タクフェスの人気作が再演! バブル期からの15年間を甘酸っぱく描く 『夕 -ゆう-』にLead・古屋敬多が新たな風を巻き起こす

タクフェスの人気作が再演! バブル期からの15年間を甘酸っぱく描く 『夕 -ゆう-』にLead・古屋敬多が新たな風を巻き起こす

 脚本家・演出家・俳優として活躍する宅間孝行が仕掛ける極上のエンターテインメントプロジェクト「タクフェス」。昨年10周年を迎え、旗揚げ公演の演目『晩餐』が再演されたが、11年目の今年は2作目として上演された『夕 -ゆう-』が再演されることとなった。
 物語は1980年代、いわゆるバブル期の長崎から始まり、2003年までの15年間が舞台上で描かれる。海の家兼民宿「あいかわ」に住むヤンキー兄弟の次男坊・相川元弥と、彼に淡い恋心を寄せる幼馴染・三上夕を中心に描かれる本作は高い人気を誇り、これまでに様々な劇団で上演されてきた。久しぶりの本家 タクフェスでの上演にあたり、主宰の宅間孝行、そして今回“もっちゃん”こと、相川元弥を演じる古屋敬多Leadにビジュアル撮影の合間を縫って話を聞いた。


―――『夕 -ゆう-』は1980年代から2000年代まで、様々な時系列を行き来する作品ですね。

宅間「はい。2003年から始まり、1980年代に戻って、そこから1990年代前半、1990年代中盤、1990年代後半、そして2000年代へと15年間の様子が作中で描かれています」

―――その時代を描こうと思った理由は?

宅間「この脚本が生まれたのがまさに2003年で、その時点を現代として15年遡って書いた作品でした。タクフェスでは2回目の上演ですが、その前身である東京セレソンデラックス時代にも3回ほど公演しています」

―――タクフェスでは令和になってから初の上演となりますが、出演者やその時の時勢に合わせて脚本を変えることはあるのでしょうか?

宅間「出演者はどうしても毎回変わるので、その時の出演者に寄り添って作っていきますが、特に脚本を変えることはないですね。むしろ令和の若者たちの間で、昨今80年代のファッション・音楽・カルチャーがブームになっていると聞くので、逆にしっかり80年代を描くことが令和のお客さまのためになるのかもしれません」

―――古屋さんは今日の撮影で宅間さんとは初対面だと伺いました。改めて作品の印象、宅間さんの印象はいかがですか?

古屋「出演させていただけることが決まって、過去公演の映像を拝見したのですが、面白すぎてビックリしました! 笑いどころはめちゃくちゃ面白くて、でも泣けるところは泣けて。あと、マイクをつけずに地声でやられているのが凄いなって。僕はまだその経験がなくて……。声を張って、全身全霊で演じる皆さんから、物凄いエネルギーが伝わってきました。
 僕が観た映像では宅間さんが元弥を演じていらしたのですが、こんなにナチュラルなお芝居ができる方がいるんだ……と感動してしまって。宅間さんご自身のパワーやリーダーシップも相まって、宅間さん、もとい元弥を中心に座組がまとまっていることが舞台上からも感じられて、これはおそらく宅間さん自身の人としてのエネルギーがあるからこそなんだろうなと……。果たして自分にそのエネルギーが出せるのか、今は不安と期待のせめぎ合いです」

宅間「福岡出身の古屋くんから見て、長崎弁はどうだった? 俺たち、一応頑張って勉強して喋っているんだけど……。実はほとんど九州の人間がいない座組で、探り探りで。おかしいところがあったら正直に言って!」

古屋「え! いや、そんな……皆さん九州出身なのかなって思う上手くらいでしたよ」

宅間「本当に⁉ なら良かった~! でも本物の長崎県出身の人からは『長崎弁というよりは新しい方言ですね』って言われちゃったこともあって。本物に近いけど、やっぱりちょっとだけ違うみたい」

古屋「僕は福岡出身なので、長崎弁の細かいところまで分かるわけじゃないのですが……ニュアンスやイントネーションは同じ九州なのでどことなく似ていて。自分の地元みたいな空気感が流れていて懐かしい気持ちになりました。でもそうなると、僕も長崎弁は初めてだから勉強しないといけませんね……」

宅間「これまでに福岡弁で芝居したことはあるの?」

古屋「ないんです! なので楽しみでもあります」

―――なぜ舞台が長崎県だったのでしょう?

宅間「別作品で東北弁を使ってお芝居をした時に、方言を使うだけで空気感がこんなに変わるんだと思って興味が湧いて。その時にメンバーの中に長崎県出身と岡山県出身者の人間がいたので、その2人に標準語のセリフをそれぞれの方言に置き換えて読ませたら、九州の方言の響きって面白いなって思って……味をしめました(笑)。その翌年には高知県出身の役者がいたから、土佐弁にハマった時期もあります。九州だと他に博多弁・熊本弁・鹿児島弁もちょっと勉強したんだけど……鹿児島弁が桁違いに難しいよね」

古屋「そうなんですか⁉ 僕はあんまり鹿児島弁のことは分からなくて……沖縄弁みたいな感じですか?」

宅間「沖縄ともまたちょっと違うんだけど……『夕 -ゆう-』で使う長崎弁をはじめ、結構九州弁のニュアンスは分かっていたつもりが、鹿児島は全然違ったんだよね。鹿児島と沖縄はなかなかハードルが高いなって思います」

―――舞台となる民宿、そして昭和から平成初期という時代設定、さらに九州の方言と、様々な要素が作品に温かみを与えてくれますね。タクフェスに限らず他劇団でも上演され、愛されている『夕 -ゆう-』ですが、初見のお客さまならではの楽しみ方、また従来の作品ファンならではの楽しみ方は?

