アジア人として初めて『マハーバーラタ』を全編舞台化! 前後編計6時間。壮大な叙情詩に挑む9年越しのプロジェクト

アジア人として初めて『マハーバーラタ』を全編舞台化! 前後編計6時間。壮大な叙情詩に挑む9年越しのプロジェクト

 ヒンドゥー教の聖典であり世界最長の叙事詩とされる『マハーバーラタ』を、小池博史がアジア人で初めて全編舞台化。3・11を契機に「パパ·タラフマラ」を解散させた小池が、真っ先に取り組んだプロジェクトのひとつ―――――その始まりは2013年に遡り、カンボジアを皮切りにアジア9カ国で7作品制作し、40回に渡り上演を重ねてきた。

 「マハーバーラタは崩壊の物語。一体何が善かもわからず、なぜ神は崩壊に導いたのかという非常に壮大なテーマを秘めている。そういう意味でもスケールは大きくならざるを得ず、アジア全体をいかに巻き込んでいくかという発想がまずありました」

 9年間に及ぶプロジェクトの集大成となる今回。ジャワ、バリ、タイ、インドの古典舞踊に、バレエ、舞踏、狂言、能まで、アジア5カ国を代表する一流のアーティストたちが顔を揃えた。

 「演者は基本的にオーディションで選んでいます。技術はもちろん、重視したのは頭の柔らかさ。特に伝統芸能の場合は頭が固いと『それはムリです』と言われてしまう。今回はこれまでの公演の中でも選りすぐりのトップオブトップのメンバーで、だからこそ面白く、間違いなくレベルアップしてます」

 上演時間は「愛の章」と「嵐の章」前後編あわせ6時間。ダンスに演劇、映像、アニメ、美術、音楽を融合し、これまで以上のスケールで完全版を作り上げる。

 「現場では10種の言葉が飛び交い、それぞれの言語が持つリズムや文化、身体の使い方もまた違う。ジャンルも様々で、この多様性からどんな化学変化が起き、どう次のフェーズに移行できるか探りたい。例えば『ここに何か音が欲しい』と言うと即座に『小鼓はどうか』と返ってきたり、僕自身想像していなかったものが日々生まれてる。可能性がどんどん膨らんでいるのを感じます」

 物語は複雑で、投げかける問いは深い。しかし「回答を見つけるのは重要ではない」と語り、エンターテインメントとしての愉しみも追求する。

 「作品のテーマにあるのは、自分たちが築いてきた社会とそこに対する疑い、多様と調和、今の時代をどう生きたらいいかという根源的な部分です。けれど〝わかる·わからない〞と頭で考えたら面白くないし、好きなように観てもらえればいい。視覚に訴える仕掛けを色々盛り込んでいるのも6時間飽きずに観てもらうため。大人はもちろん子供まで、幅広い方が楽しめる作品になればと思っています」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:間野真由美)

プロフィール

小池博史(こいけ· ひろし)
空間演出家· 作家· 振付家·映像作家、「舞台芸術の学校」代表。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授、茨城県日立市生まれ。一橋大学卒業。82年パフォーミングアーツグループ「パパ· タラフマラ」設立。以降全55作品の作· 演出· 振付を手掛ける。12 年5月解散。すぐに「小池博史ブリッジプロジェクト(HKBP)」を立ち上げ、空間芸術と名乗りつつ、創造性を核に教育・発信・創作を三本柱とした連携プロジェクトを展開。21作品を創作。現在までに演劇· 舞踊· 美術· 音楽等のジャンルを超えた空間芸術作品を10カ国で創作、40カ国で公演。21年には初の映画監督作品『壊れた時間のバラタ』を制作。97~04年つくば舞台芸術監督、アジア舞台芸術家フォーラム委員長、国際交流基金特定寄附金審議委員(05年~11 年)等、さまざまな審議員・審査員等を歴任。著書:「ロンググッドバイ~パパ· タラフマラとその時代」(青幻舎刊)、「からだのこえをきく」(新潮社刊)、「新· 舞台芸術論-21世紀風姿花伝」(水声社刊)、「夜と言葉と世界の果てへの旅―小池博史作品集」(水声社刊)。

公演情報

完全版マハーバーラタ ~愛の章/嵐の章

日:2021年8月20日(金)~23日(月)
   ※上演回によって、上演章が異なります。詳細は団体HPにて
場:なかのZERO 大ホール
料:通し券 S席16,000円 A席12,000円 B席8,000円
  (全席指定・税込)
  ※他、各種チケットあり。詳細は公式HPにて
HP:https://mb2020.info/
問:完全版マハーバーラタ実行委員会
  tel. 03-3385-2066

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