね。ともあれ年齢は関係なく皆さんに観て欲しいですが、それを通して自分が信じるもののために行動する男の姿を見てもらいたいです。以前観た方にもまた違う作品として楽しんでもらえると思います」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

三浦健人(みうら・けんと)
東京都出身。10代で役者を志し、『竜馬を殺す』に大きく心を動かされる。その後劇団プープージュースに加入し、『竜馬を殺す』再演で主役を務める。劇団作品以外の出演作に、映画『ブラックナイトパレード』、『野球部に花束を』など。短編映画プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」への参加など精力的に活動を展開。

中野マサアキ(なかの・まさあき)
長野県出身。劇団プープージュースのメンバーとして劇団公演に出演するほか、外部の客演も数多い。さらにドラマ・映画などにも数多く出演。近年の出演作に、NHK 連続テレビ小説『虎に翼』、『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』など。2024年には主演を務めた映画『北浦兄弟』が、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭のクリティックピックス部門でベストフィルム賞を受賞した。

山本浩貴(やまもと・こうき)
東京都出身。20歳の頃から演技を学び、所属していた劇団SLAの仲間達と2005年に劇団プープージュースを旗揚げ。以降、全作品の作・演出を手がけている。俳優として舞台をはじめ、ドラマ・映画にも出演。2013年、『サムライダッシュ』で映画監督としてデビュー。2023年には、監督・脚本を務めた『オジさん、劇団始めました。』(渡辺いっけい主演)が公開された。

公演情報

劇団プープージュース 第31回公演
『竜馬を殺す』

日:2025年1月15日(水)~19日(日)
場:シアターサンモール
料:前売8,000円
  当日8,500円(全席指定・税込)
HP:https://www.pu-pu-juice.com
問:劇団プープージュース tel.090-6702-7401

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