精力的に作品を世に出し続けている谷繁幽太朗が、昨年に旗揚げしたイノセントギアカンパニー。第1作としてケラリーノ・サンドロヴィッチ『わが闇』を12月に上演した彼らが、早くも2作目の劇場公演に挑むこととなった。
『贋作夜想曲』と題された今作は、原案の谷繁によれば「壮大な姉妹喧嘩」だというが、物語のディテールは明らかではない。舞台大道具から脚本家として活躍する金井博文が脚本を、『わが闇』にも出演していた武井雷俊が演出を担う本作で、主役的な役柄を担う横山乃々香・千歳ゆう・田口華の3人と武井に話を聞いた。
―――この作品は主宰の谷繁さんが原案で、それを金井さんが脚本化し、武井さんが演出されるということですね。
武井「谷繁さんのプロデュース作品には昨年12月に出演しています。そして今回も僕は当初役者としてのオファーをもらっていて、谷繁さんが脚本・演出の予定でした。でも彼は舞台を通して結構僕のことを気にしてくれていたようなんです。それでお互い色々話して意気投合した結果、僕に演出を任せたら面白いんじゃないかとなったようです。
谷繁さんの作品は割と分かり易い部分があるのですが、僕は逆にそこをあえてぼやかすのが好きなんです。だから彼の伝えたいことをあえてぼやかしたいです。いろいろなメタファーを盛り込んだりね。そしてお客様が考え、感じる作品を創りたいです。エンターテインメントではありますが、僕は芸術性の無いエンタメは失格だと思うんです。その逆もまた然りですけれど。そのあたりのバランスを考えていきたいです」
―――キャスティングなどはお二人で相談されたのですか?
武井「基本的には谷繁さんが選んでいますが、僕から推薦した役者さんも2割くらい加わっています。谷繁さんは出来る事なら全員初共演が一番いいという方針があります。新しい人達の組み合わせで新たな何かが産まれるという。ここに居る3人も初共演同士ですし」
横山「そうなんですが、実は田口さんとは同じ作品で年を挟んで同じ役に就いたことがあるんですよ。『レディ・ア・ゴーゴー』の2000年が田口さんで私が2001年。なんだか不思議だなぁと思って」
―――偶然とはいえちょっと運命的な感じが……というのは大げさですかね(笑)。では主役陣となる皆さんですが、今の段階でそれぞれの気持ちを聞かせてください
横山「顔合わせを済ませて皆さんと本読みをしたのですが、皆さんのキャラクターが凄く面白くて、これなら稽古も面白くなりそうな気がします。今回は自分にとっての挑戦となるアクションの要素も沢山あるんです。これを乗り越えれば“アクション女優”を名乗ってもいいかな?と思うくらいにありますね」
田口「もう闘いっぱなしだからね」
千歳「私はずいぶん前にオファーを頂いたのですが、殺陣やアクションを盛り込んだ、エンタメをやりたいというお話でしたので、やってみようかなと思いました。
台本を見たら本当に殺陣がすっごく多くて(笑)、ビックリ。ともかく楽しくなりそうですが、一方でしっかりと描かないと闘いのシーンの厚みが増さない所もありますから、しっかり演じたいですね」
田口「本読みで初めて皆さんとお目にかかりましたが、凄く前向きな方が多いんです。さらにいい方ばかりで、同じ方向に向かっていけそうな気がしています。
確かに殺陣も多いのですが、私は未経験なんです。そもそも本格的にお芝居に取り組むのはコロナ禍の頃からで、それまでは歌と踊り中心でしたから。ただ私自身、観ていて派手な舞台が好きなので、楽しみです」
―――演出家の目で見て、こちらの皆さんや他のキャストのみなさんにどう向かい合うか、既に考えがありますか?
武井「確かに殺陣は多いなと台本を読んで思いました。でも僕はダンスが好きなので、アクションにもダンス要素を盛り込んでいきたいと思っています。もちろん安全第一ですが、美しく魅せられれば良いなと思います。
それに本読みの時点で皆さん達者な方ばかりだということはわかったので、まずは自由に演じてもらって、そこから手を入れる感じですね。僕自身役者として関わるときは自由にやりたいタイプでもありますから」
―――既にそれぞれのファンの皆さんから、出演に当たって激励もきていることだと思います。それを受けてメッセージを頂けますか?
