お互いの個性や芝居を理解しているから作れるコメディが「演劇集団イヌッコロ」の強み 元からのファンも初めての方もストレスなく笑える作品に

お互いの個性や芝居を理解しているから作れるコメディが「演劇集団イヌッコロ」の強み 元からのファンも初めての方もストレスなく笑える作品に

 ワンシチュエーションコメディにこだわり、多彩な作品を発表してきた「演劇集団イヌッコロ」。コロナ禍で活動を休止していたが、2024年9月18日(水)より、5年ぶりの復活公演を行う。第15回公演『かげきなデイリープレイス』に向けて、佐野瑞樹、モリノリ久、長谷川哲朗、こいづか登にイヌッコロの魅力や強みを中心にインタビューした。

―――旗揚げから15年目、5年ぶりの公演です。個々の活動で「演劇集団イヌッコロ」に興味を持った方もいると思うので、初めて観る方に向けたアピールポイントを教えていただけますか?

モリ「5年ぶりで、待ってくれていた方もいると思うし、忘れてしまった方もいると思います。一言でいうと、演劇集団イヌッコロといえばシチュエーションコメディ。色々なフリが見事に決着していく様をご堪能いただけたらと思っています」

こいづか「久々ですよね。来てくださる方が声を出して笑える作品をずっとやってきましたし、今回もそうなるはず。みんな年齢も上がっていますが、もっともっと弾けて笑っていただけたら」

佐野「技術も上がってますからね」

モリ「上がってるかな?」

こいづか「久々すぎてこうやって揃って話すのが恥ずかしい。笑っていただけるのは間違いないです」

長谷川「久々に新作をやれるのが自分でも楽しみです。笑って嫌なことを忘れられるし、もしかしたら泣けるかもしれない。(脚本担当の佐野に)初めての方も前からのファンの方も楽しめるような魅力的な話を書いてください」

一同「(笑)」

佐野「初めて観に来る方に向けたアピールポイントでいうと、僕の作品作りのコンセプトとして、とにかくわかりやすく、邪魔なものは一才排除するというのがあります。必要以上のバックボーンをつけない、必要以上の説明セリフを入れない、観やすいように90分にこだわるとか。お涙頂戴はやりません」

モリ「お客さんはほしいかも」

佐野「いやいや、“コメディ”と銘打ってるんだから、笑わせなくてどうするんですか」

こいづか「『ラストでほっこりしました』っていう感想もたまにありますよ」

佐野「単純に、90分ストレスなく笑って帰れるのが理想です。初めての方にこそ見てほしいと思っているので、とても観やすく、楽しめると思います」

―――久々に集結したわけですが、ここまでを振り返って、いかがでしょう。

モリ「元々脚本と演出をやってくれていた佐野くんが、“佐野瑞樹”という名前で関わる初めての公演になります(※これまでは“羽仁修”名義で参加)。
 僕らは草野球チームからスタートしたんですが、みんな佐野くんの共演者なんですよ。てっちゃん(長谷川)が(結成を)言い出して、佐野くんも脚本にチャレンジする場がほしいということで」

佐野「シチュエーションコメディをしっかり書いてみたいというのがあった。他だとアクションや冒険劇、ちょっと泣ける話を書いているけど、イヌッコロは唯一ワンシチュエーションコメディだけを書き続けています」

モリ「『芝居をやる集団を作りたい』という思いと、佐野くんのシチュエーションコメディに対する意欲が合致して生まれた感じですね。コロナ禍で活動休止をして、集団でやるタイミングを逃していましたが、今回こいづかくんが50歳になる年で」

こいづか「50歳になるなら、やっぱりイヌッコロでやりたいなと」

モリ「コロナ禍で期間が空いたこともあって、それまでペンネームで脚本・演出をしていた佐野くんが本人の名前を出して出演もし、フルメンバーでやれることになりました」

こいづか「不思議な感じだけど、お客さんも不思議な感覚だろうね」

モリ「発端から15年越しにできるようになったのが売りでもある公演ですね」

―――役者さんのプライベートな付き合いから発生した劇団が15年間続くのは珍しいのではないかと思います。

モリ「仲が良いだけじゃないから続いてるのかなと」

佐野「続いてきたのはお客さんが喜んでくれるからですよね。笑ってくれると嬉しくてアドレナリンが出る。終わった時に『面白かった』と拍手してもらえると中毒性があって、また喧嘩しながら作っていくっていう(笑)」

