ぱすてるからっとが贈る、魔法バトルエンタメ作品 時を超えて描かれる、少女の不思議な物語

 まだ色濃く染まっていない厳選された原石たちで、演劇・ダンス・笑いを届ける若手クリエイティブ集団 ぱすてるからっとの最新作は、魔法使いの世界に迷い込んだ少女の選択と、その住人たちとの魔法バトルを、個性豊かなキャラクター達と描いていく。
 作品を代表して、W主演の美月まりもと夢月、脚本と2役を演じる東堂海紗、そしてキーパソンを演じる上原ぺこに話を聞いた。

お客さ推しキャラができると思います

―――稽古が始まったそうですが、脚本の印象をそれぞれお伺いしたいです。

美月「ミサチ(東堂)の台本が今回で3回目で、前の2作品も出演しておりますが、今回もすごく楽しみにしていました。いつもぱすてるからっとがやっている、魔法や能力を使ったファンタジーな部分とSFっぽさが想像していたよりも混ざって、その中にミサチの良さがすごく見えて、とても大きな世界観になっていました。本番がすごく楽しみです」

夢月「前の2作品は日常の中の非日常みたいなところありましたが、今回は世界観が私たちにとっては非日常で、魔法の世界に女の子が1人で入ってしまいます。非日常の中の日常の、さらに何か起こってしまった非日常という何層にも構造があって、本を読んだだけで想像が膨らみました。ぱすてるからっとは演出や照明など魔法表現が得意なので、出来上がりがとても楽しみです」

東堂「ぱすてるからっとで3作目の台本執筆になりますが、前の2作は自分の中で1番エモいと思っている“夏と学生”をテーマに書き、今回は劇場も大きくなるので少しレベルアップしたいと思い“異世界と魔法”をテーマに作品を書きました。
 今までも知り合いのキャストが多かったので、みんなが何をやったら楽しんでくれるか、それを観たお客さまがどう楽しんでくれるかなと前作まで必死で書いていましたが、今回はそれもちょっと気にしながら新しい気持ちで書くことができました。出演者たちのとても前向きな反応をSNSなどで見ると嬉しい気持ちでいっぱいですね。もう脚本は手放して演出の(佐藤)颯さんにお任せしたので、あとは自分の役を頑張ります」

―――自分が書いたものが音になって聴こえてくると印象は変わりますか?

東堂「自分が思っていたのと全然違うものになり、完成したものがとても面白くて、みんながどうにかしてくれる、これは役者に任せていいんだって思って、気軽に脚本を書けるようになりました」

上原「東堂さんの脚本は毎回泣けると評判で、重みのあるファンタジーとして今回も泣けます。登場人物ひとりひとりに愛があって、全員のキャラがとても魅力的なんです。お客さまも推しキャラが絶対できると思うので、そのあたりも楽しみにしてほしいです」

―――役作りについて伺います。美月さんと夢月さんがWキャストで演じる真理役は、両親が無くなり叔母に育てられた背景を持つ素直で普通の女の子です。

美月「真理は1番普通で一般的で等身大の女の子なので、そういう意味ではお客様と同じ目線を意識しています。異世界に真理が入っていくところから始まるので、みんなをその世界に引っ張っていけるように、私が見ている世界がみんなも見ている世界になると思うので、お客さまをこの世界に引きずり込みたいと思っています。真理は巻き込まれていくので、お客さまも巻き込みたいですね」

夢月「真理をこうしていこうという気持ちはこれからで、たぶん初稽古の日が1番参考になるんじゃないかなと思っています。さらに小屋入りしても音響・照明でまた魔法がかかるので、そこでも新鮮に起こったことにリアクションをしていけば、無理に役作りをするのではなく、受け取ったものをそのまま出していく感じになるのかな。私はちょっと若返る感じで頑張りたいと思います。
 ぱすてるからっとでは演出家の佐藤颯さんが、役作りについて寛大で任せてくれることもあり、同じキャラクターでも全く違う印象になります。それがとても楽しみですね」

―――ではWキャストでも自分は自分として演じていこうと。

夢月「もう意識バチバチです(笑)」

美月「意識しかしてないですよね(笑)。お互い仲良しなのでリスペクトしながら」

―――東堂さんは陽チームではソフィ役、月チームではアリス役として2役、全チームに出演します。

東堂「ソフィに関してはしっかり者の秘書みたいな役どころです。アリスに関してはしっかりしたリーダーのイメージだったので、私にできるのかと。自分の中では上位にくるほど演じたことがない難しい役なので、チャレンジと思っています。
 まりもちゃん以外に2班に別役で出る人間が生まれるのかと、それが自分でびっくりしています」

