信頼できるキャストによる“決定版”を手ごろな価格で すれ違いがいくつも重なる、シチュエーションコメディの名作をまずは体験してほしい

信頼できるキャストによる“決定版”を手ごろな価格で すれ違いがいくつも重なる、シチュエーションコメディの名作をまずは体験してほしい

―――演劇集団イヌッコロで初演を行なって以来、さまざまな劇団で上演されてきた本作。まずは佐野さんに、作品の魅力や見どころをお伺いしたいです。

佐野「僕はワンシチュエーションコメディをメインに書いています。15本以上ある中でも一番優秀な作品だと思います。勘違いやすれ違いが5重、6重になっていく。構成力やワンシチュエーションコメディとしての質は抜群ですが、そのぶん複雑です」

大見「すごく大変そうですよね」

佐野「誰がどう勘違いしているか、お客さんに伝わるように見せなきゃいけないので大変な作品ですね」

大見「脚本を読んで『瑞樹さん、さすがだな』と思いました。勘違いやすれ違いがいくつも重なるんですが、途中で確認する時間もあって(笑)」

佐野「お客さんもわからなくなっちゃうから(笑)。主人公と同じ気持ちで観てもらえると思います」

―――おふたりは今年に入ってから何度かご一緒されていますが、改めてお互いの印象や魅力を教えていただけますか?

佐野「一言で言うと、お芝居ができる」

大見「嬉しい! これ見出しで(笑)!」

佐野「『ギャングアワー』で初めてご一緒し、お芝居の理解力が高くていいなと思って、WBB(『バンクパック』)で“いける!”と思いました。信頼できる役者さんで、どんな難しい役でもやってくれるだろうという期待感がありますね」

大見「元々、瑞樹さんの作品を観る機会もあり、ずっと出たいと思っていました。その願いが叶って、(実際にお仕事させていただいて)演出家としても制作人としても好きです。時間を無駄にせず、効率よくやってくれる。“役者は待つのが仕事”と言われるけど、トップの方が考えてくれるのはありがたいです」

佐野「僕も役者をやるから、自分がされて嫌なことはしないようにしてる。稽古中って時間があっという間だけど、待っている時って長いから(笑)」

―――今回、佐野さんがこだわり抜いて声をかけたキャストが揃っているとのことですが。

佐野「コンセプトとして、シチュエーションコメディの良さを1人でも多くの方に伝えたいというのがあります。そのためにも、シチュエーションコメディのシステムを理解してくれる役者さんを揃えないと面白くならない。表面だけの面白さを伝えてくれる、理解度の高い人を大事にしています。毎回、この役を今一番上手くこなしてくれるのは誰か考え、こだわりぬいてオファーしています」

―――今回のカンパニーへの期待、楽しみなことを教えてください。

佐野「適材適所でキャスティングしているので、それぞれが役割を果たしてくれるだろうと思います。このお芝居、主演が本当に大変で、毎回『こんなに大変な役はやったことない』と言われます。理解度が高くて、理解したものをきちんと表現できる実力がある人じゃないといけない。大見くんには期待しています。
 他の作品では嘘や誤魔化し協力者がいたり徐々にズレていったりするけど、この作品の主人公・“泥棒”は最後まで1人で戦う。落ち着く瞬間がなくてピンチの連続ですが、大見くんならできるだろうと思っています」

―――大見さんとしても、そこまで振り回される役は珍しいのではないでしょうか。どう作っていこうと考えていますか?

大見「それこそ、瑞樹さんの作品では場を支配している側の役が多かったので、今回のように振り回されるのは初めてです。まずは座組の皆様に100%頼ろうと思っています。安心できる方が揃っていると聞いているので、自分の役を全うしていけば自ずと良い作品になっていくかなと。台本をしっかり理解して頑張ろうと思います」

―――sitcomLab作品を初めて観る方に向けて、佐野さんから魅力やポイントを教えてください。

佐野「ギャグや人情喜劇、ナンセンス、アドリブ要素などいろいろなコメディがある中の1つがシチュエーションコメディです。状況で笑わせるという独特な面白さがあると思います。言葉で説明すると伝わりづらいけど、観てもらったら“こういう作り方があるんだ”と思ってもらえるはず。
 まずは存在を知ってもらって、好きかどうか判断してもらいたいなと。観た方の中で『これ好きだな』という方に出会いたいです。そのためにもチケットをかなり安く設定しています。500円のチケットは宣伝だと思ってやっているので、活用してもらえたら。観たことがない人にぜひ一度体験してもらいたいなと思っています」

―――まだ顔合わせ前だと思いますが、現時点で楽しみなキャラ・シーンはありますか?

