赤姫姿の女形×文学界の愛憎劇 花組芝居×秋之桜子が描き出す哀しきコメディ

赤姫姿の女形×文学界の愛憎劇 花組芝居×秋之桜子が描き出す哀しきコメディ

 難しいイメージのあった歌舞伎の娯楽性を追求した作風で人気を博す「花組芝居」と、演劇プロデュース集団「西瓜糖」の主宰で、脚本家として活躍する秋之桜子のコラボ第2弾が10年ぶりに実現する。秋之が紡ぎ出すのは、“女形”がはらむその内実を、文壇の愛憎劇に仮託して描く哀しきコメディだ。

「最初にこの企画が起ち上がったのは60歳の還暦の時。赤を着て芝居をしたいと思ったことがきっかけです。赤姫の役で古典をコラージュした実験的な公演をやりたいという思いから始まりました」

 そう語るのは、花組芝居で俳優・演出・脚本を兼任する、座長の加納幸和。立ち上げた企画はコロナ禍の影響を受けて上演することは叶わず、棚上げとなっていたと言う。しかし、赤姫の衣裳は総刺繍で重いため、体が効くうちにどうしてもやりたい、どうせやるならばきちんとした芝居にしようと考えたことが今回の作品につながったそうだ。

 「歌舞伎好きにとって赤姫は特殊なものです。芸能の世界では昔から赤は重く扱われる色になっています。江戸時代に、いわゆる武家のお嬢様や大名のお嬢様を舞台に登場させる際、赤を着ることが固定しました。だからこそ、赤の重みを僕も感じます」

 今作で描かれるのは、戦前の文学界で巻き起こる愛憎だ。

 「秋之さんから、『戦前の作家は男女間の揉め事があったり、1つのことにこだわって常人では考えられないような行動をとっていた。あの時代をもとにして、女形が絡んでくる話にしたらおもしろいのではないか』というお話をいただきました。作家さんたちは、売れるため、書き続けるためにそんな行動をする。そうしてやっと売れても、今度は別の悩みや制約が増えていく。なんともバカバカしい世界で、それこそコメディのようです。そうしたおかしさも感じていただけるのではないかと思います」

 さらに、加納は作品について「この作品は人生経験を積んだお兄さんたちの男同士の関わり
合いを描いています」と説明する。

 「人間は生きていれば楽しいこともあるけれども、同じくらい嫌なこともある。人生ってなんでこんなもんなのでしょうか。それをみんなで一緒に噛み締めてみませんか。世の中、色々なことがあるなと共感してくれるといいかなと思います」

 なお、今回の公演では名前入り提灯で舞台を飾る企画も実施中。観客から提灯を募り、ステージを赤く染め上げる。

(取材・文:嶋田真己 撮影:間野真由美)

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加納幸和さん
「台所・食堂・書斎が1つになっている部屋に暮らしています。料理しながら、思い付けばパソコンをいじり、仕事に飽きたら惣菜作りを始めたり。効率がいいかどうか判りませんが、時間を有効に使っている感覚はあります。逆にボーッとしている時が少なくなったような。そのせいか、ここ数年、年数が経つのが遅い感じがします。1つ前の舞台が、随分過去に思える。残り時間を大切にしたいんでしょうね」

プロフィール

加納幸和(かのう・ゆきかず)
1960年1月25日生まれ、兵庫県出身。日本大学藝術学部卒業。1987年、『ザ・隅田川』にて「花組芝居」を旗揚げ。2022年に創立35周年を迎えた劇団の座長として、脚本・演出を手掛け、自らも女形で出演。座外への客演・演出・脚本提供や、映像にも進出。女形指導、母校の日藝・カルチャースクールでの講師、NHK歌舞伎生中継の解説も務めるなど、多方面で活躍。西瓜糖『ご馳走』、花組芝居『毛皮のマリー』で、2019年前期の読売演劇賞演出家賞にノミネート。近年の主な出演に、舞台『ドレッサー』、『桜文』、『鹿鳴館』、『荒御霊新田神徳』、『連鎖街のひとびと』、ミュージカル
『刀剣乱舞』髭切膝丸 双騎出陣、演劇調異譚「xxxHOLiC」- 續-など。今年4月には、博多座25周年記念作品『新生!熱血ブラバン少女。』の演出を手掛けた。

公演情報

花組芝居『レッド・コメディ―赤姫祀り―』

日:2024年6月21日(金)~30日(日)
場:シアタートラム
料:一般7,000円
  U-25[25歳以下]2,500円
  O-70[70歳以上]4,000円
  高校生以下1,000円 ※U-25・O-70・高校生以下は要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://hanagumishibai.com
問:花組芝居 tel. 03-3709-9430

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