宅間「ありがたいことに『夕 -ゆう-』は、とにかくファンがとても多い作品なので、まだご覧になっていない方は皆が惹かれる、皆に愛される理由がどんなものかをぜひ体験していただきたいです。今までにご覧になった方にとってみれば……僕がやる役が元弥から父になったり、古屋くんたちのような新しい世代が入ってきたり、同じ作品でありながら新しい風が感じられると思います。ある意味、誰にとっても新鮮な『夕 -ゆう-』をお届けできるのではないでしょうか」

―――宅間さんご自身は『夕 -ゆう-』のどんなところが人気の所以だと思いますか?

宅間「うーん……そう言われると、難しいけど……」

古屋「僕は時系列がいったりきたりするところが好きです。1回観るだけでなく、出来れば2回観ていただけるとより理解できて面白い作品だなと」

宅間「確かに僕の脚本は、お客さまに何度か観てもらいたくて、伏線を散りばめている作品が多いんだよね。『夕 -ゆう-』も全て分かった上で頭からもう1回観ると、視点が変わって面白いし、楽しみ方が変わる作品だと思います。あとは王道な恋愛ストーリーが、特に女性に刺さるみたいですね。ご自身の若い頃、青春時代と重ね合わせられる部分があるという声もよく聞きます」

―――古屋さんは今回、宅間さんが演じていた元弥を、宅間さんが見守る中で演じるということで相当なプレッシャーもあるかと思いますが……。

古屋「自分の中の“もっちゃん”が映像で観た宅間さんのイメージなので、どうしても芝居が寄ってしまいそうだなとは思うのですが……。あまり深くは考え過ぎず、心のままに、演出をくみ取りつつ一生懸命取り組みたいと思います」

―――共演者も違いますから、自然に違う作品になるのではないかと思います。

古屋「そうですよね。大人数がステージ上にいるシーンが多くて、ありとあらゆる掛け合いが常にステージの上で行われているので、にぎやかで楽しみです。その中で、元弥としてどう生きられるか、楽しみです」

―――古屋さんご自身も兄・妹がいるとのことで、兄弟の間に挟まれる気持ちは実体験も参考になりそうでしょうか。

古屋「そうなんですよ! 兄の背中を追ってしまう弟としての気持ちも、下の兄弟に強い自分を見せようとしてしまう兄の気持ちも凄く分かります。ぜひ元弥に寄り添って演じていきたいですね」

―――では最後に、お客さまに向けて一言お願いします。

古屋「僕もこの作品の1ファンとして楽しみですし、稽古期間を一生懸命生きて、本番に臨むと思いますので、ぜひ期待して観に来ていただけたらと思います。よろしくお願いします!」

宅間「『夕 -ゆう-』は戯曲集に載っていることもあって、高校の文化祭、大学生の演劇サークルや他劇団など、ありがたいことに色々なところで上演されてきました。とはいえ本家 タクフェスとしては10年ぶりの『夕 -ゆう-』です。もしかしたらこの先また10年やらないかもしれないので、この機会を逃さずに、ぜひ劇場でその瞬間に立ち会っていただけたらと思います。お待ちしております」

(取材・文:通崎千穂 撮影:間野真由美)

プロフィール

宅間孝行(たくま・たかゆき)
1970年7月17日生まれ、東京都出身。タクフェス主宰。1997年、劇団「東京セレソン」を旗揚げ。2001 年「東京セレソンデラックス」と改名するのを機に、主宰・作・演出・主演として活動。2013年「タクフェス」を⽴ち上げる。役者としてドラマや映画に出演する⼀⽅ 、脚本家・演出家としても活躍。劇団作品の映像化として、ドラマ『歌姫』、『間違われちゃった男』、映画『くちづけ』、『あいあい傘』、ドラマ『流れ星』など多数。現在配信中のYouTube連続ドラマ『THE BAD LOSERS』シーズン1& シーズン2、8⽉18⽇スタートのABCドラマ『素晴らしき哉、先⽣!』では、全話、脚本、監督を⼿掛けている。

古屋敬多(ふるや・けいた)
1988年6月13日生まれ、福岡県出身。ダンスボーカルユニット「Lead」のメンバーとして、楽曲の振付・作詞などもおこなっている。2008年からは舞台でも活躍。主な出演に、舞台『SUPERLOSERZ』、ミュージカル『プリシラ』、『FLOWER DRUM SONG』、『アラバスター』など。

公演情報

タクフェス第12弾『夕 -ゆう-』

【東京公演】
日:2024年11月1日(金)~10日(日)
場:サンシャイン劇場
料:S席[パンフレット付]11,600円 
  S席9,800円
  TAKUFESシート[2階後方席]6,800円
  (全席指定・税込)
問:サンライズプロモーション東京 
  tel.0570-00-3337(平⽇12:00~15:00)

【大阪公演】
日:2024年11月14日(木)~17日(日)
場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
料:8,900円(全席指定・税込)
問:キョードーインフォメーション
  tel.0570-200-888(平日・土曜11:00~18:00/日祝休)

HP:https://takufes.jp/yuu2024/

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