こいづか「それはイヌッコロに限らず演劇をやってる人なら同じだよね」

モリ「でも、辛い時はあるよ。常に喜んでもらえるっていうのは、演劇集団イヌッコロを続ける理由の1つだと思う」

佐野「あと、劇団ってストーリーやキャラの必要・不要で揉めることがあるけど、イヌッコロは脚本ができる前に揉める。しっかり話し合うから、みんなの作品に対しての納得度がすごく高いんです」

モリ「もちろん脚本は佐野くんだけど、脚本を書く段階で僕らにも相談してくれる。自分で全部進めるんじゃなく、みんなのアイデアが入っているから」

こいづか「(会議をするときの)ファミレス代、結構かかってるもんね」

一同「(笑)」

長谷川「僕は口を出さないけど、『この役ヤダ』は言います。それでその役になったりする」

佐野「嫌なんだ、じゃあ哲はこの役ってのがある(笑)。脚本会議で争うから、稽古に入ると揉めない」

モリ「佐野くんが閃くまでアイデア出しするのが僕らの役目なんですよ」

長谷川「みんなは劇団に入ってたことがあるけど、僕はないから、佐野くんの本が面白いと思い込まされているんです。だから本を読んで違和感とか不満もない」

佐野「いまだに騙され続けてる(笑)」

モリ・こいづか「面白いから大丈夫(笑)!」

こいづか「大変だけど、脚本会議をしてくれるのが揉めない理由だよね。完成前から色々言い合えるし、できたものも面白いし」

―――今回、どんなお話になりそうか、構想は決まっているんでしょうか。

佐野「万が一変わったらすみませんということで」

一同「その時は謝れば大丈夫(笑)」

佐野「怖いお兄さんたちが、とある理由で演劇をやらなきゃいけなくなっちゃうっていうワンシチュエーションコメディになる予定です」

こいづか「前にもあったよね」

佐野「『ご町内デュエル』の続編みたいな感じですね。5年ぶりなので、イヌッコロらしさ全開にしようかなと思っています。昔のキャラクターも出したいなと」

こいづか「久々の方は懐かしいし、初めての方も面白い」

モリ「脚本の貸し出しを結構しているので、イヌッコロを見てなくても作品を見ている方は多いと思います。パラレル的に過去作のキャラクターが出てきたりもしますから、『観たことのあるキャラクターだ』と思う方や、『あれ? イヌッコロの作品観たことある!』って思う人もいるかもしれません」

こいづか「ドタバタ感が強そうだよね。コント寄りの、ゲラゲラ笑える作品になりそうです」

―――改めて、お互いに感じる役者としての魅力、演劇集団イヌッコロで芝居をする楽しさはどこですか。

モリ「安心感や安定感としては、それぞれのキャラがわかっているのが大きいですよね。『この人がこの役をやったらこうなるだろう』という想像や発想を膨らませやすいです」

こいづか「やりやすいですよね」

佐野「当て書きというか、合いそうなキャラクターが浮かぶのはあるよね」

モリ「特性とキャラクターがわかってる良さがある」

長谷川「みんなの芝居の仕方はなんとなくわかるというか」

こいづか「稽古でみんなを見てると、『ああ、この感じ』みたいな安心感もあるし『また始まった』もある(笑)」

長谷川「小野ちゃん(小野友広)とか、こいさん(こいづか)はやりやすいけど、モリさんはやりづらい」

一同「(笑)」

長谷川「でも、それもわかってるから『モリさんだなあ』って」

こいづか「得意分野がみんな分かれていて面白いですよね」

佐野「劇団といっても、みんなそれぞれでやってきてるから芝居のスキルも違う。モリさんみたいにねっとり芝居して、いらない小道具まで自作してくる人もいれば、こいちゃんみたいにノープランでその時のノリでやる人もいれば、個性だけでやるてっちゃんもいるし」

モリ「大丈夫? 僕ら褒められてます(笑)?」

佐野「ずっと劇団でやっているとお芝居が似てきちゃったりするけど、僕らはそれぞれが自分の芝居をする。個性がよく出ているのが魅力かなと思います」

モリ「そういう意味では、草野球チームだよね。1番バッター、2番バッターとキャラが全然違うっていう」

―――準備段階とのことですが、みなさんから佐野さんに期待していることはありますか?

