年末に神奈川県民ホールで開催される『ファンタスティック・ガラコンサート』は、極上の舞台芸術をたっぷり楽しめる恒例の人気プログラムだ。そこで演奏する神奈川フィルハーモニー管弦楽団を指揮するのが、数多くのオーケストラで活躍する三ツ橋敬子。2021年からこのコンサートに関わっている三ツ橋に、コンサートの魅力を紹介してもらった。
「オーケストラ・オペラ・バレエという舞台芸術の極みを一度に味わっていただける、とてもゴージャスな演奏会です。以はそれぞれのジャンルが少し交わる構成だったのですが、私が指揮に就いた翌年の2022年からは、“オーケストラ”の第1部、少し演出もつけた“オペラ”の第2部、“グランバレエ”の第3部という3部構成にしています。さらにヴァイオリン奏者 石田泰尚さんとバレエダンサー 上野水香さんによる演奏とバレエのひととき。これも毎年恒例ですね」
コンサートの演目は三ツ橋とスタッフらがアイデアを出して決めているという。今年はどんなテーマで組んだのだろう。
「2つあります。まずはずっと受け継いでいる“愛”というテーマ。そしてもう1つは、“永遠に”というテーマを掲げました。県民ホールが来年4月から休館に入るので、未来への第一歩につながれば、という気持ちを込めています」
確かに“愛”の力で姫を変えていく《トゥーランドット》や、100年の呪いを打ち破る《眠れる森の美女》と、テーマに沿った作品が並んでいる。その中で《ロミオとジュリエット》だけは悲劇的な最後を連想してしまうのだが。
「確かに《ロミオとジュリエット》のラストは悲劇的ですが、2人が一番幸せだったバルコニーのシーンを中心にした構成にしています」
さらに三ツ橋ならではのアイデアも盛り込み、最高のコンサートを演出しているという。
「就任以前はオーケストラが第1部から第3部までずっと舞台奥にセットされていましたが、私の我が儘でオーケストラパートの第1部の時だけ、客席に迫るように前方に出すようにしました。第1部が終わってから大変な転換をしてくれるスタッフには感謝しかありません。他にも字幕で歌詞や物語のあらすじを出すようにしたので、予備知識がなくても充分に楽しめると思います。オーケストラの豊かなサウンドに身を任せたり、オペラの心揺さぶる物語に涙したり、美しいバレエシーンに夢を乗せたりと、思い思いに年末のひとときを過ごしていただければと思っています」
(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃)
プロフィール
三ツ橋敬子(みつはし・けいこ)
東京都出身。小澤征爾、小林研一郎、ジェルメッティ、アッツェル、シュナイト、湯浅勇治、松尾葉子、高階正光の各氏に師事。東京藝術大学及び同大学院を修了。第10回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール優勝。併せて聴衆賞・ペドロッティ協会賞を受賞し、最年少優勝で初の3冠に輝く。2009年より小澤征爾音楽塾及びサイトウ・キネン・フェスティバル松本にて小澤征爾氏のアシスタントを務め、2009年の中国公演、2010年のカーネギーホール公演にも参加。2011年、小澤征爾音楽塾中国公演では小澤征爾氏の代役で指揮、ピーター・ゼルキン氏と共演した。N響、東京フィル、新日本フィルなど国内主要オーケストラとの共演を重ねる。
公演情報
神奈川県民ホール 年末年越しスペシャル
『ファンタスティック・ガラコンサート2024』
日:2024年12月29日(日)15:00開演(14:15開場)
場:神奈川県民ホール 大ホール
料:S席8,000円 A席6,000円
B席4,000円 C席3,000円
※他、割引あり。詳細は下記HPにて
(全席指定・税込)
HP:https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/gala2024
問:神奈川県民ホール
tel.045-662-5901