大見「“谷やん”はアホだな〜と思うキャラで、“泥棒”も早い段階で『こいつ、アホだ』と気づいて、対応がちょっと変わっていく。そこが1つの楽しみですね」

佐野「わかる(笑)。実は一番不幸な人。そこに対して“泥棒”もちょっと情が湧いちゃうんだよね」

大見「第三者としても愛着が湧いちゃうようなキャラクター。僕自身も楽しみですし、お客さんがどう反応するのかも楽しみです」

―――お稽古で楽しみなことを教えてください。

佐野「基本はsitcomLabでやる時が決定版。僕の理想となる、プロトタイプの『苦闘のラブリーロバー』を作りたいです。いろいろなカンパニーで上演されていて、カンパニーや演出によってアレンジされるのは全然問題ないんだけど、その中で一番の決定版を作っていくのがこの企画で、納得できるキャストを集めています。これまで上演してきた人に“うちのほうが良かった”と思われないように頑張って作りたいと思います」

大見「実は僕も、『苦闘のラブリーロバー』の決定版にしたいと思っていて。今年2回瑞樹さんとご一緒しましたが、キャストやカンパニーに合わせて演出を変えていると感じていて、“この作品の決定版にはまだ立ち会えていないんだろうな”と感じていました。
 あまり言わないようにしていたけど、瑞樹さんが書いて演出して“これが本物”という作品を作ってみたいという欲がありました。だから今おっしゃっていただいたのを聞いて、やる気がメラメラと湧いてきました。キャストの皆さんは初めましての方だらけですが、瑞樹さんの作品は面白い人に出会えるのも魅力。キャストの面白さに感動して、人に惚れて終われるので、そこも楽しみです」

―――大見さんは初めての方だらけの現場で、座長としてどう作っていこうと考えていますか?

大見「すっごく悩んでいて」

佐野「そうなの(笑)?」

大見「座長じゃない時は自由に立ち振る舞えていて、明るく軽いノリでほぐしにいくみたいな心構えでした。今回座長でどうあるべきかなと」

佐野「その感じでいいよ(笑)。職人肌が多くて、そういうタイプがいないから、軽くきてくれるとみんな気楽だと思う。芝居を考えるのが好きな人が多くて、休憩中もそれぞれ無言で考えていることが多い。だから、ぜひ明るく楽しくいてほしいなと思います」

大見「方向性が決まりました! 今回は軽い座長でいきます!」

佐野「なかなかいないから、いいと思う(笑)。みんなシチュエーションコメディが好きだから、一緒にやるのは楽しいはず。
 単独の力じゃどうにもならないぶん、状況をいかに面白く組み立てるかが大事。自分が笑いをとるより誰かが笑いをとってくれた時に気持ちいいのがシチュエーションコメディで、シュートを打つよりパスを出すのが好きな人が揃ってる。役者でも考える力と技がある人がハマりやすいジャンルだし、大見くんもそのタイプだと思う」

大見「シチュエーションコメディは役者が楽しいですよね。稽古場でも楽しくて、家に帰ってからも考えるのが楽しい」

佐野「みんなで笑いを勝ち取った感覚があって、なんとも言えない喜びがあるよね」

大見「人がウケをかっさらって自分が嬉しいってなかなかない。性格が良くなった気分になります(笑)」

佐野「なんでもないセリフばかりなのに笑えるところをお客さんに観ていただけたら。必死になって現状に向き合っているだけなのに面白い。こういう笑いがあるのを知ってほしいです」

大見「役者としても、本番が始まってから“ここでウケるんだ”っていうのがたくさんある。まだ楽しめるんだっていう驚きと楽しさがあります」

―――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

佐野「1人でも多くの方に観てもらい、シチュエーションコメディが好きな方を見つけ出したいと思っています。目標として3,000人。演劇人生も30年超えてきて、“多くの人”を3,000人と決めました。
 ぜひ1回、特に見にきたことがない人に観てほしいです。手ごろな価格のチケットもありますし、90分でサクッと終わる観やすい作品なので、ぜひ足を運んでください」

大見「瑞樹さんのシチュエーションコメディを一度でいいから観てきてほしいし、観やすい環境を瑞樹さんが作ってくれています。
 演劇はどれもそうですが、シチュエーションコメディに触れた方に幸せになってほしいですし、幸せになるべきだと思っています。まずは来ていただいて、欲を言うと幸せになって帰ってほしいです」

佐野「あと、大見くんの技術とセンスを存分に見せられるんじゃないかな。さばく技術って難しいけど、見事につっこんでさばいていきます!」

大見「(笑)!? 僕自身も存分に実力を発揮し、しっかり成長しながら努めていきたいと思います!」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

佐野瑞樹(さの・みずき)
静岡県出身。1993年にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で初舞台。その後、数々の話題の舞台・ミュージカル・ドラマに出演し、高い評価を得る。2011年、弟の大樹と兄弟プロデュースユニット「WBB(WATER BIG BROTHERS)」を結成。2013年、舞台『川崎ガリバー』で初演出。演劇集団イヌッコロでは羽仁修名義で全脚本・多くの公演の演出を手掛けていた。

大見洋太(おおみ・ようた)
青森県出身。舞台を中心に活躍中。主な出演作に、舞台『吸血鬼すぐ死ぬ』、ジュエルステージ『オンエア!』シリーズ、Route Theaterこけら落とし公演 舞台『ギャングアワー』、WBB vol.25『バンクパック』、『東京リベンジャーズ -天竺編-』など。

公演情報

sitcomLab 第6弾『苦闘のラブリーロバー』

日:2024年12月11日(水)~15日(日)
場:中野 ザ・ポケット
料:プラチナ席[前方1~2列・特典付]12,000円
  S席[前方3~5列]5,000円
  A席[中央エリア]2,000円
  ワンコイン席[後方エリア]500円
  (全席指定・税込)
HP:https://x.com/sidezerostage
問:sitcomLab mail:info.hanipro@gmail.com

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