辛くても笑顔を忘れない美しい心を描く 美しい音楽と本格的なバレエで綴る冬休みファミリー劇場

辛くても笑顔を忘れない美しい心を描く 美しい音楽と本格的なバレエで綴る冬休みファミリー劇場

 世界中で愛されている、シャルル・ペローの『シンデレラ』。創立75周年を迎える劇団東少が贈る冬休みファミリー劇場は、美しい音楽と本格的なバレエで幸せな物語を描き出す。2016年・2022年に続き、シンデレラを演じる安達星来に作品への想いや役作りについて聞いた。


―――再びシンデレラ役を演じることが決まった時のお気持ちは?

 「まず、とても嬉しい気持ちでした。私が劇団東少さんの作品に初めて出演させていただいたのがこの『シンデレラ』という作品だったので、思い入れがあり、当時とても意気込んで臨んだことを覚えています。こうしてまた演じさせていただけるのはすごく嬉しいですし、光栄ですが、同時に頑張らなくてはいけないと身の引き締まる思いです」

―――最初にシンデレラを演じた時に、思い出に残っていることを教えてください。

 「それまで歌のおねえさんのお仕事をしていて、卒業して再びミュージカルの世界に戻ってきた最初の作品が東少さんの『シンデレラ』でした。なので、ファミリー劇場で主演を務めるというのも初めての経験でしたし、三越劇場に立つのも初めてでした。初めて見る景色ばかりでしたが、ご家族で観劇されている方がたくさんいらっしゃるのがすごく嬉しくて。私もワクワクしながらステージに上がっていました。
 特に印象に残っているのは、お客さんの声がすごく近くから聞こえてきたことです。演じている私たちにも色々な声が聞こえてくるんですよ(笑)。お子さんたちの素直な反応が楽しくて、嬉しくて、演じながらもついその声に反応してしまいそうになっていました。それまでに出演していたほかのミュージカルとはまた違う空気がありました」

―――子どもたちは、かなり素直な反応をしてくれますよね。

 「きっとみんなも参加している気持ちでいるんだろうと思います。でも、それがいいんですよね。楽しんでもらっている証拠だと思うので、新鮮に感じました。大人向けの舞台とはまた違うので。
 お子さんもそうですし、連れてきてくれているお父様やお母様、おじいちゃん・おばあちゃんも一緒に楽しんでもらえたら嬉しいですね。きっと家族で観劇したという経験はこの先もずっと記憶に残るものだと思うので、家族3世代、2世代で楽しんでもらえるということにすごくやりがいを感じています」

―――これまで東少の作品ではシンデレラだけでなく、人魚姫や三蔵法師も演じています。誰もが知るキャラクターを演じる時に、意識していることはありますか?

 「あります! 例えば『シンデレラ』はシャルル・ペローの原作がありますが、さまざまな形で作品になっていますよね。映画もアニメもストーリーは一緒ですが、見せ方やテーマがそれぞれ少しずつ違っていると思います。
 ただ、私は東少さんの作品で演じる時は、みんながよく知っているストーリーやイメージをベースにして役作りをすることが多いです。シンデレラや人魚姫ならばディズニーアニメーション、三蔵法師なら夏目雅子さんです。演じる前には、もう1回そうした作品を全部見直して研究もしています。真似をするわけではないですが、皆さんの中にあるイメージがどういうものかを理解して、そのイメージからかけ離れないように意識しています。そこから東少さんの作品としてのシンデレラのあり方や見せ方を研究していくという感じで役を作っています」

―――今回、シンデレラを演じるにあたっては、どんなところをより深めていきたいですか?

 「何度も同じ役を演じさせていただく機会はなかなかないので、私自身も初めての経験です。しかも、三越劇場でシンデレラを演じるというのは私にはすごく大きなことです。
 ただ、何度もやらせていただいた役ですし、どうしても慣れてしまう部分もある。なので、もう一度クリアにして、新たに作っていけたらと思います。
 前回、私がシンデレラを演じたのは2年前ですので、この2年で経験したことが何か糧になっていると思います。それにシンデレラを演じると、毎回感じることが違うんですよ。きっと今回も前回とも前々回ともまた違うと思いますし、自分の今の感情に出会えるのも楽しみです。“美しい心”が『シンデレラ』の1つのテーマだと思うので、自分もそこに近づけるように、なるべく美しいと感じるものに接していきたいと思います」

―――ちなみに8年前と2年前に感じたことの違いとは、どんなことだったのですか?

 「8年前は、自分の中でシンデレラはプリンセスのイメージが強かったので、きっと多くの人がイメージするプリンセスになりたいと思って、一生懸命頑張っていました。
 ですが、2年前に演じさせていただいた時は、より劇団東少版の『シンデレラ』を自分の中で深く理解して向き合えたなと思います。演出の源紀さんがおっしゃっているテーマをより皆さんに伝えられるようにということを大切にしていました。同じ作品ではあるのですが、自分の中では全く違う感覚で演じられたので、今回もきっとさらに新しいものをお届けできるのではないかなと思います」