夢月「脚本を書いたミサチが、出演者として両班いてくれるのは心強いです」

―――そして上原さんが演じるのは、魔導軍をまとめている厳格なヴァイオレット役です。

上原「ヴァイオレットは、しっかりしていて信念を持つ世界平和を願っている強い女性です。事前に東堂さんからなんとなく話を聞いていて、いざ読んでみるとヤバそうで、実はイメージしているキャラがいるので色々試行錯誤して作っていきたいと思っています。重い話や重いキャラが大好きなのでとても楽しみです」

ダンスや殺陣、キャラクターほか見どころ満載です

―――今作では魔法表現なども多く楽しみです。それぞれご自身が注目してほしいなど見どころをお聞かせください。

東堂「まずは過去作も手掛けた振付師2人(美月・夢月)が作るダンスが見どころです。毎回お話の始まりをワクワクさせてくれるオープニングを作ってくれて、毎回ストーリーにめちゃくちゃ合うエンディングを作ってくれる、それだけでも楽しみです」

美月「見どころはキャラクターの生き様です。それぞれのキャラクターがその世界でどんなことを思って生きてるのか、どうしてその能力を持っていてそれをどう生かして生きているのか。主演は私たちですが、みんなも人生の主役で、人と人との関係性とか、それぞれスポットが当たる部分がいっぱいあるので注目してほしいと思います」

夢月「注目は2点ありまして、まずカップリングです。男女もあれば男子×男子、女子×女子もあって、恋愛もあれば友情もある、様々な関係性を楽しんでもらえると思います。そして、ぱすてるからっとに出ているキャストはみんな自由に影芝居とかもやっているので、班によって違いがあり楽しめます。
 私は個人的に東堂海紗が描く、日常のちょっとしたコメディシーンが好きで、ミサチがこのシーンをどんな気持ちで書いてるんだろうと思うとキュンキュンしますね(笑)」

上原「ぱすてるからっとの舞台はダンスあり殺陣あり、衣装もおしゃれで見た目がすごく派手で見て楽しめる所が魅力です。私自身の役に殺陣はないですが、殺陣・振付指導の真下祐一さんがつけてくださる殺陣が大好きで、とても楽しみですし見どころです」

クリエーターとして心がけていることとは

――そして3人は演じる他にスタッフとして役割があります。美月さんと夢月さんが振付師として心がけていること、挑戦と思っている事などお聞かせください。

美月「オープニングダンスは物語のはじまりの導入部分で、この作品の魅力を言葉じゃなくてダンスと音と照明で伝えていくものなので、華やかで明るくて、みんながワクワクする物を作りたいです。さらにキャストが楽しめるものを作りたいといつも思っているので、それを今回も目指します。
 今回は人数が多いので、この大人数をどう配置するか、みんながちゃんと見えるようにすることが課題です。前回は人が多くて劇場に入ってから調整に時間を要してしまったので、今回はみんなが笑顔でできるように、華やかに余裕を持ったダンスにしたいなと思っています」

―――そしてエンディングはオープニングとは違った課題がありそうです。

夢月「私は基本的に役者としての活動が中心なので、ダンスの振付もぱすてるからっとの作品が初めてで関わるようになりました。役者であることを生かして振付師さんがやらない、ちょっと役者目線の芝居っぽいところにこだわっていけたらと。エンディングでネタバレもないので、こういうことがあったなと断片的に思い出し、もう一度楽しめるハイライト集みたいにできたらと思っています。
 上手下手の両方のお客さまにもいろんなキャストを見て楽しんでいただきたい想いがあり、今回練習期間も長いのでちょっと難しいといいますか、左右対称ではないような振付を考え中です」

―――脚本については先に少し東堂さんからお話いただきましたが、脚本家として誰よりも先にひと山は超えた安心感はありますね。

東堂「確かにそうですね。そもそも脚本はぱすてるからっと作品に出るまで書いたことがなくて。お遊びで漫画を書いたりは小さい頃からやっていましたが、何故私に声をかけたんだろうと一度聞いたことがあったんです。そうしたら『東堂さんなら書けそうだから』と(笑)。そこから始まった脚本がもう3作目で個人的にはすごい驚きです」

―――脚本を書く時の作業として、何から始めますか?

