“STRAYDOG”オリジナルの問題作が2022年に満を持して再演決定! 唐突に娘を奪われた母が見出した光とは?

 主宰・森岡利行を中心に若手育成公演や完全オリジナル新作、人気原作舞台など、年間5本から8本程度の公演をおこなう“STRAYDOG”。2022年最初の公演は、通り魔によって唐突に娘の命を奪われた母親が、辛く苦しい人生に顔を上げて立ち向かっていく、「生きる力」を問う物語だ。いつもと変わらない日常と最愛の娘、アオイを奪われた恵子役に芳本美代子を起用。2017年公演とは異なる新たな演出で、絶望の中で恵子が希望を見出し、生き抜く決意をするまでを描く。芳本自身も娘を持つ母親だけに、大きな挑戦となる一作となりそうだ。


―――森岡利行さんが“STRAYDOG”ならではの手法で描く問題作です。娘を突然奪われた恵子は芳本さんにどのように映っていますか?

犯人への憎しみさえも力に

芳本「“STRAYDOG“のプロデュース公演出演は初ですが、森岡利行さんとは前夫と組んだ演劇ユニット「8・8・8」での作品『軋み』(2011年)を演出して下さって以来のご縁です。2017年には『BSジャパン山本周五郎人情時代劇』でもご一緒させて頂きました。この『アオイの花』は2017年が初演で、その時は若い方が中心でしたが、今回は私に合わせてまた見せ方も違ってくると思うので、新脚本の到着を待ちながら、準備を進めている状況です。
 私にも娘がいてその成長を見守ってきました。大学生ともなるとなかなか連絡をしてこなくて、私の母ともいつもやきもきしているぐらいですので、もし自分が同じ状況に立たされたらば、作中の恵子のように自分を鼓舞して前に進めるかどうかは想像もつきませんね。
 恵子はすごく母性の強い方ですが、それだけではない心の強さを感じました。妹を亡くした息子が自暴自棄になり、命を粗末にする行動をとった時に叱るシーンもあって、ああこんな状況でもしっかりと家族を思いやる気持ちが強い方なんだなと胸にくるものがありました。
 これは私の想像ですが、日々、嵐のように押し寄せる様々な感情と向き合う中で、きっと犯人に対する憎しみさえも力に変えているんじゃないかと。しかも、恵子は震災も経験しているんですよね。運命という言葉でくくるにはあまりにも悲しいですが、そうした経験からも生きる為に誰よりも強くあった気がします。また父親も悲しみにくれる中でも家族に対するケアや愛を忘れない。そういうあたたかい家族がなぜこのような状況に落とされないといけないのかと思うと余計悲しいです」

―――悲劇をなぞるのではなく、命の尊さや逆境での希望を描く部分は“STRAYDOG”ならではと感じました。

娘が生きた証を胸に

芳本「前作ではアオイが病院に運ばれて、亡くなるまで家族と向き合う時間があるんですね。10年という短い時間でも沢山の家族の思い出があって、そこへの愛や感謝が語られていく。この時間はアオイが亡くなったあとの悲しみから家族を再び前に向かわせる力になっているんじゃないかと感じました。恵子のもとには犯人の少年から贖罪の手紙が届くわけですが、その過程でも相手を得体の知れないものとして接するのではなく、1人の人間としてなぜ罪を犯したのかと犯人向き合う恵子の姿勢は、ただ運が悪かったでは決して片付けてはいけない。アオイが生きた証を心に留めておこうというある種の覚悟のようにも思えました」

家族は心の拠り所

―――本作は同時に家族の在り方についても一考させる作品と感じましたが、芳本さんが思う家族像はありますか?

芳本「私も仕事をしている人間なので、それぞれに生活リズムがあると思いますが、誰かに助けを求めるとすれば家族ですよね。言いにくいことや伝えにくいことをケンカしながらでも、ちゃんと分かってもらわないといけない存在だと思います。今時の若い子はといった感じで分からないことは沢山ありますが、関係性を捨てることはできないし、してはいけない。存在が近すぎるために、うっとうしく思う経験は誰しもあると思いますが、成長を見届けてこられたのも近くにいるからこそですよね。私にとって家族は最後の心の拠り所であって欲しいです」

出来る事を全力でやる

―――どういう役づくりをしていきたいですか?

芳本「すごい難しく、きっと煮詰まると思いますが、私の見え方で創っていこうと思います。前作では恵子が苦しみや憎しみの中だけでなく、笑っているシーンがあるんですね。それは在りし日のアオイも含めた家族の優しく流れる時間ですが、そういう時間を大切にしながら体当たりで臨めたらと思います。
 コロナ禍になっていろんな意味で生死について考えさせられるようになりましたよね。そういう意味で人々が生きたいという欲求が強くなった2年間かもしれません。だからこそ出来ることを全力でやるつもりでいます」

―――読者の方にメッセージをお願いします。

芳本「まだまだ多くの人達がお仕事、生活面で苦しい状況を強いられる中で、またお客様の前に立てることだけでありがたいですし、お芝居も生きているからこその娯楽ではないですか。コロナ禍とこの物語を同じ目線で語ることはできませんが、それでも日々が平等に訪れるのは生きているからこそだと思います。だから作品を通して、改めて生きる事、そして家族についても気持ちを新たにする機会になるよう精一杯演じさせてもらいます。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

プロフィール

芳本美代子(よしもと・みよこ)
1969年3月18日生まれ、山口県出身。
1985年にアイドル歌手デビューし、バラエティー番組などに数多く出演。1990年に『阿国』で第28回ゴールデン・アロー賞演劇新人賞を受賞。以降、劇団新感線『髑髏城の七人』やブロードウェイミュージカル『ピーターパン』等舞台を中心に、NHK大河『花燃ゆ』、岩井俊二監督作『FRIED DRAGON FISH』等、ドラマ・映画と幅広く活動する。森岡利行とは、2017年『BSジャパン山本周五郎人情時代劇』ぶりのタッグとなる。

公演情報

“STRAYDOG”Produce『アオイの花』

日:2022年1月20日(木)~30日(日)
場:テアトルBONBON
料:一般5,000円
  高校生以下2,500円 ※要学生証提示
 (全席指定・税込)
HP:http://www.straydog.info/stage/aoi2022.html
問:​STRAYDOG PROMOTION
  mail:s-pro@straydog.info

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