―――本作には、バレエシーンも登場し、見どころの1つとなっています。

 「本格的なクラシックバレエのバレリーナの方に出演していただいています。魔法使いと一緒に幸せの精として登場するのですが、本格的なバレエダンサーの皆さんが踊ってくださるので華やかなシーンになっています。そこも見どころの1つです。
 また、音楽も素晴らしく、私自身大好きな楽曲ばかりです。ぜひ美しい音楽にもご注目いただきたいです」

―――王子役は渡辺和貴さんが演じます。渡辺さんとはこれまでにも何度も共演経験がありますが、渡辺さんの印象を教えてください。

 「私が8年前にシンデレラを演じさせていただいた時の王子様が渡辺和貴さんです。その時は東少さんの作品が初めてだったこともあり、精一杯で、きっとおかしな人だと思われたのではないかなと思います(笑)。その後、『孫悟空』でもご一緒していますが、今回は久しぶりの共演になりますので、とても楽しみです。
 和貴さんは、優しくて気さくな印象です。これほど数々の舞台に出演されていらっしゃるのに、謙虚で腰が低く、尊敬するところがたくさんあります。一緒に作品を作っていても最後まで手を抜かない一生懸命さがあって、すごいなと思います。『孫悟空』では座長を務めていらっしゃいましたが、こんな座長になりたいと思うような、みんなを引っ張ってくれる存在です」

―――そのほかのキャストの皆さんはいかがですか?

 「ほとんどのキャストの皆さんとご一緒させていただいたことがあるので、とても和やかな稽古場になるだろうなと楽しみです。(魔法使い役の)中村香織さんは尊敬する先輩ですし、(継母役の)中村ひろみさんも普段から仲が良いのでご一緒できるのが嬉しいです。
 劇団東少さんのお稽古に行くと、我が家に帰ってきたような暖かさがあるんですよ。作品もそうですが、共演者の皆さん、スタッフの皆さんが醸し出す空気が、愛に溢れていて、安心して身を任せられる環境です」

―――すごく和やかな稽古場なことが伝わってきます。

 「集中してお稽古をするので、団結力も強くなりますし、自然とみんなで支え合う関係性が生まれています。それが自然にできるのは、ほかの現場にはない空気かなと思います」

―――冬休みファミリー劇場は、クリスマス時期に上演するというのも素敵ですね。

 「そうですね。三越劇場なので、日本橋のイルミネーションを見てクリスマス気分を味わってから、劇場にお越しいただければと思います。
 『シンデレラ』って、どこか冬のイメージがありますよね。愛に溢れた素敵な空間になると思いますので、ぜひ特別感を味わいに来ていただけたらと思います」

―――ところで、シンデレラは、辛い状況になっても微笑みを忘れず、前を向いて生きていますが、安達さんご自身は、辛い時はどのようにしてその状況を乗り越えていきますか?

 「私はもともとポジティブな性格ではありますが、もちろん辛いことや落ち込むこともあって、そういう時には人に話すようにしています。
 私は周りの人に本当に恵まれているんですよ。家族や仲間、劇団東少さんを始めとしてお仕事で関わる方たち皆さんに助けていただくことがとても多いですし、絶対に1人じゃないと感じるので、1人で抱え込まず、なるべく人に話しています。話すとスッキリしますから。そうした環境は、シンデレラにも通じるのかなと思います。
 ただ、人と話すことに疲れてしまう時もあるので、そうした時は、山に行ったり自然のたくさんあるところに行ってリフレッシュします。温泉に行くのも好きです。
 若い頃は、何をしたらデトックスできるのか自分では分からない時もありましたが、今は自分がどうすればリフレッシュできるのかもわかってきたので、それを実践するようにしています」

―――最後に改めて公演に向けての意気込みと、読者にメッセージをお願いします。

 「先ほどもお話ししましたが、劇団東少さんの『シンデレラ』は、皆さんがよく知る『シンデレラ』と同じストーリーでも感じ方が変わってくると思います。どんなに意地悪をされても、相手を決して憎まず、美しい心で乗り越えていくというのがテーマの1つです。現代を生きる皆さんにも伝わるものがきっとあると思います。
 この物語の中にはさまざまな思いのこもった“涙”がたくさん出てきます。幸せの涙、辛くて苦しい涙、赦しの涙、そうした涙を観て、皆さまがそれぞれの感じ方で感じていただけたらと思います。もちろん、王子様との一途な愛も素敵なので、そちらもご注目いただけたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:嶋田真己)

プロフィール

安達星来(あだち・せいら)
東京都出身。洗足学園音楽大学ミュージカルコース卒業。米バークリー音楽大学にてアン・ペッカム教授に師事。『カラミティ・ジェーン』ジェニー役、音楽劇『赤毛のアン』アン役、近代音楽集より『葵上・卒塔婆小町』(美輪明宏主演)、ザ・ローリングストーンズ日本公演などに出演。NHK「どーもくんバンド」うたのおねえさんを務めた。劇団東少作品には『シンデレラ』シンデレラ役、『人魚姫』人魚姫役、『孫悟空』三蔵法師役で出演。

公演情報

2024年 冬休みファミリー劇場 劇団東少創立75周年記念公演 ミュージカル『シンデレラ』

日:2024年12月21日(土)~24日(火)
場:三越劇場
料:プレミアム席[特典付]5,500円
  一般席4,300円(全席指定・税込)
HP:https://www.tohshou.jp
問:劇団東少 tel.03-6265-7070

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