東堂「私が脚本を書く時は、まずキャラクターを生み出すところから始めます。今回1番最初に出てきたキャラクターがカルタというキャラクターでした。この子をなんとかしようと真理が生まれ、バイオレットが生まれました。
 基本的に私はキャラ全員を救いたいハッピーエンドが好きなタイプなので、嘘でしょって言わそうですけど(笑)」

一同「(笑)」

東堂「そう終われる作品を目指しているので、キャラクター愛が強いと言ってくれたのも、たぶんキャラクターが先に生まれているからなのではと思っています。その子を活かすにはこの世界観、活かすならこのストーリー、基本的にラストが先に決まります。そこに向かって肉付けしています」

―――ありがとうございます。では上原さんは演じること以外で挑戦したいなど興味はありますか?

上原「興味はありますが、0から1を生み出すことが難しくて。演出はもっと無理で、イメージはあったとしても誰かに指示する、みんなをまとめることが本当にむいてなくて……」

美月「ぺこさんは背中で語る、演技で引っ張ってくれるタイプな気がします」

上原「そうかもしれないです。ぱすてるからっとはオープニングなどオリジナルで作っているので、歌を唄う機会があれば、ちょっと挑戦してみたい想いはあります」

東堂「言えば叶うよ!」

―――では、主役のおふたりから、お誘いのメッセージをお願いします。

美月「主演ではありますが、みんなが輝ける舞台だと思います。魔法とか普段とは違った世界観に飛んでいく作品なので、普段の嫌なことや辛いことを一旦置いといて、観た後に前向きになれる、明日から頑張ろうと思える作品だと思うので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです」

夢月「いろんな解釈で楽しめる作品になると思います。ぱすてるからっとの作品は毎回違う青春をくれます。7月公演なので、夏のはじまりを一緒に楽しみましょう」

異世界で欲しいスキルとは?

―――(番外編)今作の“魔法”、“異世界”にちなんで、異世界に持っていけるスキルがあったら何が欲しいですか?

東堂「常々欲しいと思っているのが、見た瞬間に覚えられる、忘れない記憶能力が欲しいですね。3年前の脚本も全部セリフが言えるスキル。記憶力を保持する能力が欲しいです。異世界でも通用しそうです」

美月「私は料理スキルですね。胃袋を掴むことはきっとどの世界に行っても大事なスキルで、掴むことができたらどこでも幸せに暮らしていけそうですよね。私は料理が苦手なので、だからこそ欲しいスキルです」

夢月「振付がすぐ終わる能力は今欲しいスキルです(笑)。そうですね、ただただ強い勇者能力かな。筋力、腕力、無敵に戦いたいです」

上原「歳をとらない不老能力? 寿命があっても老化してずっと生き続けるのはしんどいと思うので、今のまま歳をとらずに元気で100歳まで生きる。
 あとはこの4人で勇者パーティを組みたい! 料理担当と戦う能力はみんなに任せます(笑)」

(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

美月まりも(みづき・まりも)
2月21日生まれ、東京都出身。アイドル活動を経て、女優や振付師として多くの舞台で活躍中。ぱすてるからっと主催作品に多数出演している。ダンスボーカル百合ユニット SOLiLUNA(ソルイルナ)としても活動中。7/3、7/16ほかSOLiLUNAでライブに出演予定。

夢月(むーん)
3月7日生まれ、東京都出身。女優・アーティスト・振付師ほか、舞台を中心に活躍中。近作に演劇集団あんちぽっぷ 第四回公演『真白鬼』、HH企画vol.4『そうぞうされた世かい』など。令和歌謡ポップス「センチメンタルチャイナタウン」を各配信サイトにて配信中。

東堂海紗(とうどう・みさ)
10月4日生まれ、栃木県出身。声優・女優・モデル・脚本家ほか、活動は多岐にわたる。近作に、ぱすてるからっとproduce 舞台『悪役令嬢イミテーション』、舞台『紅絵巻』など。東堂海紗3rd写真集が現在発売中。

上原ぺこ(うえはら・ぺこ)
8月2日生まれ、千葉県出身。アイドル・女優として舞台を中心に活躍中。近作に、ぱすてるからっとproduce 舞台『偽りの瞬く星空に』、『悪役令嬢イミテーション』、劇団宇宙キャンパス34th act『マドンナ・リリィは微笑み、唄う』など。

公演情報

ぱすてるからっとproduce
舞台『The Witch ~魔法使いの日記~』

日:2024年7月11日(木)~15日(月・祝)
場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
料:S席[特典付]6,500円
  A席・車椅子席5,500円(全席指定・税込)
HP:https://pastelcarat.web.fc2.com
問:ぱすてるからっと
  mail:pastelcarat_info@yahoo.co.jp

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