モリ「僕らは脚本会議をして見えてきているので、新たに期待しなくても大丈夫かなって。てっちゃんはどう?」

佐野「長谷川さんが私に何を期待するのか、個人的に知りたいです」

長谷川「早く琴線に触れるものを見つけてほしい。琴線に触れないと書いてくれないから」

佐野「早く書けってこと?」

一同「(笑)」

佐野「確かに、書くたびに遅くなってく」

モリ「昔はイヌッコロくらいだったけど、今は関わっている作品が多いから」

佐野「期待に応えられるように頑張ります。代わりに、ファミレスに必ず来いよ」

こいづか「てっちゃんが琴線に触れさせてあげないと」

長谷川「夕方くらいなら……(笑)」

―――最後に、楽しみにしている皆さん、公演が気になっている方に向けたメッセージをお願いします。

長谷川「5年ぶりの新作でやれるということで、次の新作はいつになるかわかりません。今回はみなさん、全員観に来てほしいです」

佐野「日本において色々なジャンルの演劇がある中にコメディがあり、その中にギャグコメディや人情喜劇、ナンセンス、シチュエーションコメディなどがある。全体で見ると、シチュエーションコメディの上演数はすごく少ないんです。我々は王道をやっているので、『どういうお芝居なんだろう?』、『どう面白いんだろう?』と気になった方はぜひ一度、観に来てほしいです」

モリ「2人が言っているのが全て。気になる方は『来ない』よりも『来る』を選択していただけたらと思います」

こいづか「メンバーの平均年齢も上がってきているので、その人たちがドタバタ一生懸命やっている姿で笑っていただけたらありがたいです。ぜひ観に来てください」

(取材・文&撮影:吉田沙奈)

プロフィール

佐野瑞樹(さの・みずき)
静岡県出身。1993年にミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で初舞台。その後、数々の話題の舞台・ミュージカル・TVドラマに出演し、高い評価を得る。2011年、弟の大樹と兄弟プロデュースユニット WBB(WATER BIG BROTHERS)を結成。2013年、『川崎ガリバー』で初演出。演劇集団イヌッコロでは羽仁修名義で全脚本・多くの公演の演出を手掛けていた。

モリノリ久(もり・のりひさ)
愛知県出身。声優・俳優・演出家として活動。声優としての出演作に、『テニスの王子様』、『おじゃる丸』、『るろうに剣心 – 明治剣客浪漫譚』、『HUNTER×HUNTER』など。舞台では演劇集団イヌッコロの公演に加え、ミュージカル『水色時代』、『人狼 ザ・ライブプレイングシアター』シリーズなどに出演。

こいづか登(こいづか・のぼる)
福島県出身。舞台・TVドラマ・映画で幅広く活動。演劇集団イヌッコロのメンバーとして第7回公演以降に出演しているほか、個人でBears Train第2回公演『リバースヒストリカ』、WBBplus『まわれ!無敵のマーダーケース』、舞台『冒険者たちのホテル~ドラゴンクエストXに集いし仲間たち~』などにも出演している。

長谷川哲朗(はせがわ・てつろう)
東京都出身。演劇集団イヌッコロには立ち上げから参加し、第1回公演から出演している。個人では、舞台『発明BOYカニパン』、pnish*vol.10『サムライモード』、プロスパードッグス『まわれ!無敵のマーダーケース2023』などに出演。

公演情報

演劇集団イヌッコロ 第15回公演
『かげきなデイリープレイス』

日:2024年9月18日(水)~22日(日・祝)
場:中野 ザ・ポケット
料:6,000円(全席指定・税込)
HP:https://inuccoro.mystrikingly.com
問:演劇集団イヌッコロ
  mail:inuccoro2010@gmail.com

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