千歳「私を応援してくださっている皆さんから、この作品はキャストもスタッフもいい布陣なので安心して楽しめるね、と言ってもらっているんです。
スタッフさんには私がよく参加している演劇ユニット、ILUMINUSに関わっている方も多いのですが、なかでも照明家さんが素晴らしいんです。ともかく精鋭揃いですね。観に来てくださいね」
横山「この作品は私にとって挑戦の場になると思います。そして既に応援してくださる方が観たら思わず驚くように。そして初めて私を観てもらえる方には、強い印象が残ってこれからも応援したくなる。そんなお芝居をしたいです。キャストみんなでいい作品を作りたいと思います」
田口「タイトルで難しそうかと思われる方もいるかもしれませんが、難しい会話劇では無くてダンスやアクションもあるので、気楽に楽しんでもらえると思いますし、一方で考えさせる部分もあるので、普段テレビドラマで考察を楽しむ感覚で楽しめると思います。沢山の皆さんに楽しんでいただきたいです」
武井「あまりテーマを高々と掲げるのは好きではないのですが、敢えてテーマをハッキリさせるなら“意思”だと思います。観に来てくれるお客さまの意思と、われわれの意思と出逢って、合致する。そんな作品になると思います。全方向的に楽しめるけれど、でも中途半端にはならない作品に仕上げますので、安心してご来場いただきたいです。まずはお越しください」
(取材・文&撮影:渡部晋也)
プロフィール
横山乃々香(よこやま・ののか)
神奈川県出身。劇団ひまわり所属。2020年8月に初舞台を踏み、アクション・ダンス・歌と特技を生かして、舞台を中心に活動を続けている。代表作に、LIVE DOG『レディ・ア・ゴーゴー!!2021』主演・エル役、「山口ちはる」プロデュース『明日もう君に会えない』主演・なつ役、エヌオーフォー【NO.4】『abc赤坂ビーンズクラブ』、三栄町LIVE×くろばらしょうじょじごくvol.10『ラチカン』主演・ヒロコ役、言葉のアリア Season3 ハルジオン 第9回解散公演『時の物置』新庄日美役、林家畳『Fight!』主演・奥田ユリ役、BOOT Re imagination of B.QUIET『M2024』主演ナタリー・メイ役などがある。
田口 華(たぐち・はな)
長野県出身。2009年小学館「ぷっちぐみ」読者モデル 準グランプリ。同年「ちゃおガール」オーデションで準グランプリを受賞。2011年にアイドルグループ「さくら学院」に加入、4年間メンバーとし活動し派生したユニットでも活躍。2015年にグループを卒業。浅草のアミューズカフェシアターを拠点とし昭和歌謡曲のリバイバルをコンセプトとする「虎姫一座」のメンバーとしてステージに立つ。2019年にユニットの活動が休止になるまで活動。その後、舞台を中心に活躍中。
千歳ゆう(ちとせ・ゆう)
群馬県出身。中学時代に放送部に所属。地元のFMラジオ局でパーソナリティを務める。日本大学芸術学部映画学科演技コースに入学。舞台『ガラスの仮面』に感動し、舞台女優に興味をもちはじめる。卒業後、2017年よりILLUMINUSで本格的に活動を開始。“女王ステ”シリーズでは様々な重役をこなし、実力派女優として注目を集める。他にも、舞台『風が強くて吹いている』ヒロイン・勝田葉菜子役、『魔術士オーフェンはぐれ旅』レティシャ・マクレディ役、ミュージカル『悪ノ娘』ミスカンパーニュ役などで出演。また映画『あのコはだぁれ?』(清水崇監督)に出演。映像・舞台・ミュージカル・声の出演など幅広く活動している。
武井雷俊(たけい・らいしゅん)
京都府出身。4才の時に、ケイ・タケイ’sムービングアース『まつぼっくりの畑』にて初舞台を踏み、その後13才までケイ・タケイ’sムービングアースの公演に継続的に出演。アメリカ・東京・ドイツ・イギリスにて行われた24時間パフォーマンス『24時間LIGHT』にも参加。池袋ミュージカル学院を経て、卒業生を中心に劇団アッカパッラメント座を立ち上げる。主宰として、2010年から2016年まで全8作品の脚本・演出を担当。さらに俳優としても様々な作品に出演している。
公演情報
イノセントギアカンパニー #02『贋作夜想曲』
日:2024年6月19日(水)~23日(日)
場:中野 ザ・ポケット
料:SS席[A・B列・特典付]8,000円
S席[C~F列・特典付]7,000円
A席[G列以降]5,800円(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/igcompany2023
問:イノセントギアカンパニー制作部
mail:stage@igcompany.info